勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【164話】 チーム・ルーダの風

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リリア達は荷馬車に乗っている。
タワー・オブ・エリフテンに向けて荷馬車を転がす。
荷馬車は二台、ギュインターが用意してくれた荷馬車に荷物、食料等を積んで現地に向かう。
先頭の荷馬車は馬車手がラビ、護衛席にリリア、車長はコトロ、ネーコは荷物の上で気ままに寝っ転がっている。後続にブラックと他のギルドのメンバーが雇われとして馬車を転がす。リリア達以外は現地に物資を運びこんだら解散だ。塔に残るのは女性メンバーのみ。

道中は魔物、盗賊の危険がいっぱいだ。この日のためにリリア、コトロ、ネーコ、ラビは本格的に戦闘連携の練習もした。普段からちょこちょこリリアの練習につきあっていたので練習の効果も期待… どうだろうか…

「ネーコは疲れたニャン、あっちで休んでるニャン、気が向いたら加わるニャン」とネーコは気まぐれ。
「やっぱりこういうの苦手ピョン。なんかあの… ジグっとする感触が気持ち悪いピョン」ラビは真面目だが性格的に戦闘に向いておらず、大ネズミを剣で切りつけた時の感触が嫌だったらしく消極的。

「… 仕方ないですよ、楽しい事ではないですから… 二人とも身体能力は高いので逃げまわれるだけでも良しとしましょう」コトロが言う
コトロはさすがに経験しているだけあって対応力はあるようだが、いかんせん職業としては吟遊詩人。攻撃に活躍するタイプではない。
「ま、リリアが何とかするよ。山中に入るまでは比較的安全だし、行きはブラック達もいるし大丈夫でしょ」
ネーコとラビが戦闘の頭数に入らないのは予想していたようでリリアもサバサバしていた。


「いいわねぇ!馬車で移動しながら皆で冒険旅行!一度やってみたかったのよねぇ」
リリアは上機嫌だ、弓も絶好調、スーパーショットを決めている。ラビと二人で交代しながら馬車を進める。たまにコトロも交代する。
ネーコは絶対面倒なことはやらない。
「リリア以上に自由人だな」ダカットが驚いている。

ネーコの気まぐれは筋金入り。
「ニャン子、今よ! って、あれ?…」
一緒に馬車を飛び出してさっきまで戦っていたと思えばいつの間にか馬車にもどって
「リリたん、皆がんばニャン!」と応援していたり、そもそも魔物に襲われても「皆気を付けるニャン!ネーコここで馬車番ニャン」とお留守番していたりだ。
かと思えば、突然出て来て軽快なステップとともにアイアンクローで魔物を倒したりする。
行動が全く読めない。身体能力は抜群なだけにもったいながこれがネーコ。
色々試行錯誤した結果ラビは上等な皮装備をさせ囮となって逃げ回る役に落ち着いてきた。
低知能な魔物やゾンビ類ならラビが引き付けてくれる。
コトロはリュートで演奏してリリア達の集中力や気力を高めるのだが、短時間戦闘の時はクロスボウを持たせることにした。
ネーコもラビも遠くに離れている時はクロスボウで攻撃。
だが…
「ちょっと!さっきの矢は誰よ!リリアをかすめて飛んでいったよ!ちゃんと狙ってよ!」リリアがクレームを出す。
「私たちはこういう事の専門家ではないので我慢してください」とコトロ達に反論された。
「… 確かにね… まぁ、あたしには当てないでよね」リリアも強くは言えない。


「ゾンビとスケルトンね!数が多いよ!コトロは馬車を後退させて!」
リリアが指示を出す。前方にゾンビがうろついていたのでリリアが射たところ、木々の陰からゾンビとスケルトン群がわらわらと出てきた。
リリアとラビが馬車を飛び出す。数が多いからかネーコも出てきた。
それほど脅威でもないが数が多いだけに馬車まで寄られたて馬を怪我させられたら厄介だ。馬車を後退させたいが木々に囲まれた道は広くなく回れ右に時間がかかる。
「先輩、ゾンビっすか!数がいますね」ブラック達も馬車から下りてきた。
「馬車は後退させるわよ、ニャン子、ピョン子!逃げ回って!」
「任せるピョン」「わかったニャン」
ネーコとラビはゾンビ群の前で囮になって走り回る。
リリアは様子見をみながら矢を放っていく。
「リリア、囮も良いが林に入られたらやりにくい」
今回助っ人に来ているオーガ達も攻撃しだした。
「いや、これで良いっす。道をまっすぐこられたら危ないっす」
「馬車が後退を始めるまでよ、討てるやつから倒して」

スケルトンとゾンビは目の前を左右に逃げまわるネーコとラビに目を奪われて右往左往している。
「林の中にもいるニャン」「思ったより多いピョン」
報告しながら二人ともなかなかうまい事道に出たり林に入ってりしながら囮になる。
「よし、俺達も群れから外れた奴から倒すぞ」
システムが上手い事機能しているようだ。リリアも直線的に道を進むゾンビに矢を射る。


「先輩、馬車が下がり始めたっす!」
リリアが振り返ると馬車が折り返して元来た道を戻り始めた。荷台が見える。
「よし、皆路上を集中砲火よ! ニャン、ピョン、囮になって道を戻ってきて!」リリアが矢をつがえながら指示を出す。
「わかったニャン!疲れてきたニャン」「今そっちにもどるピョン」
仲良しネーコとラビが息を合わせて道を戻って来た。
「皆、準備は良い?」リリアが息を合わせる。
「おう!スタンバイだ!」皆要領を得たりと待ち構える。
「リリたん、後はお願いピョン!」
ネーコとラビがリリア達の傍を走り去っていった。ゾンビが道の上を直線的に追ってきている。
「さぁ、いくわよ! 用意… 攻撃!!」
リリアが声をかけると魔法が火を噴きゾンビ群を先頭から薙ぎ払っていく。
リリアも弓で攻撃。次から次へと攻撃が撃ち込まれゾンビ達が倒れていく。
「よっしゃ、俺達もいくぜぇ!」
肉弾戦を得意とする者達が残った魔物に飛び込んでいく。
「ここからは剣で対応ね」
リリアも弓から剣に持ち変えるとゾンビ群に向かった。


「順調ね、これなら夕方前には村につくね」
リリア達は小高い丘で馬車を止めて全員で休憩中。
「本格的なリリアの戦闘を見ましたけど… 想像以上に的確に戦えるのですね。きちんと一緒に活動してみる事は重要だと感じています」コトロは思っていた以上にリリアが先頭に立って戦えることを知って感心している。
「久々本気で動き回っていい汗かいたニャン」
「怖いけどなんとか囮になれたピョン」
ネーコとラビにも良い刺激になっているようだ。
「今更見直したの?あたしってば、結構成長したのよ、うっふっふ」
リリアは水を飲みながら笑っている。

午後の草原は風が抜けて心地よかった
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