勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【138.5話】 木の上のネーコ ※暖かくなってきた頃の話し※

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外でノンビリ過ごすのに良い季節になってきた。
リリア達は城外の杉の丘、セダーヒルでプチBBQランチをしている。
コトロがバード仲間とセッションをするので、BBQの材料でも持って遊びにいかないかと誘われたのだ。
「音楽聞きながらBBQ!行くいく」
コトロがリリアの部屋に声をかけに行くとリリアは戸口でニコニコと答えた。
「はい、ではお昼くらいに… あの… 私以外にもリリアを呼びにくる事があるので、出来れば少し取り繕った恰好で応対してください」
コトロはリリアの飾らない姿に呆れながら階段を下りて行った。

そんなわけで、リリアとギルド・ルーダの風メンバー四人、コトロのバード仲間5人、それと珍しくラビが連れて来たうさ耳男性と連れ立ってセダーヒルにやって来た。リリアはBBQ道具を担いで、コトロ達は楽器を担いで丘を上がる。
「えっへっへ、ピョン子もついに彼氏できたの?仲良くする時はギルドの部屋使ったらいいよ。こっそりだったらバレないよ」リリアがニヤニヤしている。
「リリたん、まだそんなんじゃないピョン」ラビが汗あせしながら答える。
「あの… リリア、言っておきますけど、夜中忍んで来て朝帰りさせてもリリアはドッテンバッタン凄いですし、声が大きいので、皆知っていて知らん顔してるんですよ」コトロが淡々と注意する。
「ヴぇ!… 知ってたの?… 恥ずかしい…」
リリアがネーコとラビを見ると目を逸らしてしまった… メッチャ恥ずかしい…
「知らない顔するこちらの身にもなってください…」コトロが呟く。

コトロ達のセッションを聞きながらBBQ。ルーダ・コートの街並みが見え、城外農場やら春の花が咲くのが眺められる。最高!

リリア達は適当に剣の練習したり、球蹴りで遊んだり適当に過ごす。
「戦技と言ったら弓よね、教えるよ!」リリアの得意分野、得意技をネーコとラビに伝授したい。
「あの木を狙うピョン」
ピョン子は気を使って練習してくれるが
「じゃんじゃん、ぶっ飛ばすニャン!」
ニャン子はやりたい放題やるタイプ。
リリアはニャンがビュンビュン飛ばした矢を拾いにいくのが大変…

「春の花がいっぱい咲いているのが見えるニャン」と、そのうちセダーにするするとネーコは上がってしまった。


で、しばらくしたら、木の上からニャンがリリアを呼ぶのである。
「リリたん、助けてニャン。木から下りれなくなったニャン」とリリアを呼ぶ。
「下りれないって… 上がっていったんでしょ?逆転再生したらいいじゃないの!」リリアがニャンを見上げる。
「それが、上って来たきり下りれなくなったニャン。ちょこちょこある事ニャン」あまり悪びれていないご様子。
「上がって下りれなくなるって… 猫か!!」リリア。
「猫ニャン」ネーコ。
確かに猫だった… どうやら、リリアが救出しなければいけないようだ…

「あたし今、お腹いっぱい鶏の丸焼き食べたところなんだけど…」
リリアはしげしげとセダーを見上げる。最初の枝からして結構高い位置にある。厄介…
「大丈夫ニャン、リリたんは森ガールにゃん、早く助けるニャン、朝飯前ニャン」ニャン子は当然至極といった様子だ。
「朝飯前?今、お昼を食べたところだよ…」
確かに、長身の物理女にしては身軽なリリアだが、ロープ等のレンジャースキルがあればこそだ、こんな予想もつかない展開に何も用意していない。
「ラビのジャンプで最初の枝は摑まれるピョン。だけどウサギは木登りできないピョン」
リリアはラビを連れてきたが断られた。まぁ、うさ耳には無理か…

「ねぇ、コトロがちょっと勇ましくなる曲を弾いてよ。ニャン!勇気出して飛ぶよ!」
面倒は避けたいリリアはコトロに精神効果のある音楽を引いてニャンにジャンプさせるつもり。
「いやニャン!リリたん残酷ニャン!冒険者は皆解決方法が雑ニャン!効果が切れてから痛い思いしたくないニャン。残酷なテーゼにゃん!」ネーコが怒っている。
「… 残酷なテーゼをリクエストしてるよ、コトロ」リリアが言う。
「弾けないですよ。弾いたら色々問題が発生します。ギルドがつぶれます。それに、精神効果を与える音楽は被術者の了承がない場合、被術者とその周辺の状況が当該者に危険を及ぼす状況下にない場合に精神魔法、施術、あるいは楽器などにより精神的効果を与えた場合は違法行為になります」コトロがスラスラ述べる。
「… まったく、コトロは真面目よねぇ…」ため息のリリア。
「ギルマスはギルメンの手本ですから」コトロが言う。
「リリたん、面倒くさがらず早く助けるニャン」ネーコ。

そんなわけでリリアは木に登る。
「まったく…」愚痴りながらだが、上がってくると確かに眺めが良い。もう少し登ればギルドの建物と公園が見えそうだ。ネーコが無理して上がった理由はこれか?
「リリたん、気を付けるピョン」ラビとラビのフレンドは下で見守る。
コトロは呆れてセッションに戻ってしまった。
“ラビ、大好きよ!今度二人で山菜たっぷりクリスピーピッツァを食べにいこうね!”
リリアの心の声。

「後もう少しニャン」
ネーコは下りれなくなった枝に座りニコニコしている。
やっと後少しまで登って来た。
「ニャン子ちゃん、あなた本当は自力で下りれるでしょ」
長身、大柄、巨乳、大尻、態度もデッカイリリアがニャンの座る枝に足をかけた時だった。
「リリたんが体重かけたらダメにゃん!」
ネーコが叫んだ!
「バキッ!!」
ネーコの居た枝が折れた!不意に居場所を失ったネーコが変な姿で落下!…

「おぉぉーー」ラビ達の歓声。
ネーコは空中でスルっと姿勢を変えると手足で見事に着地してみせた。
「ネコは三半規管が凄いニャン」
無事なようだ、頻りにご自慢の平衡感覚を自慢している。
落下の恐怖は何だったんだ!!

で、
「ちょ、ちょっと助けてー」
今度は足場が無くなったリリアが枝にぶら下がってもがいている。

ネーコがコトロを呼んできた。
「助けて!助けて!」リリアがもがいている。
「… リリアが関わると驚くべき事態の連続になりますね」コトロが見上げて不思議がる。
「誰か助けて!上がってきて!」リリア。
「リリア、自分で上がれるでしょ」コトロ。
「鶏の丸焼きお腹いっぱい食べたの!今重いの!」
「リリたんは元々重いニャン」
「なんだとぉ!首根っこ掴むわよ!」
「立場分かってないニャン、生意気ニャン」
「わかった、謝る!ネーコ助けて!上がってきて」
「ネーコが下りれなくなるニャン、永久ループにゃん」
「コトたん、勇気付けの演奏するニャン。リリたん飛ばすニャン」ネーコがコトロに言う。
「雑!危険!あたし飛ばないから!」リリアが焦っている。
「… うーん、それしかないですね」
コトロがリュートを演奏し歌いだした。
「さっき、違法だって!いや、絶対飛ばない!危ない!歌辞めて!絶対に飛ばないから!… ちょ… 本当に… やめ… あたし… なんかいけそうな気がしてきた! なんか無駄に活力沸いてきた! リリアいっきまーす!」

リリアは大ジャンプ

「やむを得ない場合、当該状況が被術者の健康と安全を脅かす場合において当該者の了承無く精神効果のある演奏を認めると法規にあるのですよ」コトロは淡々としている。
「無茶させて!次のBBQはギルドで良いステーキ肉買いなさいよね!」
リリアは草むらにひっくり返って怒っている。
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