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三十九、
しおりを挟むやがて長いような短い時間の後に、背後で寝息が聞こえ出して。
斎藤は一抹の寂寥と裏返しの安息感をおぼえて、ひとつ息をついた。
この男とあと幾度、こんなたわいもない平穏な夜を過ごせるのか。
ふとそう思えば。先ほどまでの、大阪行きによる別寝への安堵は早くも押しやられ、一日でも無駄にはしたくない、そんないたたまれない焦燥が心を覆い出した。
同時に、沖田に全てを告げられた、まだ数刻前のあのひとときが思い起こされ、再び胸を抉られるような痛みが、斎藤の芯を疾り引き裂いてゆき。
それは、とめどなく。
斎藤は。刹那に思考を止めて、それへ抗うしかなかった。
睡眠を慾している体と、うらはらに、
目は、吐き気がするほど冴えたままで。
(眠らせてくれ・・)
何に対してともなく、祈るように胸内に呟く。
こんなままであるなら、いっそ時間潰しに沖田に寝物語とやらを聞かせてもらっていたほうがよかったかもしれないと。斎藤は途方に暮れながら溜息をついた。
夜は。まだ長そうだった。
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