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しおりを挟む「もう10歳になったのか早いもんだ。めでたいめでたい。今日はきっといいことがあるじゃろう」
「ありがとうございます。では行ってきます」
誕生日とだからと言って盛大に祝ってもらうことなく普段通りの日常だ。何も特に変わらない日常だが、実際に『おめでとう』と言われると嬉しい。
「いいことか…」
学園に向かいながらヘンリ爺さんの言葉を思い出す。そんなこと本当に起きてくれたらいいのにな、と夢を見てしまった。
「お前!さっきから頭が高いんだよ!!土下座しろ」
今日もいつものようによくわからないことで怒られる。ルアンより俺の方が身長が高いのは確かだけど、自然と高くなるのは仕方のないことだった。今日は誕生日なので平穏に過ごしたいと思っていたが無理そうだ。
土下座か…。言うことを聞かないと前に進ませてくれないためルアンの言う通りにした。
すると、ガシッと頭を踏まれた。こういうことは日常茶飯事だ。こっちから何もしなければ酷くはされないだろう。相手は貴族。ヘンリ爺さんに何をするかわからない。俺が我慢すればいいことだけ。
今日は罵声を浴びるのだろうと思っていたが一向に何も発言せず、頭を踏まれたまま何もしてこない。
おかしい。
顔をあげたいがこの状況では難しい。
「なにしてんですか!いつものようにもっと足に力込めてくださいよ。平民風情が俺たち貴族と一緒にされてたら困ります!!」
「おいお前!ルアン様こそ、偉大なる魔法使いになる予定のお方だぞ!」
周りも異変を感じたのか騒ついた。
すると、頭が軽くなったと思ったらルアンから以外な言葉が出た。
「あ~あ、こんなやつと関わるの飽きた。今までごめんね~?ほら、これお詫び。…ふっ、売ってきたら?」
ルアンは付けていた高そうなブレスレットを俺に渡した。
え…、この子、誰。
表情や言葉の発し方としてルアンではないみたいだった。
しかもそれにこのブレスレット…前にルアンとその取り巻き達が話してるのを聞いたことがあった。
『ルアン様、そのブレスレット綺麗ですね。とっても似合っています!』
『気づいたか?手に入れるのに少しばかり時間がかかった』
『そうなんですね!もしいらなくなったらください!』
『やだね。まあ、強いて言うなら惚れた相手にしかあげねぇかな』
と、このブレスレットを大切にしてたはずなのに、それを俺にあげるなんて。
ん?待てよ惚れた相手に…って言った?
…っ!
自分でも顔に熱を帯びるのがわかる。違う違う違う。そう決まったわけじゃない。好きだと言われたわけでもないのに誤解するんじゃない。
黙ったままルアンを見てたら、俺の髪を整えて『じゃあね~』と笑顔を見せてくれた。
あのルアンが…俺を触った上に、笑った…?
胸の鼓動がはやくなる。突然の出来事に頭が追いつかないがこれだけは確かだ。
生意気な子だというイメージだったけど…
ルアンって
こ、こんな可愛かったっけ…?
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