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しおりを挟むヒロインちゃんは伏せていた顔を上げ、嬉しそうに両手で頬を押さえる。
「顔が熱いわ。アレンが私だけに…嬉しすぎる!!」
ヒロインちゃんはきゃきゃっと喜んでいる。俺とちょっと話しただけでこんな反応されるとは正直思わなかった。
「そんなに喜ぶ?」
「当たり前じゃない!アレンと話せて幸せ!」
「はは、ありがとう」
なんて可愛いことを言うだ、ヒロインちゃん。あんなに酷いことをした相手なのに…神対応過ぎる!こうやって、他の攻略対象を落としていくだなとしみじみと感じた。
「あ、何で今まで反応してくれなかったの?無視されたから寂しかった」
口を少し尖がらせて拗ねる。
「ごめんね、緊張していたからさ」
「そうなのね!」
意外にもあっさりと受け入れてくれた。悪いことをしたと本当に反省している。
「ずるい!僕もアレンと話したい」
ヒロインちゃんと二人で話していたら、オリバーが隣から俺の制服の袖を掴み、ワンコのように目をうるうるとさせていた。
うっ…。ダ、ダメだ。この目には弱いが…鬼にならないと!マリーのためと心で唱えながら、オリバーを無視した。そうしたら、無視したのが悪かったのかわからないが、
「こっち向いてよ」
とそう無理矢理、顔をオリバーの方に向かされた。
その瞬間、
ちゅっ、
「アレンが悪いんだよ…?」
「え…?」
何が起こったのか一瞬わからなかったがお互いの唇が触れていた感触と耳に残るリップ音。
…今、キスされた?
嘘だろ?
「キスされたくなかったら、僕のことを無視しないでね?」
オ、オリバー?こんな低い声で、明らかに目が座っているオリバー見たことない。いつもはワンコみたいで癒されるキャラで…。
いつもと違いすぎて目の前にいるのが本当にオリバーなのか疑った。いやでもまぁ一人だけ無視されたらさすがに怒るよな。今までの俺の対応からしたら腹立つのは仕方ないことだ。俺だってされたら嫌だ。キスはオリバーなりの嫌がらせかもしれない。
一応、席は一番後ろなので、ヒロインちゃん以外の同級生は誰も見ていなかったのがまだ救いだった。
「ちょっとオリバー!何私のアレンに勝手にキスしているの!?」
「君のじゃないよ。馬鹿なの?」
「あなただけ無視されたからってそんなことしていいと思っているの?アレンを困らせないで!…私だってしたいのに」
どうしていつも思い通りにいかないんだろう。でもまだ始まったばかりだ。
そう思い、あれから教室ではオリバーを無視し、ヒロインちゃんのみと話していたせいかオリバーのスキンシップがすごいことになった気がする。会うたびに腰に手を回されては隙があれば頬や手の甲にキスしてくる。無視されていることを強みに、それにつけ込んで好き放題されている。
嫌がらせにしてもおかしい。
疑問に思うがなんでこんなに懐かれている(?)のかわからない。自分でも最低なことをしているってわかっているが好かれる要素ないぞ?逆に嫌われることしかしていないのに。本当おかしい。
天然すぎるにも程がある。
二人を無視している時の方がまだよかった。…やっぱりオリバーだけは無視は酷すぎたかな。
よし、もうこうなったらまた二人を無視すべきなのか?
一瞬でも青春という二文字に取り憑かれた俺が悪かった。
でもマリーのためだから、俺がヒロインちゃんを攻略しないといけない。
うーん。ジレンマぁああ。
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