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【176.5話】 知られざる情報
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“ドラゴンに乗る勇者リリア”とされる絵が存在する。
ルーダリア王国の官庁には勇者管理室という機関があり、代々公認勇者を管理している機関がある。
その廊下には歴代の勇者の肖像画がならぶ。ルーダリアにとって大きく貢献し偉業を成し得た勇者達が並ぶ。もっとも勇者エジン以降は均衡を持った平和が続き、軍が整備され勇者個人で何か大事を成し得る事は少なくなり、政治的な意味で貢献を残した人物達がほとんどだ。
残念ながら勇者リリアの肖像画は飾られていない。
しかし、歴代の勇者は管理室の書類棚にはしっかり記録が残されている。
探せば棚からリリアの記録を探し出すことは可能だろう。
“ドラゴンに乗る勇者リリア”は勇者マニアや歴史家の間では名の通った作品。
オリジナルとコピペ品二枚の合計三枚が存在するとされている。
コピー品ではなくコピペ品である。
魔法と剣の時代に生まれた人々に改めて説明する必要も無いのだがコピー品はオリジナルを元に誰かが写し絵を行った物、コピペ品はコピペの魔法を使ってオリジナルをそのままクリエイトした物だ。一般的にはオリジナルを完全に再現している事からコピー品より価値があり、人によってコピペ品はオリジナルと同じ価値だと主張する人もいる。
情報は年月と共に忘却と再生、改変を繰り返し風化していく。
“ドラゴンに乗る勇者リリア”のオリジナルはリリアの故郷、ウッソ村の教会に飾られている。これは誰もが認める確信的な情報。
オリジナルの見分け方は簡単だ。絵の裏を見ればよい。
オリジナルは絵の一部が大きく破れ修復をして完成させた跡がある。
油絵なので表からは補修の跡がわずかに筋になって見えるだけでなかなか気がつかないが、裏を返せば一度破れた傷を補修した跡がはっきりと残っている。これがオリジナル。
コピペ品は傷以外を完璧に再現している。
オリジナルにはもう一つ特徴がある。裏を返して良く見ると「大切な仲間 コトロ、ニャン、ピョン、ダカット ブラックもここに」と書かれている。
この字は勇者本人の手書きとされていて書類等の筆跡鑑定からも信憑性が高いとされる。
コトロは当時勇者リリアが所属するギルドのマスターだったようだ。記録にもコトロとされる人物の署名が散見される。ニャン、ピョンは絵の並びからギルド仲間だった亜人女性のようだ。記録から本名はネーコ、ラビとされ、勇者リリアがあだ名で呼んでいたことがうかがえる。
また、オリジナル以外にはこの手書きが見られないため、コピペ品をクリエイト後、本人が書き足したとされる。
ダカットとブラックについては議論になる。
ダカットとブラックのどちらかがドラゴンの名前説
当初は最も有力視された説。仲間の名前と来てドラゴンの名前がくるのが自然な考え。
一時期はドランゴンの名前がダカット、そしてホウキの存在を強調するために「ブラックもここに」と書いたとされていた。
しかし、絵の特徴からメスのジェミニドラゴンとされる。ダカット、ブラックという男性の名前は疑わしい。調べるとある貴族の魔物使いが当時メスのジェミニドラゴンを飼う登録を申請していてミーナと名前を付けられている。勇者リリアがまたがるのは恐らくミーナとされているが野良ドラゴンに乗っていた可能性、無許可ペットの可能性もある。メスの特徴からダカット、ブラックがドラゴンを差している可能性は低い。
ドラゴンはミーナ、ホウキはダカット、ブラックのどちらか説
勇者リリアは無能力であったとされている。しかし、一部の魔物退治等の記録ではリリア個人では成し得ないような実力を発揮している記述もあり、何か特別な魔法や能力を授かっていたとする説もある。
勇者リリアはホウキと共に旅をした記録があるが、ホウキは使い魔説、妖精説、呪われた主従関係説、飛行アイテム説、ただのホウキ説と様々。
記念に残る絵にホウキを入れているところから仲間と同等の存在であったと考えられ、このホウキがダカットかブラックとされる。
しかし、人物の配置、構図や名前の並びの順番からくる推察ではホウキはダカットとされ、この場にいなかった大切な人物を「ブラックもここに」と書いたとされる。
その他の説色々
ブラックとは絵の作者ピエン=ブラックという説。作者ピエンは当時情報紙ギルドで働いていたとされる。ルーダ・コート王立図書館で当時発行された情報紙の記録に同じ人物の名で記事が書かれ、特徴のよく似た挿し絵を掲載している。興味深い事に当時勇者リリアに懐疑的だった他の情報紙とは全く異なり勇者リリア寄りの記事を掲載している。
勇者リリアが亜人をあだ名で呼んでいたがごとくピエンにあだ名をつけていた可能性があり、絵を描いたが絵の中に入れなかった人物の名を書いたとされる説。
ブラックとは何らかの事情でその絵に入らなかった人物だが勇者リリアが特別に後で書き足したとされる説。
勇者リリアが召喚能力等を持っていて見えない存在を書き足した説。
絵の中のどこかに紛れている謎々説等がある。
いずれにせよ、ブラックと言う人物は記録が皆無であり、一時的に召喚されるような存在だったともされる。
“ドラゴンに乗る勇者リリア”のオリジナルは生涯勇者リリアが所有していて彼女自身が故郷のウッソ村に持ち帰ったとされる。
一枚のコピペ品は勇者リリアが所属していたルーダ・コートの街で最も冒険者達の出入りが多い冒険者酒場に仲間達の手によって飾られたとされる。
残りの一枚においては行方不明。
コピペ品は1枚だったとされる説もあるが、当時ピエンから絵を贈られた勇者リリアが一枚は故郷に、一枚は自分の住む部屋に、一枚は保険にと発言し2枚のコピペをクリエイターに頼んだとの記述があり、大きな商人ギルドの建物で1枚を預かり飾っていたとする記録も残っているので3枚目は確かに存在したとされる。
ルーダリア王国の官庁には勇者管理室という機関があり、代々公認勇者を管理している機関がある。
その廊下には歴代の勇者の肖像画がならぶ。ルーダリアにとって大きく貢献し偉業を成し得た勇者達が並ぶ。もっとも勇者エジン以降は均衡を持った平和が続き、軍が整備され勇者個人で何か大事を成し得る事は少なくなり、政治的な意味で貢献を残した人物達がほとんどだ。
残念ながら勇者リリアの肖像画は飾られていない。
しかし、歴代の勇者は管理室の書類棚にはしっかり記録が残されている。
探せば棚からリリアの記録を探し出すことは可能だろう。
“ドラゴンに乗る勇者リリア”は勇者マニアや歴史家の間では名の通った作品。
オリジナルとコピペ品二枚の合計三枚が存在するとされている。
コピー品ではなくコピペ品である。
魔法と剣の時代に生まれた人々に改めて説明する必要も無いのだがコピー品はオリジナルを元に誰かが写し絵を行った物、コピペ品はコピペの魔法を使ってオリジナルをそのままクリエイトした物だ。一般的にはオリジナルを完全に再現している事からコピー品より価値があり、人によってコピペ品はオリジナルと同じ価値だと主張する人もいる。
情報は年月と共に忘却と再生、改変を繰り返し風化していく。
“ドラゴンに乗る勇者リリア”のオリジナルはリリアの故郷、ウッソ村の教会に飾られている。これは誰もが認める確信的な情報。
オリジナルの見分け方は簡単だ。絵の裏を見ればよい。
オリジナルは絵の一部が大きく破れ修復をして完成させた跡がある。
油絵なので表からは補修の跡がわずかに筋になって見えるだけでなかなか気がつかないが、裏を返せば一度破れた傷を補修した跡がはっきりと残っている。これがオリジナル。
コピペ品は傷以外を完璧に再現している。
オリジナルにはもう一つ特徴がある。裏を返して良く見ると「大切な仲間 コトロ、ニャン、ピョン、ダカット ブラックもここに」と書かれている。
この字は勇者本人の手書きとされていて書類等の筆跡鑑定からも信憑性が高いとされる。
コトロは当時勇者リリアが所属するギルドのマスターだったようだ。記録にもコトロとされる人物の署名が散見される。ニャン、ピョンは絵の並びからギルド仲間だった亜人女性のようだ。記録から本名はネーコ、ラビとされ、勇者リリアがあだ名で呼んでいたことがうかがえる。
また、オリジナル以外にはこの手書きが見られないため、コピペ品をクリエイト後、本人が書き足したとされる。
ダカットとブラックについては議論になる。
ダカットとブラックのどちらかがドラゴンの名前説
当初は最も有力視された説。仲間の名前と来てドラゴンの名前がくるのが自然な考え。
一時期はドランゴンの名前がダカット、そしてホウキの存在を強調するために「ブラックもここに」と書いたとされていた。
しかし、絵の特徴からメスのジェミニドラゴンとされる。ダカット、ブラックという男性の名前は疑わしい。調べるとある貴族の魔物使いが当時メスのジェミニドラゴンを飼う登録を申請していてミーナと名前を付けられている。勇者リリアがまたがるのは恐らくミーナとされているが野良ドラゴンに乗っていた可能性、無許可ペットの可能性もある。メスの特徴からダカット、ブラックがドラゴンを差している可能性は低い。
ドラゴンはミーナ、ホウキはダカット、ブラックのどちらか説
勇者リリアは無能力であったとされている。しかし、一部の魔物退治等の記録ではリリア個人では成し得ないような実力を発揮している記述もあり、何か特別な魔法や能力を授かっていたとする説もある。
勇者リリアはホウキと共に旅をした記録があるが、ホウキは使い魔説、妖精説、呪われた主従関係説、飛行アイテム説、ただのホウキ説と様々。
記念に残る絵にホウキを入れているところから仲間と同等の存在であったと考えられ、このホウキがダカットかブラックとされる。
しかし、人物の配置、構図や名前の並びの順番からくる推察ではホウキはダカットとされ、この場にいなかった大切な人物を「ブラックもここに」と書いたとされる。
その他の説色々
ブラックとは絵の作者ピエン=ブラックという説。作者ピエンは当時情報紙ギルドで働いていたとされる。ルーダ・コート王立図書館で当時発行された情報紙の記録に同じ人物の名で記事が書かれ、特徴のよく似た挿し絵を掲載している。興味深い事に当時勇者リリアに懐疑的だった他の情報紙とは全く異なり勇者リリア寄りの記事を掲載している。
勇者リリアが亜人をあだ名で呼んでいたがごとくピエンにあだ名をつけていた可能性があり、絵を描いたが絵の中に入れなかった人物の名を書いたとされる説。
ブラックとは何らかの事情でその絵に入らなかった人物だが勇者リリアが特別に後で書き足したとされる説。
勇者リリアが召喚能力等を持っていて見えない存在を書き足した説。
絵の中のどこかに紛れている謎々説等がある。
いずれにせよ、ブラックと言う人物は記録が皆無であり、一時的に召喚されるような存在だったともされる。
“ドラゴンに乗る勇者リリア”のオリジナルは生涯勇者リリアが所有していて彼女自身が故郷のウッソ村に持ち帰ったとされる。
一枚のコピペ品は勇者リリアが所属していたルーダ・コートの街で最も冒険者達の出入りが多い冒険者酒場に仲間達の手によって飾られたとされる。
残りの一枚においては行方不明。
コピペ品は1枚だったとされる説もあるが、当時ピエンから絵を贈られた勇者リリアが一枚は故郷に、一枚は自分の住む部屋に、一枚は保険にと発言し2枚のコピペをクリエイターに頼んだとの記述があり、大きな商人ギルドの建物で1枚を預かり飾っていたとする記録も残っているので3枚目は確かに存在したとされる。
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