勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【246.5話】 テーブルの絆 ※ロックサラマンダークエスト二日目の夜の話し※

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ロックサラマンダークエスト二日目の夜
リリア、メイリン、サラの三人で宿前の屋台でテーブルを囲む。
テーブルの上にはトマトとコーンのスープ。パン、ハム、チーズとお酒が並ぶ。

「サラって“ギルド・愛国者“をクビになったんでしょ?なんだか男遊びが激しいって聞いてたけど… そうでもないじゃない?何でクビになったの?」リリアがパンにチーズとハムを挟みながら尋ねる。
メイリンは少し苦笑い。
「それ、酷くないですかぁ?… あ、私最初に自分で言いましたね… えへ」サラはちょっと舌を出して笑った。
「誉め言葉と受け取ってよ。戦闘のスキルは皆無だけど結構真面目にがんばっているから…なんでかなぁ?っと思ってね。実際にバックアップスタッフなら戦闘出来ない人はいるからね。もっと全然いい加減な感じを想像してたけど、そんな感じないよね、良いと思うわよ」リリアが言う。
「男は好きだけど、別にそんなに遊んだつもりはないけどね、えへ。実際に遊ぶ時間はなかったよ。バックアップはバックアップで、夜は当直とか仕込みとかあって忙しかったからね… あれってさぁ、反則じゃんねぇ。見習いの男子と組まされて夜通し当直とかしたら、男子の方がその気になってきたりするんよぉ。もともと男と女が、ずっと一緒に荷物番とか夜の当直とかやるんだから、何かそういう雰囲気になったりするじゃんね。男の方が言い寄って来たりするし… 実際に寝たのは一人よ。当直中にしてたら見つかって怒られたけど、えへ… 何故か私が男を食い荒らしてるような感じになって… でも、理由はバード技能があるって書類に書いて出したけど、ただ笛を吹いているだけじゃないかって怒られて… それが決定打らしいけどね。それも込みで選考してるから嘘はダメだって… 知らんけど…」
サラはそれこそサラッと言ってのけて何食わぬ顔でパンをかじっている。

「それはそうかぁ…嘘ついて入ったら、そうなるかぁ… って、エンリケがトイレに立ったっきり戻ってこないと思ったら、女の子達のテーブルに紛れてるね」
リリアが目を走らせるとサラは振り返った。
メイリンは気がついていたらしく苦笑い…
話しが切れたついでに皆でおつまみとお酒を追加した。

「何でまた冒険者にこだわるの?」リリアが聞く。
「こだわり…は… まぁ、冒険者証獲ったし… 私、ずっと伯母に育てられて来たけど、早く家をでたくてさぁ、置手紙してサッと家を出てきてちゃってしばらくはレンタホース屋で厩の係りをしててさぁ、目の前に冒険者が立ち寄るドロップアイテム換金屋があるじゃん… そうそう、ちょっと前まで私あそこの向かいのサムブラザーズで働いていてさぁ、クエストやって換金に来ている冒険者って兄弟みたいで、楽しいそうだと思ってさぁ… 毎日馬の糞掃除も嫌だったし、何か刺激的で楽しそうで… それでかなぁ」
ラサはパンをスープに浸して食べている。

「一体感と達成感がある職業ではあるわね。なるほどね… 危険が多いけど、やりがいあると思う。それに、ちゃんと色々覚えたらけるよ」リリアが言う。
「私からしたらメイリンがクビになったのが信じられないよぉ」サラ。
リリアも頷く。
確かに場数を踏まないといけないのは仕方がないが今のところ目立って悪い部分も無い。

「リリアさんが段階踏みながら実戦させてくれていますから。前のギルドのお試し期間だった時は、突然植物の魔物に囲まれたり、トードが湧いていたりで、私、すっごいパニクって魔法を乱打して… あ、これはこの前説明しましたね。何度かやったら、危ないからギルドには置いておけない、教会や診療所をおすすめするって言われて… でも、徐々に慣れてきて自信も少しついて来たかな」
メイリンはスープを口に運びながら言う。
「普通に優秀な気がするけど… よっぽどなんだね… うっふっふ。まぁ、練習して自信をつけたらいいよ。治癒術なら乱打されても危なくないでしょ。あたしなんか怪我して治癒されたくても放置されてる時あるからね、むしろ願ったりだよ。リリアが教えられる部分なら教えるし、ウチはコトロがギルドの借金を返済しきるまで新メンバーはとらないらしいけど、実績つけたらどこかに籍をおけるよ」
リリアはスープを飲んで残ったコーンをパンに乗せている。

リリアの席からだとエンリケが女の子に調子よく何かをご馳走しているのが目に入ってくる。

「それより、リリアの事を聞かせてよ」
サラが言うとメイリンも大きく頷いた。
「リリアさんて、本当に勇者なんですね。最初は自称かと思っていました」
「勇者ってどうなの?儲かるの?何するの?」
二人がリリアの顔を見る。

「あぁ…うん… コホン… えぇ、まず… リリアちゃんてばこう見えても勇者エジンの子孫として勇者の血を受け継いでるの… え?勇者の子孫はフリートにって?… そうだけど、勇者は結構あっちこっち種を撒いていて、結構子孫は多いの。あっちの方も勇者だったみたいね!… まぁ、それを王国が調べて、数多いる…であろう勇者の子孫の中から選ばれて… 魔法?あのね、皆勇者=魔法って思ってるよね。あたしには弓があるの!二人とも見たでしょ、リリアのスーパーウルトラ勇者スペシャルショット…技の名前。 え?…だってほら、勇者って物語の中では成長と共に、技を覚えて、技の名前とか叫びながら魔物を倒してるじゃない… リリアも勇者だから技を持ってるの。今命名した技だよ。 勇者って大変なんだよ、王様からは人が嫌がるようなクエストさせられて、王国民の期待に応えて、脱走した羊を見つけて回収したり、この前なんか野焼きするからって言われて、手伝わされてさ、延焼しないように、朝から桶で何十杯も水を防火水槽に運んで… 最近配達されるミルクをだれかが持って行っちゃうって言うからラーダットさん家のミルクドロボーを見張って… 結局隣の犬のバウが犯人だったけどね…」リリアは少しドヤ顔で説明する。

「思ったより… …えぇ… 思ったより、庶民に寄り添って働くんですね、勇者って」メイリンは答えに窮している。
「何か… 思ってたのと違う。勇者ってあんまり特別感ないんだぁ。私もなろうかななぁ」サラがサラッと言う。
「あ、ほら… わかって無いなぁサラちゃん。あのね、特別な事でも特別感を出さず、平然とやってのけるのが勇者と冒険者の違いなの。あのね、リリアは結構痛い思いしながら勇者やってるの。野焼きだってね、火事にならないようにメッチャ見張るの。実際に風が思ったより強くって危なかったんだよ。火事になりかけたんだよね。まぁ、水の精霊使いのアラーシュとバネッサがパパっと消しくれたけど。リリアがあんなに苦労して運んだ水はなんだったんだろうね… まぁ、色々あるけどとにかく、勇者って簡単な仕事じゃないのは理解できるでしょ。リリアちゃんってこう見えても弓が凄くて… とにかく、勇者って大変なの。簡単になれるものじゃないんだよね」
リリアは目力強く語る。
サラは首を傾げている。

「冒険者は皆家族みたいなものだからねぇ!テーブル囲んで食事して、宿で雑魚寝して、お風呂で胸の大きさ競い合って、あたし達もうシスターだよ。ロックサラマンダーをぶっ倒したら、再入ギルドしたらいいよ!実績欄にロックサラマンダーに泣き入れさせてやったって書いたらいいよ。勇者リリアちゃんにお任せよ!落第しても、育てなおす!まさに勇者!勇者オブ・ザ・イヤーを獲得しちゃうほどの勇者! かんぱーい!」
リリアは上機嫌。
メイリンもサラもカップを傾けた。

星の綺麗な夜がふけていく。
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