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【138話】 ベアクロ
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「…… あぁ… 魔物か… すまない… ねえちゃん… 状況は…」ベアマン男性の冒険者が言う。
「…… あたし、勇者リリア。あなた今酷い状態よ。あたしの仲間があなたの仲間の救援に魔物の後を追ってる。重傷者二人、一人は助からない… あなた今… 最悪の状況だよ…」リリアはゆっくりとはっきりと説明してあげる。
ぎゅっと左手をベアマンの脇腹に当ててあげた。これ以上この男に話をさせるなら、マスマス腸が押し出されかねない。
「…… どうなっている、説明しろ…」ベアマンが促す。
「…… 右肩から腕を失っているの… 顔、胸にかけて切り下げられてる… お腹も… 深い傷になってるの……」リリアが声を震わす。
「もうちょっと起こせ… 自分で確かめる… 血で目が… 腕が…案外痛くないもんだ… 脇腹……… あぁ…わかった…」
ベアマンは少し自分の体をみて再び仰向けになった。
「ねぇ… 当分苦しいけど回復は間に合うよ… つらいけど、冒険は終わるけど別な人生があるよ… そうしましょうよ…」リリアが言葉をかける。
「…… ここから回復か… 地獄だ… 治っても腕がない… ギルドに長年積み立てが…家族は当分なんとかなる…」
「なんで皆そんなに潔いの?… 残される人の事はどうでもいいの?」
「おまえ… 駆け出しか… 冒険者は冒険が終われば全て終わりだ… 苦しませるな… 幻想薬を…」
「お願い、一緒にお家帰ろうよ、家族の元に帰ろうよ… ねぇ…お願い…」
「素人が… 地獄を味合わせるのか?… 俺は助からん…お前の仕事は仲間を助けることだ… 敵を討ってくれ… くたばったのは誰だ?名前を聞いたか?」
リリアは振り返って倒れている男を見た。名前は聞けなかった。
「エルフの魔法衣の男よ…」
この男も苦しそうだ、少し幻想薬を飲ませるリリア。
「… エリオットか… 俺は… うぐうぅぅ…」
ベアマンは言いかけて突然苦痛に震えだした。全身に力が入りリリアの手に何かが押し出されるのが感じられる。
「… わッ… 駄目よ… お願いお話し聞かせて… がんばって…」
リリアは急いで幻想薬を流し込んでいく。
ただ飲ませれば良い物でもない。鎮痛でき、理性が残る量を飲ますには経験とセンスがいるのだ。
「… 俺は… 俺… は…」
ベアマンは苦しがっている。
「先輩、道までおびき出します!援護頼むっす!」ブラックからの通信が何度か入る。
ベアマンの最後と救援とどっちが大切であろうか?リリアには判断不能だが今この男を放っておけないし、後輩君はなんとか切り抜けてくれるだろう。
「… ぐッ… はっ… はっ……… ふぅう…」
ベアマンは苦し気に短く呼吸をしていたが薬が効いてきたのか少し息が長くなった。
「リリアよ!わかる? ポーションを飲ますわ、家に帰ろう!あたしが連れて帰る」リリアが呼びかける。
「俺は… もういい…… 地獄だ… 名前はベアクロ… 家族に… ぅ… ゴブッ!!」
少し楽になったのか話しかけ始めたが途端に大量に血を吐き出し始めた。
“もうだめだ…”リリアは膝に抱えてあげた。
「ベアクロ、残りを飲ますわ…」
吐血を続けるベアクロだ、幻想薬等いくらも胃に届く物ではないだろうが…
「…… あぁ… 空の下で… 大地の上で最後を迎える… 冒険者の誇りだ……… 冒険の無い日々等…… 地獄だ…」
ベアクロは虚ろになっていく表情で天を掴む。
「あなた素晴らしい冒険者だったわ、ベアクロ。今日、あなたに出会えてよかった」
リリアはその手を握りしめる。
「ベアトリス、ありがとう、家族を… たの…」
リリアの手を一度しっかりと握りしめると旅だっていった…
「立派な最後よ… 家族に伝えるわ… お疲れ様でした」リリアが呟く。
ブラックが怪我人を抱えて道に出る。デスナイトとソールイーターの魔物グループはブラックと言えど一人では大変だった。かなり消耗し怪我もしている。
「先輩、退治してきました。怪我人二人連れて来たっす。二人林の中に… 後で戻らないと…」
男を抱えて泣いているリリアの傍らに来ると怪我人を下し、道端に胡坐をかいた。
「先輩… その人…」
リリアの抱えている男の様子を見たブラックは声をかける。
「ブラキーごめんね!あたしこの人を放っておけなくて、傍にいてあげたかったの!ごめんね!ごめんね!」
リリアは堰を切ったように泣き声を上げ始めた。
「… 先輩さすがっす。その人も幸せだったはずっす…」ブラックはポツリと声をかけると怪我人の治癒を始めた。
ブラックの耳にはリリアの泣きじゃくる声とシェリフ達の声が近づいてくるのが聞こえた。
林の中は静かだった…
「…… あたし、勇者リリア。あなた今酷い状態よ。あたしの仲間があなたの仲間の救援に魔物の後を追ってる。重傷者二人、一人は助からない… あなた今… 最悪の状況だよ…」リリアはゆっくりとはっきりと説明してあげる。
ぎゅっと左手をベアマンの脇腹に当ててあげた。これ以上この男に話をさせるなら、マスマス腸が押し出されかねない。
「…… どうなっている、説明しろ…」ベアマンが促す。
「…… 右肩から腕を失っているの… 顔、胸にかけて切り下げられてる… お腹も… 深い傷になってるの……」リリアが声を震わす。
「もうちょっと起こせ… 自分で確かめる… 血で目が… 腕が…案外痛くないもんだ… 脇腹……… あぁ…わかった…」
ベアマンは少し自分の体をみて再び仰向けになった。
「ねぇ… 当分苦しいけど回復は間に合うよ… つらいけど、冒険は終わるけど別な人生があるよ… そうしましょうよ…」リリアが言葉をかける。
「…… ここから回復か… 地獄だ… 治っても腕がない… ギルドに長年積み立てが…家族は当分なんとかなる…」
「なんで皆そんなに潔いの?… 残される人の事はどうでもいいの?」
「おまえ… 駆け出しか… 冒険者は冒険が終われば全て終わりだ… 苦しませるな… 幻想薬を…」
「お願い、一緒にお家帰ろうよ、家族の元に帰ろうよ… ねぇ…お願い…」
「素人が… 地獄を味合わせるのか?… 俺は助からん…お前の仕事は仲間を助けることだ… 敵を討ってくれ… くたばったのは誰だ?名前を聞いたか?」
リリアは振り返って倒れている男を見た。名前は聞けなかった。
「エルフの魔法衣の男よ…」
この男も苦しそうだ、少し幻想薬を飲ませるリリア。
「… エリオットか… 俺は… うぐうぅぅ…」
ベアマンは言いかけて突然苦痛に震えだした。全身に力が入りリリアの手に何かが押し出されるのが感じられる。
「… わッ… 駄目よ… お願いお話し聞かせて… がんばって…」
リリアは急いで幻想薬を流し込んでいく。
ただ飲ませれば良い物でもない。鎮痛でき、理性が残る量を飲ますには経験とセンスがいるのだ。
「… 俺は… 俺… は…」
ベアマンは苦しがっている。
「先輩、道までおびき出します!援護頼むっす!」ブラックからの通信が何度か入る。
ベアマンの最後と救援とどっちが大切であろうか?リリアには判断不能だが今この男を放っておけないし、後輩君はなんとか切り抜けてくれるだろう。
「… ぐッ… はっ… はっ……… ふぅう…」
ベアマンは苦し気に短く呼吸をしていたが薬が効いてきたのか少し息が長くなった。
「リリアよ!わかる? ポーションを飲ますわ、家に帰ろう!あたしが連れて帰る」リリアが呼びかける。
「俺は… もういい…… 地獄だ… 名前はベアクロ… 家族に… ぅ… ゴブッ!!」
少し楽になったのか話しかけ始めたが途端に大量に血を吐き出し始めた。
“もうだめだ…”リリアは膝に抱えてあげた。
「ベアクロ、残りを飲ますわ…」
吐血を続けるベアクロだ、幻想薬等いくらも胃に届く物ではないだろうが…
「…… あぁ… 空の下で… 大地の上で最後を迎える… 冒険者の誇りだ……… 冒険の無い日々等…… 地獄だ…」
ベアクロは虚ろになっていく表情で天を掴む。
「あなた素晴らしい冒険者だったわ、ベアクロ。今日、あなたに出会えてよかった」
リリアはその手を握りしめる。
「ベアトリス、ありがとう、家族を… たの…」
リリアの手を一度しっかりと握りしめると旅だっていった…
「立派な最後よ… 家族に伝えるわ… お疲れ様でした」リリアが呟く。
ブラックが怪我人を抱えて道に出る。デスナイトとソールイーターの魔物グループはブラックと言えど一人では大変だった。かなり消耗し怪我もしている。
「先輩、退治してきました。怪我人二人連れて来たっす。二人林の中に… 後で戻らないと…」
男を抱えて泣いているリリアの傍らに来ると怪我人を下し、道端に胡坐をかいた。
「先輩… その人…」
リリアの抱えている男の様子を見たブラックは声をかける。
「ブラキーごめんね!あたしこの人を放っておけなくて、傍にいてあげたかったの!ごめんね!ごめんね!」
リリアは堰を切ったように泣き声を上げ始めた。
「… 先輩さすがっす。その人も幸せだったはずっす…」ブラックはポツリと声をかけると怪我人の治癒を始めた。
ブラックの耳にはリリアの泣きじゃくる声とシェリフ達の声が近づいてくるのが聞こえた。
林の中は静かだった…
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