勇者の血を継ぐ者

エコマスク

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【31.5話】 スリーピング・ビューティ

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バフダン岩事件から少し経ちウッソ村ではそろそろ作物の収穫時期。
この時期はイノシシやシカから農作物を守らなければいけない。また、動物が人里に近づくようになると、魔物等も頻繁に村付近に現れるようになる。今年は雨が多かったせいか、動く植物系が村の近くに出現し、中にはゴブリンやインプが畑を狙っていたなんて情報もあった。

リリアはシェリフ・リーダーとして“収穫期特別警戒月間”を目標に、村付近に出る魔物を退治。報告があれば、夜通し村の柵越しに弓を射かけていた。
この日も植物系の魔物が大量に沸いていて、明け方近くまでリリアとシェリフ達で火矢攻撃を行い、日の出の少し前にリリアはようやくベッドに潜り込めたところ。
辺りでは日が出て来たばかりの時間、全てがオレンジ色。


若いシェリフ二人がアランに頼まれてリリアを呼びに来たが、リリアの部屋の前で困っていた。
「どうする?」
「どうって… お前が行って呼べよ…」
普段はちょっと声をかけたらリリアは起きるのだが、最近そうとう疲れているらしく、眠り込んでいる。
「隊長っていつも全裸で寝てるのか?」
「いつも全裸か俺が知るわけないだろ」
二人がリリアを起こしにドアを開けると、リリアはベッドでくの字になり申し訳程度にブランケットの角をお腹にかけているだけの全裸姿で熟睡中。
「…… た、隊長…」少しの間、面食らっていたが、遠慮しながら声をかけてみると、何か寝ぼけてむにゃむにゃ言いながら、寝返りを打った。
普段望んでも見られない美が突然目の前に現れると、人間驚くものである。
二人とも慌てて部屋から出てドアを閉めてしまった。
どちらか一人だったら、“ラッキー“くらいでリリアを起こせただろうが、なまじ他人が傍にいて、うっかり慌ててドアを閉めてしまったら今度は変に意識して開けられなくなってしまった。

「アラン先輩が呼んで来いって言うんだから、リリア隊長呼ばないとまずいだろ」
「だから、お前行けよ…」
「…」「…」
「よし、中の様子を探ろう」
「あぁ、手強いぞ、気をつけろ」
「俺に何かあったら、墓は丘の上に建ててくれ…」
「お、おう、立派な葬式だしてやる」
一人がドアから覗く
「どうだ… 隊長…」
「… やっぱり、隊長デカいな…」
「態度か?」
「違うよ、胸だよ、胸… 態度もデカいけど…」
「そりゃそうだろ、服きててあれだ、デカいに決まってる… なぁ、ちょっと俺にも見せろ」
選手交代、これって覗きだ。
「… うーん、デカい、見事だな… 隊長って色白なんだな…」
「普段のあれは、日焼けか?」
「ああ、日焼けの跡と素肌がクッキリ… 正直エロい…」
「… ちょっと、もう一回見せろ」
選手交代
「… 確かに、色白だ。 …隊長は骨太だよな…」
「がっちりタイプだな」
「ちょっと惜しいな… 猫のような身のこなしだけどな…」
「………」
「… 隊長寝言言ったぞ…」
「何だって?」
「何か、三人前お替りを注文してるみたいだぞ…」
「三人前? よく食うな」
「… 何をそんなに注文したんだろうな?」
「鶏肉じゃないか?」
「鶏肉?ポテトじゃないのか?」
「BBQやる時、鶏肉すげぇ食ってるぞ」
「鶏肉? あぁ、そういえば食ってるな。焼きコーンも食うぞ」
「あの胸とお尻は鶏肉とコーンで出来てるんだな」
「… 隊長、ブランケット被ったな」
「… 選手交代だ」
選手交代
「… 足綺麗だな。長い、でも太ももは肉がつきすぎか…」
「山に入りすぎだろ…」
「… 寝顔は可愛いな、起きていると気が強いだけだけどな」
「… 美人で巨乳で… 全てにおいてちょっと惜しいな…」
「小さい時はお母ちゃんがリリアを嫁に貰うのだけは勘弁って言ってたな…」
「隊長が嫁だったら大変だろうな…」
「…… だろうな…」

「お前ら!何もたもたしるんだ!!」話をしているとアランが怒鳴りこんで来た。
二人は驚く。
「先輩、いや、隊長起こしに来たら… 隊長が全裸で熟睡してるから、つい…」
「そうなのか… 最近寝ないで働いてるからな」アランも珍しがる。

「なんなのさっきから!」振り向くとリリアがいつの間にか戸口に立っていた。
ブランケットをローブ代わりにしている。
「ちょっと問題があってな、起こそうと思ったんだが、今用事は片付いた」アランが答える。
「…… あたし、今日はお昼食べてから外回りに出るから」
「あぁ、最近魔物が多いからな… リリアが起きてきたら俺は休むから」アランもお疲れだ。

アランと若いシェリフ二人はリリアの部屋を離れる。リリアが後ろから声をかけた。
「あんた達、次覗き見してたらひっぱくからね」振り向いて気まずそうにする二人。
「それから… あんた達のところなんて頼まれたってリリアは嫁にいかないわよ」
そういうと、もの凄い勢いでドアを閉めてしまった。

「…… 隊長は寝てる時が一番かわいいな」二人は顔を見合わせる
アランは会話を聞いてニヤニヤしている。
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