61 / 514
【31話】 ジレンマ
しおりを挟む
リリアは地べたに深く腰を下ろしている。深くはないが傷を負った。体に付着しているのが自分の血か賊の血かよくわからない。ようやく終わった…
ファイヤー・ボールも直撃した、体中痛いし、髪の毛も傷んでしまう。
ペコは息のある賊を二人確認し、残りの虫の息の者達を確認しては止めを刺して回っている。かなり残忍な行為だがリリアは茫然と見送っている。
アリスが駆け寄ってきた。
「ア、アリス、リリアを治癒して… あれ?…」
アリス、リリアに構わず走り抜けて行っちゃった… と、思ったら犠牲になっていた女性の元へ。まぁ、そりゃそうか…
“あぁ… あたしもポーション持ってるわ”少し落ち着いてきたリリア。震える手でポーションをあおる。
「ぶっ… ゴフ…」喉を上手く通らない、ゆっくりと残り半分のポーションを飲む。
喉がカラカラなのでやたら美味しく感じる。
「リリア、もう落ちつたでしょ、そこの二人、生きてるなら止めを刺しちゃって」ペコだ、容赦ない。
リリアは立ち上がると被害者とペコ達の居る方に歩き出した。
二人の内一人は虫の息だが、見なかったことにする。助からないだろうし、リリアは止めを刺せそうもない。
リリアがペコ達の側に立つ。アリスは介抱中。ペコは二人の賊にちょっとポーションを飲ませた。何の意味があるのだろうか?
ペコが一人に言う
「これでお前ら全員か?残りの仲間は?他に女子供を連れ去ったか?」
「…… ぅぅ…」呻くのみ、答えたくないのか、答えられないのか…
「ファイヤー」ペコは唱えると賊を焼いてしまう。苦しむ声と焼く臭いと…
「お前は焼かれて死にたいか、ポーションを飲んで家に帰りたいか」
ペコが残りの賊に聞く。一人は見せしめか… 恐ろしい…
絶え絶えだが、賊が言うには連れ去られた女子供はもういないらしい、恐らく本当なのだろう。
答えを聞くとペコはあっさり止めを刺してしまった。ポーションを飲まされ半殺しで尋問され、最後は止め… 悪行も鬼畜なら、善もまたしかり、リリアはやるせない。
ペコが言うには、死んでいるんだから約束なんか存在しなかったって事らしい。
気を失った女性をリリアが背負って林を歩く。自分の行為を肯定できる唯一の光を背負っている気分。
「え?ポーション飲ませて、眠り薬と、幻想薬で眠らせてるの?なんでまた…」
どうりで全然無反応なわけだ、普通の眠りではないのがわかる。
「自分だけ生き残り、全てを失って、弄ばれ、正気でいられると思う?」アリスが言う。
「たいてい我に返ったら狂ったように暴れるか、一緒に死なせてと懇願されるのよ、しばらく眠っていてもらう以外方法ある?」ペコが続ける、悲痛そうだ。
「それじゃ、幻想薬は…」
「救いよ、寝ている間だけでも、幸せでいて欲しい」
「……… ちょ、ごめん… この人…」
背中の女性を下ろすとリリアは胃の中の物を地面にぶちまけ始めた。
「アリス、リリアが落ち着くまで見ててね、私は先に同志達を馬車に乗せとくわ、教会に連れて行ってあげないとね」ペコが女性を背負っていく。魔法使いは小柄なのにパワーある。
アリスが言う
「リリア、これに耐えてストーンヘンジに行くか、ここからルーダ・コートに引き返すかね… けっこう多いのよ1回目で辞める人、恥ずかし事でもないし、むしろ人としてまともかも」
「アリスは… アリスは何で続けているの?」
「そおねぇ、成し遂げた時の圧倒的な達成感かな?たぶん私、城壁内の暮らしでは生きている実感がわかないのかも。それに感情論はともかく今私たち、悪を滅ぼし救える人間を救ったのよ」
「あたしは救われない…」リリアが身を起こして水筒の水を口にする。
「救われた気分になった事あるの?」アリスに聞き返されてリリアはちょっと考える。
「………」
「でしょ、あの女性も救われた気分にならないかも知れないけど、事実救ったのはあなたよ、リリア」
「……… ねぇ、あたしに精神高揚の呪文かけてよ」
「ダメよ、そんなのに頼ってちゃ。混乱するだけよ」アリスは笑って言う。
「ペコを手伝わないと」言いながら立ち上がるリリア。
「決めた?進む?戻る?」アリスが聞くが、答えをもう知っているという表情。
「とりあえず近くの教会」リリアとアリスが歩き出す。
小さな音をたててリスが枝を渡って行った。
ファイヤー・ボールも直撃した、体中痛いし、髪の毛も傷んでしまう。
ペコは息のある賊を二人確認し、残りの虫の息の者達を確認しては止めを刺して回っている。かなり残忍な行為だがリリアは茫然と見送っている。
アリスが駆け寄ってきた。
「ア、アリス、リリアを治癒して… あれ?…」
アリス、リリアに構わず走り抜けて行っちゃった… と、思ったら犠牲になっていた女性の元へ。まぁ、そりゃそうか…
“あぁ… あたしもポーション持ってるわ”少し落ち着いてきたリリア。震える手でポーションをあおる。
「ぶっ… ゴフ…」喉を上手く通らない、ゆっくりと残り半分のポーションを飲む。
喉がカラカラなのでやたら美味しく感じる。
「リリア、もう落ちつたでしょ、そこの二人、生きてるなら止めを刺しちゃって」ペコだ、容赦ない。
リリアは立ち上がると被害者とペコ達の居る方に歩き出した。
二人の内一人は虫の息だが、見なかったことにする。助からないだろうし、リリアは止めを刺せそうもない。
リリアがペコ達の側に立つ。アリスは介抱中。ペコは二人の賊にちょっとポーションを飲ませた。何の意味があるのだろうか?
ペコが一人に言う
「これでお前ら全員か?残りの仲間は?他に女子供を連れ去ったか?」
「…… ぅぅ…」呻くのみ、答えたくないのか、答えられないのか…
「ファイヤー」ペコは唱えると賊を焼いてしまう。苦しむ声と焼く臭いと…
「お前は焼かれて死にたいか、ポーションを飲んで家に帰りたいか」
ペコが残りの賊に聞く。一人は見せしめか… 恐ろしい…
絶え絶えだが、賊が言うには連れ去られた女子供はもういないらしい、恐らく本当なのだろう。
答えを聞くとペコはあっさり止めを刺してしまった。ポーションを飲まされ半殺しで尋問され、最後は止め… 悪行も鬼畜なら、善もまたしかり、リリアはやるせない。
ペコが言うには、死んでいるんだから約束なんか存在しなかったって事らしい。
気を失った女性をリリアが背負って林を歩く。自分の行為を肯定できる唯一の光を背負っている気分。
「え?ポーション飲ませて、眠り薬と、幻想薬で眠らせてるの?なんでまた…」
どうりで全然無反応なわけだ、普通の眠りではないのがわかる。
「自分だけ生き残り、全てを失って、弄ばれ、正気でいられると思う?」アリスが言う。
「たいてい我に返ったら狂ったように暴れるか、一緒に死なせてと懇願されるのよ、しばらく眠っていてもらう以外方法ある?」ペコが続ける、悲痛そうだ。
「それじゃ、幻想薬は…」
「救いよ、寝ている間だけでも、幸せでいて欲しい」
「……… ちょ、ごめん… この人…」
背中の女性を下ろすとリリアは胃の中の物を地面にぶちまけ始めた。
「アリス、リリアが落ち着くまで見ててね、私は先に同志達を馬車に乗せとくわ、教会に連れて行ってあげないとね」ペコが女性を背負っていく。魔法使いは小柄なのにパワーある。
アリスが言う
「リリア、これに耐えてストーンヘンジに行くか、ここからルーダ・コートに引き返すかね… けっこう多いのよ1回目で辞める人、恥ずかし事でもないし、むしろ人としてまともかも」
「アリスは… アリスは何で続けているの?」
「そおねぇ、成し遂げた時の圧倒的な達成感かな?たぶん私、城壁内の暮らしでは生きている実感がわかないのかも。それに感情論はともかく今私たち、悪を滅ぼし救える人間を救ったのよ」
「あたしは救われない…」リリアが身を起こして水筒の水を口にする。
「救われた気分になった事あるの?」アリスに聞き返されてリリアはちょっと考える。
「………」
「でしょ、あの女性も救われた気分にならないかも知れないけど、事実救ったのはあなたよ、リリア」
「……… ねぇ、あたしに精神高揚の呪文かけてよ」
「ダメよ、そんなのに頼ってちゃ。混乱するだけよ」アリスは笑って言う。
「ペコを手伝わないと」言いながら立ち上がるリリア。
「決めた?進む?戻る?」アリスが聞くが、答えをもう知っているという表情。
「とりあえず近くの教会」リリアとアリスが歩き出す。
小さな音をたててリスが枝を渡って行った。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
24
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる