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第一章 最強の少年
13 赤いウルフ
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ピョンピョンと跳び跳ねながら、魔物を探知した場所まで向かう。あくまでも魔物の気配を感じられるだけで、それがどんな魔物かまではわからないため、魔力を温存するために、ルイスは飛んでいったりはしない。
一分ほどで、ルイスは目的地に着く。ちょうど思いきり跳び跳ねたところで、ルイスは宙から状況を確認する。
そこには、数匹の魔物と、一人の人間がいた。
(あれは……ウルフ?でも、毛が赤いような……?)
ルイスも、今まで魔物を討伐してきたので、ウルフは見たことがある。だが、あんな赤い毛のものは見たことがなかった。
(とにかく、なんとかしないと)
いろいろ考えるよりも、人助けを優先しなければと、ルイスはそのまま落ちていき、ウルフに拳を喰らわせる。
落下の勢いと、ルイスの抜群の破壊力を誇る拳で、ウルフは原型を留めない形で地面にめり込んだ。ルイスの拳の衝撃で、周囲の土が吹き飛んでおり、軽く落とし穴のようになっていた。
ルイスが穴のなかに着地した時には、その体は、ウルフからの返り血を浴びていた。
「あっ、大丈夫ですか?」
ルイスは、視界に入った人間に声をかける。上から見ただけではわからなかったが、女性のようだった。
女性は、カタカタと震えている。
ルイスは、ウルフが怖いのかもしれないと、先にウルフを片付けることを優先したが、実際はーー
(な、なんなのあの子!急に空から降ってきて、ウルフを潰しちゃうなんて……!)
ルイスに怯えていただけだ。
だが、そんなことにまったく気づいていないルイスは、地面を蹴り、ウルフとの距離を詰める。
そして、間合いに入ったウルフに、正面から拳を喰らわせる。いつものように加減を考えないパンチは、ウルフ程度の体は簡単に砕け散る。
一匹を粉々にする度に、ルイスはウルフの血を浴びていく。
すべてを討伐した頃には、ルイスは全身が血まみれになっていた。
「うう~……気持ち悪いなぁ」
この血をどうしようかと思っていると、「あ、あの」という声が聞こえてくる。
それは、先ほどまでウルフに襲われていた女性だった。
「私が……落とそうか?」
「いいんですか?僕、魔法の手加減が苦手で……ありがとうございます」
「い、いえ……では、やるわね」
女性は、ぶつぶつと呪文を唱える。すると、ルイスの周りを水が覆い始める。完全に包まれると、ルイスの服や肌などについた血が、ルイスを包む水に浮かんでいく。
血が浮かんでいく度、水は赤く染まっていく。
ルイスに付着した血がなくなったとき、水は弾けて消えた。
「これで、表面はきれいになったはずよ」
「わぁ!ありがとうございます!魔法の使い方が上手なんですね!」
「そ、そう……ありがと」
ルイスはニコッと笑うが、女性はひきつった笑いしか向けてこない。
何か、嫌なことでも言ってしまったのかとルイスが不安になっていると、女性はおそるおそるといったように尋ねてきた。
「あなた、ウルフを砕いていたけど……何か特別なことをしてるの?」
「いや、特には。力をぐっと込めたら、砕けちゃうんです」
何か特別なことをしていたのなら、それを止めるに決まっている。特に何もしていないのに、魔物の体が砕けるから困っているのだ。
(あれも砕けちゃったから、意味ないなぁ~……)
もし形として残っていたのなら、ダグラスに見せに行っていたのだが、あれでは、そもそも買い取ってくれるかも怪しい。
ウルフの状態は、周囲に血が飛び散っており、空から攻撃をしたもの以外は、顔の正面から攻撃を喰らわせたため、頭部もろくな形で残っていない。胴体は言わずもがなだ。
(せいぜい、これが討伐の証拠になるくらいかなぁ)
ルイスは、ウルフの亡骸のほうに歩いていき、落下しながら撃退した一体の頭部を持ち上げる。
「やっぱり、毛が赤いんだよね……」
この赤さは、血で染まったわけではない。上から見ただけではわからなかったが、この体毛自体が赤いみたいだ。
ルイスは、じっとその頭部を見る。すると、頭にもやがかかるような気分になってきた。
(なんか……ボーッとしてくる……)
頭だけでなく、視界にも、もやがかかるような感覚に襲われる。
その時、奥底から、何かが沸き上がってくる。
のどが渇いた
ルイスは、そんな欲望に駆り立てられる。
(血……血か……)
ルイスは、無意識のうちに手を伸ばし、何かをすくった。
それを、自分のほうに持ってこようーーとしたところで、誰かに腕を掴まれる。
「ちょっと!何してるの!」
「えっ!?あっ……」
大きな声で呼びかけられ、ルイスの意識は覚醒する。
その時、何かが服の上に垂れた気がした。それは、あの赤い毛皮のウルフの血だった。ルイスは、はっとなり自分の手のひらを見ると、そこには先ほどきれいにしてもらったはずなのに、べっとりと赤いものがついている。
「あの……僕は、何をしてたんですか……?」
「ウルフの頭を掴んだと思ったら、急に血をすくって、口に近づけたのよ。覚えてないの?」
「……いえ。あんまり……」
何かをすくった感覚はあった。そして、確かに自分は、それを近づけた。
あの時、のどが渇いたような気がした。そして、血を、口に近づけた。
(僕は、血を飲もうとした……?)
いくらのどが渇いたとはいえ、血を飲もうなんて思ったことはない。何も持ってない状態でのどが渇いたら、いつもは水を生み出して、それを飲んでいた。
それに、水はほんの三十分ほど前に飲んでおいたばかりだ。
「……とにかく、ギルドに戻りましょう。魔物についても報告しなくてはならないし。あなた、ルイスくんでしょう?いつもダグラスさんと話しているから覚えているの。ダグラスさんに相談してみたら?」
「……はい。そうですね」
ルイスは、何がなんだかわからないまま、街へと戻った。
一分ほどで、ルイスは目的地に着く。ちょうど思いきり跳び跳ねたところで、ルイスは宙から状況を確認する。
そこには、数匹の魔物と、一人の人間がいた。
(あれは……ウルフ?でも、毛が赤いような……?)
ルイスも、今まで魔物を討伐してきたので、ウルフは見たことがある。だが、あんな赤い毛のものは見たことがなかった。
(とにかく、なんとかしないと)
いろいろ考えるよりも、人助けを優先しなければと、ルイスはそのまま落ちていき、ウルフに拳を喰らわせる。
落下の勢いと、ルイスの抜群の破壊力を誇る拳で、ウルフは原型を留めない形で地面にめり込んだ。ルイスの拳の衝撃で、周囲の土が吹き飛んでおり、軽く落とし穴のようになっていた。
ルイスが穴のなかに着地した時には、その体は、ウルフからの返り血を浴びていた。
「あっ、大丈夫ですか?」
ルイスは、視界に入った人間に声をかける。上から見ただけではわからなかったが、女性のようだった。
女性は、カタカタと震えている。
ルイスは、ウルフが怖いのかもしれないと、先にウルフを片付けることを優先したが、実際はーー
(な、なんなのあの子!急に空から降ってきて、ウルフを潰しちゃうなんて……!)
ルイスに怯えていただけだ。
だが、そんなことにまったく気づいていないルイスは、地面を蹴り、ウルフとの距離を詰める。
そして、間合いに入ったウルフに、正面から拳を喰らわせる。いつものように加減を考えないパンチは、ウルフ程度の体は簡単に砕け散る。
一匹を粉々にする度に、ルイスはウルフの血を浴びていく。
すべてを討伐した頃には、ルイスは全身が血まみれになっていた。
「うう~……気持ち悪いなぁ」
この血をどうしようかと思っていると、「あ、あの」という声が聞こえてくる。
それは、先ほどまでウルフに襲われていた女性だった。
「私が……落とそうか?」
「いいんですか?僕、魔法の手加減が苦手で……ありがとうございます」
「い、いえ……では、やるわね」
女性は、ぶつぶつと呪文を唱える。すると、ルイスの周りを水が覆い始める。完全に包まれると、ルイスの服や肌などについた血が、ルイスを包む水に浮かんでいく。
血が浮かんでいく度、水は赤く染まっていく。
ルイスに付着した血がなくなったとき、水は弾けて消えた。
「これで、表面はきれいになったはずよ」
「わぁ!ありがとうございます!魔法の使い方が上手なんですね!」
「そ、そう……ありがと」
ルイスはニコッと笑うが、女性はひきつった笑いしか向けてこない。
何か、嫌なことでも言ってしまったのかとルイスが不安になっていると、女性はおそるおそるといったように尋ねてきた。
「あなた、ウルフを砕いていたけど……何か特別なことをしてるの?」
「いや、特には。力をぐっと込めたら、砕けちゃうんです」
何か特別なことをしていたのなら、それを止めるに決まっている。特に何もしていないのに、魔物の体が砕けるから困っているのだ。
(あれも砕けちゃったから、意味ないなぁ~……)
もし形として残っていたのなら、ダグラスに見せに行っていたのだが、あれでは、そもそも買い取ってくれるかも怪しい。
ウルフの状態は、周囲に血が飛び散っており、空から攻撃をしたもの以外は、顔の正面から攻撃を喰らわせたため、頭部もろくな形で残っていない。胴体は言わずもがなだ。
(せいぜい、これが討伐の証拠になるくらいかなぁ)
ルイスは、ウルフの亡骸のほうに歩いていき、落下しながら撃退した一体の頭部を持ち上げる。
「やっぱり、毛が赤いんだよね……」
この赤さは、血で染まったわけではない。上から見ただけではわからなかったが、この体毛自体が赤いみたいだ。
ルイスは、じっとその頭部を見る。すると、頭にもやがかかるような気分になってきた。
(なんか……ボーッとしてくる……)
頭だけでなく、視界にも、もやがかかるような感覚に襲われる。
その時、奥底から、何かが沸き上がってくる。
のどが渇いた
ルイスは、そんな欲望に駆り立てられる。
(血……血か……)
ルイスは、無意識のうちに手を伸ばし、何かをすくった。
それを、自分のほうに持ってこようーーとしたところで、誰かに腕を掴まれる。
「ちょっと!何してるの!」
「えっ!?あっ……」
大きな声で呼びかけられ、ルイスの意識は覚醒する。
その時、何かが服の上に垂れた気がした。それは、あの赤い毛皮のウルフの血だった。ルイスは、はっとなり自分の手のひらを見ると、そこには先ほどきれいにしてもらったはずなのに、べっとりと赤いものがついている。
「あの……僕は、何をしてたんですか……?」
「ウルフの頭を掴んだと思ったら、急に血をすくって、口に近づけたのよ。覚えてないの?」
「……いえ。あんまり……」
何かをすくった感覚はあった。そして、確かに自分は、それを近づけた。
あの時、のどが渇いたような気がした。そして、血を、口に近づけた。
(僕は、血を飲もうとした……?)
いくらのどが渇いたとはいえ、血を飲もうなんて思ったことはない。何も持ってない状態でのどが渇いたら、いつもは水を生み出して、それを飲んでいた。
それに、水はほんの三十分ほど前に飲んでおいたばかりだ。
「……とにかく、ギルドに戻りましょう。魔物についても報告しなくてはならないし。あなた、ルイスくんでしょう?いつもダグラスさんと話しているから覚えているの。ダグラスさんに相談してみたら?」
「……はい。そうですね」
ルイスは、何がなんだかわからないまま、街へと戻った。
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