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隠していたかったこと
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賑やかに談笑していた貴族たちはドアが開くと同時に頭を下げて花道を作る。二人はその道をゆっくりとした足取りで進んでいく。
通り過ぎれば貴族は顔を上げ、背中に向かって「陛下、お誕生日おめでとうございます」と声をかけてくれるのだが、ユーフェミアはどうしても邪推してしまう。
一体、この中の何人が本当に祝う気持ちでいるのだろう。
上機嫌に笑顔を見せるトリスタンと共に階段を上がって玉座に腰かけるとユーフェミアは、ふーっと息を吐きだした。
「今日は僕の三十五回目の誕生日だ。三十五歳にもなってこうして皆を招いて生誕祭を開催するなど子供の頃と何も変わっていないが、毎年嬉しいものだな。僕は────」
隣でトリスタンが演説しているのに、ユーフェミアはリリアナとの会話を思い出していた。
まだ十四歳だった少女が分不相応にも玉座に腰かけ、高い場所から大人たちを見下ろして媚びを売る姿を眺める。今年で二十回目の同じ光景をリリアナには慣れると言ったが、実際は未だに違和感があるのだ。
それは、子供の頃には見えなかった善と悪がハッキリ見えるようになったから。
「陛下、お誕生日おめでとうございます! 今年のお召し物も素敵ですね」
「僕のは普通のだ。それよりユーフェミアを見てくれ! 今年のユーフェミアも美しいだろう! 彼女の美しさを最大限に引き出す最高のドレスを用意した!」
「ドアが開いた瞬間から思っておりましたわ! さすが陛下、王妃陛下のことをよくわかってらっしゃいます!」
「そうだろう! 僕がユーフェミアのために用意した一点物だ!」
「素晴らしい!」
挨拶をしようと列を作る貴族達が今年も良い印象を残そうと必死に褒め称える。シャンパングラスを片手に挨拶に来る者たちの中に心から祝っていない者もいる。目を見ればわかるようになったのはここ三年ほど前からで、本人は上手く笑っているつもりでも目の奥は本心を語っているのがわかった。
大人になればわかることもあると言っていた父親の言葉を三十歳過ぎてから実感するとは思っていなかった。二十人目の挨拶で目の奥が笑っていなかったのは五人。表面だけ見ていれば心から祝福しているように見える様子に人間の恐ろしさを見る。
「王妃陛下、今年も素晴らしいパレードでした」
「……アドラム公爵……」
「両陛下の仲が良いのは国民の願いですからな」
「そうですね」
反王政派の代表の姿にユーフェミアは身体に緊張が走るのを感じた。毎年普通に話しかけてはくるのだが、それだけなのに不思議とストレスが溜まる。今年もまたこの男の嫌味を聞かなければならないのかと思うと吐き気がする。
ユーフェミアはアドラムからトリスタンに視線を移すと笑顔で頷いていて、トリスタンの手がユーフェミアの手を握った。
「両陛下のお子は、さぞ愛らしく聡明なのでしょうな」
始まった。
「我々国民一同、お世継ぎの顔を見るのを楽しみにしているのですが、今年はいかがでしょうか?」
直球を投げてくるアドラムの無神経さに不愉快さえ感じるのは、その態度に微塵も〝楽しみ〟というものが感じられないから。
二十年経っても世継ぎを残せていない王家を責めているつもりなのだろう。毎年飽きもせずに同じことを繰り返せるアドラムは数日前から台詞を用意して舞台役者に演技の指導を受けたのではないかと思うほど声高らかに問いかけてくる。まるで会場中の貴族たちに聞かせるように。
「子は神が与えてくださるものだ。僕たちが未熟だからまだ早いと判断されているのだろう」
「十六歳でも子供はできますよ、陛下」
トリスタンの言葉に嘲笑混じりに嫌味を返すアドラムにユーフェミアが怒りを感じて身体が少し前に動くも握っているトリスタンの手に力が入った。あからさまには止めない。だが、その力が「我慢しろ」と言われているように感じて、ユーフェミアは姿勢を正す。
「だからどうした?」
「だからどうしたって……ははっ、まるで開き直りですな、陛下」
小ばかにしたような笑いに支持派の貴族たちは世継ぎ問題が始まるとゆっくりと離れていく。そして反王政派の貴族たちがその空いた空間に入り込んできてアドラム同様にニヤつきを見せる。
「陛下、この国には王が必要なのです。もし陛下が病で臥せられたら国のことは誰に任せるおつもりですか?」
「それをそなたに言う必要があるのか?」
「一国民として心配申し上げているのです。世継ぎがいなければこの国は終わりです。陛下、どうお考えでしょうか? お聞かせいただけると我々も大変安心できるのですが」
正統な世継ぎがいない国は滅びる。昔からそう言われているのは知っている。だが、二人は話し合って子供を作らないと決めたわけではない。作ろうと、来てほしいと願っているのにそれが叶わないだけ。でもそれは世継ぎを迎えない理由にはならない。頑張るのなら養子をとってからでもいい。形だけでも世継ぎを残すのが先だとアドラムたちは言う。
「ユーフェミア様は今年、三十四歳になられました。女性は歳を取れば取るほど妊娠の可能性は低くなり、出産は困難となります」
「わかっている」
「いいえ、陛下は何もわかっておられません!」
急に声を上げたアドラムにユーフェミアは驚くが、トリスタンは平然としている。
「種が少ない人間にどうしろと? そなたは僕たちが努力をしていないと言いたいようだな?」
トリスタンの圧に支持派の貴族は更に後ろへと下がっていく。パーティーであまり感情的になることはないトリスタンだが、怒りを見せるのはこれが初めてでもない。過去に一度だけ、世継ぎについて追及した貴族に激怒したことがあった。そのときのようになるのではないかと支持派の貴族達は心配しているのだが、アドラムはまるでそれが狙いのようにニヤついたまま言葉を続ける。
「そのようなことは申しておりません。私どもは陛下の努力を存じ上げているつもりです」
「ならばそのような言葉は出てこぬはずだが?」
トリスタンの指摘に笑みを崩さぬままかぶりを振る。
「私はただ、こうお伝えしたいのです。世継ぎは国の希望であり未来でもある。世継ぎがいないのは希望も未来もないのと同じ。世継ぎが誕生しない限り、民は不安なまま。おわかりいただけますか?」
「理解はできるが、先も言ったように僕の種が弱いのだ。仕方あるまい」
アドラムの言葉が心からの不安であればトリスタンも受け入れはするが、何を魂胆に言っているのかわかっているため真剣に取り合おうとはしなかった。
シャンパングラスを回しながら中の気泡を見るだけでアドラムを見ようともしない。
そんな様子に初めて顔を歪めたアドラムだが、すぐに笑みを持ち直す。
「ゴホンッ……これは、噂に過ぎませんが、陛下が囲ってらっしゃる愛人が妊娠したとか」
どこから手に入れた情報なのか、アドラムの暴露に会場全体がザワつき始める。
「もしそれが本当であれば、妊娠できない原因は陛下ではなく王妃陛下にあるのでは?」
窺うような視線と問いかけにもトリスタンは答えない。
「だとしたら大問題ですよ、これは!」
トリスタンではなく、あえて周りを見回しながら言うアドラムにユーフェミアの表情が強張る。
「この国の母である我らが王妃陛下が子を宿せないなど許されるのか? この国の希望をこの国の母が残せないなどあっていいのか? 母は我らから希望を奪っている! もしそれが本当だとすればこれは国の存続に関わる大問題! 我々には真相を知る権利があるはず!」
両手を広げて演説のように熱を入れた喋り方に反王政派の貴族たちが「そうだー!」と声を上げる。
二十年間も子供が生まれない原因は必ずどちらかにあり、それはずっとトリスタンのせいだと言われていた。だが、もし噂が本当でトリスタンの愛人が妊娠したのであれば問題はトリスタンではなくユーフェミアが原因と決めつけるのはおかしな話ではない。確信を持って大声を出すアドラムに言い返す言葉が見つからないユーフェミアは悔しくてたまらなかった。
トリスタンの手を握っている手が震える。
彼らから希望を奪いたくて奪っているのではない。そう言ったとしても子を残せていない事実は変わらない。希望を、未来を、この国に与えることができていないのは事実なのだ。
「陛下……?」
スッと立ち上がったトリスタンが静かに階段を下りていく。まだ役者気取りで演説を続けるアドラムの後ろ、一段高い場所で足を止めるとザワつきが引いた。
青い顔をする支持者たちに気付いて振り向くとトリスタンの冷たい表情と共に振り下ろされるシャンパングラスがアドラムの視界に入り、そして頭に衝撃を感じた。
「キャアアアアアアアアアアッ!」
グラスが割れる音と数段といえど階段から転げ落ちたアドラムに会場中が大騒ぎになる。悲鳴が響き、貴族たちは一斉に壁際に逃げていく。
「うわっ……うわぁぁぁあああっ! 血が出てる! 僕の頭から血が出ているッ! だ、誰か助けてくれ!」
床に落ちて顔を上げるとポタッと絨毯の上に落ちた赤い雫に気付いて熱を持っている頭に触れると手にはヌルついた感触。恐る恐る手を下げると見える真っ赤な液体が自分の血であると気付いたアドラムが動揺して叫ぼうとも仲間は誰も助けようとはしない。
「い、いくら王といえどこのようなことが許されるはずがない! この国を支える貴族である僕をこんな目に遭わせるなんて、た、民が黙ってませんよ! あなたのような人間がこの国の王であっていいはずがない!」
アドラムの言葉に眉一つ動かさないトリスタンがゆっくり階段を下りてアドラムの前にしゃがむ。
「よく回る舌だな。引き抜いてやろうか?」
「ヒッ!」
過去に一度激怒したときは大爆発したように荒れて怒鳴り散らす姿だったのが、今は正反対に静かに怒っている。まるで怒鳴り散らすほどの怒りを通り越してしまっているかのような目つきにアドラムは小さな悲鳴を漏らすだけで反論はしない。恐怖を感じた身体は唇を震わせるだけ。
「僕に愛人がいて、その愛人が妊娠した? その情報はどこから得たものだ?」
「か、風の噂で……」
貴族たちの間で噂が真実であるかのように広まるには一日もあればじゅうぶん。噂好きな貴族たちの口はたとえ王であろうと塞げない。それはどこの国でも同じこと。
問題なのは、情報が的確すぎること。城に仕える者がリークしなければ知りえない情報を誰かが手に入れ、悪意を持ってそれを広めたのだ。城内の者といえど、知っている人間はごく僅か。アードルフか、追い出された愛人。
「確かな情報でもないのに貴様はそれを事実であるかのように語ったわけか。この場がどういう場かも理解せず、愚かにもこの国の母であるユーフェミアを陥れようとするとはな」
「ヒィッ!」
「陛下!」
掴んでいる胸ぐらを引き寄せると顔を反らしたときに無防備になったアドラムの首元に割れたシャンパングラスの先を突きつけるトリスタンにユーフェミアが慌てて駆け寄ろうとするが、エリオットが止めた。
今のトリスタンには近付くのは危険だと判断したエリオットに止めなければと目で訴えるもかぶりを振られる。
時々見せるようになった冷たい目と声。少し前までその片鱗さえ見せなかったトリスタンが人が変わってしまったように思えた。
「何様のつもりだ?」
「へ、陛下……!」
「何様のつもりだと聞いているのだ」
「お、お許しください!」
「答えろ!」
殺される──そう思ってしまうほどトリスタンの目には怒りが見える。
「僕に愛人がいると言うのなら今すぐ城内を駆け回って連れてこい! その愛人に僕の子がいると言うのなら証明してみせろ! ユーフェミアが世継ぎ不在の原因だと言うのならその証拠を出せ! できるのか!?」
「で、できません!」
悲鳴のような声でできないと言ったアドラムの胸ぐらを突き飛ばすように乱暴に話すとトリスタンは鼻を鳴らし「だろうな」と言って玉座に戻った。
「陛下……」
トリスタンの手を握ると優しく握り返されるが、視線が絡むことはない。
「アドラム公爵」
震えるばかりで返事をしないアドラムの傍に握ったままだった割れたシャンパングラスを放り投げると慌てて土下座するのが見えた。
「アドラム公爵、貴様は流罪及び爵位剥奪だ」
「ッ!? そ、そんな! それはあんまりです!」
驚いたのはアドラムだけではなく、周りの貴族も同じだった。だが、誰も抗議はしない。
「貴様がしたことは王族侮辱罪だ。僕だけではなく、ユーフェミアまで侮辱しておいてお咎めなしで済むと思っていたのか?」
「ぶ、侮辱だなどと……。私は皆が心配していることを代表して申し上げただけでございます!」
「死刑にならないだけありがたいと思え」
「そんな……!」
今までどおりに済むと思っていたのだろう。嫌味を言って、勝ち誇った笑みを浮かべながら陰で“種無し王”と仲間内でバカにして大笑いするいつもどおりの日常があると。だが今年は状況が変わったことを知らないアドラムは失敗した。
王が焦って釈明する。両陛下が困って言い淀む姿が見られると想像していたのに……
「アークライト侯爵、オールドリッチ伯爵、エヴァンズ子爵。そなたらもだ」
「へ、陛下! わ、私どもは何も……!」
「そこで声を上げていただろう。同罪だ」
同席していた妻たちが悲鳴を上げながら泣き崩れるのが見え、無情にも騎士たちに脇を抱えられて家まで送られることとなった。
罪状が書かれた紙とそれを読み上げる者は翌日にでも屋敷を訪れ、家族は早々に国を追い出されるだろう。そして貴族には耐え難い程の罰を受ける。
貴族として生まれ貴族として生きてきた者にとって爵位のない生活は考えられないだろうに、夫の愚かな言動により全てを失うことになった家族の末路は決まっている。
想像するだけでも辛く、ユーフェミアは呼吸をするのも忘れて目を閉じていた。
「続々と炙りだされることだろうな」
誰に言うでもないその言葉にあからさまに顔色を悪くする者たちがいた。
あのトリスタン王がこんなことをするなど誰の想像にもなかったこと。幼稚な王だと馬鹿にしていた者たちが慌てて帰るのをトリスタンは静かに見ていた。
「陛下……」
「ユーフェミア、大丈夫だ。君のことは僕が守る。どんなことがあってもだ」
いつも通りの笑顔だが、ユーフェミアは心配だった。気負いすぎて彼が独裁者になってしまうのではないかということ。自分はバカにされてもいい。でも妻のことになると別人のようになってしまう彼がこれ以上の暴走を始めたら──そんな不安が胸をよぎる。
いっそ本当のことを話してしまえばトリスタンも気が楽になるのではないかと思うが、余計なことはできない。彼が決めてくれた覚悟を勝手に打ち砕くことが許されるはずがない。
「水を差してすまなかった。せっかく祝いに来てくれたのに申し訳ない。そなたらの気持ち、確かに受け取ったぞ」
立ち上がって感謝を口にするトリスタンにまばらだが、拍手が起こった。皆がそれに合わせるように拍手をし始め、大きな拍手となり、それがお祝いの形となった。緊張した顔での拍手。笑顔のない祝い。そんな生誕祭が今までにあっただろうか。
「僕たちはもう下がるが、皆はパーティーを楽しんでいってくれ」
トリスタンの誕生祭だが、この気まずい雰囲気のまま皆が楽しめないと判断してサロンのようにこの場を使うよう指示し、ユーフェミアと共に場を後にした。
「陛下」
「話は二人きりでしよう」
後ろにはエリオット、ラモーナ、トレヴァーがいる。今のトリスタンは誰も信用していないのが伝わってくる。的確すぎる指摘が効いているのだ。
「そなたらは自分の部屋に戻れ。僕とユーフェミアはもう休む」
「お着替えを……」
「かまわぬ。僕がやる」
今のトリスタンに「いいえ、私の役目ですから!」と言う勇気はラモーナにはなかった。物怖じしない性格のラモーナでさえ、今のトリスタンに軽口を叩くことはできない。それほどの雰囲気をまとっている。
「陛下、彼らの罪状の準備をしても?」
「ああ、急げ」
「残りの者はどうしましょう?」
「炙りだせ。貴族の絆などあってないも同然だ。簡単に吐くだろう」
「承知しました」
頭を下げて去っていくトレヴァーが通り過ぎる際に見せた蛇のような笑みにゾッとしたユーフェミアはトリスタンの手を強く握る。
優しく腕を撫でるトリスタンはエリオットにも下がれと伝え、ユーフェミアの手を引いて部屋の中に入った。
「ユーフェミア」
「はい、陛下」
「裏切り者がいる」
「喋るとなるとアードルフ医師か愛人、でしょうか?」
「使用人の可能性もな」
ユーフェミアも城の全員を信用していたわけではない。だから裏切り者がいるという話のショックはそれほど大きくないものの、これほどの情報をリークした者が誰なのか想像がつかないのが気持ち悪い。
反王政派のリーダーであるアドラムにリークすればそれなりの報酬がもらえると思ったのだろう。それなら国を追い出されるアードルフか愛人。彼らが今どこにいるのか、探せばわかるのだろうか。
「陛下、愛人を切るのにちゃんとした対応をされましたか?」
「契約書には拇印を押させたぞ。それから口止め料として金貨も渡した。苦労しないで済むだけの金額だぞ」
拇印にどれほどの効果があるのか。見つからなければ意味がない。何をどうすればいいのかもわからない状態。
「陛下、わたくしはまだちゃんとした理由を聞いていません。なぜ愛人を作られたのか、なぜ急に切ると言いだしたのか」
ユーフェミアの表情にからかうこともできず、トリスタンは溜息をついて首を振る。
「ルドラに言われた。僕たちはちゃんと話し合うべきだと。いや……僕が、か」
ユーフェミアも思っていた。ちゃんと向き合わなければならないと。それが今なのだと。
「ちゃんと話すから、聞いてくれるか?」
「はい」
「聞いた後に離婚と言わないか?」
「……それは内容次第ですね」
「嘘でもはいと言ってくれ」
「はい」
「嘘だよな?」
「はい」
「くそッ」
余計なことを言ってしまったと自分の太ももを叩いたトリスタンだが、その場に膝をついて正座をする。そしてそのまま床に両手をついて頭を下げようとし────
「その謝罪は一番最後でお願いします」
「ううッ……最初にしたかった」
最初に土下座をして絆そうと思っている相手にユーフェミアは下げきる前にトリスタンの額に手を当ててそれ以上下げられないようにした。
ダメだったかと厳しいユーフェミアに泣き言を漏らしながら立ち上がると窓際に置いてあるソファーに腰かける。
「どこから話そうか……」
向かいに腰かけたユーフェミアは言われたとおり、黙って話を聞くことにした。
通り過ぎれば貴族は顔を上げ、背中に向かって「陛下、お誕生日おめでとうございます」と声をかけてくれるのだが、ユーフェミアはどうしても邪推してしまう。
一体、この中の何人が本当に祝う気持ちでいるのだろう。
上機嫌に笑顔を見せるトリスタンと共に階段を上がって玉座に腰かけるとユーフェミアは、ふーっと息を吐きだした。
「今日は僕の三十五回目の誕生日だ。三十五歳にもなってこうして皆を招いて生誕祭を開催するなど子供の頃と何も変わっていないが、毎年嬉しいものだな。僕は────」
隣でトリスタンが演説しているのに、ユーフェミアはリリアナとの会話を思い出していた。
まだ十四歳だった少女が分不相応にも玉座に腰かけ、高い場所から大人たちを見下ろして媚びを売る姿を眺める。今年で二十回目の同じ光景をリリアナには慣れると言ったが、実際は未だに違和感があるのだ。
それは、子供の頃には見えなかった善と悪がハッキリ見えるようになったから。
「陛下、お誕生日おめでとうございます! 今年のお召し物も素敵ですね」
「僕のは普通のだ。それよりユーフェミアを見てくれ! 今年のユーフェミアも美しいだろう! 彼女の美しさを最大限に引き出す最高のドレスを用意した!」
「ドアが開いた瞬間から思っておりましたわ! さすが陛下、王妃陛下のことをよくわかってらっしゃいます!」
「そうだろう! 僕がユーフェミアのために用意した一点物だ!」
「素晴らしい!」
挨拶をしようと列を作る貴族達が今年も良い印象を残そうと必死に褒め称える。シャンパングラスを片手に挨拶に来る者たちの中に心から祝っていない者もいる。目を見ればわかるようになったのはここ三年ほど前からで、本人は上手く笑っているつもりでも目の奥は本心を語っているのがわかった。
大人になればわかることもあると言っていた父親の言葉を三十歳過ぎてから実感するとは思っていなかった。二十人目の挨拶で目の奥が笑っていなかったのは五人。表面だけ見ていれば心から祝福しているように見える様子に人間の恐ろしさを見る。
「王妃陛下、今年も素晴らしいパレードでした」
「……アドラム公爵……」
「両陛下の仲が良いのは国民の願いですからな」
「そうですね」
反王政派の代表の姿にユーフェミアは身体に緊張が走るのを感じた。毎年普通に話しかけてはくるのだが、それだけなのに不思議とストレスが溜まる。今年もまたこの男の嫌味を聞かなければならないのかと思うと吐き気がする。
ユーフェミアはアドラムからトリスタンに視線を移すと笑顔で頷いていて、トリスタンの手がユーフェミアの手を握った。
「両陛下のお子は、さぞ愛らしく聡明なのでしょうな」
始まった。
「我々国民一同、お世継ぎの顔を見るのを楽しみにしているのですが、今年はいかがでしょうか?」
直球を投げてくるアドラムの無神経さに不愉快さえ感じるのは、その態度に微塵も〝楽しみ〟というものが感じられないから。
二十年経っても世継ぎを残せていない王家を責めているつもりなのだろう。毎年飽きもせずに同じことを繰り返せるアドラムは数日前から台詞を用意して舞台役者に演技の指導を受けたのではないかと思うほど声高らかに問いかけてくる。まるで会場中の貴族たちに聞かせるように。
「子は神が与えてくださるものだ。僕たちが未熟だからまだ早いと判断されているのだろう」
「十六歳でも子供はできますよ、陛下」
トリスタンの言葉に嘲笑混じりに嫌味を返すアドラムにユーフェミアが怒りを感じて身体が少し前に動くも握っているトリスタンの手に力が入った。あからさまには止めない。だが、その力が「我慢しろ」と言われているように感じて、ユーフェミアは姿勢を正す。
「だからどうした?」
「だからどうしたって……ははっ、まるで開き直りですな、陛下」
小ばかにしたような笑いに支持派の貴族たちは世継ぎ問題が始まるとゆっくりと離れていく。そして反王政派の貴族たちがその空いた空間に入り込んできてアドラム同様にニヤつきを見せる。
「陛下、この国には王が必要なのです。もし陛下が病で臥せられたら国のことは誰に任せるおつもりですか?」
「それをそなたに言う必要があるのか?」
「一国民として心配申し上げているのです。世継ぎがいなければこの国は終わりです。陛下、どうお考えでしょうか? お聞かせいただけると我々も大変安心できるのですが」
正統な世継ぎがいない国は滅びる。昔からそう言われているのは知っている。だが、二人は話し合って子供を作らないと決めたわけではない。作ろうと、来てほしいと願っているのにそれが叶わないだけ。でもそれは世継ぎを迎えない理由にはならない。頑張るのなら養子をとってからでもいい。形だけでも世継ぎを残すのが先だとアドラムたちは言う。
「ユーフェミア様は今年、三十四歳になられました。女性は歳を取れば取るほど妊娠の可能性は低くなり、出産は困難となります」
「わかっている」
「いいえ、陛下は何もわかっておられません!」
急に声を上げたアドラムにユーフェミアは驚くが、トリスタンは平然としている。
「種が少ない人間にどうしろと? そなたは僕たちが努力をしていないと言いたいようだな?」
トリスタンの圧に支持派の貴族は更に後ろへと下がっていく。パーティーであまり感情的になることはないトリスタンだが、怒りを見せるのはこれが初めてでもない。過去に一度だけ、世継ぎについて追及した貴族に激怒したことがあった。そのときのようになるのではないかと支持派の貴族達は心配しているのだが、アドラムはまるでそれが狙いのようにニヤついたまま言葉を続ける。
「そのようなことは申しておりません。私どもは陛下の努力を存じ上げているつもりです」
「ならばそのような言葉は出てこぬはずだが?」
トリスタンの指摘に笑みを崩さぬままかぶりを振る。
「私はただ、こうお伝えしたいのです。世継ぎは国の希望であり未来でもある。世継ぎがいないのは希望も未来もないのと同じ。世継ぎが誕生しない限り、民は不安なまま。おわかりいただけますか?」
「理解はできるが、先も言ったように僕の種が弱いのだ。仕方あるまい」
アドラムの言葉が心からの不安であればトリスタンも受け入れはするが、何を魂胆に言っているのかわかっているため真剣に取り合おうとはしなかった。
シャンパングラスを回しながら中の気泡を見るだけでアドラムを見ようともしない。
そんな様子に初めて顔を歪めたアドラムだが、すぐに笑みを持ち直す。
「ゴホンッ……これは、噂に過ぎませんが、陛下が囲ってらっしゃる愛人が妊娠したとか」
どこから手に入れた情報なのか、アドラムの暴露に会場全体がザワつき始める。
「もしそれが本当であれば、妊娠できない原因は陛下ではなく王妃陛下にあるのでは?」
窺うような視線と問いかけにもトリスタンは答えない。
「だとしたら大問題ですよ、これは!」
トリスタンではなく、あえて周りを見回しながら言うアドラムにユーフェミアの表情が強張る。
「この国の母である我らが王妃陛下が子を宿せないなど許されるのか? この国の希望をこの国の母が残せないなどあっていいのか? 母は我らから希望を奪っている! もしそれが本当だとすればこれは国の存続に関わる大問題! 我々には真相を知る権利があるはず!」
両手を広げて演説のように熱を入れた喋り方に反王政派の貴族たちが「そうだー!」と声を上げる。
二十年間も子供が生まれない原因は必ずどちらかにあり、それはずっとトリスタンのせいだと言われていた。だが、もし噂が本当でトリスタンの愛人が妊娠したのであれば問題はトリスタンではなくユーフェミアが原因と決めつけるのはおかしな話ではない。確信を持って大声を出すアドラムに言い返す言葉が見つからないユーフェミアは悔しくてたまらなかった。
トリスタンの手を握っている手が震える。
彼らから希望を奪いたくて奪っているのではない。そう言ったとしても子を残せていない事実は変わらない。希望を、未来を、この国に与えることができていないのは事実なのだ。
「陛下……?」
スッと立ち上がったトリスタンが静かに階段を下りていく。まだ役者気取りで演説を続けるアドラムの後ろ、一段高い場所で足を止めるとザワつきが引いた。
青い顔をする支持者たちに気付いて振り向くとトリスタンの冷たい表情と共に振り下ろされるシャンパングラスがアドラムの視界に入り、そして頭に衝撃を感じた。
「キャアアアアアアアアアアッ!」
グラスが割れる音と数段といえど階段から転げ落ちたアドラムに会場中が大騒ぎになる。悲鳴が響き、貴族たちは一斉に壁際に逃げていく。
「うわっ……うわぁぁぁあああっ! 血が出てる! 僕の頭から血が出ているッ! だ、誰か助けてくれ!」
床に落ちて顔を上げるとポタッと絨毯の上に落ちた赤い雫に気付いて熱を持っている頭に触れると手にはヌルついた感触。恐る恐る手を下げると見える真っ赤な液体が自分の血であると気付いたアドラムが動揺して叫ぼうとも仲間は誰も助けようとはしない。
「い、いくら王といえどこのようなことが許されるはずがない! この国を支える貴族である僕をこんな目に遭わせるなんて、た、民が黙ってませんよ! あなたのような人間がこの国の王であっていいはずがない!」
アドラムの言葉に眉一つ動かさないトリスタンがゆっくり階段を下りてアドラムの前にしゃがむ。
「よく回る舌だな。引き抜いてやろうか?」
「ヒッ!」
過去に一度激怒したときは大爆発したように荒れて怒鳴り散らす姿だったのが、今は正反対に静かに怒っている。まるで怒鳴り散らすほどの怒りを通り越してしまっているかのような目つきにアドラムは小さな悲鳴を漏らすだけで反論はしない。恐怖を感じた身体は唇を震わせるだけ。
「僕に愛人がいて、その愛人が妊娠した? その情報はどこから得たものだ?」
「か、風の噂で……」
貴族たちの間で噂が真実であるかのように広まるには一日もあればじゅうぶん。噂好きな貴族たちの口はたとえ王であろうと塞げない。それはどこの国でも同じこと。
問題なのは、情報が的確すぎること。城に仕える者がリークしなければ知りえない情報を誰かが手に入れ、悪意を持ってそれを広めたのだ。城内の者といえど、知っている人間はごく僅か。アードルフか、追い出された愛人。
「確かな情報でもないのに貴様はそれを事実であるかのように語ったわけか。この場がどういう場かも理解せず、愚かにもこの国の母であるユーフェミアを陥れようとするとはな」
「ヒィッ!」
「陛下!」
掴んでいる胸ぐらを引き寄せると顔を反らしたときに無防備になったアドラムの首元に割れたシャンパングラスの先を突きつけるトリスタンにユーフェミアが慌てて駆け寄ろうとするが、エリオットが止めた。
今のトリスタンには近付くのは危険だと判断したエリオットに止めなければと目で訴えるもかぶりを振られる。
時々見せるようになった冷たい目と声。少し前までその片鱗さえ見せなかったトリスタンが人が変わってしまったように思えた。
「何様のつもりだ?」
「へ、陛下……!」
「何様のつもりだと聞いているのだ」
「お、お許しください!」
「答えろ!」
殺される──そう思ってしまうほどトリスタンの目には怒りが見える。
「僕に愛人がいると言うのなら今すぐ城内を駆け回って連れてこい! その愛人に僕の子がいると言うのなら証明してみせろ! ユーフェミアが世継ぎ不在の原因だと言うのならその証拠を出せ! できるのか!?」
「で、できません!」
悲鳴のような声でできないと言ったアドラムの胸ぐらを突き飛ばすように乱暴に話すとトリスタンは鼻を鳴らし「だろうな」と言って玉座に戻った。
「陛下……」
トリスタンの手を握ると優しく握り返されるが、視線が絡むことはない。
「アドラム公爵」
震えるばかりで返事をしないアドラムの傍に握ったままだった割れたシャンパングラスを放り投げると慌てて土下座するのが見えた。
「アドラム公爵、貴様は流罪及び爵位剥奪だ」
「ッ!? そ、そんな! それはあんまりです!」
驚いたのはアドラムだけではなく、周りの貴族も同じだった。だが、誰も抗議はしない。
「貴様がしたことは王族侮辱罪だ。僕だけではなく、ユーフェミアまで侮辱しておいてお咎めなしで済むと思っていたのか?」
「ぶ、侮辱だなどと……。私は皆が心配していることを代表して申し上げただけでございます!」
「死刑にならないだけありがたいと思え」
「そんな……!」
今までどおりに済むと思っていたのだろう。嫌味を言って、勝ち誇った笑みを浮かべながら陰で“種無し王”と仲間内でバカにして大笑いするいつもどおりの日常があると。だが今年は状況が変わったことを知らないアドラムは失敗した。
王が焦って釈明する。両陛下が困って言い淀む姿が見られると想像していたのに……
「アークライト侯爵、オールドリッチ伯爵、エヴァンズ子爵。そなたらもだ」
「へ、陛下! わ、私どもは何も……!」
「そこで声を上げていただろう。同罪だ」
同席していた妻たちが悲鳴を上げながら泣き崩れるのが見え、無情にも騎士たちに脇を抱えられて家まで送られることとなった。
罪状が書かれた紙とそれを読み上げる者は翌日にでも屋敷を訪れ、家族は早々に国を追い出されるだろう。そして貴族には耐え難い程の罰を受ける。
貴族として生まれ貴族として生きてきた者にとって爵位のない生活は考えられないだろうに、夫の愚かな言動により全てを失うことになった家族の末路は決まっている。
想像するだけでも辛く、ユーフェミアは呼吸をするのも忘れて目を閉じていた。
「続々と炙りだされることだろうな」
誰に言うでもないその言葉にあからさまに顔色を悪くする者たちがいた。
あのトリスタン王がこんなことをするなど誰の想像にもなかったこと。幼稚な王だと馬鹿にしていた者たちが慌てて帰るのをトリスタンは静かに見ていた。
「陛下……」
「ユーフェミア、大丈夫だ。君のことは僕が守る。どんなことがあってもだ」
いつも通りの笑顔だが、ユーフェミアは心配だった。気負いすぎて彼が独裁者になってしまうのではないかということ。自分はバカにされてもいい。でも妻のことになると別人のようになってしまう彼がこれ以上の暴走を始めたら──そんな不安が胸をよぎる。
いっそ本当のことを話してしまえばトリスタンも気が楽になるのではないかと思うが、余計なことはできない。彼が決めてくれた覚悟を勝手に打ち砕くことが許されるはずがない。
「水を差してすまなかった。せっかく祝いに来てくれたのに申し訳ない。そなたらの気持ち、確かに受け取ったぞ」
立ち上がって感謝を口にするトリスタンにまばらだが、拍手が起こった。皆がそれに合わせるように拍手をし始め、大きな拍手となり、それがお祝いの形となった。緊張した顔での拍手。笑顔のない祝い。そんな生誕祭が今までにあっただろうか。
「僕たちはもう下がるが、皆はパーティーを楽しんでいってくれ」
トリスタンの誕生祭だが、この気まずい雰囲気のまま皆が楽しめないと判断してサロンのようにこの場を使うよう指示し、ユーフェミアと共に場を後にした。
「陛下」
「話は二人きりでしよう」
後ろにはエリオット、ラモーナ、トレヴァーがいる。今のトリスタンは誰も信用していないのが伝わってくる。的確すぎる指摘が効いているのだ。
「そなたらは自分の部屋に戻れ。僕とユーフェミアはもう休む」
「お着替えを……」
「かまわぬ。僕がやる」
今のトリスタンに「いいえ、私の役目ですから!」と言う勇気はラモーナにはなかった。物怖じしない性格のラモーナでさえ、今のトリスタンに軽口を叩くことはできない。それほどの雰囲気をまとっている。
「陛下、彼らの罪状の準備をしても?」
「ああ、急げ」
「残りの者はどうしましょう?」
「炙りだせ。貴族の絆などあってないも同然だ。簡単に吐くだろう」
「承知しました」
頭を下げて去っていくトレヴァーが通り過ぎる際に見せた蛇のような笑みにゾッとしたユーフェミアはトリスタンの手を強く握る。
優しく腕を撫でるトリスタンはエリオットにも下がれと伝え、ユーフェミアの手を引いて部屋の中に入った。
「ユーフェミア」
「はい、陛下」
「裏切り者がいる」
「喋るとなるとアードルフ医師か愛人、でしょうか?」
「使用人の可能性もな」
ユーフェミアも城の全員を信用していたわけではない。だから裏切り者がいるという話のショックはそれほど大きくないものの、これほどの情報をリークした者が誰なのか想像がつかないのが気持ち悪い。
反王政派のリーダーであるアドラムにリークすればそれなりの報酬がもらえると思ったのだろう。それなら国を追い出されるアードルフか愛人。彼らが今どこにいるのか、探せばわかるのだろうか。
「陛下、愛人を切るのにちゃんとした対応をされましたか?」
「契約書には拇印を押させたぞ。それから口止め料として金貨も渡した。苦労しないで済むだけの金額だぞ」
拇印にどれほどの効果があるのか。見つからなければ意味がない。何をどうすればいいのかもわからない状態。
「陛下、わたくしはまだちゃんとした理由を聞いていません。なぜ愛人を作られたのか、なぜ急に切ると言いだしたのか」
ユーフェミアの表情にからかうこともできず、トリスタンは溜息をついて首を振る。
「ルドラに言われた。僕たちはちゃんと話し合うべきだと。いや……僕が、か」
ユーフェミアも思っていた。ちゃんと向き合わなければならないと。それが今なのだと。
「ちゃんと話すから、聞いてくれるか?」
「はい」
「聞いた後に離婚と言わないか?」
「……それは内容次第ですね」
「嘘でもはいと言ってくれ」
「はい」
「嘘だよな?」
「はい」
「くそッ」
余計なことを言ってしまったと自分の太ももを叩いたトリスタンだが、その場に膝をついて正座をする。そしてそのまま床に両手をついて頭を下げようとし────
「その謝罪は一番最後でお願いします」
「ううッ……最初にしたかった」
最初に土下座をして絆そうと思っている相手にユーフェミアは下げきる前にトリスタンの額に手を当ててそれ以上下げられないようにした。
ダメだったかと厳しいユーフェミアに泣き言を漏らしながら立ち上がると窓際に置いてあるソファーに腰かける。
「どこから話そうか……」
向かいに腰かけたユーフェミアは言われたとおり、黙って話を聞くことにした。
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