85 / 91
もしもの話
天山神影×佐藤あおい ②
しおりを挟む【神影side】
「あおい…その、えっと俺と付き合ってくれ」
緊張してしまい噛みながら初めて告白した。
決して口に出したり、本人には言えないが俺にはもったいないくらいの俺様の恋人、佐藤あおい。
あおいの見た目は、ダサい眼鏡をかけ、チビでどこもいいところがない奴だと初めて会った時はその印象だった。関わっていくうちに『守ってやりたい』という感情が芽生え、なぜか行動すべてが愛おしく思えた。
何かの拍子で眼鏡を外したあおいを見た時は、別人かと思った。こんなに性格も健気で、美しいくらいの見た目。反則だと思った。
内緒で付き合ってはいるが正直俺自身は、あおいは俺の恋人なんだって公言したいくらい。そう言ったらきっとあおいは『僕なんかが』なんてまた言うだろう。そこがまた可愛いなんて言ってやらねぇけど。
帰りはいつも一緒に帰る。人気のない校舎裏が俺らの待ち合わせ場所。小さく座って待っているあおい。俺が来ると嬉しそうにするのを見ると今すぐにもかけつけて抱きしめたくなる。照れるからやらないけど。帰り道は他愛もない会話をして過ごしていた。
ある時、恋人となってもまだ手くらいしか繋いだことなくて、あおいの隣にいるだけで理性との戦いだった。もう我慢ができず、強引にあおいの手を引き、狭い路地へと連れ込んだ。そして付き合って初めてのキスを交わした。息をするのも一生懸命なあおい。またそこが俺をおかしくさせた。
この子は俺が大切にし、幸せにしたい。
そして付き合って半年が経った頃、あおいの誕生日をむかえた。大好きな人の誕生日。素敵な一日にして祝ってやりたい。そう思い、一緒に過ごすことを約束した。
あおいの誕生日に愛し合いたいなんてこと考えてはニヤついて俺は正直調子に乗っていた。
また、少し古いやり方だけど、薔薇100本の花束を買ってプレゼントして、喜ばせたいと思った。花束を片手に、浮かれていたんだと思う。
大好きな人が待っている場所に向かう途中、俺は強い衝撃をうけ、そこから意識が遠のいていた。
意識がないはずなのに、誰かが泣いているのを感じ、今すぐ抱きしめてやりたいとか思ったり、目を覚まさない俺の手を優しく手を握ってくれる感覚に安心していたりした。
『早く、目を覚ましてよ…神影っ』
誰かの声。
俺の大好きな声。誰だっけ…。
思い出せない。
それからゆっくり意識が回復した。うっすら目を開けると、真っ白な天井がうつった。俺の部屋じゃない。
「う…ここは、」
俺がそうひとこと喋ると、隣から『神影…?』と誰かが俺の名前を呼んだ。
声がした方に視線を向けると、お守りをたくさん持って、俺の手を握っているダサい眼鏡をかけた地味な奴。
誰だ、こいつ。
俺の横で泣く知らない奴。知らない奴なのに泣いている姿を見ていると、胸がぎゅっとなった。
「神影、目を覚ましたのね」
女の人の声。昔から聞いたことある声。
「あれ、姉貴…」
泣きそうな顔の姉貴の姿。
「もう神影の馬鹿。心配させないでよ。ほら、あおいちゃんもずっとあなたのこと心配していたのよ」
「神影、良かった…っ」
知らない。
「……あおい?…つかお前、誰?」
「え…、」
「何、俺の手をなれなれしく触ってんの」
「ご、ごめんなさい…」
奴は謝りながら、握っていた俺の手を離した。手が離れた瞬間、自分から言ったくせに俺はなぜかモヤっと嫌な感じがした。
3
お気に入りに追加
1,899
あなたにおすすめの小説

心からの愛してる
マツユキ
BL
転入生が来た事により一人になってしまった結良。仕事に追われる日々が続く中、ついに体力の限界で倒れてしまう。過労がたたり数日入院している間にリコールされてしまい、あろうことか仕事をしていなかったのは結良だと噂で学園中に広まってしまっていた。
全寮制男子校
嫌われから固定で溺愛目指して頑張ります
※話の内容は全てフィクションになります。現実世界ではありえない設定等ありますのでご了承ください



ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました
ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。
「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」
ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m
・洸sideも投稿させて頂く予定です

タイトル未定
みるきぃ
BL
前世で大好きだった少女漫画の推しキャラの親友かつ幼なじみに転生した俺。推しキャラの幸せのために幼少期から計画を立てて完璧な男に鍛え上げようと頑張る話。『悠生、愛してるよ』『君の方が気になる』いや、何か思ってたの違う。って話。

嫌われものの僕について…
相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。
だか、ある日事態は急変する
主人公が暗いです

俺の義兄弟が凄いんだが
kogyoku
BL
母親の再婚で俺に兄弟ができたんだがそれがどいつもこいつもハイスペックで、その上転校することになって俺の平凡な日常はいったいどこへ・・・
初投稿です。感想などお待ちしています。
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる