257 / 517
【129話】 リリア達と行方不明者
しおりを挟む
「助けに戻る、皆はここで回復して村に戻って」リリアが言う。
「無茶だ。見捨てないのと、死にに行くのと違うぞ」反対の声があがる。
「… 入れ違いにならようにここに数名残したら後は村に戻って、シェリフ達を呼んできて」リリアが声を震わす。
「一人で戻ったら村の助けが到着するまで生きてないぞ」
「リリア、通信はしたし、ミーティングでここに集合する事は皆知ってるから、少し待ちましょう。遅れて戻ってきているかも。まずあなたも回復しないと、少し待って様子を見ましょう」
「… そっか…そうね、少し回復ね…」
リリアは自分も怪我をしていることに気が付いた。少し腰を落ち着ける。
「後輩君、リリアから目を離さないで。変に正義感だけは強いんだから」
「うっす」
ペコがブラックに注意する。
リリア達はオフェリア達の捜索に出た。
しばらく待機していたが集落に戻って来ない行方不明者達。日が落ちる前には探さないと魔物だらけの荒野では明日の朝まで生きられないだろう。
「あたし、行く!とにかく助けたい!」リリアがペンダントを握りしめて言うのである。
冒険者のほとんどはヴァルキリーを信仰している。仲間を置き去りに出来ないのは一緒だが無謀過ぎる。
「へっぽこ勇者、変に決心しちゃっている、あれは行かせらんないよ」ペコがブラックに言う。
「俺、先輩の気持ちわかるっす」ブラックが答える。
「……… アホなの?死にに行くのと助けに行くのと違うのよ」アホがここにも… ペコは呆れる。
「俺たちも助けたいのは一緒だ。日没前までが勝負」
周りの手練れが焦るリリアを引き留め作戦を立ててくれた。
通信が途絶えた位置、現在通信範囲外な事を考えて、街道に出ていない想定で居場所を推測する。
「恐らく、道と反対のこっちの沢の方へ逃れていっている。言っても全員経験者だ。落ち着けば集落の位置も検討つけるだろう。この方面に向かって探す。これ以上は犠牲を出さないよう、慎重に進むんだ」ガルトが冷静に指示を出してくれた。
負傷者と居残りが集落に留まり、一班は村に連絡に戻る。動ける者達を二班に分けて捜索に出た。
「あたしも行く!オフェリアも皆も探し出さないと!アリスも行方不明だよ、ペコだって心配でしょ!」
「私も行くよ。アリスの心配はしてない、アリスは大丈夫。リリア、あなたが一番心配よ」
リリアの様子を見るに、変な決心をしているのが伝わってくる。こういう奴が一番危ない。
この物理女はここに存在しているが精神的に行方不明中だ。ペコが思うにリリアは伝説級のアホ勇者だが、人畜無害のエア勇者の今、歴史の中に葬り去られ「そんなやついたっけ?」と言われるには惜しい気がする。
とにかく日没までに集落に戻る事を目途に捜索開始。
リリア班とガルト班で北東の森を捜索。ガルト班は沢の崖の上を、リリア達が沢と川に沿って進む。
魔物は多くないように見えるが、退路の確認をしながら慎重に警戒しながら進む。
リリアの班にはオフェリアとココアの代わりにベアマン二人、ロドベアとクロックマーが同行する。
「オフェリア達四名と合流できたぞ。かなり怪我して憔悴しているが、命は大丈夫そうだ。これからガルト班は集落まで一緒に戻る」
森を進むとオフェリア達から通信が入って来た。オフェリア、ココアと行方不明二名は合流していたようだ。連絡が取り合われ、ようやく沢沿いに出てきて合流。
ガルト班が連れて帰る。
「了解よ、リリアはウィスキー5を北に移動中。ガルトは一度戻って」リリアが通信する。
「ガルト了解。もう日が暮れてくる。後少ししたらリリアも戻れ。ローズのことだ無事に戻ってくるだろう」
「……… そうね… 了解…」リリアが答える。
「もうタイムアップだ、引き返さないと日が落ちる」ロドベアが言う。
「… でも、ローズ達が… アリスも一緒だよ…」リリアがペコを振り返る。
「…… ローズなら何とかする… アリスだって…」ペコが絞り出すように言う。
「……… でも… わかった…」リリアが言いかけた時だった。
「先輩、あそこ、ほら」ブラックが小声で指をさす。
見ると沢を少し上がったところに人がいる。8名程度だろうか?かがんで何かをしている。
“スタンバイ”
リリアが合図すると全員、傍の岩陰に身を潜めた。
「あれ、漁りじゃない?」
「あぁ、恐らくな…」
「漁ってるのは誰の死体?まさか…」
「確かめるしかないだろ、ぶっ殺してやる」
「待って、漁ってるだけなら人権があったはず、漁り狂かどうか… 殺す前に確かめないと」リリアは勇者として変に真面目。いや、これがまともな方か?
「はぁ?あまえ正気か?どっちでも一緒だ、死者への冒涜だ、殺せ」
「… とにかく、ブラック、ロドベア、クロックマーは注意して接近。攻撃されたら即座に反撃よ。あたしとペコはバックアップ。ペコ… 気力持つ?」リリアがペコに聞く。
「あんた誰の心配してんのよ!ほっといてよ。それより反撃って何するの?はっきりさせなさいよ」ペコは少し声を荒げる。疲労は隠せない。
ペコの言葉で皆リリアを見つめる。
「攻撃されたら… 反撃よ… だから… みな…」
「ちょっと、聞こえる様にはっきり話しなさいよ」
ペコがリリアに注意する。
「先制攻撃を持って戦場荒らし狂、特別指定魔物と認定… 武器・魔法の仕様許可と… 殺処分を許可する… 全員スタンバイ」
「了解、スタンバイ」
渋々言うリリアに復唱すると全員位置に散っていった。
影の落ちた沢周辺はせせらぎの音。
人影が黙々とかがんで作業する姿が不気味に見えた。
「無茶だ。見捨てないのと、死にに行くのと違うぞ」反対の声があがる。
「… 入れ違いにならようにここに数名残したら後は村に戻って、シェリフ達を呼んできて」リリアが声を震わす。
「一人で戻ったら村の助けが到着するまで生きてないぞ」
「リリア、通信はしたし、ミーティングでここに集合する事は皆知ってるから、少し待ちましょう。遅れて戻ってきているかも。まずあなたも回復しないと、少し待って様子を見ましょう」
「… そっか…そうね、少し回復ね…」
リリアは自分も怪我をしていることに気が付いた。少し腰を落ち着ける。
「後輩君、リリアから目を離さないで。変に正義感だけは強いんだから」
「うっす」
ペコがブラックに注意する。
リリア達はオフェリア達の捜索に出た。
しばらく待機していたが集落に戻って来ない行方不明者達。日が落ちる前には探さないと魔物だらけの荒野では明日の朝まで生きられないだろう。
「あたし、行く!とにかく助けたい!」リリアがペンダントを握りしめて言うのである。
冒険者のほとんどはヴァルキリーを信仰している。仲間を置き去りに出来ないのは一緒だが無謀過ぎる。
「へっぽこ勇者、変に決心しちゃっている、あれは行かせらんないよ」ペコがブラックに言う。
「俺、先輩の気持ちわかるっす」ブラックが答える。
「……… アホなの?死にに行くのと助けに行くのと違うのよ」アホがここにも… ペコは呆れる。
「俺たちも助けたいのは一緒だ。日没前までが勝負」
周りの手練れが焦るリリアを引き留め作戦を立ててくれた。
通信が途絶えた位置、現在通信範囲外な事を考えて、街道に出ていない想定で居場所を推測する。
「恐らく、道と反対のこっちの沢の方へ逃れていっている。言っても全員経験者だ。落ち着けば集落の位置も検討つけるだろう。この方面に向かって探す。これ以上は犠牲を出さないよう、慎重に進むんだ」ガルトが冷静に指示を出してくれた。
負傷者と居残りが集落に留まり、一班は村に連絡に戻る。動ける者達を二班に分けて捜索に出た。
「あたしも行く!オフェリアも皆も探し出さないと!アリスも行方不明だよ、ペコだって心配でしょ!」
「私も行くよ。アリスの心配はしてない、アリスは大丈夫。リリア、あなたが一番心配よ」
リリアの様子を見るに、変な決心をしているのが伝わってくる。こういう奴が一番危ない。
この物理女はここに存在しているが精神的に行方不明中だ。ペコが思うにリリアは伝説級のアホ勇者だが、人畜無害のエア勇者の今、歴史の中に葬り去られ「そんなやついたっけ?」と言われるには惜しい気がする。
とにかく日没までに集落に戻る事を目途に捜索開始。
リリア班とガルト班で北東の森を捜索。ガルト班は沢の崖の上を、リリア達が沢と川に沿って進む。
魔物は多くないように見えるが、退路の確認をしながら慎重に警戒しながら進む。
リリアの班にはオフェリアとココアの代わりにベアマン二人、ロドベアとクロックマーが同行する。
「オフェリア達四名と合流できたぞ。かなり怪我して憔悴しているが、命は大丈夫そうだ。これからガルト班は集落まで一緒に戻る」
森を進むとオフェリア達から通信が入って来た。オフェリア、ココアと行方不明二名は合流していたようだ。連絡が取り合われ、ようやく沢沿いに出てきて合流。
ガルト班が連れて帰る。
「了解よ、リリアはウィスキー5を北に移動中。ガルトは一度戻って」リリアが通信する。
「ガルト了解。もう日が暮れてくる。後少ししたらリリアも戻れ。ローズのことだ無事に戻ってくるだろう」
「……… そうね… 了解…」リリアが答える。
「もうタイムアップだ、引き返さないと日が落ちる」ロドベアが言う。
「… でも、ローズ達が… アリスも一緒だよ…」リリアがペコを振り返る。
「…… ローズなら何とかする… アリスだって…」ペコが絞り出すように言う。
「……… でも… わかった…」リリアが言いかけた時だった。
「先輩、あそこ、ほら」ブラックが小声で指をさす。
見ると沢を少し上がったところに人がいる。8名程度だろうか?かがんで何かをしている。
“スタンバイ”
リリアが合図すると全員、傍の岩陰に身を潜めた。
「あれ、漁りじゃない?」
「あぁ、恐らくな…」
「漁ってるのは誰の死体?まさか…」
「確かめるしかないだろ、ぶっ殺してやる」
「待って、漁ってるだけなら人権があったはず、漁り狂かどうか… 殺す前に確かめないと」リリアは勇者として変に真面目。いや、これがまともな方か?
「はぁ?あまえ正気か?どっちでも一緒だ、死者への冒涜だ、殺せ」
「… とにかく、ブラック、ロドベア、クロックマーは注意して接近。攻撃されたら即座に反撃よ。あたしとペコはバックアップ。ペコ… 気力持つ?」リリアがペコに聞く。
「あんた誰の心配してんのよ!ほっといてよ。それより反撃って何するの?はっきりさせなさいよ」ペコは少し声を荒げる。疲労は隠せない。
ペコの言葉で皆リリアを見つめる。
「攻撃されたら… 反撃よ… だから… みな…」
「ちょっと、聞こえる様にはっきり話しなさいよ」
ペコがリリアに注意する。
「先制攻撃を持って戦場荒らし狂、特別指定魔物と認定… 武器・魔法の仕様許可と… 殺処分を許可する… 全員スタンバイ」
「了解、スタンバイ」
渋々言うリリアに復唱すると全員位置に散っていった。
影の落ちた沢周辺はせせらぎの音。
人影が黙々とかがんで作業する姿が不気味に見えた。
0
お気に入りに追加
24
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


婚約破棄騒動に巻き込まれたモブですが……
こうじ
ファンタジー
『あ、終わった……』王太子の取り巻きの1人であるシューラは人生が詰んだのを感じた。王太子と公爵令嬢の婚約破棄騒動に巻き込まれた結果、全てを失う事になってしまったシューラ、これは元貴族令息のやり直しの物語である。
女神様の使い、5歳からやってます
めのめむし
ファンタジー
小桜美羽は5歳の幼女。辛い境遇の中でも、最愛の母親と妹と共に明るく生きていたが、ある日母を事故で失い、父親に放置されてしまう。絶望の淵で餓死寸前だった美羽は、異世界の女神レスフィーナに救われる。
「あなたには私の世界で生きる力を身につけやすくするから、それを使って楽しく生きなさい。それで……私のお友達になってちょうだい」
女神から神気の力を授かった美羽は、女神と同じ色の桜色の髪と瞳を手に入れ、魔法生物のきんちゃんと共に新たな世界での冒険に旅立つ。しかし、転移先で男性が襲われているのを目の当たりにし、街がゴブリンの集団に襲われていることに気づく。「大人の男……怖い」と呟きながらも、ゴブリンと戦うか、逃げるか——。いきなり厳しい世界に送られた美羽の運命はいかに?
優しさと試練が待ち受ける、幼い少女の異世界ファンタジー、開幕!
基本、ほのぼの系ですので進行は遅いですが、着実に進んでいきます。
戦闘描写ばかり望む方はご注意ください。
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

婚約破棄を申し込まれたので、ちょっと仕返ししてみることにしました。
夢草 蝶
恋愛
婚約破棄を申し込まれた令嬢・サトレア。
しかし、その理由とその時の婚約者の物言いに腹が立ったので、ちょっと仕返ししてみることにした。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる