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【特話】 メリークリスマス ※昔の話し※
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「えっと… クリスマス… まずは… 七面鳥… よね…」
リリアはメモを覗きながら呟く。
「じゃあ、肉屋から回るか」アランが答えながら歩き出した。
リリアがウッソ村のシェリフリーダーになって初めてクリスマスの買い出しのためゼフ、アランと共にルーダ・コートの街までやってきた。
父ガウが居た頃、毎年クリスマスを村で祝っていた。クリスマスの2週間程前に街でお祝い用の七面鳥と子供達にお菓子などを注文に来て、イブに配達をしてもらうのだ。
配達されるのを村の女が調理し、男達がBBQの準備等をして、子供達はワクワクしながら夜のパーティーを待つ。
襲撃でガウがいなくなってから途切れていた行事だが、リリアがリーダーになったのを機に復活させようと思い立った。
まぁ、リーダーと言ってもリリアは15歳の娘だ。周りの子から「クリスマスパーティーを復活させよう!!」と言われれば、復活させる。子供の意見が多く採用されがちになるのは当然。
街に買い物自体はゼフと来ているがクリスマスの買い物は初めて。父から注文を教わった事等もないが、傍で見ていた事を思い出しながら忠実に再現したら、なんとかなるはずだとリリアは思っている。
「ファーザー・ゼフはいつもこんな感じなのか?」アランがリリアに聞く。
12月といってもこの地方はあまり寒くない。天気も良いし街中は夏服で活動的に動き回っている人間と、ちょっとした長袖類を羽織る貴婦人が入り混じっている。
「そね、街に来ると自分の買い物以外は全部あたしに任せっきりが多いよ。旧友や教会に挨拶してるみたい」リリアが答える。
今日はアランも一緒だし、安心して放ったらかしのようだ。リリアもそっちのほうが気が楽。
「七面鳥十羽ください。クリスマスイブの昼頃、ウッソ村に届けて欲しいの」リリアは肉屋の店主に注文する。村に十数羽いるが、生かす分も含めて足りない数を注文する。
「… おや!しばらくクリスマスの注文に来てなかったねぇ。他所の店に浮気していたのか!やっぱりウチが安くて一番だろ?」店主がリリアの顔見て、わっはっはと笑っている。
「他所に行ってたわけじゃないよ。しばらく開催してなかったのよ。今年から復活よ」リリアが話していると奥から店主の妻が顔をだした。
「あぁ、リリアちゃんかい。ここのところ大きな買い物に来ないと思ってたけど、元気だったかい、今日はあの丈夫そうなお父さんは、ガウムドさんは一緒かい?」
「奥さんにも神のご加護がありますように!… お父さんは… もういないのよ… これからはあたしが父さんの代わりよ」リリアはニコニコしている。
「…… そうかい… リリアちゃんならしっかり者だから… これからもウチを使っとくれよ」店主と妻が言う。ちょっと気まずそうだが、よくあることだ。
「タマゴも…60個ね。 父さんは80個から100個注文してた?… 残念だけど、村から持って来た野菜類が高く売れてないのよ、今年は60よ… 12個おまけしてくれるの!… ぅえーい、ありがとう!おじさんもおばさんも大好きよ!… 後はお菓子類とベリー酒を二樽か… じゃ、七面鳥とタマゴを酒屋のボブさんに届けて馬車に積んでもらってね。七面鳥はさばいてね… じゃあ、またね」
クリスマスの注文と村の買い物を終え、アランと屋台で時間つぶしをするリリア。
「… パーティーの材料?大丈夫だろう。今日の注文の他にも村の野菜も出すし、ジョージーさんところの豚も出てくるぞ」アランが酒にチーズをつまみながら話す。
「え!!トンちゃん今年までなの?… そっかぁ… トンちゃんどうりで最近…」リリアは言いながら村の人気者、トンちゃんを思い浮かべる。どうりで最近ジョージーがやたら口に押し込むように雑穀を食わせて丸々してきたと思っていた。
「村の子達泣くわなぇ。トンちゃんがいなくなるだなんて。でも、今年のクリスマスは豪勢になるわねぇ」リリアはスイカジュースを飲んでいる。
「まぁ、いつかはこうなる… なんで、あのトンちゃんだけ名前が付いてるんだ?他にも何頭か豚はいるだろう」アランが質問する。そっかアランはあの後、村に戻って来たんだっけ…
「誰が名前つけたのかしら?トンちゃんは今年8歳になるのよ」
「年齢まで数えているのか、随分人気者だな」アランが笑う。
「襲撃があった夜、ジョージーの所も焼けたけど、直前に生まれたトンちゃんだけ生き残ったのよ。それで、誰かがいつ間にか名前をつけたんじゃない?」
「…… そうか、あれから8年か… それでリリアがクリスマスを村でやろうって言ったらジョージーがあれをお祝いに出すって言ったんだな…」
言い終わると、テーブルの上は何とも言えない静けさが訪れた。
「待たせたな、ちょっと話が混んでな、すまない、すまない」ゼフが村の男と現れた。
「知り合いの教会で、チーズケーキとパンプキンケーキを沢山焼いてくれてな、我々を招待してくれると言っておるのだ、少し早いがクリスマスケーキだ」白髭を蓄えたゼフがニッコリ笑う。
「おう!いいな、ちょうど甘いものが欲しかったんだ。リリア、俺達は村より少し早くメリークリスマスだ」アランが笑って立ち上がる。
リリアも残ったスイカジュースを勢いよく飲み干して立ち上がった。
「そね、皆さんメリークリスマスね」
リリアもニッコリと笑う。
リリアはメモを覗きながら呟く。
「じゃあ、肉屋から回るか」アランが答えながら歩き出した。
リリアがウッソ村のシェリフリーダーになって初めてクリスマスの買い出しのためゼフ、アランと共にルーダ・コートの街までやってきた。
父ガウが居た頃、毎年クリスマスを村で祝っていた。クリスマスの2週間程前に街でお祝い用の七面鳥と子供達にお菓子などを注文に来て、イブに配達をしてもらうのだ。
配達されるのを村の女が調理し、男達がBBQの準備等をして、子供達はワクワクしながら夜のパーティーを待つ。
襲撃でガウがいなくなってから途切れていた行事だが、リリアがリーダーになったのを機に復活させようと思い立った。
まぁ、リーダーと言ってもリリアは15歳の娘だ。周りの子から「クリスマスパーティーを復活させよう!!」と言われれば、復活させる。子供の意見が多く採用されがちになるのは当然。
街に買い物自体はゼフと来ているがクリスマスの買い物は初めて。父から注文を教わった事等もないが、傍で見ていた事を思い出しながら忠実に再現したら、なんとかなるはずだとリリアは思っている。
「ファーザー・ゼフはいつもこんな感じなのか?」アランがリリアに聞く。
12月といってもこの地方はあまり寒くない。天気も良いし街中は夏服で活動的に動き回っている人間と、ちょっとした長袖類を羽織る貴婦人が入り混じっている。
「そね、街に来ると自分の買い物以外は全部あたしに任せっきりが多いよ。旧友や教会に挨拶してるみたい」リリアが答える。
今日はアランも一緒だし、安心して放ったらかしのようだ。リリアもそっちのほうが気が楽。
「七面鳥十羽ください。クリスマスイブの昼頃、ウッソ村に届けて欲しいの」リリアは肉屋の店主に注文する。村に十数羽いるが、生かす分も含めて足りない数を注文する。
「… おや!しばらくクリスマスの注文に来てなかったねぇ。他所の店に浮気していたのか!やっぱりウチが安くて一番だろ?」店主がリリアの顔見て、わっはっはと笑っている。
「他所に行ってたわけじゃないよ。しばらく開催してなかったのよ。今年から復活よ」リリアが話していると奥から店主の妻が顔をだした。
「あぁ、リリアちゃんかい。ここのところ大きな買い物に来ないと思ってたけど、元気だったかい、今日はあの丈夫そうなお父さんは、ガウムドさんは一緒かい?」
「奥さんにも神のご加護がありますように!… お父さんは… もういないのよ… これからはあたしが父さんの代わりよ」リリアはニコニコしている。
「…… そうかい… リリアちゃんならしっかり者だから… これからもウチを使っとくれよ」店主と妻が言う。ちょっと気まずそうだが、よくあることだ。
「タマゴも…60個ね。 父さんは80個から100個注文してた?… 残念だけど、村から持って来た野菜類が高く売れてないのよ、今年は60よ… 12個おまけしてくれるの!… ぅえーい、ありがとう!おじさんもおばさんも大好きよ!… 後はお菓子類とベリー酒を二樽か… じゃ、七面鳥とタマゴを酒屋のボブさんに届けて馬車に積んでもらってね。七面鳥はさばいてね… じゃあ、またね」
クリスマスの注文と村の買い物を終え、アランと屋台で時間つぶしをするリリア。
「… パーティーの材料?大丈夫だろう。今日の注文の他にも村の野菜も出すし、ジョージーさんところの豚も出てくるぞ」アランが酒にチーズをつまみながら話す。
「え!!トンちゃん今年までなの?… そっかぁ… トンちゃんどうりで最近…」リリアは言いながら村の人気者、トンちゃんを思い浮かべる。どうりで最近ジョージーがやたら口に押し込むように雑穀を食わせて丸々してきたと思っていた。
「村の子達泣くわなぇ。トンちゃんがいなくなるだなんて。でも、今年のクリスマスは豪勢になるわねぇ」リリアはスイカジュースを飲んでいる。
「まぁ、いつかはこうなる… なんで、あのトンちゃんだけ名前が付いてるんだ?他にも何頭か豚はいるだろう」アランが質問する。そっかアランはあの後、村に戻って来たんだっけ…
「誰が名前つけたのかしら?トンちゃんは今年8歳になるのよ」
「年齢まで数えているのか、随分人気者だな」アランが笑う。
「襲撃があった夜、ジョージーの所も焼けたけど、直前に生まれたトンちゃんだけ生き残ったのよ。それで、誰かがいつ間にか名前をつけたんじゃない?」
「…… そうか、あれから8年か… それでリリアがクリスマスを村でやろうって言ったらジョージーがあれをお祝いに出すって言ったんだな…」
言い終わると、テーブルの上は何とも言えない静けさが訪れた。
「待たせたな、ちょっと話が混んでな、すまない、すまない」ゼフが村の男と現れた。
「知り合いの教会で、チーズケーキとパンプキンケーキを沢山焼いてくれてな、我々を招待してくれると言っておるのだ、少し早いがクリスマスケーキだ」白髭を蓄えたゼフがニッコリ笑う。
「おう!いいな、ちょうど甘いものが欲しかったんだ。リリア、俺達は村より少し早くメリークリスマスだ」アランが笑って立ち上がる。
リリアも残ったスイカジュースを勢いよく飲み干して立ち上がった。
「そね、皆さんメリークリスマスね」
リリアもニッコリと笑う。
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