8 / 71
8
しおりを挟むもしかして、ヘンリ爺さんが言っていたいいことってこのこと?だとしたらすごい。
もらったブレスレットを見つめる。売ればなんて言われたけどそんなことできるわけない。初めて人から物をもらった。心が温かくなる。誕生日という日もあって本当にこれをプレゼントと呼んでもいいものか。
こんな貴重なものを俺にくれるなんて、絶対大切にする。もらったばかりのブレスレットを自分の腕に付けてみる。さっきまでこれをルアンが付けていたと思うと変な気持ちになる。
その日家に帰ったら、腕に付いているブレスレットに気づき、プレゼントだと言うとヘンリ爺さんも嬉しがっていた。『今度連れてきておいで』なんて言われたので誘ったら断られそうだ。
でもいつか紹介できたら嬉しい。
「おいお前。なぜそれを?」
次の日、ご機嫌ななめのルアンが早速現れ、ブレスレットを指差した。気づいてもらえたと、勝手に嬉しくなり自然の口元が緩む。
「ルアンにもらったから。…似合ってる?」
見えやすい位置まで、腕をあげた。
「た、確かにあげたけど、俺様が付けてたブレスレットなんだぞ」
困った表情も可愛い。今までのルアンとは様子が違って動揺しているのが珍しい。
だけど少し調子に乗りすぎたかもしれない。
「じ、実は昨日誕生日だったんだ…。今までプレゼントというのを貰ったことがなくて…それで舞い上がってしまって」
「え…」
俺の誕生日だなんて知らないと思うけど、ルアンには伝えたかったし、なぜか知ってほしいと思った。
「しかもこのブレスレット…ルアンが大事そうにしてたものだってわかるから。だからそれをくれるなんて嬉しかった。ありがとう」
昨日、お礼を言うことすらできなかったからこうして言えてよかった。
「ふ、ふーん?プレゼントもらったことがないとか可哀想なやつ!そこまで言うなら一生大切にしろよ!無くしたり壊したりしてみろその時は覚悟しろな!」
「絶対大切にするね、ルアン」
「あっそ!」
このブレスレットは何があっても大切にする。
生意気が慣れてない感じと言い過ぎたかなっていう表情をする優しさが垣間見えて全部が愛おしく感じた。なんだろうこの気持ち。いろんな表情が見たいだなんて欲張りかな。ルアンのことが頭でいっぱいになる。
もっと声が聞きたい。
もっと近づいてみたい。
俺から話しかけたらきっと嫌がると思うけど、一歩ずつでもいいからルアンのことが知りたい。
授業中、遠い席に座っているルアンを眺めていると、最近難しそうな本を集中して読んでいる姿をよく見る。
隣で一緒に読んでみたい。
笑顔をまた見たい。
俺にもっと力があれば隣に立てるのかな。君に相応しい人になりたい。
1,711
あなたにおすすめの小説
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
BL世界に転生したけど主人公の弟で悪役だったのでほっといてください
わさび
BL
前世、妹から聞いていたBL世界に転生してしまった主人公。
まだ転生したのはいいとして、何故よりにもよって悪役である弟に転生してしまったのか…!?
悪役の弟が抱えていたであろう嫉妬に抗いつつ転生生活を過ごす物語。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼不定期連載となりました。
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
災厄の魔導士と呼ばれた男は、転生後静かに暮らしたいので失業勇者を紐にしている場合ではない!
椿谷あずる
BL
かつて“災厄の魔導士”と呼ばれ恐れられたゼルファス・クロードは、転生後、平穏に暮らすことだけを望んでいた。
ある日、夜の森で倒れている銀髪の勇者、リアン・アルディナを見つける。かつて自分にとどめを刺した相手だが、今は仲間から見限られ孤独だった。
平穏を乱されたくないゼルファスだったが、森に現れた魔物の襲撃により、仕方なく勇者を連れ帰ることに。
天然でのんびりした勇者と、達観し皮肉屋の魔導士。
「……いや、回復したら帰れよ」「えーっ」
平穏には程遠い、なんかゆるっとした日常のおはなし。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新!
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
悪役令息(Ω)に転生した俺、破滅回避のためΩ隠してαを装ってたら、冷徹α第一王子に婚約者にされて溺愛されてます!?
水凪しおん
BL
前世の記憶を持つ俺、リオネルは、BL小説の悪役令息に転生していた。
断罪される運命を回避するため、本来希少なΩである性を隠し、出来損ないのαとして目立たず生きてきた。
しかし、突然、原作のヒーローである冷徹な第一王子アシュレイの婚約者にされてしまう。
これは破滅フラグに違いないと絶望する俺だが、アシュレイの態度は原作とどこか違っていて……?
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる