嫌われ者の僕

みるきぃ

文字の大きさ
上 下
46 / 91
男前風紀委員長

2

しおりを挟む




「キ、キス…?」


「今さら照れることじゃないだろ……この可愛い奴め」




すると、僕の頭を軽く撫でて、少しずつ花園くんの顔が近づいてきた。顔に息がかかるほどの近さ。目を閉じる花園くん。





「は、花園くん…ちょ、ちょっと」



「…ん?どうしたんだ?」

 


「や、やっぱり、その…キ、キスは…」




仲直りはとても嬉しい。けどさすがにキスは抵抗がある。いくら親友の証って言っても恥ずかしいしなれない。



「もしかして皆に見られるのが嫌なのか?もうあおいはわがままだな!」



「ご、ごめんなさい…」


花園くんに気を使わせてしまった。





「じゃあ、あとでしような!本当は皆に見せつけたいけど仕方ないから我慢してやる!!」



そう言って、花園くんは僕の肩に手を回しなぜか額やこめかみの方に音を立てながら軽くキスを落としていった。こ、これも恥ずかしい…なんて言えるはずなかった。




「…おい、てめぇっ!」


すると、後ろから笹山くんが掠れながらも声をあげた。






「さ、笹山くん…わぁっ、」


傷を大丈夫かどうか聞こうと思った時、後ろから引っ張られ、体勢を崩したまま笹山くんの腕の中におさまってしまった。




「お前、こんな奴と付き合ってるとか言わねぇだろうな?」



「…え?」


「何、簡単に流されてんだよ。この馬鹿」



 
言っている意味がよくわからなかったが怒られているのはわかる。どうすることもできなくて小さな声で謝った。




「…き、傷は…だ、大丈夫なの…?」

 
謝ったあと、恐る恐る聞いてみる。




「当たり前だ。それより今すぐお前は帰れ」



少し焦った様子の笹山くん。




か、帰れ…?それはどうしてと、疑問に思った瞬間



「あおいッ!!お前はやっぱり浮気者だ!!!!浮気者!浮気者!浮気者!俺がいながら何でそんな奴のこと心配するんだよ!!俺が帰ってきたのに何でこっちを見ない?突然いなくなったのはさっき謝ったじゃん!!!!あおいのわからずや!」




花園くんが大声で怒鳴り、以前も怒った時のあの時の表情になった。僕はまた花園くんに前と同じ顔をさせてしまった。





「…あおいから離れろ、雑魚!!」


花園くんはものすごい勢いで笹山くんに手を降りおろす。その弾みに手に持っていたハンカチを落とした。





「は、花園くん…!」



「…俺のあおいを誘惑しやがって!!」



花園くんは僕を笹山くんから遠ざけてさっきよりも更に強い力で笹山くんに暴力を振るった。






 


「…あーあ、手ぇ汚してしまった」



花園くんの拳には笹山くんの血がついていた。





クラスにいた不良さんたちも顔を青ざめて『病院連れて行った方がよくね?』とどこからか聞こえてくる。花園くんは何事もなかったかのように僕がさっき落としたハンカチを拾って手を拭いた。




「あおい!これでもう俺たちを邪魔する奴はいないぞ!安心しろよな!」


 
「え、」


体が震えてしまう。笹山くんは不良さんたちに運びこまれて口の方から血が流れていた。




ぼ、僕のせい…?


胸が苦しくなった。




「泣きそうになるなよ!そんなに嬉しいからって」




運びこまれていく笹山くんを見る。



「…ご、ごめんなさいっ」




笹山くんが言った通り僕が帰っていれば笹山くんはこんな傷つかなくてすんだ。





「謝ったから許してやるぞ!!俺って本当に優しいよな!普通だったら許してもらえないんだぞ!」



涙を堪えることができなくて泣きそうになり顔をうつむけた。うつむけた瞬間、床に涙が零れていく。





「あー!!そんなに泣いて嬉しいのはわかるけど…もう可愛いな」



「ぁ…」




すると、花園くんは泣いている僕の顎を掴み、





「ンっ!」


深いキスを落とした。舌が入ったり出たりと繰り返す。そして、僕の唇を舐めて角度をかえながら何回も何回も貪るようにキスをする。リップ音が教室に響いて恐怖と羞恥が僕を包み込んだ。…息ができなくて苦しい。




「皆の前ではしないって言ったけど我慢できなかった!あおい、これからはお前を一人にしないからな!」

 



その言葉を最後に僕は意識を閉ざした。




──
────

……






「─あおい!起きろ!」


誰かの声で目を覚ます。あ、れ…僕、今まで何してたっけ…。少し唇に変な感じがして、少し湿っていた。うっすらとゆっくり、目を開けると花園くんがいて不満げな顔だった。




「やっと起きた!」


「は、花園くん…ごめんね。僕寝てて…。あの、ここは?」



周りを見渡すと、思い出した。一度、前に来たことがある花園くんの部屋だった。





「俺の部屋だぞ!それと俺があおいのことここまで運んでやったぞ!でも気にするなよな!」


「そ、そうなんだ…ありがとう」



「と、当然だろ。俺はあおいの…しょ、将来の旦那なんだから…あーもう!恥ずかしいだろ!」



花園くんは顔を赤らめ、顔を手で覆って隠した。…僕あのまま気を失って寝てしまっていたんだ。花園くんがここまで運んでくれたんだ…。重くなかったかな…。それに笹山くんは、大丈夫なのかな。すぐに、不良さんたちに運んでもらってたけどかなり痛そうなケガしてた…。心配になる。誰かが傷つくのは本当に…見てられない。なのに、何もできない僕は本当に最低な人間。





「なぁなぁ!あおいの寝顔ずっと見てたら俺な!!ちょっと舞い上がった!でも、途中からあおいと話したくなって起こそうとしたけど、なかなか起きなくて、王子様からのちゅーしまくったぞ!」

 

そしたら、目を覚ました!と、喜ぶ花園くん。




「お、王子様の…ちゅー…?」


「そうだぞ!」




だから、さっき唇が湿っていたんだと納得した。親友の証のキス。もう、僕たちって仲直りしたってことだよね…?絶対、許してもらえるはずないと思っていた。口も聞いてくれないと思って不安だった。だけど、花園くんはこんな僕なんかにいっぱい話しかけてくれる。友達ってこういうものなんだと知ることが多かった。でも、誰かに暴力を与える花園くんは怖かった。



「あっそうだ!俺、あおいのためにお土産を買ってきたんだった!」


ちょっと待ってろよ!と慌ただしくしながら奥の部屋へと行った。花園くんって忙しい人だなぁ、と思った。すぐに足音を立てて花園くんが戻ってきた。




「これ!俺からのプレゼントだっ!大事にしろよ!」



手を掴まれ、可愛くラッピングされた袋を渡されてそれを受け取った。ぼ、僕にプレゼント…?



「あ、ありがとう…」



…嬉しい。何だろうと思いながら、リボンをといて袋を開けて中に入っているものを取り出した。





え…?



これって、

「く、首輪…?」


…だ、よね?




ベルトのようなシンプルにデザインされた革製の黒い首輪だった。






「気に入ったか?これ人間用の首輪なんだぞ!オシャレだろ!」



「そ、そうなんだ…初めて見た」



人間用の首輪ってあるんだ。首輪って犬や猫だけの物じゃないんだってこの時改めて知った。こ、こういうのって流行ってるのかな…?僕は最近の流行とか新しいものには疎いからわからない。



「これで安心しろよな、将来は俺が養ってやるから!…ほら、つけてやるからさ、後ろ向けよな!」



「え、あ、うん!あ、ありがとう」




僕は後ろを向いて、花園くんがゆっくりと僕の首に首輪をつけてくれた。これってデザインが違うだけでネックレスみたいなものなのかな?



「あおい!よく似合ってるぞ!!」



花園くんはニコニコと嬉しそうな表情になりそう言って僕の頭を撫でた。せっかく花園くんが僕なんかにプレゼントしてくれたのに申し訳ないけど




「は、花園くん…やっぱり少し違和感があるかも」



やっぱり、まだなれない。首が気になってしょうがなかった。



「大丈夫だって!ずっとつけてたらいずれなれるぞ!」



「そ、そうだよね…プレゼントありがとう」



「おう!大切にしろよ!!」



「うんっ」



違和感はあるけどきっとなれるはず。首輪に触れながらそう思った。







「…リード買えばよかった」


花園くんが何やらボソッと小さく呟いた。





「…は、花園くん?」


気になって問いかけるが花園くんは慌て出した。




「えっあ、ううん!何でもないぞ!!今度またプレゼントしてやるからな!」


「わぁっ」


さっきよりも更に速く頭を撫でられた。そのあと、花園くんは僕の膝の上に頭を乗せて体を横にした。



 


「あー、あおいが隣にいるってやっぱいいなー。俺超幸せ」



「え…!」



急に真剣な顔つきになってそう言われるとびっくりする。し、幸せなんて…初めて言われたかも。ぼ、僕が隣にいるのいいって何もしてないのにそ、そんな大袈裟だよ。あまり言われないから反応が難しい。






「ずっとずっと、後悔した。あおいと会いたくてたまらなかった。学園から離れなければ良かったって思った。…それと俺、毎日あおいのこと考えてた」



「ま、毎日…?」


寂しそうな目で僕を見つめる。花園くんって本当…友達思いの優しい人だ。だけど、そんな彼を僕は怒らせてしまって周りを巻き込んでしまう。花園くんはさっき幸せって言ったけど僕は皆に嫌な思いさせるだけでそんなこと言われるような人間じゃない。




「てか、あおいの膝枕やべぇー!!!」



すると、突然僕の膝にスリスリとする。





「は、花園くん、くすぐったい…っ」



何となく恥ずかしく思った。そして、しばらくして僕はあることを思い出した。




「あ、そうだ!花園くん」



さっきで言うの忘れてたから今聞こうかな。




「ん?なんだ?」



「さっき、プレゼントもらったから僕も何かあげるね」



「おう!本当か!?嬉しいぞ!!!」



「そ、それで何か欲しいものとかあるかな?…あ、でも…た、高いものだったら買えないかもしれないけど…」



語尾がだんだん小さくなる。なるべく買える範囲のものであればいいけど、花園くんが何が欲しいのかわからない。僕だったら必要ないもの買って花園くんに嫌な思いさせちゃうかもしれないから…。



しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

ヤンデレBL作品集

みるきぃ
BL
主にヤンデレ攻めを中心としたBL作品集となっています。

Q.親友のブラコン兄弟から敵意を向けられています。どうすれば助かりますか?

書鈴 夏(ショベルカー)
BL
平々凡々な高校生、茂部正人«もぶまさと»にはひとつの悩みがある。 それは、親友である八乙女楓真«やおとめふうま»の兄と弟から、尋常でない敵意を向けられることであった。ブラコンである彼らは、大切な彼と仲良くしている茂部を警戒しているのだ──そう考える茂部は悩みつつも、楓真と仲を深めていく。 友達関係を続けるため、たまに折れそうにもなるけど圧には負けない!!頑張れ、茂部!! なお、兄弟は三人とも好意を茂部に向けているものとする。 7/28 一度完結しました。小ネタなど書けたら追加していきたいと思います。

ヤンデレ化していた幼稚園ぶりの友人に食べられました

ミルク珈琲
BL
幼稚園の頃ずっと後ろを着いてきて、泣き虫だった男の子がいた。 「優ちゃんは絶対に僕のものにする♡」 ストーリーを分かりやすくするために少しだけ変更させて頂きましたm(_ _)m ・洸sideも投稿させて頂く予定です

ヤンデレだらけの短編集

BL
ヤンデレだらけの1話(+おまけ)読切短編集です。 全8話。1日1話更新(20時)。 □ホオズキ:寡黙執着年上とノンケ平凡 □ゲッケイジュ:真面目サイコパスとただ可哀想な同級生 □アジサイ:不良の頭と臆病泣き虫 □ラベンダー:希死念慮不良とおバカ □デルフィニウム:執着傲慢幼馴染と地味ぼっち ムーンライトノベル様に別名義で投稿しています。 かなり昔に書いたもので芸風(?)が違うのですが、楽しんでいただければ嬉しいです!

全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話

みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。 数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品

嫌われものの僕について…

相沢京
BL
平穏な学校生活を送っていたはずなのに、ある日突然全てが壊れていった。何が原因なのかわからなくて気がつけば存在しない扱いになっていた。 だか、ある日事態は急変する 主人公が暗いです

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

風紀委員長様は王道転校生がお嫌い

八(八月八)
BL
※11/12 10話後半を加筆しました。  11/21 登場人物まとめを追加しました。 【第7回BL小説大賞エントリー中】 山奥にある全寮制の名門男子校鶯実学園。 この学園では、各委員会の委員長副委員長と、生徒会執行部が『役付』と呼ばれる特権を持っていた。 東海林幹春は、そんな鶯実学園の風紀委員長。 風紀委員長の名に恥じぬ様、真面目実直に、髪は七三、黒縁メガネも掛けて職務に当たっていた。 しかしある日、突如として彼の生活を脅かす転入生が現われる。 ボサボサ頭に大きなメガネ、ブカブカの制服に身を包んだ転校生は、元はシングルマザーの田舎育ち。母の再婚により理事長の親戚となり、この学園に編入してきたものの、学園の特殊な環境に慣れず、あくまでも庶民感覚で突き進もうとする。 おまけにその転校生に、生徒会執行部の面々はメロメロに!? そんな転校生がとにかく気に入らない幹春。 何を隠そう、彼こそが、中学まで、転校生を凌ぐ超極貧ド田舎生活をしてきていたから! ※11/12に10話加筆しています。

処理中です...