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七歩目.会いたいです。
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それから少し経ち、瀬良は参加したゲーム大会で見事優勝を果たした。
その翌日には瀬良のマンションでお祝いをした。
瀬良が食べたいという物を全て作り、ケーキも焼いた。
瀬良はすごく喜んでくれて、その時の嬉しそうな顔が今でも思い出せる。
翌週には学校の掲示板でも大会の様子が大きな記事となって貼り出されていた。
俺はというものの、相変わらず平日は毎日のように瀬良を視聴覚室に迎えに行ってマンションまで送り届け、土日のどちらかにはご飯を作りに行っている。
もちろん泊まることも何度もあった。
でも、結局“学校の先輩と後輩”という関係からは進めずにいる。
できたのは、眠っている瀬良の額にこっそりキスをするくらい。
意気地なしな上に、寝ている相手にそんなことをするなんて自分でもバカだと思う。
記事の中で嬉しそうにトロフィーを掲げる瀬良が眩しい。俺は心の中でため息を吐いた。
「あっ高槻、おはよ」
声をかけてきたのは同じクラスで、瀬良と同じeスポーツ部の緒方だ。
なんやかんや仲良くなって、一緒に昼ご飯を食べたり、こうやって話したりするようになった。
「瀬良先輩すごいよねぇ。これ、去年も先輩が優勝してるから、連覇なんだよ」
「うん、すごいよな」
関係は進んでいなくても、瀬良と過ごした時間は増えた。
だから、瀬良がどれだけ努力をしているか、一番知っているのはきっと俺だ。
横で同じように瀬良の記事を見ている生徒も、同じように『すごいなぁ』とか言っている。
そうだろ、俺の瀬良さんはすごいんだ、となぜか誇らしげな気持で心の中で頷く。
なのに、続いた言葉が俺を一気に現実に引き戻した。
「でも、結局、所詮はゲームだろ」
「だよなぁ。しかもこれ、賞金出るんだろ。こっちは汗水たらして必死に練習してるっつーのに、遊んでるだけで金もらえるとか最高じゃん」
「……はぁ?」
俺はこらえきれず横にいたやつらを睨みつけると、それに気が付いたそいつらは、少し焦りながら後ずさりをしている。
緒方は俺の袖を引きながら、やめなよ、と言っているが、俺はそれを無視して、わざとらしく作った笑顔でそいつらに話しかけた。
「ねぇ、あんたら何部?」
「えっ、サッカー部だけど……」
「へぇ。レギュラー?」
「いやいや、部員多いから一年でレギュラーとれる奴なんていねーよ」
この学校は運動部が軒並み全国レベルの強豪校だ。
でも、確かサッカー部は近年、全国優勝どころか、地方予選突破もできていないはずだ。
俺は今まで作っていた笑顔を消し、スッと真顔になってそいつらを見下ろした。
「へぇ。全国行くどころか、レギュラーですらないお前らはいつも何やってんの。あっ玉遊び?」
「はぁ?! なんだと!!」
そいつらの一人が俺の胸ぐらにつかみ掛かってきた。俺はその腕を全力で握る。
「あの人がどれだけ努力しているか、何も知らないくせに、勝手なこと言ってんじゃねぇよ」
俺に捕まれた腕が痛んだのか、その手の持ち主は少しうめき声をあげた。
「高槻、やめろって!」
緒方の制止を聞いて手を離すその前に、誰かが呼んだのかその場に先生が駆けつけ、俺はそいつらと一緒に見事に指導室行きとなった。
指導室でのお説教を食らった後、教室に戻ると緒方が真っ先に俺のところに駆けつけてきた。
「高槻、大丈夫だった?」
「大丈夫、大丈夫。部活一週間停止になっただけ」
「えっだめじゃん!」
「いや、こんなもんで済んでよかったよ」
俺の胸ぐらをつかんだやつも同じ処分だ。
手を出したのは向こうだけど、挑発したのは俺だからって“喧嘩両成敗”ということになった。
「それよりも、ごめん。下手したらeスポーツ部のイメージ悪くなるようなことして…」
「そんなことないよ! あぁいうことはよく言われるから慣れてはいるんだけど……正直さ、スカッとした」
緒方は照れたようにニカッと笑った。俺はその顔を見て、少しほっとした。
「でも高槻、普段静かだし、温厚そうだから、ちょっとびっくりした。怒ると怖いんだな」
「それ、瀬良さんにも同じようなこと言われたことある」
「ははっ、そうなんだ。ってか瀬良先輩と仲良くなったんだね」
俺は緒方の質問にドキッとした。
「あー家の方向が一緒でさ。部活帰りにたまに会うんだよ」
なんとなく、これまでのことを隠してしまった。だって、瀬良と俺だけの秘密にしたい。
緒方は俺の答えに納得したのか、深くは追及してこなかった。
「あっ緒方。今日のこと、瀬良さんには言わないでくれる?」
もし今日のことを瀬良が気にして、距離を置かれたりしたらすごく困る。
「えっいいけど……」
「そういうことで、よろしく」
そう言って、俺は席に戻った。
授業の後、いつもは練習着に着替えるところを今日は制服のまま体育館へ向かい、部長である相原に、『同級生とちょっとした言い合いになった』ということと謝罪だけ伝える。
相原もどうやら俺が部活停止になったことを顧問から話を聞いていたようで、少しだけ小言を言われて、すぐに解放された。
あれ以来、相原とは微妙に距離がある。でも、多分そのくらいがちょうどいい。
体育館から出ると、今度は瀬良へ『今週は用事があって一緒に帰れません。また、週末にご飯作りに行きますね』とメッセージを入れた。
すぐに『既読』はついたけど、返事はなかった。
そのまま自転車にまたがり家に帰ろうかと思った。でも、やっぱりバレーができないのは寂しいな。
しかも瀬良にも会えない。
もやもやと考えているうちに自宅を通り過ぎ、俺は思いが向くままに自転車を走らせた。
気が付けば、出身の中学についていた。
三年間過ごした後者も体育館も、改めて見ると高校よりもずっと小さい。
体育館の中を覗くと後輩たちがボールを打つ音が聞こえてきた。
「あれ? 高槻先輩じゃないですか!」
一人の後輩が俺に気が付き、駆け寄ってきた。一つ下の後輩で、チームとして一緒に戦った仲間だ。
「久しぶり~。監督いる?」
「あっ奥にいますよ!」
俺は後輩に連れられて監督に挨拶に行き、ことの顛末を話した。
「ケンカして部活停止って……高槻は昔から怒ると口が悪くなるからなぁ」
「あはは。それで、すみませんが一週間だけ、ここで練習させてもらえませんか」
「いいよ。鳳沢に推薦で行ったやつと一緒にできるなんて、後輩も喜ぶだろ」
「ありがとうございます!」
早速俺は練習着に着替え、後輩たちの練習に混ざる。
久々の“先輩”としての練習は楽しくて、瀬良に会えない寂しさを少しだけ埋めてくれた。
中学の練習は、当たり前ではあるが高校に比べると終わるのがグッと早い。
親からの少しの説教の後、自分の部屋に戻り、そこでようやく瀬良から返事が来ていることに気が付いた。
『わかった』
その一言だけ、俺が送った1時間くらい後に届いていた。
怒っているのか、それとも何も感じていないのか。文面からは少しも読み取れない。
でも正直、『なんで?』とくらいは聞いてくれるかなと思っていた。
俺はスマホをベッドに放り投げ、一緒に自分もベッドに倒れ込んだ。
今週は週末まで瀬良に会えない。
ここのところ毎日会ってたから、すごく寂しいけど、本来はこの距離が正しいのかもしれない。
だって俺と瀬良は、ただの“先輩と後輩”なんだから。
結局それ以上のメッセージを送る根性もなく、瀬良と会えない一日目は終わった。
瀬良と会えない二日目。
今日も同じように放課後に中学で練習をしてから家に帰ると、弟の敦也がリビングでゲームをしていた。
瀬良が全国優勝したのと同じゲーム。俺も、瀬良の家で何度かやった。
「俺も入れて」
「いいけど、兄ちゃんできるの?」
「できるよ、多分」
“多分”といったものの、案外あっさり勝ててしまった。
瀬良とやったときは一度も勝てなかったのに。
「うわーーまた負けた!! 兄ちゃんなんでそんなにうまいんだよ」
「そりゃあ全国一位直伝だからな」
俺の中に瀬良と過ごした時間がちゃんと蓄積されているようで、嬉しい。
何やらうるさい敦也を置いて部屋に戻った。
ベッドに転がり、スマホを見ながら思案する。
今まで、毎日会っていたから、メッセージのやり取りと言えば事務的なものしかしたことがない。
少しなら、送ってみてもいいだろうか……。メッセージアプリを開き、打ち込んでみる。
『こんばんは。………』
想像以上に何も多い浮かばない。自分の根性のなさと経験値の低さにため息しか出ない。
そもそも、この時間はきっとまだ視聴覚室にいるだろうし、送っても見ないか。
俺はスマホをベッドにポトリと落とし、目をつぶった。
そのまま瀬良と会えない二日目は終わった。
三日目ともなると、結構本当に瀬良不足になってくる。
顔が見たい、声が聞きたい。そんなモヤモヤをボールにぶつける。
「先輩、顔が怖いっすよ……」
後輩に指摘されるまで、どうやら俺はひどい顔でボールを打っていたらしい。
「悪い。モヤモヤが溜まってて」
「なんすかそれ。欲求不満っすか」
「あぁ……それだわ」
そう、完全な欲求不満。
これまで毎日瀬良の顔を見るだけで多少は発散で来ていた欲求が、“会えない”ということだけで、普段の倍以上の速さで溜まっていっている気がする。
それこそ、次に会った時に我慢できないかもしれない。
思わずため息をつく。
「欲求不満はスポーツで発散! って教科書に書いてありましたよ。だから三対三やりましょう!」
後輩に気を使わせてしまって申し訳ない。お礼に手加減なしで全力で相手をしてやろう。
「高槻先輩、マジ半端ない……」
「あははは! ありがとな。めっちゃ発散できた」
容赦なく後輩をコテンパンにしたことで多少すっきりした俺は、嫌な先輩だなぁと自分でも思う。
でも楽しかった。
少し上向いた気持ちで片づけをしていると、マネージャーの女の子に呼ばれた。
「高槻先輩! さっきお客さんが来たので上に上がって待ってもらいましたよ」
そう言って彼女が指さした体育館の上のギャラリー見上げる。
なぜだかか、そこには見覚えのあるピンク色の髪が見えた。
俺の思考が一瞬にしてフリーズする。
ついに幻覚を見るようになったのだろうか。
でも、その幻覚は階段を降りて来て俺の前に来た。
「おーい、柊哉。なんで固まってんの」
目の前で手を振り、俺を見上げる顔も、混乱する頭で必死に現実を見つめようとするが、どうしても頭が付いていかない。
「せ、瀬良さん?? えっ本物???」
「本物って、偽物いるのかよ」
俺の言葉に笑う瀬良の顔を見て、それが幻覚ではないことをようやく頭が理解できた。
それでもなぜここにいるのかは理解できていない。
でも、瀬良が目の前にいる。ずっと会いたかった人が目の前にいるんだ。
顔が緩んでいくのが自分でもわかる。
浮かれついでについ瀬良に手が伸びそうになったところで、はっとここが中学の体育館だったことを思いだした。
「あっちょっと待っててください。すぐに片付けして着替えてきます。」
急いで戻ると、瀬良は体育館の外でスマホを触りながら立っていた。
「すみません、お待たせしました」
「おーいいよ。急に来たの俺だし」
俺は自転車を押し、瀬良はその横を歩く。なかなか出てこない言葉を何とかひねり出した。
「あの、瀬良さんは何でここに……」
「あー、体育館の外でバレー部のやつらが柊哉の話してるの聞こえちゃってさ。んで、いろいろ緒方に聞いた」
緒方め、話すなって言ったのに……。どこまで聞いたんだろう。
なんとなく気まずくなって、俺は下を向いてしまう。
「俺のために怒ってくれたんだってな。ありがとな」
全部かよ。今、絶対顔が真っ赤になってると思う。顔があげられれない。
「いや……えっと……お、俺の自己満足なんで、気にしないでください」
「それでも、嬉しかったんだよ。柊哉はいつもそう。俺が欲しかった言葉をくれる」
そう言って笑う瀬良の顔に心臓の音がうるさい。
日の長い夏の夕暮れがあたりを真っ赤に染めているのに、きっと俺の顔はそれ以上に赤くなってる。
好きだ。瀬良のことが好きだ。もうどうしようもなく。
でも、どうか、今はまだ気付かないで。
もう少しだけ、その顔が見ていたいんだ。
家まで瀬良を送り届け、瀬良に会えないはずだった三日目は終わった。
翌日も瀬良が中学の体育館に来ていたことを練習が終わってから気が付いた。
「お疲れ~」
「おっお疲れ様です。あの、瀬良さんは部活いいんですか?」
「大丈夫。大会終わったばっかりだし、ちょっと休憩」
「でも……、俺の練習みてても楽しくないと思うんですが……」
「えっ楽しいよ。ずっと見てみたいと思ってたんだけど、高校だと入りづらいからさ」
あぁ、相原がいるから……。胸にチクりと棘が刺さったような感覚。そんなことでちょっと拗ねてしまう自分が悲しい。
「推薦で入ったうえに一年でレギュラーなんだから、うまいんだろうなぁとは思ってたけど、想像以上にかっこよくてびっくりした」
かっこいい……! たった一言で拗ねた気持ちが吹っ飛んでいく。俺も大概調子がいい。
「あのさ…」
「あの!」
言葉が同時に出て、二人とも途中で止まってしまった。
俺は先に言ってほしいと瀬良に促したが、譲らなかったので、俺が先に話すことにした。
「今日って、この後用事あります?」
「いや、家帰るだけだけど。なんかあった?」
「弟に瀬良さんの話したら、会いたい! って言われちゃって。時間あったら俺の家寄ってきませんか?」
「えっいいの?」
「はい! よかったらご飯も食べてってください。今日は唐揚げです」
この間、ゲームをした時にうっかり瀬良のことを話したせいで、何度も家に連れて来て、と弟の敦也にせがまれていた。
これも本当。
でも、実は少しでも長く一緒にいたい。これが本心。
「瀬良さんが言いかけたことは何でしたか?」
「あっあぁ。今週は土日のどっちくるんだっけ?」
「今週は土曜日に行きます。午後は自主練なんで、夕方には行けると思います」
「そっか。じゃー泊まってくよな?」
「はい、ありがとうございます」
会話だけ聞いたらまるで恋人同士のようだなと自分でも思う。
どうしても顔がにやけてしまう。
いい加減俺の気持ちなんてバレバレな気もするけど……チラリと瀬良の方を横目で見ると、俺を見上げていた瀬良と目が合った。
ドクンと心臓が跳ねる。
この人はなんで俺を見ていたんだろう。
そのあとは記憶に残らないような雑談をしているうちに家についた。
「お、お邪魔します」
瀬良の声はいつもより弱弱しくて、ちょっとおどおどしている。
もしかして緊張してるのかな。俺はつい笑ってしまった。
「なんで笑うんだよ」
「だって、すごいキョドってるから」
「う、うるさい。初めてくる場所は緊張するだろうが」
場所見知りする猫のように、ビクビクする瀬良がかわいくてかわいくて、俺はまた笑ってしまう。
「兄ちゃん!!!!」
俺たちが靴を脱いで玄関を上がったところで、勢いよく現れた敦也に、瀬良はまた一段とビクッとして、なぜか俺の後ろに隠れてしまった。
かわいすぎかよ。
俺がまた笑っていると、瀬良が小さい声で笑いすぎだって、赤くなった顔で俺の服の裾を引きながら言うから、思わず髪に手が伸びる。
その手が瀬良のピンク色の髪を一撫ですると、瀬良は少し驚いたような顔をして俺を見上げていた。
「瀬良さん、これ弟の敦也。敦也、ちゃんと挨拶しな」
「こんばんは! 」
「あっこんばんは」
そんなやり取りをしていると、奥から母さんの声が聞こえてきた。
「ちょっと、いつまで玄関にいるの~。上がってもらいなさいよ」
「うん、瀬良さんどうぞ」
瀬良は相変わらず少しおどおどしながら母さんと妹に挨拶をして、早速敦也とリビングでゲームを始めた。
瀬良が俺の家にいるというのはすごく不思議な感覚だ。
ゲームを始めたら瀬良の緊張も解けたようで、すぐに敦也と盛り上がり始めたから、二人にしても大丈夫そうなところを見計らって俺は夕飯の手伝いをしにキッチンに入った。
「いやー全然レベルが違うって言うか、ほんとにスゲー!」
夕飯を囲みながら敦也は興奮気味に瀬良のことを話し始めた。
瀬良は少し恥ずかしそうな顔をしながら、ニコニコと話を聞いている。
大変仲良くなったようで。もやっとなんかしていない。
「もう本当にうるさくてごめんね。瀬良くん、お口にはあうかしら?」
「あっはい。おいしいです。」
夕飯に出した唐揚げは、俺が昨日から仕込んでおいたからしっかりと味もしみているし、食感もいい。
我ながらまた上出来。
「あの、急に来ちゃったんで、量とか大丈夫ですか」
「あら、ちょっと柊哉、もともと呼ぶつもりだったんじゃないの? 昨日からせっせと唐揚げ準備してたじゃない」
そういうのはばらさないでほしい。
瀬良には連絡を入れていなかった。
でも、もし今日も来てくれたら家に誘おうと思って準備はしていおいた。
「そ、そういうわけじゃなくて…」
なんとなくしどろもどろになる俺を、不思議そうに母さんも瀬良も見ている。
今の俺、かっこ悪い気がする。まぁいいじゃん、と話をごまかすしかなかった。
「瀬良さん! 明日も来て!」
すっかり瀬良になついた敦也は、しっぽを全力で振っている犬みたいに見える。
「柊哉は明日も中学行くんだよね? ならまたお邪魔してもいい?」
瀬良もそんな敦也がかわいいのか、優しい眼で見ている気がする。
やっぱりもやっとする。弟に嫉妬するなんてバカみたいだ。
「はい。よかったら明日も来てください。敦也、俺、瀬良さん送ってくるから」
俺は自転車の後ろに瀬良を乗せすっかり暗くなった道を進んでいく。
暗くなってもまだ暑さは残っていたけど、時折吹く風が心地よかった。
その翌日には瀬良のマンションでお祝いをした。
瀬良が食べたいという物を全て作り、ケーキも焼いた。
瀬良はすごく喜んでくれて、その時の嬉しそうな顔が今でも思い出せる。
翌週には学校の掲示板でも大会の様子が大きな記事となって貼り出されていた。
俺はというものの、相変わらず平日は毎日のように瀬良を視聴覚室に迎えに行ってマンションまで送り届け、土日のどちらかにはご飯を作りに行っている。
もちろん泊まることも何度もあった。
でも、結局“学校の先輩と後輩”という関係からは進めずにいる。
できたのは、眠っている瀬良の額にこっそりキスをするくらい。
意気地なしな上に、寝ている相手にそんなことをするなんて自分でもバカだと思う。
記事の中で嬉しそうにトロフィーを掲げる瀬良が眩しい。俺は心の中でため息を吐いた。
「あっ高槻、おはよ」
声をかけてきたのは同じクラスで、瀬良と同じeスポーツ部の緒方だ。
なんやかんや仲良くなって、一緒に昼ご飯を食べたり、こうやって話したりするようになった。
「瀬良先輩すごいよねぇ。これ、去年も先輩が優勝してるから、連覇なんだよ」
「うん、すごいよな」
関係は進んでいなくても、瀬良と過ごした時間は増えた。
だから、瀬良がどれだけ努力をしているか、一番知っているのはきっと俺だ。
横で同じように瀬良の記事を見ている生徒も、同じように『すごいなぁ』とか言っている。
そうだろ、俺の瀬良さんはすごいんだ、となぜか誇らしげな気持で心の中で頷く。
なのに、続いた言葉が俺を一気に現実に引き戻した。
「でも、結局、所詮はゲームだろ」
「だよなぁ。しかもこれ、賞金出るんだろ。こっちは汗水たらして必死に練習してるっつーのに、遊んでるだけで金もらえるとか最高じゃん」
「……はぁ?」
俺はこらえきれず横にいたやつらを睨みつけると、それに気が付いたそいつらは、少し焦りながら後ずさりをしている。
緒方は俺の袖を引きながら、やめなよ、と言っているが、俺はそれを無視して、わざとらしく作った笑顔でそいつらに話しかけた。
「ねぇ、あんたら何部?」
「えっ、サッカー部だけど……」
「へぇ。レギュラー?」
「いやいや、部員多いから一年でレギュラーとれる奴なんていねーよ」
この学校は運動部が軒並み全国レベルの強豪校だ。
でも、確かサッカー部は近年、全国優勝どころか、地方予選突破もできていないはずだ。
俺は今まで作っていた笑顔を消し、スッと真顔になってそいつらを見下ろした。
「へぇ。全国行くどころか、レギュラーですらないお前らはいつも何やってんの。あっ玉遊び?」
「はぁ?! なんだと!!」
そいつらの一人が俺の胸ぐらにつかみ掛かってきた。俺はその腕を全力で握る。
「あの人がどれだけ努力しているか、何も知らないくせに、勝手なこと言ってんじゃねぇよ」
俺に捕まれた腕が痛んだのか、その手の持ち主は少しうめき声をあげた。
「高槻、やめろって!」
緒方の制止を聞いて手を離すその前に、誰かが呼んだのかその場に先生が駆けつけ、俺はそいつらと一緒に見事に指導室行きとなった。
指導室でのお説教を食らった後、教室に戻ると緒方が真っ先に俺のところに駆けつけてきた。
「高槻、大丈夫だった?」
「大丈夫、大丈夫。部活一週間停止になっただけ」
「えっだめじゃん!」
「いや、こんなもんで済んでよかったよ」
俺の胸ぐらをつかんだやつも同じ処分だ。
手を出したのは向こうだけど、挑発したのは俺だからって“喧嘩両成敗”ということになった。
「それよりも、ごめん。下手したらeスポーツ部のイメージ悪くなるようなことして…」
「そんなことないよ! あぁいうことはよく言われるから慣れてはいるんだけど……正直さ、スカッとした」
緒方は照れたようにニカッと笑った。俺はその顔を見て、少しほっとした。
「でも高槻、普段静かだし、温厚そうだから、ちょっとびっくりした。怒ると怖いんだな」
「それ、瀬良さんにも同じようなこと言われたことある」
「ははっ、そうなんだ。ってか瀬良先輩と仲良くなったんだね」
俺は緒方の質問にドキッとした。
「あー家の方向が一緒でさ。部活帰りにたまに会うんだよ」
なんとなく、これまでのことを隠してしまった。だって、瀬良と俺だけの秘密にしたい。
緒方は俺の答えに納得したのか、深くは追及してこなかった。
「あっ緒方。今日のこと、瀬良さんには言わないでくれる?」
もし今日のことを瀬良が気にして、距離を置かれたりしたらすごく困る。
「えっいいけど……」
「そういうことで、よろしく」
そう言って、俺は席に戻った。
授業の後、いつもは練習着に着替えるところを今日は制服のまま体育館へ向かい、部長である相原に、『同級生とちょっとした言い合いになった』ということと謝罪だけ伝える。
相原もどうやら俺が部活停止になったことを顧問から話を聞いていたようで、少しだけ小言を言われて、すぐに解放された。
あれ以来、相原とは微妙に距離がある。でも、多分そのくらいがちょうどいい。
体育館から出ると、今度は瀬良へ『今週は用事があって一緒に帰れません。また、週末にご飯作りに行きますね』とメッセージを入れた。
すぐに『既読』はついたけど、返事はなかった。
そのまま自転車にまたがり家に帰ろうかと思った。でも、やっぱりバレーができないのは寂しいな。
しかも瀬良にも会えない。
もやもやと考えているうちに自宅を通り過ぎ、俺は思いが向くままに自転車を走らせた。
気が付けば、出身の中学についていた。
三年間過ごした後者も体育館も、改めて見ると高校よりもずっと小さい。
体育館の中を覗くと後輩たちがボールを打つ音が聞こえてきた。
「あれ? 高槻先輩じゃないですか!」
一人の後輩が俺に気が付き、駆け寄ってきた。一つ下の後輩で、チームとして一緒に戦った仲間だ。
「久しぶり~。監督いる?」
「あっ奥にいますよ!」
俺は後輩に連れられて監督に挨拶に行き、ことの顛末を話した。
「ケンカして部活停止って……高槻は昔から怒ると口が悪くなるからなぁ」
「あはは。それで、すみませんが一週間だけ、ここで練習させてもらえませんか」
「いいよ。鳳沢に推薦で行ったやつと一緒にできるなんて、後輩も喜ぶだろ」
「ありがとうございます!」
早速俺は練習着に着替え、後輩たちの練習に混ざる。
久々の“先輩”としての練習は楽しくて、瀬良に会えない寂しさを少しだけ埋めてくれた。
中学の練習は、当たり前ではあるが高校に比べると終わるのがグッと早い。
親からの少しの説教の後、自分の部屋に戻り、そこでようやく瀬良から返事が来ていることに気が付いた。
『わかった』
その一言だけ、俺が送った1時間くらい後に届いていた。
怒っているのか、それとも何も感じていないのか。文面からは少しも読み取れない。
でも正直、『なんで?』とくらいは聞いてくれるかなと思っていた。
俺はスマホをベッドに放り投げ、一緒に自分もベッドに倒れ込んだ。
今週は週末まで瀬良に会えない。
ここのところ毎日会ってたから、すごく寂しいけど、本来はこの距離が正しいのかもしれない。
だって俺と瀬良は、ただの“先輩と後輩”なんだから。
結局それ以上のメッセージを送る根性もなく、瀬良と会えない一日目は終わった。
瀬良と会えない二日目。
今日も同じように放課後に中学で練習をしてから家に帰ると、弟の敦也がリビングでゲームをしていた。
瀬良が全国優勝したのと同じゲーム。俺も、瀬良の家で何度かやった。
「俺も入れて」
「いいけど、兄ちゃんできるの?」
「できるよ、多分」
“多分”といったものの、案外あっさり勝ててしまった。
瀬良とやったときは一度も勝てなかったのに。
「うわーーまた負けた!! 兄ちゃんなんでそんなにうまいんだよ」
「そりゃあ全国一位直伝だからな」
俺の中に瀬良と過ごした時間がちゃんと蓄積されているようで、嬉しい。
何やらうるさい敦也を置いて部屋に戻った。
ベッドに転がり、スマホを見ながら思案する。
今まで、毎日会っていたから、メッセージのやり取りと言えば事務的なものしかしたことがない。
少しなら、送ってみてもいいだろうか……。メッセージアプリを開き、打ち込んでみる。
『こんばんは。………』
想像以上に何も多い浮かばない。自分の根性のなさと経験値の低さにため息しか出ない。
そもそも、この時間はきっとまだ視聴覚室にいるだろうし、送っても見ないか。
俺はスマホをベッドにポトリと落とし、目をつぶった。
そのまま瀬良と会えない二日目は終わった。
三日目ともなると、結構本当に瀬良不足になってくる。
顔が見たい、声が聞きたい。そんなモヤモヤをボールにぶつける。
「先輩、顔が怖いっすよ……」
後輩に指摘されるまで、どうやら俺はひどい顔でボールを打っていたらしい。
「悪い。モヤモヤが溜まってて」
「なんすかそれ。欲求不満っすか」
「あぁ……それだわ」
そう、完全な欲求不満。
これまで毎日瀬良の顔を見るだけで多少は発散で来ていた欲求が、“会えない”ということだけで、普段の倍以上の速さで溜まっていっている気がする。
それこそ、次に会った時に我慢できないかもしれない。
思わずため息をつく。
「欲求不満はスポーツで発散! って教科書に書いてありましたよ。だから三対三やりましょう!」
後輩に気を使わせてしまって申し訳ない。お礼に手加減なしで全力で相手をしてやろう。
「高槻先輩、マジ半端ない……」
「あははは! ありがとな。めっちゃ発散できた」
容赦なく後輩をコテンパンにしたことで多少すっきりした俺は、嫌な先輩だなぁと自分でも思う。
でも楽しかった。
少し上向いた気持ちで片づけをしていると、マネージャーの女の子に呼ばれた。
「高槻先輩! さっきお客さんが来たので上に上がって待ってもらいましたよ」
そう言って彼女が指さした体育館の上のギャラリー見上げる。
なぜだかか、そこには見覚えのあるピンク色の髪が見えた。
俺の思考が一瞬にしてフリーズする。
ついに幻覚を見るようになったのだろうか。
でも、その幻覚は階段を降りて来て俺の前に来た。
「おーい、柊哉。なんで固まってんの」
目の前で手を振り、俺を見上げる顔も、混乱する頭で必死に現実を見つめようとするが、どうしても頭が付いていかない。
「せ、瀬良さん?? えっ本物???」
「本物って、偽物いるのかよ」
俺の言葉に笑う瀬良の顔を見て、それが幻覚ではないことをようやく頭が理解できた。
それでもなぜここにいるのかは理解できていない。
でも、瀬良が目の前にいる。ずっと会いたかった人が目の前にいるんだ。
顔が緩んでいくのが自分でもわかる。
浮かれついでについ瀬良に手が伸びそうになったところで、はっとここが中学の体育館だったことを思いだした。
「あっちょっと待っててください。すぐに片付けして着替えてきます。」
急いで戻ると、瀬良は体育館の外でスマホを触りながら立っていた。
「すみません、お待たせしました」
「おーいいよ。急に来たの俺だし」
俺は自転車を押し、瀬良はその横を歩く。なかなか出てこない言葉を何とかひねり出した。
「あの、瀬良さんは何でここに……」
「あー、体育館の外でバレー部のやつらが柊哉の話してるの聞こえちゃってさ。んで、いろいろ緒方に聞いた」
緒方め、話すなって言ったのに……。どこまで聞いたんだろう。
なんとなく気まずくなって、俺は下を向いてしまう。
「俺のために怒ってくれたんだってな。ありがとな」
全部かよ。今、絶対顔が真っ赤になってると思う。顔があげられれない。
「いや……えっと……お、俺の自己満足なんで、気にしないでください」
「それでも、嬉しかったんだよ。柊哉はいつもそう。俺が欲しかった言葉をくれる」
そう言って笑う瀬良の顔に心臓の音がうるさい。
日の長い夏の夕暮れがあたりを真っ赤に染めているのに、きっと俺の顔はそれ以上に赤くなってる。
好きだ。瀬良のことが好きだ。もうどうしようもなく。
でも、どうか、今はまだ気付かないで。
もう少しだけ、その顔が見ていたいんだ。
家まで瀬良を送り届け、瀬良に会えないはずだった三日目は終わった。
翌日も瀬良が中学の体育館に来ていたことを練習が終わってから気が付いた。
「お疲れ~」
「おっお疲れ様です。あの、瀬良さんは部活いいんですか?」
「大丈夫。大会終わったばっかりだし、ちょっと休憩」
「でも……、俺の練習みてても楽しくないと思うんですが……」
「えっ楽しいよ。ずっと見てみたいと思ってたんだけど、高校だと入りづらいからさ」
あぁ、相原がいるから……。胸にチクりと棘が刺さったような感覚。そんなことでちょっと拗ねてしまう自分が悲しい。
「推薦で入ったうえに一年でレギュラーなんだから、うまいんだろうなぁとは思ってたけど、想像以上にかっこよくてびっくりした」
かっこいい……! たった一言で拗ねた気持ちが吹っ飛んでいく。俺も大概調子がいい。
「あのさ…」
「あの!」
言葉が同時に出て、二人とも途中で止まってしまった。
俺は先に言ってほしいと瀬良に促したが、譲らなかったので、俺が先に話すことにした。
「今日って、この後用事あります?」
「いや、家帰るだけだけど。なんかあった?」
「弟に瀬良さんの話したら、会いたい! って言われちゃって。時間あったら俺の家寄ってきませんか?」
「えっいいの?」
「はい! よかったらご飯も食べてってください。今日は唐揚げです」
この間、ゲームをした時にうっかり瀬良のことを話したせいで、何度も家に連れて来て、と弟の敦也にせがまれていた。
これも本当。
でも、実は少しでも長く一緒にいたい。これが本心。
「瀬良さんが言いかけたことは何でしたか?」
「あっあぁ。今週は土日のどっちくるんだっけ?」
「今週は土曜日に行きます。午後は自主練なんで、夕方には行けると思います」
「そっか。じゃー泊まってくよな?」
「はい、ありがとうございます」
会話だけ聞いたらまるで恋人同士のようだなと自分でも思う。
どうしても顔がにやけてしまう。
いい加減俺の気持ちなんてバレバレな気もするけど……チラリと瀬良の方を横目で見ると、俺を見上げていた瀬良と目が合った。
ドクンと心臓が跳ねる。
この人はなんで俺を見ていたんだろう。
そのあとは記憶に残らないような雑談をしているうちに家についた。
「お、お邪魔します」
瀬良の声はいつもより弱弱しくて、ちょっとおどおどしている。
もしかして緊張してるのかな。俺はつい笑ってしまった。
「なんで笑うんだよ」
「だって、すごいキョドってるから」
「う、うるさい。初めてくる場所は緊張するだろうが」
場所見知りする猫のように、ビクビクする瀬良がかわいくてかわいくて、俺はまた笑ってしまう。
「兄ちゃん!!!!」
俺たちが靴を脱いで玄関を上がったところで、勢いよく現れた敦也に、瀬良はまた一段とビクッとして、なぜか俺の後ろに隠れてしまった。
かわいすぎかよ。
俺がまた笑っていると、瀬良が小さい声で笑いすぎだって、赤くなった顔で俺の服の裾を引きながら言うから、思わず髪に手が伸びる。
その手が瀬良のピンク色の髪を一撫ですると、瀬良は少し驚いたような顔をして俺を見上げていた。
「瀬良さん、これ弟の敦也。敦也、ちゃんと挨拶しな」
「こんばんは! 」
「あっこんばんは」
そんなやり取りをしていると、奥から母さんの声が聞こえてきた。
「ちょっと、いつまで玄関にいるの~。上がってもらいなさいよ」
「うん、瀬良さんどうぞ」
瀬良は相変わらず少しおどおどしながら母さんと妹に挨拶をして、早速敦也とリビングでゲームを始めた。
瀬良が俺の家にいるというのはすごく不思議な感覚だ。
ゲームを始めたら瀬良の緊張も解けたようで、すぐに敦也と盛り上がり始めたから、二人にしても大丈夫そうなところを見計らって俺は夕飯の手伝いをしにキッチンに入った。
「いやー全然レベルが違うって言うか、ほんとにスゲー!」
夕飯を囲みながら敦也は興奮気味に瀬良のことを話し始めた。
瀬良は少し恥ずかしそうな顔をしながら、ニコニコと話を聞いている。
大変仲良くなったようで。もやっとなんかしていない。
「もう本当にうるさくてごめんね。瀬良くん、お口にはあうかしら?」
「あっはい。おいしいです。」
夕飯に出した唐揚げは、俺が昨日から仕込んでおいたからしっかりと味もしみているし、食感もいい。
我ながらまた上出来。
「あの、急に来ちゃったんで、量とか大丈夫ですか」
「あら、ちょっと柊哉、もともと呼ぶつもりだったんじゃないの? 昨日からせっせと唐揚げ準備してたじゃない」
そういうのはばらさないでほしい。
瀬良には連絡を入れていなかった。
でも、もし今日も来てくれたら家に誘おうと思って準備はしていおいた。
「そ、そういうわけじゃなくて…」
なんとなくしどろもどろになる俺を、不思議そうに母さんも瀬良も見ている。
今の俺、かっこ悪い気がする。まぁいいじゃん、と話をごまかすしかなかった。
「瀬良さん! 明日も来て!」
すっかり瀬良になついた敦也は、しっぽを全力で振っている犬みたいに見える。
「柊哉は明日も中学行くんだよね? ならまたお邪魔してもいい?」
瀬良もそんな敦也がかわいいのか、優しい眼で見ている気がする。
やっぱりもやっとする。弟に嫉妬するなんてバカみたいだ。
「はい。よかったら明日も来てください。敦也、俺、瀬良さん送ってくるから」
俺は自転車の後ろに瀬良を乗せすっかり暗くなった道を進んでいく。
暗くなってもまだ暑さは残っていたけど、時折吹く風が心地よかった。
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