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もしもの話
天山神影×佐藤あおい ①
しおりを挟む「あおい…その、えっと俺と付き合ってくれ」
ぶっきらぼうな告白。だけど、その目は真っ直ぐ僕を見つめていた。
僕に、もったいないくらいの恋人ができた。
その人は何でもできてかっこよくて少し強引なところもあるけど、僕の気持ちを大切にしてくれる優しい人。
初めてあった時は、怖かったけど、関わっていくうちに好きになっていた。
もちろん、内緒で付き合っている。
放課後、校舎裏でいつも待ち合わせをしていた。
「あおい。帰るぞ」
「うん!神影は生徒会の仕事は終わったの?」
「あぁ、お前と一緒にいたくて早く終わらせた」
「そ、そっか!ありがとう」
嬉しい言葉をくれる。そんなことを言われると照れてしまう。
天山神影。生徒会長をしていて生徒から爆発的に人気がある。反対に僕、佐藤あおいは地味な見た目でみんなから嫌われている。
そんな人気者の彼と、僕が隣にいるのはどう見ても似合わない。自分でもそれはわかっていた。
神影の隣に立てるような人間になりたい。
だけど、神影は『別にそのままでいいんじゃね。…まぁ、俺様はどんなあおいでも好きだけど』と照れくさそうにそう言ってくれた。
ますます、神影に惹かれていく。
「ちょっと寄り道するぞ」
帰り道、歩いていると神影は僕の腕を引き、狭い路地に連れてきた。
「あおい…。もうちょっとこっち」
「んっ」
お互いの唇が触れた。
付き合って初めてのキス。
一瞬、驚いたが僕の後頭部に神影の大きな手が触れて、安心感に包まれた僕は目を閉じた。
「眼鏡、邪魔だから外すぞ」
眼鏡が外されると、何回も何回も深く、お互いにキスを交わした。
それから、神影と付き合って半年が経った頃だった。その日は僕の誕生日。
一緒に祝うと約束してくれた。
18時に公園で待ち合わせをしていた。
だけど、その日待っても神影の姿はなかった。
「神影…」
幸せな日々に終わりを告げる音がしたような気がした。
次の日になり、神影が来なかった理由が明かされた。
連絡しても繋がらず、嫌な予感がし、神影の家をたずねた。
「え、神影が車に轢かれた…?」
頭が真っ白になった。
神影のお姉さんである光姫さんがそう言った。泣いたせいなのか光姫さんは目の下が赤くなっていた。
とても冗談を言っているようには思えなかった。
「頭を強く打ったそうよ」
それを聞いた時、目眩がした。
嘘であってほしかった。
すぐに病院にかけつけるも集中治療を受けており、面会は制限されているためとても会える状況ではなかった。僕は神影の無事を祈ることしか出来なかった。
神頼みでも何でもいいからお守りをたくさん買った。毎日毎日祈った。
そして願いが叶ったのか、神影は状態が落ち着きそれから一般病棟へ移ることが決まった。
でも目は覚さなかった。
「早く、目を覚ましてよ…神影っ」
ここで泣いちゃダメだ。
今、頑張っている神影に失礼だ。
僕は毎日お見舞いに行き、たくさんのお守りを持って神影の手を握った。
すると、その時だった。
「う…ここは、」
しばらく聞いていなかった大好きな人の声。
神影に視線を向けると、目をうっすら開けていた。
うそ…っ。
「神影…?」
我慢していた涙が神影が目を覚ましたことで一気にこぼれ落ちた。
「神影、目覚ましたのね」
光姫さんも泣きそうな顔でそう言った。
「あれ、姉貴…」
「もう神影の馬鹿。心配させないでよ。ほら、あおいちゃんもずっとあなたのこと心配していたのよ」
「……あおい?…つかお前、誰?」
「え…、」
真っ直ぐ僕を見つめる目は、以前と違って、それは残酷なものだった。
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