Arousal of NPC‘s

ネコのうた

文字の大きさ
上 下
8 / 103
Chapter 1/最初の国

№8 横柄な輩・前編

しおりを挟む
▽▼▽▼
話しは少し前に遡る――。
“フルダイブMMRORPG”たる[Wonder Worldワンダーワールド]が、オンライン配信を開始して間もない頃だ。
AM09:00を回り、帝都の“中央広場”から、プレイヤー達が、あちらこちらに[テレポート]していくなか、
「絶対に認めねぇ!」
「リーダーはオレ様に決まってんだろうが!!」
といった具合に、わめき散らす者がいた。
場所は、広場の中心より北東あたりのようだ。
 
荒れているのは〝ボサボサ赤髪〟の[男性戦士]である。
身長180㎝ぐらいのソイツは、30代前半といった感じだった。
 
「いや、だから、女神さまが〝最も相応しいのはザイラだ〟って…。」
背丈155㎝あたりで〝サラサラ茶髪ショート〟の少年が、ビビりながら返す。
痩せ型の本人は【白魔術士】らしく、年齢は10代の半ばみたいだ。
 
「けどよー、そのとおりにしなくてもいいんだろ?!」
「女神のヤツが言うには!?」
「だったら、このゾース様こそが、“Teamチーム Zゼット”を率いても問題ねぇだろうがよ!」
「寧ろ、最も相応しいんじゃねぇか?!」
「あぁッ!? コラぁあ!!」
ヒートアップする【戦士】に、
「だったら、アンタと、ザイラで、ひと勝負したら?」
「闘技場で。」
「それで〝文句なし〟にすれば??」
こう提案したのは[女性武闘家]であった。
 
彼女は、身長170㎝くらいで、細マッチョである。
セミロングの金髪を“三つ編み”にしている本人は、20代半ばといった印象だ。
 
「あぁー、悪くねぇな。」
納得した様子のゾースが、[横長の超薄型画面]を操作して、
「“果たし合い”に応じろ!」
「ザイラ!!」
相手を睨みつける。
軽く〝ふぅー〟と息を吐いて、自分の“スクリーン”を開いた[男性剣士]は、
「いいだろう!」
「受けて立つ!!」
毅然とした態度で[許可]をタッチした。
それによって、二人が“コロッセウム”へと一瞬で転送されたのである。
「私らも行くよ、ゼシュー。」
「見届けに。」
武闘家に促され、
「う、うん。」
「そうだね、ジリ―。」
焦りながら応じる白魔術士だった。
 
いささか南に離れた位置では、
「えぇ~?」
「私には無理だよぉー。」
「クーガこそがリーダーになるべきなんじゃなぁい??」
「だってぇ、“女神様の愛子まなご”なんだしぃ~。」
〝金髪ロングあざとかわいい系〟の[女性アーチャー]が述べたのである。
これに、
「いやいやぁー。」
「その女神さまが〝キエラが一番いい〟って仰られているんだから、そうしなよぉ~。」
〝茶髪ショート〟たる[男性ガンナー]が伝えた。
どちらも10代後半であろう。
クーガが、
「皆も、それでいいよね?」
ニコニコしつつ仲間に確認したところ、
「まぁ、儂らは、どっちでも構わんよ。」
「お前さんがたの好きにするがええ。」
長めの白髭しろひげといった70歳ぐらいの[男性黒魔術士]が微笑んだのであった……。
 
 

帝都の“北西地区”に設けられている[闘技場]は、四階建てのようだ。
試合を行う場は“砂地”になっており、[ゾース]と[ザイラ]が対峙している。
観戦席には、彼らの仲間である10人が[テレポート]してきた。
 
武器を構えている二人の眼前には、直径50㎝で極薄の“サークル”が出現している。
その“円”のなかで、〝5〟〝4〟〝3〟と、カウントダウンが進んでいく。
 
黒髪ショートのザイラは、背丈175㎝といったとこだ。
スレンダーながらも筋肉質な彼は、20代後半あたりである。
 
二人の間にある表示が〝GO!!〟と告げて、消えた。
いきなりダッシュして距離を詰めたゾースが、[木の棍棒こんぼう]を縦横無尽に振るう。
ザイラは[木製の中剣]で防ぐものの、次第に押されていき、
「くッ!」
「ぬッ!!」
厳しそうな顔つきになったのである。
 
客席にて。
「ザイラが追い込まれてるわね。」
こう呟いたのは[女性の陰陽師]だった。
「…………。」
何やら考えた素振りの[白魔術士のゼシュー]が、
「どうやら、戦士のほうが剣士よりもパワーがあるみたいだよ、ゼン。」
そのように知らせたのである。
 
華奢な体型の【陰陽師】は、身長160㎝で、〝黒髪サラ艶セミロング〟だ。
年齢は20代前半のようだ。
 
このゼンが、
「〝ゾースが有利〟って事ね。」
忌々いまいましそうにしたのであった。
 
防戦一方のなか隙を窺っていたザイラは、右の爪先つまさきで、相手の左すねを、〝ガツンッ!〟と蹴ったのである。
「つッ!!」
眉間にシワをよせて、よろめいたゾースの胸元に、
「もらったぁあ!」
ザイラが[木剣ぼっけん]を突き出す。
ゾースは、
「舐めんなッ!!」
かろうじて左に躱わすのと同時に、右膝を、ザイラの腹部にヒットさせた。
「ぐふッ!」
背中を丸めて苦しそうにしたザイラの動きが止まる。
そういった好機を逃がすまいと、ゾースが、
「うおらぁッ!!」
「おりゃッ!!」
「うらぁッ!!」
「おらぁあッ!!」
ザイラの後頭部を何度となく棍棒で〝ゴンッ! ゴンッ!〟と殴打していく。
まだ“LV.1”のため、ただでさえ低めの[ヒットポイントHP]を、かなり削られたザイラが、
「が、ぁッ?!」
耐え切れずに両膝を着いたタイミングで、ゾースの目の前に“YOU WIN!!”との文字が現れたのだった。
ザイラのほうは“YOU LOSE”となっているみたいだ。
いずれにせよ、〝ニィ~〟と口元を緩めたゾースが、
「ざまぁみやがれ、身のほど知らずがッ!」
「ふはははははははは!!」
あからさまに勝ち誇ったのである。
こんな状況に、
「私が決闘を勧めてしまった所為で〝最悪なパーティー〟になってしまいそうね。」
〝ギリィッ!〟と歯ぎしりする[武闘家のジリ―]であった―。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

転生貴族のスローライフ

マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である *基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

処理中です...