嫌われ者の僕

みるきぃ

文字の大きさ
上 下
84 / 91
もしもの話

天山神影×佐藤あおい ①

しおりを挟む






「あおい…その、えっと俺と付き合ってくれ」

ぶっきらぼうな告白。だけど、その目は真っ直ぐ僕を見つめていた。



僕に、もったいないくらいの恋人ができた。

その人は何でもできてかっこよくて少し強引なところもあるけど、僕の気持ちを大切にしてくれる優しい人。

初めてあった時は、怖かったけど、関わっていくうちに好きになっていた。


もちろん、内緒で付き合っている。




放課後、校舎裏でいつも待ち合わせをしていた。




「あおい。帰るぞ」


「うん!神影は生徒会の仕事は終わったの?」


「あぁ、お前と一緒にいたくて早く終わらせた」


「そ、そっか!ありがとう」



嬉しい言葉をくれる。そんなことを言われると照れてしまう。




天山神影。生徒会長をしていて生徒から爆発的に人気がある。反対に僕、佐藤あおいは地味な見た目でみんなから嫌われている。


そんな人気者の彼と、僕が隣にいるのはどう見ても似合わない。自分でもそれはわかっていた。



神影の隣に立てるような人間になりたい。

だけど、神影は『別にそのままでいいんじゃね。…まぁ、俺様はどんなあおいでも好きだけど』と照れくさそうにそう言ってくれた。


ますます、神影に惹かれていく。









「ちょっと寄り道するぞ」



帰り道、歩いていると神影は僕の腕を引き、狭い路地に連れてきた。




「あおい…。もうちょっとこっち」










「んっ」


お互いの唇が触れた。

付き合って初めてのキス。


一瞬、驚いたが僕の後頭部に神影の大きな手が触れて、安心感に包まれた僕は目を閉じた。



「眼鏡、邪魔だから外すぞ」


眼鏡が外されると、何回も何回も深く、お互いにキスを交わした。













それから、神影と付き合って半年が経った頃だった。その日は僕の誕生日。


一緒に祝うと約束してくれた。


18時に公園で待ち合わせをしていた。



だけど、その日待っても神影の姿はなかった。












「神影…」


幸せな日々に終わりを告げる音がしたような気がした。









次の日になり、神影が来なかった理由が明かされた。

連絡しても繋がらず、嫌な予感がし、神影の家をたずねた。












「え、神影が車に轢かれた…?」


頭が真っ白になった。



神影のお姉さんである光姫さんがそう言った。泣いたせいなのか光姫さんは目の下が赤くなっていた。


とても冗談を言っているようには思えなかった。




「頭を強く打ったそうよ」



それを聞いた時、目眩がした。

嘘であってほしかった。





すぐに病院にかけつけるも集中治療を受けており、面会は制限されているためとても会える状況ではなかった。僕は神影の無事を祈ることしか出来なかった。


神頼みでも何でもいいからお守りをたくさん買った。毎日毎日祈った。






そして願いが叶ったのか、神影は状態が落ち着きそれから一般病棟へ移ることが決まった。





でも目は覚さなかった。






「早く、目を覚ましてよ…神影っ」


ここで泣いちゃダメだ。

今、頑張っている神影に失礼だ。



僕は毎日お見舞いに行き、たくさんのお守りを持って神影の手を握った。













すると、その時だった。


「う…ここは、」






しばらく聞いていなかった大好きな人の声。


神影に視線を向けると、目をうっすら開けていた。







うそ…っ。



「神影…?」

我慢していた涙が神影が目を覚ましたことで一気にこぼれ落ちた。


「神影、目覚ましたのね」

光姫さんも泣きそうな顔でそう言った。






「あれ、姉貴…」



「もう神影の馬鹿。心配させないでよ。ほら、あおいちゃんもずっとあなたのこと心配していたのよ」








「……あおい?…つかお前、誰?」



「え…、」


真っ直ぐ僕を見つめる目は、以前と違って、それは残酷なものだった。




しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

笑わない風紀委員長

馬酔木ビシア
BL
風紀委員長の龍神は、容姿端麗で才色兼備だが周囲からは『笑わない風紀委員長』と呼ばれているほど表情の変化が少ない。 が、それは風紀委員として真面目に職務に当たらねばという強い使命感のもと表情含め笑うことが少ないだけであった。 そんなある日、時期外れの転校生がやってきて次々に人気者を手玉に取った事で学園内を混乱に陥れる。 仕事が多くなった龍神が学園内を奔走する内に 彼の表情に接する者が増え始め── ※作者は知識なし・文才なしの一般人ですのでご了承ください。何言っちゃってんのこいつ状態になる可能性大。 ※この作品は私が単純にクールでちょっと可愛い男子が書きたかっただけの自己満作品ですので読む際はその点をご了承ください。 ※文や誤字脱字へのご指摘はウエルカムです!アンチコメントと荒らしだけはやめて頂きたく……。 ※オチ未定。いつかアンケートで決めようかな、なんて思っております。見切り発車ですすみません……。

俺の義兄弟が凄いんだが

kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・ 初投稿です。感想などお待ちしています。

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。

かーにゅ
BL
「君は死にました」 「…はい?」 「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」 「…てんぷれ」 「てことで転生させます」 「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」 BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。

王道学園の冷徹生徒会長、裏の顔がバレて総受けルート突入しちゃいました!え?逃げ場無しですか?

名無しのナナ氏
BL
王道学園に入学して1ヶ月でトップに君臨した冷徹生徒会長、有栖川 誠(ありすがわ まこと)。常に冷静で無表情、そして無言の誠を生徒達からは尊敬の眼差しで見られていた。 そんな彼のもう1つの姿は… どの企業にも属さないにも関わらず、VTuber界で人気を博した個人VTuber〈〈 アイリス 〉〉!? 本性は寂しがり屋の泣き虫。色々あって周りから誤解されまくってしまった結果アイリスとして素を出していた。そんなある日、生徒会の仕事を1人で黙々とやっている内に疲れてしまい__________ ※ ・非王道気味 ・固定カプ予定は無い ・悲しい過去🐜のたまにシリアス ・話の流れが遅い

チャラ男会計目指しました

岬ゆづ
BL
編入試験の時に出会った、あの人のタイプの人になれるように………… ――――――それを目指して1年3ヶ月 英華学園に高等部から編入した齋木 葵《サイキ アオイ 》は念願のチャラ男会計になれた 意中の相手に好きになってもらうためにチャラ男会計を目指した素は真面目で素直な主人公が王道学園でがんばる話です。 ※この小説はBL小説です。 苦手な方は見ないようにお願いします。 ※コメントでの誹謗中傷はお控えください。 初執筆初投稿のため、至らない点が多いと思いますが、よろしくお願いします。 他サイトにも掲載しています。

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

処理中です...