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四歩目.部屋に入れてくれますか?
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翌日の土曜日。今日は午前中の練習だから、朝から学校へ向かう。
途中、瀬良のマンションの横を通り過ぎるとき、もう起きてるかな、などと考えてみる。
体育館についたけど、まだ誰もいなかった。
今、七時前だけど、練習は八時から。だから当たり前か。一人で準備をして、練習を始めた。
走るとこすれる床の音。手にボールが当たる音。そして、それが床にぶつかる音。
静かな体育館に響く音はどれも心地よくて、雑念が消えていく感じがする。
でも、消えたはずのそれは、ちょっとしたことであっという間に戻ってくる。
「おはよう、早いな」
昨日ぶりに聞いた声の主は、いつもと変わらず“部長の顔”をしていた。
「おはようございます」
俺も努めて普段通りにふるまうけど、やっぱり気まずさは拭えない。
昨日のことを切り出した方がいいのか、それともこのまま黙っていた方がいいのか、正解がわからない。
でも、明らかに二人の邪魔をしたのは俺の方だ。覚悟を決めて話を切り出すことにした。
「相原さん、昨日はすみませんでした」
昨日の話をされると思っていなかったのか、相原は一瞬驚いた顔をしてから、すぐに笑顔を作った。
「いや、俺もちょっと感情的になってたし。むしろ止めてくれてありがとな」
こういう返答ができるから、全国レベルの部活で“部長”に選ばれるんだろう。
いわゆる人格者ってやつ。
相原の答えに本来ならほっとしてもいいはずなのに、なぜか俺はモヤモヤとしてしまう。
「そういえば、いつの間に火月……瀬良と仲良くなったの?」
名前、言い直すのか。何を言われてもモヤっとするのはなぜだろう。
そして、答えに困る。
前に絡まれてるところを助けてもらって。
――先輩方に絡まれていた話を蒸し返すのは何となく面倒だから嫌だ。
ゲームに誘ってもらって。
――『一緒に行きたい』って言われると嫌だ。
家が近くて。
――瀬良の今の家を知っているとも限らないし、一緒に帰るのを邪魔されたくない。
どうしよう、全部嫌だな。最適解が見つからない。
そもそも、俺は瀬良と仲がいいのだろうか。
部室に呼んでくれたし、一緒に帰ってるんだから、きっと嫌われてはいないだろうけど……。
黙ったまま答えずにいる俺を相原は不思議そうに見ているが、グルグルと考えが回って、答えがまとまらない
「もしかして、付き合ってる?」
「は?」
相原の予想外の言葉に間の抜けた言葉が出た。なんでその発想になったんだろうか。
男子校だから? いや、まぁ俺は好きだけど。
「何にも言わないから答えにくいのかと思って」
「あぁ……、そういうのではなくて。逆に仲いいのかな? って考えてたんです」
「どういうこと?」
「そのままの意味です」
昨日、無理やり連れ去るようなことをしたのに、『仲がいいのかわからない』って言われてもそりゃ困るよな。
俺に『付き合っているのか』って聞くくらいだから、相原と瀬良が“そういう関係”ということはないのだろう。
でも、深読みすれば、“瀬良が男と付き合っていることを想定できる”ってことなのかもしれない。
またモヤモヤとした気持ちが沸き上がる。
「相原さんは、瀬良さんと幼馴染って言ってましよね」
「あぁ、実家が隣同士だったから。一つ年下だし、ずっとかわいい弟って感じだったんだけど……」
『だけど』何なんだろう。今は違うってことか? それとも、瀬良はそう思っていなかった、ってことだろうか。
これ以上モヤモヤさせないでほしい。
「付き合ってたとかですか?」
思わず、意趣返しのようなことを聞いてしまった。
こういうところが生意気だって言われる原因なんだろう。
「いやいや、ないない」
相原は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔に戻して、手を振りながら否定する。
でも、答えるまでに、ちょっと間があった気がする。
他の部員たちもちらほら見せ始めたから、モヤモヤを抱えたまま、相原との腹の探り合いのような会話は終了となった。
部活が終わったのは夕方五時。なんか今日は疲れた。
話しかけてくる部活のメンバーに返事をするのも正直めんどくさい。
「高槻、なんか食ってかない?」
「いや、やめとく。なんか今日は疲れた」
「そういえば、今日荒れてたよね。なんかあった?」
「えっ荒れてた? 自覚なかった」
確かに心に溜まったモヤモヤをボールにぶつけるように打っていたが、人からもそう見えるほどだったかと反省する。
「ちょっと根詰めすぎなんじゃない? 明日はオフだし、ゆっくりしなよ」
「そうだな。ありがと」
バレーをしてて疲れたなんて思ったことはないし、練習も嫌だと思ったことなんてない。
でも、モヤモヤしながらやってても、やっぱり楽しめない。
このすっきりしない気持ちはどうしたらいいんだろう……。
考えながら自転車をこぎ進めると、あっという間に瀬良のマンションの前まで来ていた。
瀬良さんは何階に住んでるんだろう。
俺は、自電車を漕ぐ足を止め、マンションを見上げる。
なんかストーカーみたいだな…、やめよう。
そう思ってもう一度自転車のペダルに足を乗せると、スマホが鳴った。
「えっなんで……」
画面に表示された名前は『瀬良 火月』。
瀬良からの電話だった。俺は急いで電話に出る。
「は、はい、どうしたんですか」
〈部活終わったんだな。上、見て〉
そう言われ、スマホを耳にあてたまま上を見ると、三階のベランダに見覚えのあるピンク色の頭が見えた。
さっき見上げた時はいなかったはずなのに、なんで……。
〈もうあと帰るだけ? なんか用事ある?〉
「いえ、帰るだけです」
スマホから耳に直接流し込まれる瀬良の声に、胸が高鳴る。
俺は今、どんな顔をしているんだろう。
〈なら上がって来いよ。うちでゲームしようぜ〉
「えっいいんですか?!」
突然の瀬良からの誘いに、飛び上がってしまいそうになる。
嬉しい、嬉しい!
瀬良から教えてもらった部屋の番号を押してオートロックを開け、そわそわしながらエレベーターで三階に向かう。
もし俺が犬だったら、今きっとすごい勢いでしっぽを振っている。
エレベーターが三階についたことを知らせ、ドアが開くと、そこには瀬良が立っていた。
わざわざエレベーターホールまで迎えに出て来てくれたようだ。
「よっ!」
両手をズボンのポケットに入れながら、ニーっと八重歯をのぞかせながら笑う瀬良に、思わず飛びつきそうになる。
でも、ギリギリのところで堪えた。危なかった。
「お疲れ様です……!」
「ははっ、部活お疲れ」
テンパりすぎて、部活の先輩に向けるような挨拶をしてしまった。もう、どうしたらいいのかわからないくらい、嬉しくてしょうがない。
瀬良に連れられて入ったリビングには、部屋の真ん中にソファとローテーブルがあり、その正面にはテレビが置かれている。反対側には何台ものモニターが並んだ大きな机にゲーミングチェアがあった。
「広いですね」
聞けば、風呂、トイレ別の1LDKだという。やっぱり高校生の一人暮らしにしては豪華だ。
実は瀬良はいいところのお坊ちゃんだったりするのだろうか。
そんな思いが顔に出ていたらしく、瀬良はクスッと笑った。
「すごいそわそわしてる」
「すいません。一人暮らしの人の家に来たのとか初めてで……」
浮かれすぎて、ついキョロキョロしてしまっていた。恥ずかしい。
「あぁそうなんだ。まぁ高校生だと少ないかもね。そこ、座んなよ」
俺は促されるままソファに腰を掛けるが、どうしても落ち着かなくてそわそわしてしまう。
「なにやる?」
「瀬良さんのおすすめでいいですよ。あっでも難しいのはできませんよ」
「ん――じゃあこれかな~」
瀬良が選んだのは、今度大会に出ると言っていたのとは別の格闘ゲーム。
俺もタイトルくらいは知っているけど、一度もやったことがない。
「絶対勝てないと思うんですけど」
「ハンデつけてやるよ。でも、それで負けたら罰ゲームな」
瀬良はニヤリと笑って、ゲームを始めた。
でも初心者とプロくらいの差があるんだ。まぁ勝てるわけがない。
「また負けた~。」
「こんなにハンデつけてるんだぞ? それで全敗って弱すぎだろ」
「初めてやったんだからしょうがないじゃないですか」
「あっ初めてだったの。でもまぁ約束は約束だからな。罰ゲーム何にしようかなー」
何をさせるつもりなんだろう?
全然読めないけど、瀬良のルンルンと上機嫌な様子がかわいいから、何でもできそうな気がする。
「あっ料理ってできる?」
「えっ? 特殊なものじゃなければできますけど」
「マジか! 明日は部活オフって言ってたよな。お昼ご飯作りに来て」
それは罰ゲームなのか? むしろ俺からしたらご褒美に近い。
予想外もいいところだ。というか、彼女に頼むような内容だな……。
「彼女に頼むような内容ですね」
心の中で思っただけのつもりが、声に出てしまっていた。
またやってしまった。最近失言が多い。
「確かに。でも残念ながらそういうことしてくれる彼女がいないから、お前に頼んでるんだよ」
しまった、という顔をした俺に気を使ったのか、それとも何も思わなかったのか。
瀬良はいつものように八重歯をのぞかせながらニカッと笑う。
この顔、本当に好きだ。
「瀬良さん、料理しないんですか?」
「うん、全然。カップ麺作るくらい」
「なるほど……。ってことは調理道具とか調味料もないのでは……?」
「鍋ならあるよ? 湯沸かすのに使う」
これは予想以上に大変そうだ。でも、明日も家に来れるんだ。断るという選択肢はない。
「わかりました。じゃーまず朝、買い出しから行きましょうか」
「りょーかい」
ついでに一緒に出かける約束まで突っ込んでみたけど、あっさり了承してくれた。
嬉しくて顔がにやける。
明日の待ち合わせの予定を決めて、もう一度ゲームをして、初めてのお宅訪問は終わった。
途中、瀬良のマンションの横を通り過ぎるとき、もう起きてるかな、などと考えてみる。
体育館についたけど、まだ誰もいなかった。
今、七時前だけど、練習は八時から。だから当たり前か。一人で準備をして、練習を始めた。
走るとこすれる床の音。手にボールが当たる音。そして、それが床にぶつかる音。
静かな体育館に響く音はどれも心地よくて、雑念が消えていく感じがする。
でも、消えたはずのそれは、ちょっとしたことであっという間に戻ってくる。
「おはよう、早いな」
昨日ぶりに聞いた声の主は、いつもと変わらず“部長の顔”をしていた。
「おはようございます」
俺も努めて普段通りにふるまうけど、やっぱり気まずさは拭えない。
昨日のことを切り出した方がいいのか、それともこのまま黙っていた方がいいのか、正解がわからない。
でも、明らかに二人の邪魔をしたのは俺の方だ。覚悟を決めて話を切り出すことにした。
「相原さん、昨日はすみませんでした」
昨日の話をされると思っていなかったのか、相原は一瞬驚いた顔をしてから、すぐに笑顔を作った。
「いや、俺もちょっと感情的になってたし。むしろ止めてくれてありがとな」
こういう返答ができるから、全国レベルの部活で“部長”に選ばれるんだろう。
いわゆる人格者ってやつ。
相原の答えに本来ならほっとしてもいいはずなのに、なぜか俺はモヤモヤとしてしまう。
「そういえば、いつの間に火月……瀬良と仲良くなったの?」
名前、言い直すのか。何を言われてもモヤっとするのはなぜだろう。
そして、答えに困る。
前に絡まれてるところを助けてもらって。
――先輩方に絡まれていた話を蒸し返すのは何となく面倒だから嫌だ。
ゲームに誘ってもらって。
――『一緒に行きたい』って言われると嫌だ。
家が近くて。
――瀬良の今の家を知っているとも限らないし、一緒に帰るのを邪魔されたくない。
どうしよう、全部嫌だな。最適解が見つからない。
そもそも、俺は瀬良と仲がいいのだろうか。
部室に呼んでくれたし、一緒に帰ってるんだから、きっと嫌われてはいないだろうけど……。
黙ったまま答えずにいる俺を相原は不思議そうに見ているが、グルグルと考えが回って、答えがまとまらない
「もしかして、付き合ってる?」
「は?」
相原の予想外の言葉に間の抜けた言葉が出た。なんでその発想になったんだろうか。
男子校だから? いや、まぁ俺は好きだけど。
「何にも言わないから答えにくいのかと思って」
「あぁ……、そういうのではなくて。逆に仲いいのかな? って考えてたんです」
「どういうこと?」
「そのままの意味です」
昨日、無理やり連れ去るようなことをしたのに、『仲がいいのかわからない』って言われてもそりゃ困るよな。
俺に『付き合っているのか』って聞くくらいだから、相原と瀬良が“そういう関係”ということはないのだろう。
でも、深読みすれば、“瀬良が男と付き合っていることを想定できる”ってことなのかもしれない。
またモヤモヤとした気持ちが沸き上がる。
「相原さんは、瀬良さんと幼馴染って言ってましよね」
「あぁ、実家が隣同士だったから。一つ年下だし、ずっとかわいい弟って感じだったんだけど……」
『だけど』何なんだろう。今は違うってことか? それとも、瀬良はそう思っていなかった、ってことだろうか。
これ以上モヤモヤさせないでほしい。
「付き合ってたとかですか?」
思わず、意趣返しのようなことを聞いてしまった。
こういうところが生意気だって言われる原因なんだろう。
「いやいや、ないない」
相原は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに笑顔に戻して、手を振りながら否定する。
でも、答えるまでに、ちょっと間があった気がする。
他の部員たちもちらほら見せ始めたから、モヤモヤを抱えたまま、相原との腹の探り合いのような会話は終了となった。
部活が終わったのは夕方五時。なんか今日は疲れた。
話しかけてくる部活のメンバーに返事をするのも正直めんどくさい。
「高槻、なんか食ってかない?」
「いや、やめとく。なんか今日は疲れた」
「そういえば、今日荒れてたよね。なんかあった?」
「えっ荒れてた? 自覚なかった」
確かに心に溜まったモヤモヤをボールにぶつけるように打っていたが、人からもそう見えるほどだったかと反省する。
「ちょっと根詰めすぎなんじゃない? 明日はオフだし、ゆっくりしなよ」
「そうだな。ありがと」
バレーをしてて疲れたなんて思ったことはないし、練習も嫌だと思ったことなんてない。
でも、モヤモヤしながらやってても、やっぱり楽しめない。
このすっきりしない気持ちはどうしたらいいんだろう……。
考えながら自転車をこぎ進めると、あっという間に瀬良のマンションの前まで来ていた。
瀬良さんは何階に住んでるんだろう。
俺は、自電車を漕ぐ足を止め、マンションを見上げる。
なんかストーカーみたいだな…、やめよう。
そう思ってもう一度自転車のペダルに足を乗せると、スマホが鳴った。
「えっなんで……」
画面に表示された名前は『瀬良 火月』。
瀬良からの電話だった。俺は急いで電話に出る。
「は、はい、どうしたんですか」
〈部活終わったんだな。上、見て〉
そう言われ、スマホを耳にあてたまま上を見ると、三階のベランダに見覚えのあるピンク色の頭が見えた。
さっき見上げた時はいなかったはずなのに、なんで……。
〈もうあと帰るだけ? なんか用事ある?〉
「いえ、帰るだけです」
スマホから耳に直接流し込まれる瀬良の声に、胸が高鳴る。
俺は今、どんな顔をしているんだろう。
〈なら上がって来いよ。うちでゲームしようぜ〉
「えっいいんですか?!」
突然の瀬良からの誘いに、飛び上がってしまいそうになる。
嬉しい、嬉しい!
瀬良から教えてもらった部屋の番号を押してオートロックを開け、そわそわしながらエレベーターで三階に向かう。
もし俺が犬だったら、今きっとすごい勢いでしっぽを振っている。
エレベーターが三階についたことを知らせ、ドアが開くと、そこには瀬良が立っていた。
わざわざエレベーターホールまで迎えに出て来てくれたようだ。
「よっ!」
両手をズボンのポケットに入れながら、ニーっと八重歯をのぞかせながら笑う瀬良に、思わず飛びつきそうになる。
でも、ギリギリのところで堪えた。危なかった。
「お疲れ様です……!」
「ははっ、部活お疲れ」
テンパりすぎて、部活の先輩に向けるような挨拶をしてしまった。もう、どうしたらいいのかわからないくらい、嬉しくてしょうがない。
瀬良に連れられて入ったリビングには、部屋の真ん中にソファとローテーブルがあり、その正面にはテレビが置かれている。反対側には何台ものモニターが並んだ大きな机にゲーミングチェアがあった。
「広いですね」
聞けば、風呂、トイレ別の1LDKだという。やっぱり高校生の一人暮らしにしては豪華だ。
実は瀬良はいいところのお坊ちゃんだったりするのだろうか。
そんな思いが顔に出ていたらしく、瀬良はクスッと笑った。
「すごいそわそわしてる」
「すいません。一人暮らしの人の家に来たのとか初めてで……」
浮かれすぎて、ついキョロキョロしてしまっていた。恥ずかしい。
「あぁそうなんだ。まぁ高校生だと少ないかもね。そこ、座んなよ」
俺は促されるままソファに腰を掛けるが、どうしても落ち着かなくてそわそわしてしまう。
「なにやる?」
「瀬良さんのおすすめでいいですよ。あっでも難しいのはできませんよ」
「ん――じゃあこれかな~」
瀬良が選んだのは、今度大会に出ると言っていたのとは別の格闘ゲーム。
俺もタイトルくらいは知っているけど、一度もやったことがない。
「絶対勝てないと思うんですけど」
「ハンデつけてやるよ。でも、それで負けたら罰ゲームな」
瀬良はニヤリと笑って、ゲームを始めた。
でも初心者とプロくらいの差があるんだ。まぁ勝てるわけがない。
「また負けた~。」
「こんなにハンデつけてるんだぞ? それで全敗って弱すぎだろ」
「初めてやったんだからしょうがないじゃないですか」
「あっ初めてだったの。でもまぁ約束は約束だからな。罰ゲーム何にしようかなー」
何をさせるつもりなんだろう?
全然読めないけど、瀬良のルンルンと上機嫌な様子がかわいいから、何でもできそうな気がする。
「あっ料理ってできる?」
「えっ? 特殊なものじゃなければできますけど」
「マジか! 明日は部活オフって言ってたよな。お昼ご飯作りに来て」
それは罰ゲームなのか? むしろ俺からしたらご褒美に近い。
予想外もいいところだ。というか、彼女に頼むような内容だな……。
「彼女に頼むような内容ですね」
心の中で思っただけのつもりが、声に出てしまっていた。
またやってしまった。最近失言が多い。
「確かに。でも残念ながらそういうことしてくれる彼女がいないから、お前に頼んでるんだよ」
しまった、という顔をした俺に気を使ったのか、それとも何も思わなかったのか。
瀬良はいつものように八重歯をのぞかせながらニカッと笑う。
この顔、本当に好きだ。
「瀬良さん、料理しないんですか?」
「うん、全然。カップ麺作るくらい」
「なるほど……。ってことは調理道具とか調味料もないのでは……?」
「鍋ならあるよ? 湯沸かすのに使う」
これは予想以上に大変そうだ。でも、明日も家に来れるんだ。断るという選択肢はない。
「わかりました。じゃーまず朝、買い出しから行きましょうか」
「りょーかい」
ついでに一緒に出かける約束まで突っ込んでみたけど、あっさり了承してくれた。
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