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祈りと告白【5】
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アズールスの想いに胸を熱くしていると、「ユズ」とアズールスに声を掛けられた。
「このまま俺の傍に居て欲しい。子供が産まれても、それからもずっと」
「アズールスさん……」
アズールスの綺麗な青色の瞳と目が合った。
「俺と結婚して欲しい。必ず、ユズを幸せにすると誓おう」
そうして、アズールスは柚子の手に口づけた。
「今は答えはいらない。ただ、考えておいて欲しい」
アズールスはそっと柚子の手を離したのだった。
「アズールスさん、私は……」
柚子は言いかけた言葉を飲み込む。
それは、アズールスの真っ直ぐな瞳に見つめられたからではなかった。
「少し、考えさせて下さい……」
「ああ。勿論だ。答えはいつでも構わない」
その時、ゴーンと音がして建物が震えた。
「もう、こんな時間なんだな
近くで聞いたのは柚子も始めてだったので、気づかなかったが、時折、屋敷まで聞こえてくる夕方を知らせる鐘は、この教会から鳴らされていたものらしい。
「あまり遅くなると、マルゲリタ達が心配する。そろそろ帰ろう」
「はい……」
アズールスに促されて、二人は教会を出たのだった。
柚子の頭の中には、先程のアズールスの告白がずっと響いていた。
(結婚して欲しいか……。まだ付き合ってもいなかったのに)
柚子とアズールスの気持ちは、確かにあの夜に繋がった。
けれども、アズールスから告白された事も、柚子から告白した事もなかった。
まだ、柚子はただの居候、ただの同居人だと思っていたのに。
柚子は隣を歩くアズールスを見る。
アズールスは先程、告白した事を全く気にしていないかのように、今夜の夕食の話をしていた。
「今夜も、マルゲリタ達も入れた全員で、夕食を共にしたいな」
「そうですね」
アズールスに合わせるように、柚子も小さく微笑んで頷いたのだった。
「このまま俺の傍に居て欲しい。子供が産まれても、それからもずっと」
「アズールスさん……」
アズールスの綺麗な青色の瞳と目が合った。
「俺と結婚して欲しい。必ず、ユズを幸せにすると誓おう」
そうして、アズールスは柚子の手に口づけた。
「今は答えはいらない。ただ、考えておいて欲しい」
アズールスはそっと柚子の手を離したのだった。
「アズールスさん、私は……」
柚子は言いかけた言葉を飲み込む。
それは、アズールスの真っ直ぐな瞳に見つめられたからではなかった。
「少し、考えさせて下さい……」
「ああ。勿論だ。答えはいつでも構わない」
その時、ゴーンと音がして建物が震えた。
「もう、こんな時間なんだな
近くで聞いたのは柚子も始めてだったので、気づかなかったが、時折、屋敷まで聞こえてくる夕方を知らせる鐘は、この教会から鳴らされていたものらしい。
「あまり遅くなると、マルゲリタ達が心配する。そろそろ帰ろう」
「はい……」
アズールスに促されて、二人は教会を出たのだった。
柚子の頭の中には、先程のアズールスの告白がずっと響いていた。
(結婚して欲しいか……。まだ付き合ってもいなかったのに)
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けれども、アズールスから告白された事も、柚子から告白した事もなかった。
まだ、柚子はただの居候、ただの同居人だと思っていたのに。
柚子は隣を歩くアズールスを見る。
アズールスは先程、告白した事を全く気にしていないかのように、今夜の夕食の話をしていた。
「今夜も、マルゲリタ達も入れた全員で、夕食を共にしたいな」
「そうですね」
アズールスに合わせるように、柚子も小さく微笑んで頷いたのだった。
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