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本編
神様、違うんです
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二十七で冒険者デビューなんて本当は遅すぎるのでしょうが……。
幸い体の老化は止まっていますからね!
さらっとサバを読んで体感年齢で誤魔化しさらっと登録済ませたいと思います!!
ギルドで登録をするため、初めて鑑定を受けた時です。
鑑定士のお姉さんが思わずと言った様子で大きな声をあげました。
「職業は……ド、ドラゴンスレイヤー!?」
冒険者登録なんて冗談だと思われていたのでしょう。
それまで私を冷たい目で見ていた周囲の冒険者の人達から、一拍置いた後ワーッと好意的な歓声が上がりました。
なんでも、この国でドラゴンスレイヤーが出るのは実に百年ぶりなんだとか。
「…………」
ドラゴンスレイヤーって……。
仮にも竜人の元番がドラゴンスレイヤーって?!
彼と一緒に冒険出来るくらい強くなったら、押して押して押しまくって好きになってもらおうとは思っていましたが……。
違うんです、神様!
彼を倒したい訳じゃないんです!!
かつての私も物理的に強くなりたかったわけじゃないと思うんです!!!
どうしたらよいのか分からず、顔を覆ったまま天を仰いでいると、騒ぎを聞きつけた彼がギルドにやって来ました。
そうして、彼は傍にいた他の冒険者に事の顛末を聞いたのでしょう。
私と同じ死んだ目をして虚ろに愛想笑いを浮かべたまま、他の冒険者にならい形だけの拍手をしながら棒読みの
「ジツニ タノモシイナ……」
との言葉をくれました。
……まぁ。
不本意ながらなってしまったものはしょうがないですよね?
早々に気持ちを切り替えた私を見て、お姉さんが
「流石です!」
と鼻息荒く言いました。
ステータスによると私、精神攻撃の耐性も極端に高いそうです。
水耐性と、氷耐性も高く、得意攻撃は竜属にのみ有効な精神攻撃とのこと。
「…………」
あ、それから。
鑑定士のお姉さんの話によると、特殊スキルとして『暴食』なるものもついていたようです。
残念ながらこのスキルの効果は鑑定士のお姉さんにも分からないそうなので追々見極めていきたいと思います。
さて、冒険者になったのはいいですが……。
はて? この後どうしたらよいのでしょう??
考えなしに突撃してきた故、そんな風に今更困っていたら、お姉さんに
「ポテンシャルは凄いものの、体力技術力はその辺の子どもと同程度なので、まずは無理せず初心者向けのクエストを受ける事をおススメしますよ」
とアドバイスをもらったので、素直にそうすることにしました。
まずは薬草集めとかから受けてみようかなと思った時です。
「ラーシュさん、ギルドからの依頼です。将来有望のドラゴンスレイヤーさんの教育係兼護衛をお願いできませんか?」
お姉さんが目をキラキラさせて入り口付近に立つ彼に向かってそう言いました。
エーヴェル、この街ではラーシュと名乗っているのですね。
少し悩んだ末、
「ラーシュさん、お願い出来ますか?」
そう私からも頼めば、複雑そうな顔をしたのち
「……分かりました。もともと一月ここに留まり、その間ギルドを手伝う約束でしたから」
そう言ってエーヴェル改めラーシュが私の教育係を引き受けてくれることになりました。
「よろしくお願いします」
そう言って手を差し出せば、
「よろしく」
そう返したラーシュが、皮手袋をつけたまま私の手に触れました。
ちなみに。
お姉さんの鑑定士としての実力は確かなもので、登録カードの年齢を偽ることは出来ませんでした。
幸い体の老化は止まっていますからね!
さらっとサバを読んで体感年齢で誤魔化しさらっと登録済ませたいと思います!!
ギルドで登録をするため、初めて鑑定を受けた時です。
鑑定士のお姉さんが思わずと言った様子で大きな声をあげました。
「職業は……ド、ドラゴンスレイヤー!?」
冒険者登録なんて冗談だと思われていたのでしょう。
それまで私を冷たい目で見ていた周囲の冒険者の人達から、一拍置いた後ワーッと好意的な歓声が上がりました。
なんでも、この国でドラゴンスレイヤーが出るのは実に百年ぶりなんだとか。
「…………」
ドラゴンスレイヤーって……。
仮にも竜人の元番がドラゴンスレイヤーって?!
彼と一緒に冒険出来るくらい強くなったら、押して押して押しまくって好きになってもらおうとは思っていましたが……。
違うんです、神様!
彼を倒したい訳じゃないんです!!
かつての私も物理的に強くなりたかったわけじゃないと思うんです!!!
どうしたらよいのか分からず、顔を覆ったまま天を仰いでいると、騒ぎを聞きつけた彼がギルドにやって来ました。
そうして、彼は傍にいた他の冒険者に事の顛末を聞いたのでしょう。
私と同じ死んだ目をして虚ろに愛想笑いを浮かべたまま、他の冒険者にならい形だけの拍手をしながら棒読みの
「ジツニ タノモシイナ……」
との言葉をくれました。
……まぁ。
不本意ながらなってしまったものはしょうがないですよね?
早々に気持ちを切り替えた私を見て、お姉さんが
「流石です!」
と鼻息荒く言いました。
ステータスによると私、精神攻撃の耐性も極端に高いそうです。
水耐性と、氷耐性も高く、得意攻撃は竜属にのみ有効な精神攻撃とのこと。
「…………」
あ、それから。
鑑定士のお姉さんの話によると、特殊スキルとして『暴食』なるものもついていたようです。
残念ながらこのスキルの効果は鑑定士のお姉さんにも分からないそうなので追々見極めていきたいと思います。
さて、冒険者になったのはいいですが……。
はて? この後どうしたらよいのでしょう??
考えなしに突撃してきた故、そんな風に今更困っていたら、お姉さんに
「ポテンシャルは凄いものの、体力技術力はその辺の子どもと同程度なので、まずは無理せず初心者向けのクエストを受ける事をおススメしますよ」
とアドバイスをもらったので、素直にそうすることにしました。
まずは薬草集めとかから受けてみようかなと思った時です。
「ラーシュさん、ギルドからの依頼です。将来有望のドラゴンスレイヤーさんの教育係兼護衛をお願いできませんか?」
お姉さんが目をキラキラさせて入り口付近に立つ彼に向かってそう言いました。
エーヴェル、この街ではラーシュと名乗っているのですね。
少し悩んだ末、
「ラーシュさん、お願い出来ますか?」
そう私からも頼めば、複雑そうな顔をしたのち
「……分かりました。もともと一月ここに留まり、その間ギルドを手伝う約束でしたから」
そう言ってエーヴェル改めラーシュが私の教育係を引き受けてくれることになりました。
「よろしくお願いします」
そう言って手を差し出せば、
「よろしく」
そう返したラーシュが、皮手袋をつけたまま私の手に触れました。
ちなみに。
お姉さんの鑑定士としての実力は確かなもので、登録カードの年齢を偽ることは出来ませんでした。
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