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しおりを挟む「ちょ、だ、大丈夫ですか!」
慌てて駆け寄った。身体を軽く揺すり、呼びかけた。
「うっ…」
少し反応が見えた。倒れていたのは、どこか見覚えのある顔のおじいさん。今は思い出せないがそれどころじゃない。
「大丈夫ですか?名前は言えますか?」
かなり弱っているように見える。一体、何があったんだよ。今俺にできることってなに。辛そうな顔をしているおじいさん。
お金ならいくらでもあるがポーションや薬草なんて買う余裕は無さそうだ。人を呼びたいが一刻も早く処置をしないと助けられないかもしれない。
さっき買ったばかりの魔法石を見る。俺にできるのか。いや、やるしかない!水の魔法石と自分の光属性で聖水を作ることを決めた。
聖水は浄化効果があるって聞くし、何かしら気分が落ち着くだろう。あとは医者に診てもらおう。今はやってみるしか他はない。
イメージを膨らませるんだ。前世で聖女が聖水を作っているアニメ見てただろ。それを思い出すんだ。
魔法石を握り、集中する。
すると、魔法石が段々形を変え、液状になっている感触があった。もしかして成功!?やってみるもんだな。初めての経験に驚きが隠せないでいた。これが聖水であればいいけど。
しかし、魔力がないため、飴玉サイズのほんの少しの水しか作れなかった。
「お、俺が作ったものですけど、これ飲んでください!」
「…お前さんが、…作ったなら大丈夫じゃ」
おじいさんは、枯れている声をさらに絞りながら出していた。そんなこと言われてたら意地でも助けるぞ。ゆっくりと手のひらの水を飲ませる。すると、おじいさんの身体は一瞬光を帯びた。緊張が走る。
数秒しておじいさんは目をゆっくり開けて笑みを浮かべた。思わず安堵する。
「おかげで助かった。聖水が作れるなんてお前さん何者じゃ」
「たまたま持っていた魔法石で作っただけで、効果があったなら良かったです。それよりも喋って大丈夫なんですか?」
本当に聖水作れちゃった自分が怖い。
「大丈夫じゃよ。体も動くことができる」
「あ、安静にしてください!医者にも診てもらわないと!」
「それには及ばない。聖水なんて立派もん飲ませてくれてんじゃから」
「あの、あれ本当に聖水だったんですか?」
飲ませた後に自分で言うのもアレだけど。
「わしの目を舐めるんじゃない。すぐに聖水だとわかったから口にしたんじゃ」
「そ、そうなんですね…」
聖水だと判断できるなんて、逆にあなたが何者だって問いたい。
「聖水なんて貴重なもん飲ませてくれて有難い。良かったらお礼をさせてくれないかのう」
「お、お礼なんて大丈夫です!そ、それに助けられたのは光のおかげで…はっ」
慌てて口を押さえる。急に光なんて言っても信じてくれない。おかしなやつだと勘違いされてしまう。
「お前さんもしかしてコレが見えるのか」
突然、あの謎の光が現れ、おじいさんはそれを指さしている。も、もしかして俺だけじゃなくて見えてる?
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