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Chapter 1/最初の国
№7 WWにおける設定①
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[Team S]が戦闘を行なっている頃――。
ヤトたち[イッチューズ]は、それなりに豪華な“執務室”に通されていた。
アンティークで木製のディスク席には、身長170㎝くらいで、金髪を七三オールバックにしている40代前半の男性が、座っている。
鼻の下の立派な髭もゴールドで、瞳は青い。
この紳士に、ヤトが、ギルドで貰っていた“誓約書”を渡したところ、
「おぉー、そなたらが、我が娘の猫を探してくれる冒険者たちか?」
「とても頼りにしておるぞ。」
「ただ…、日が経ちすぎるのは好ましくない。」
「悲しみのあまりふさぎがちになっている娘を、早いとこ喜ばせてあげたいからな。」
「うぅ~む、そうだな……、人数からして、これより二日の期間としよう。」
「それまでに娘のネコを連れて来られなかった場合は、任務失敗という事で、報酬は支払えない。」
「ちなみに、その猫は、シャトルリューという種類で、灰色の毛並みをしており、首に黄色いリボンが巻かれている。」
「では、よろしくな。」
そういった条件にされてしまったのである。
「やべぇ。」
「〝タイムリミットあり〟の発注だったか。」
「うっかり、このパターンを忘れちまってた。」
苦い表情となったヤトに、
「んん??」
「48時間もあれば大丈夫でしょ?」
「割と余裕なんじゃないの??」
カリンが首を傾げる。
「いや、“ワンワー”は、過去の二作品と同じようなシステムになってるから…、現実世界の1分が、こっちでの1時間だ。」
ヤトの説明に、女性陣が〝えッ!?〟と目を丸くした。
「つまり……、〝ゲーム内では24分で1日が終わる〟ってこと?」
エイトが尋ねたら、
「うん、そうだね。」
クマッシーが肯定した。
更には、
「あと、言っておくとしたら…、おそらく、都の全てを回るには、一時間半以上は掛ると思う。」
「町だと45分、村は20分、といった感じかな。」
「どれも、現実で。」
ニケが伝えたのである。
「そうなの??」
セブンが唖然としたところ、
「ん。」
軽く頷いたニケが、
「過去作と一緒ならだけど。」
こう補足した。
「とりあえず急いだがいいよね?」
「どうするの?? ヤト。」
カリンに問われ、
「何かヒントが欲しいな。」
「ネコに関する。」
「多分、あのオッサンからは、これ以上の情報を仕入れるのは無理だろうから、部屋を出てみよう。」
そのように返したヤトが、先頭で退室していく。
廊下には、先程の給仕と、一人の若い女性が、並んで立っていた。
“初老のNPC”の頭上にある[金色のダイヤマーク]が視界に入り、
「脱走したペットの事を、教えてほしいんだけど。」
ヤトが声をかけたら、
「こちらのメイドが、先日、お嬢さまの猫ちゃんを、お見かけしたそうです。」
こう述べたのである。
すると、今度は、若い女性の頭上に“ダイヤマーク”が現れた。
引き続きヤトが訊ねたところ、
「西の大通りを、そっくりなネコちゃんが、うろついてしました。」
「私が近づいたら、走って逃げられてしまい、それっきりです。」
「もしかしたら違う猫ちゃんだったかもしれないので、誰にも教えなかったのですが……。」
「旦那様がたに報告しなかったことがバレたら、ここを辞めさせられてしまうかもしれませんので、内緒にしておいてください!」
頭を下げてきたのだった。
有力な手掛かりを得たヤトは、
「よし。」
「“テレポート”するために、外に行こう。」
そう皆を促したのである。
敷地内の庭で、“地図”を開いたヤトが、右の人差し指で[西門]のマークに触れるなり、【瞬間移動】するメンバーであった。
▽
門あたりで、
「あん?!」
「オレ様に指図すんじゃねぇよ!!」
「テメェらは黙って従うって事になったんだろうがッ!」
とある男が、自分の仲間たちに怒鳴っている。
背丈180㎝くらいで〝ボサボサ赤髪〟の男性は、装備品からして【戦士】のようだ。
彼らの側には、[遺跡調査団の四人組]が佇んでいた。
おそらく、このパーティーは、[Team S]と同じクエストを受けたのだろう。
「なに、あれ?」
「内輪もめ??」
「ちょっと物騒じゃない?」
目を細めたカリンに、
「あんまりジロジロ見ちゃダメだよぉ。」
「こっちに飛び火するかもしれないから。」
エイトが不安がる。
それによって、
「ヤト、すぐにでも、ここを離れよう。」
クマッシーが提案したのだった。
「あ、ああ。」
「そうだな。」
理解を示したヤトは、
「じゃあ、こっから東に進んでくけど…、目的のネコは当然ながら、ダイヤマークがあるかもしれねぇNPCも、見落とさないようにしようぜ。」
このように方針を決めたのである。
▽
「ふんッ!!」
【武士】のソリュウが左から横に払った[木刀]が、右側頭部に当たった[ダークマウス.Jr]が“薄紫色の粒子”となって、消滅した。
そこの地面には、ピンク色で直径10㎝ほどの[歪な宝玉]と、“木製の短槍”が、遺されている。
シューラが“木の中剣”で、[ダークドック.Jr]の眉間を突いたら、こちらも絶命し、ジュエルのみが現れた。
他の魔物らも、[Team S]によって、倒されている。
なお、モンスター達が落としたアイテムこと“ドロップ”は、リーダーたるシリウスの[イベントリ]へと自動的に送られるらしい。
品物としては、宝玉や、武器に、ポーション類、であった。
ジュエルは必ずGETできるが、それ以外の入手はランダムとなっているみたいだ。
後ろを確認した【召喚士】のサキが、
「調査団は、全員、変わりないみたいだね。」
「一つも怪我していないようだし。」
そうパーティーメンバーに知らせる。
【シールダー】のシリウスが〝ふぅ――っ〟と息を吐き、
「それじゃ、改めて西を目指そうぜ。」
このように告げたことによって、再び歩きだすシューラ達だった―。
ヤトたち[イッチューズ]は、それなりに豪華な“執務室”に通されていた。
アンティークで木製のディスク席には、身長170㎝くらいで、金髪を七三オールバックにしている40代前半の男性が、座っている。
鼻の下の立派な髭もゴールドで、瞳は青い。
この紳士に、ヤトが、ギルドで貰っていた“誓約書”を渡したところ、
「おぉー、そなたらが、我が娘の猫を探してくれる冒険者たちか?」
「とても頼りにしておるぞ。」
「ただ…、日が経ちすぎるのは好ましくない。」
「悲しみのあまりふさぎがちになっている娘を、早いとこ喜ばせてあげたいからな。」
「うぅ~む、そうだな……、人数からして、これより二日の期間としよう。」
「それまでに娘のネコを連れて来られなかった場合は、任務失敗という事で、報酬は支払えない。」
「ちなみに、その猫は、シャトルリューという種類で、灰色の毛並みをしており、首に黄色いリボンが巻かれている。」
「では、よろしくな。」
そういった条件にされてしまったのである。
「やべぇ。」
「〝タイムリミットあり〟の発注だったか。」
「うっかり、このパターンを忘れちまってた。」
苦い表情となったヤトに、
「んん??」
「48時間もあれば大丈夫でしょ?」
「割と余裕なんじゃないの??」
カリンが首を傾げる。
「いや、“ワンワー”は、過去の二作品と同じようなシステムになってるから…、現実世界の1分が、こっちでの1時間だ。」
ヤトの説明に、女性陣が〝えッ!?〟と目を丸くした。
「つまり……、〝ゲーム内では24分で1日が終わる〟ってこと?」
エイトが尋ねたら、
「うん、そうだね。」
クマッシーが肯定した。
更には、
「あと、言っておくとしたら…、おそらく、都の全てを回るには、一時間半以上は掛ると思う。」
「町だと45分、村は20分、といった感じかな。」
「どれも、現実で。」
ニケが伝えたのである。
「そうなの??」
セブンが唖然としたところ、
「ん。」
軽く頷いたニケが、
「過去作と一緒ならだけど。」
こう補足した。
「とりあえず急いだがいいよね?」
「どうするの?? ヤト。」
カリンに問われ、
「何かヒントが欲しいな。」
「ネコに関する。」
「多分、あのオッサンからは、これ以上の情報を仕入れるのは無理だろうから、部屋を出てみよう。」
そのように返したヤトが、先頭で退室していく。
廊下には、先程の給仕と、一人の若い女性が、並んで立っていた。
“初老のNPC”の頭上にある[金色のダイヤマーク]が視界に入り、
「脱走したペットの事を、教えてほしいんだけど。」
ヤトが声をかけたら、
「こちらのメイドが、先日、お嬢さまの猫ちゃんを、お見かけしたそうです。」
こう述べたのである。
すると、今度は、若い女性の頭上に“ダイヤマーク”が現れた。
引き続きヤトが訊ねたところ、
「西の大通りを、そっくりなネコちゃんが、うろついてしました。」
「私が近づいたら、走って逃げられてしまい、それっきりです。」
「もしかしたら違う猫ちゃんだったかもしれないので、誰にも教えなかったのですが……。」
「旦那様がたに報告しなかったことがバレたら、ここを辞めさせられてしまうかもしれませんので、内緒にしておいてください!」
頭を下げてきたのだった。
有力な手掛かりを得たヤトは、
「よし。」
「“テレポート”するために、外に行こう。」
そう皆を促したのである。
敷地内の庭で、“地図”を開いたヤトが、右の人差し指で[西門]のマークに触れるなり、【瞬間移動】するメンバーであった。
▽
門あたりで、
「あん?!」
「オレ様に指図すんじゃねぇよ!!」
「テメェらは黙って従うって事になったんだろうがッ!」
とある男が、自分の仲間たちに怒鳴っている。
背丈180㎝くらいで〝ボサボサ赤髪〟の男性は、装備品からして【戦士】のようだ。
彼らの側には、[遺跡調査団の四人組]が佇んでいた。
おそらく、このパーティーは、[Team S]と同じクエストを受けたのだろう。
「なに、あれ?」
「内輪もめ??」
「ちょっと物騒じゃない?」
目を細めたカリンに、
「あんまりジロジロ見ちゃダメだよぉ。」
「こっちに飛び火するかもしれないから。」
エイトが不安がる。
それによって、
「ヤト、すぐにでも、ここを離れよう。」
クマッシーが提案したのだった。
「あ、ああ。」
「そうだな。」
理解を示したヤトは、
「じゃあ、こっから東に進んでくけど…、目的のネコは当然ながら、ダイヤマークがあるかもしれねぇNPCも、見落とさないようにしようぜ。」
このように方針を決めたのである。
▽
「ふんッ!!」
【武士】のソリュウが左から横に払った[木刀]が、右側頭部に当たった[ダークマウス.Jr]が“薄紫色の粒子”となって、消滅した。
そこの地面には、ピンク色で直径10㎝ほどの[歪な宝玉]と、“木製の短槍”が、遺されている。
シューラが“木の中剣”で、[ダークドック.Jr]の眉間を突いたら、こちらも絶命し、ジュエルのみが現れた。
他の魔物らも、[Team S]によって、倒されている。
なお、モンスター達が落としたアイテムこと“ドロップ”は、リーダーたるシリウスの[イベントリ]へと自動的に送られるらしい。
品物としては、宝玉や、武器に、ポーション類、であった。
ジュエルは必ずGETできるが、それ以外の入手はランダムとなっているみたいだ。
後ろを確認した【召喚士】のサキが、
「調査団は、全員、変わりないみたいだね。」
「一つも怪我していないようだし。」
そうパーティーメンバーに知らせる。
【シールダー】のシリウスが〝ふぅ――っ〟と息を吐き、
「それじゃ、改めて西を目指そうぜ。」
このように告げたことによって、再び歩きだすシューラ達だった―。
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