勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【129.5話】 カニボロウス ※メイレル村 Day2の話し※

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フレイル村Day 2の午後
リリアはカニボロウスに捕食されていた…
「むぐぅ!… むぐぅ!…」何か叫んで葉っぱの間から足をバタバタもがいている…

何でこうなった?…


カニボロウス 四等級魔物指定(並びに一部益魔物指定)
食虫植物のデッカイやつ。自立移動しない植物系魔物。大カマキリ、大魔クモ、ドラゴンフライ等の大型昆虫等を捕食する。人間が捕食されることは滅多にない。子供がいたずらをしてたまに葉に捕らえられることがあるが、子供数名、大人なら一人で何とか脱出可能。
いきなり嚙まれたり、消化されることは無いが、気絶状態が続く等すると消化液によりダメージを受けたり、最悪はそのまま死に至り消化される。
似た魔物でカニバラー(三等級魔物指定)がいる。こちらは自立移動して自ら人間、動物、昆虫等を捕食する。葉に歯があり、捕らえると同時にガリガリ噛まれる。痛い!そして直接の死因になる。
リリアはカニボロウスに捕まった。一般的には人間はこんなことにならない…


おやつ時に班で小休止していたリリア達。
「あたし、ちょっと下の川で水筒に水汲んでくる。それとお花摘みよ。誰か一緒に来る?」リリアが皆に声をかける。疲れた体に糖分と水分。水分の摂取でトイレが近い。
「お花摘みまで付き合わないよ」皆が首を振る。
ってなわけで、一人でリリアはちょっと下にある川に下りて行った。

「お!ここ下りれそうじゃない」呟くリリア。
草がうっそうとしているが斜面が少しなだらかになっていて、ステップを踏んでショートカットできそうな場所がある。
「リリアちゃんってば、こう見えても身軽なのよぉ~… ヨッ!」口ずさんで足を踏み出した。
事実、長身巨乳、そこそこ大きなお尻のリリアだが、身のこなしは軽い。
まぁ、魔力もパワーも無い分何か特技が無いと今まで生き延びてもいないだろう…

で、「ぴょぎ!!」
変な声を上げて斜面から落下した。

うっそうと草が生えていたが実際見当違いの場所に足を踏み出したのだ。空をかいて落下。
“痛い思いをする!”2mくらいの落下は覚悟だろうか?受け身をとろうと身構えたが、
“ボソッ!!”と何かに受け止められた。
良かった!尻もちつかずに済んだ!ラッキー!と思ったリリア。
カニボロウスの葉の上に落ち、パクっとやられていた。アンラッキー…
自分がそうなったと理解するまでちょっと時間がかかった。
リリアは万歳姿で上半身が葉に捕まり、下半身が葉から出ている変な姿で捕まった。

「……… これは… あたしカニボロウスの中かな?… 冗談じゃない」
下半身が出ているので葉は完全に閉じているわけではない。見ると口の間から光が見える。
脱出を試みるが変な恰好で捕まってしまったので力が入らない。足をバタバタしてみたが無意味。
「わわ!ネトネトしてきた!消化液!髪の毛が痛む!」
慌てる必要はない。大人なら冷静に脱出できるはず。まぁ、一人で出れなくても班の仲間がいる。助けを呼べば…
“待てまて…”
こんな物に挟まったのが見つかったら笑われる。特にペコにはこれ以上ネタを提供したくない。後輩ブラックに対して先輩としての威厳もある。自分で脱出してしれっと戻りたい。
リリアはしばらくもがいてみたが恰好が恰好で力が入らない上、内側からというのはなかなか手強い。ぬるぬるなのも悪条件。
“ダガーで切っちゃえ!”と思ったが狭くて腰まで手が回らない。
またしばらくもがいていたが、どうにも脱出できない。そのうち髪がキシキシして、肌も痒くなってきた。
「痛い!いててて!」
消化液が目に入って来た。これは激痛!泣きが入る。
「リリアよ!オフェリアちょっと川まで来て!… こちらリリア!誰か来て!」
こうなったら恥も外聞もない、通信のイヤリングに何とか触れながら通信してみたが、消化液がついているせいか機能しない。指先を髪等で拭いてみるが既に液まみれなのだ、効果なし。
「誰かぁ! 助けてえぇ!! お願い誰か来て!」
とうとうリリアは叫び始めた。恥も外聞もない。
葉に覆われているが隙間が空いている。戻らなければ誰かが探しに来るはずだから焦る必要はないが… 髪は荒れるし肌に悪いし目も痛いし… 焦る…

「…… ココア?… ココア!ここよ!助けて!」
しばらくすると、ココアの声が近づいてきた。
「リリア?You、皆待ってるYo!」戻らないので探しに来たようだ。
「ココア!ここよ!助けて!場所?… ちょっとわかんない、キョロキョロして!探して!」
「You、どこYo?」
リリアもいきなり捕まった。どこと言われてもわからない。しばらくこのやり取りをしてようやくココアが発見してくれたようだ。
「You、高い所にひっかかってるYo,届かないYo、武器も取りに戻らないTo」ココアが言う。
「You,精神効果を与えるYo、自分で出ちゃいなYo! ボンボン、プーチキプー、ズンチャ、ズンチャ…」ココアがボーカルパーカッションを始めた。今の状況では… 要らない…
「ね!それいいから、オフェリア呼んできて!オフェリアだけ呼んできて」
「ズンチャカズンチャカ、ピッピーボンボン… チンチンチンチンチンチンチン!」
リリアの声が聞こえないのかパーカッションが続き、トライアングルの乱れ打ちが始まった。こうなると当分終わらない。

「チンチン…」はトライアングルの音だ。
うら若き女性が口から卑猥な言葉を発しているのではない…ましてや連呼していない…

「ね!それはいいから!勇気も激高感とか要らないから!オフェリア呼んできて!」
精神効果が出てきて体に力と勇気がわいてきたが、もともと体勢が悪すぎるのだ。全く意味がない。歯がゆくイライラ感が増すだけ。

結局ココアは「英雄譚(長大スケール編)」を全章節唄ってから
「人呼んで来るYo!」と戻っていった… なら初めからそうしてくれ!!


「父さん、母さん、リリアは上半身だけヴァルキリー神殿に届けられちゃうかも…」
情けなくて泣きそうだ。いや、目に入った消化液でさきほどからボロボロと涙をこぼしている。
ココアが応援を呼びに行くとしばらく川辺は静かになった。

食虫植物の葉からリリアが足をブラブラさせている、シュールな光景が大自然の一画にある…
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