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男前風紀委員長
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しおりを挟むゆうが学園から離れて家に帰って数日が経過した。最初、ゆうに学園を離れるという話を聞いたとき、離れていくのは僕が嘘ついたからだと思ってしまった。無意識にマイナスな方向に考えてしまうこの性格を何とかしたい。でも嘘はもうつきたくないと反省はしている。ゆうがいない日々。未だに一人で過ごす学園生活にはなれない。僕って…かなりゆうに頼ってばかりだったと気づかされた。
「あ……また失敗しちゃった」
前に広がる黒い物体たち。料理は相変わらず苦戦中。学校が休みの今日なんかは料理を練習する。だけど何やっても上手くいかないと思い知らされるばかり。でもゆうが帰ってきた時には僕が料理を作って美味しいものを食べさせたい。少しは僕も成長しなきゃと思った。いつも僕以上にゆうはがんばっているから少しでもゆうを喜ばせたいと思った。
「なんでうまくいかないのかな…。卵焼き作ったつもりなのに」
一人言がつい溢れてしまう。でも不思議でたまらない。何でこんなに黒くなるんだろ…。僕はフライパンの中の黒いものを凝視する。さっきまではちゃんと焼き色がついて黄色かったはず…。火加減のせいかとかいろいろ悩んでいるがそんな僕でも唯一作れるようになったものがある。それはハンバーグ。食べれる範囲まで作れるようになった。形や色などの見た目は残念だけど味は最初のころと比べて美味しく出来上がるようにまで上達した。ゆうは色んな美味しい料理を僕に食べさせてくれた。こんな大変なことゆうはいつもやってくれていた。それを僕は当たり前のように食べていた。離れてから自分の情けなさ、申し訳なさを知ることが多くなった。少しでもゆうの役に立てるように努力していこうと思った。それから出来栄えは残念な卵焼きを食べたがやっぱり苦かった。
時間が経ち日が沈んで辺りは暗くなり夜になった。“あのこと”があってから夜になるといつも不安になる。ベッドに潜ると前の怖かったことを毎晩いつも思い出す。倉庫のドアが開かなくて、ガムテープ口を塞がれ、手首を縛られ、それから…。いつもいつもそれが蘇って怖くなる。震える体を抑えるため、枕をきつく抱き締める。そうするだけで少し落ち着くから。今日もぐっすりと寝つけない。
──
───
────
……。
「おい、パシりこっちに来い」
「な、何…?」
席についていると笹山くんが僕を呼びゆっくりと僕は笹山くんの前に行く。
「聞いたぜ。あの幼なじみがお前を見捨てて休学してるってな」
笹山くんは声をあげながら笑った。
「…ゆ、ゆうはその…事情があって…」
「あ?」
ビクッ
「ご、ごめんなさい…」
ギロッと鋭く睨まれた。ふと、笹山くんの口元に目がいく。
「そ、そういえば…笹山くん傷はもう大丈夫なんですか?」
前、口元の方にケガをしていてテープを貼っていたから。でも見る限り治ったみたいで良かった。
「あぁ…気づいたのか」
さっきとは違って表情が柔らかくなり、すると頭を撫でられた。突然のことでびっくりした。
「笹山ーーー!!」
驚いたのも束の間、クラスメイトの一人が慌てて教室に入ってきて、大声で笹山くんを呼んだ。
「チッ。なんだ」
「笹山、アイツが学園に戻ったらしいぜ!」
「は、アイツ…?」
一瞬、僕はゆうのことかなと思ったが何やら違う様子だった。
「アイツですよ!アイツ」
「アイツってまさか…」
「転校生!」
て、転校生ってまさか、は、花園くんが…?
「…嘘だろ」
「それが本当なんっす!さっき寮で奴を見かけたし、そろそろこっちにくるかも」
「クソッ。辞めたかと思ってたが違ったか。しぶとい野郎だぜ」
笹山くんはイライラし始め、歯をギシギシと音を立てた。話を聞く限りだと、花園は今この学園にいるみたいだ。戻ってきてるんだ。驚いた反面、戸惑いもあった。…は、花園くんに謝りたい。最初にそれが浮かんだ。でも、どうしよう…。僕のせいで学園から出ていっちゃったから仲直りなんて簡単にできないかもしれない。
不安が襲ってくる。…どうやって花園くんに顔合わせればいいかわからない。申し訳ない気持ちでいっぱいだった。今のままだと余計に怒らせてしまっちゃうからもしれない。僕は急なことに頭が回らず、どうしようと悩むが何もできない。
「おいパシり。お前は今すぐ帰れ」
「…え?」
笹山くんはそう言って僕の手を引いて教室から出ようとした。が、笹山くんの足が止まった。
「あーおーいーーーーー!!!!」
「…クソッ。遅かったか」
笹山くは小さな声でそう吐き捨てた。遠くの方で間違いなく久々に耳にした花園くんの声が聞こえた。整理がついていなく戸惑う僕だが笹山くんによってまた教室に戻された。
「おい、すぐにドアを閉めろ」
笹山くんがそう指示し、前のドアと後ろのドアが鍵もかけられ閉めきられた。
だが、花園くんにはそれが通用しなかった。
──ドンッ!
ものすごい音を立てドアが破壊された。久々に見る花園くんの姿。いつも通りに元気そうだった。
「あーーーーー!!!!!おい!!!お前なにあおいに触れてるんだよ!!」
笹山くんが僕の腕を掴んでいるのを見てすぐに近づいてきた。
「…あおいに触れるな」
花園くんは、まるでさっきとは別人みたいな表情や声。声はものすごく低く冷たかった。目なんて、今までに見たことないほど鋭く暗かった。
「は?まじうぜー。こいつは俺としか話したくないほど俺になついちゃってるからお前の出る幕なし。理解おーけー?」
笹山くんは馬鹿にしたように笑った。
「…許さない」
花園くんは小さく呟き、笹山くんを思いっきり殴った。
「このクズ!!!お前なんかいらねぇ!!!死ね!死ね!死ね!…ハハッ、俺のいない夢のひとときはどうだった?」
花園くんは笑顔を崩さず、棘のある言葉をぶつけて笹山くんのお腹や顔など殴り続ける。…こ、怖い。僕が知っている花園くんとは違くて怖かった。
「は、花園くん…っ!」
やめてこれ以上、見てられない…。
目をぎゅっと瞑り、僕は笹山くんの前に出て花園くんを止める。誰かが目の前で痛い思いをしているのは辛くて苦しい…。
「あっ、あおい~!!!久しぶりだなーー!!」
すると、さっきとは様子が一変し何事もなかったかのように僕に抱きついてきた。
「へ…?」
急な豹変ぶりに僕は戸惑った。
「寂しい思いさせてごめんな?俺が悪かったぞ!」
そう言って、僕と額を合わせてスリスリと擦りつけた。は、花園くん…?僕はどう花園くんと話せばいいのか戸惑う。どうして笹山くんを殴ったのかわからない…。
「あー良かった!ちゃんと眼鏡してる!俺、あの時、あおいの眼鏡持ったまま飛び出したから今ごろは…って焦ったんだぞ!ほらこれ返す」
そう言って、花園くんが持ち去った前の眼鏡を僕に渡してきた。持っててくれてたんだ…。
「…あ、ありがとう」
そうお礼を言い、胸元のポケットに入れた。
…どうしよう。花園くんと目が合わせられない。それに笹山くんは殴られてとても痛そうだった。僕は笹山くんの方を向いて、腰をおろし床に膝をつけた。
「さ、笹山くん…だ、大丈夫?」
そっと問いかけると、答えられるほどの状況ではなかった。前の傷が治ったばかりだったのにそれより更に酷く頬が腫れている。慌てて、ズボンのポケットに入れていたハンカチを取って笹山くんの頬に当てようとした時
「…あおい」
ぎゅっと後ろから花園くんに抱き締められ動けなく固まった。
「は、花園…くん?」
「どうして…久しぶりに会ったのにこっち向いてくれないの。もしかして俺が何も言わずにいなくなったから怒ってるの?ねぇ…」
「え…?」
まるで花園くんには笹山くんが見えていないような口振りだった。
「俺、離れて気づいたんだ。あおいがそばにいないと俺…もう冷静でいられなくて…。だからお願い…こっち向いて」
声はとても弱々しくいつも明るくて元気な花園くんらしくなかった。
花園くんの様子がおかしかった。何かあったのかな…。
「あおい、こっち向いてよ…。やっぱり、俺があおいを一人にしたから怒ってるんだ」
自分を責め始める花園くん。やっぱり、花園くんなんか変だ。様子がおかしいのはもしかして僕があの時、花園くんとの約束を破ったせいかもしれない。それに、僕が花園くんに怒る理由なんてない。反対に花園くんが僕のこと怒って許せないんだったら、話はわかる。僕は恐る恐る花園くんの方を振り返り、ごくんと息をのんだ。
「…お、怒ってなんかないよ。…僕が花園くんに怒るなんてない。そ、それよりも、花園くんは…僕のこと怒ってないの?」
声が震える。もし、怒ってるなんて真っ直ぐに言われたら僕…どうやって許してもらえるかなんてわからない。花園くんが出ていったあの日からずっと謝りたかった。仲直りしたいと思った。だけど、そんなこと僕が思っていいのかわからない。何もかもわからないことだらけ。
不安で苦しくなる。
「あおいがこっち向いてくれた!!良かったーー!!!てか、何で俺があおいに怒るんだ?」
「へ?」
返ってきた言葉は意外なものだった。
「あおいってば、変なのー!」
花園くんは可笑しかったのか声をあげて笑った。
「えっ、と、…だ、だって僕が花園くんとの…約束破ったから…花園くんは学園からいなくなってしまった…。だからずっと、謝りたいって…仲直りしたいって思ってて…でも僕なんかがそんなこと言って花園くんを、困らせるだけだってわかってる…ほ、本当にごめんなさい」
都合のいいこと言ってるって自分でも分かってるけどどうやって仲直りするのかわからない。
今まで、そんな経験なかった…もうこのまま空気になりたいと思った。でも素直な気持ちはちゃんと伝えることができた。
「あ~~っ、もう何だよ!あおい!」
数秒経って花園くんは顔を赤らめながら僕の肩をがっしりと掴んだ。
…やっぱり、だめだったんだ。僕なんかが許してもらえるはずなんてない。もうどうやって花園くんに顔を合わせればいいのかわからず顔をうつむけた。すると、すぐに花園くんが僕の頬に両サイドから手を当てて顔を上げさせた。
「あーもう可愛すぎだろあおい!!ずっと俺のことを考えて悩んでくれてたんだな!!!嬉しすぎて俺、俺…っ!」
と言いながら、僕の頭を抱き締める。ど、どういうこと…?
「ぼ、僕のこと…怒ってないの?」
「当たり前だろ!…じゃ、じゃあさ、その…えーっと、仲直りのキスしようぜ」
「え…?」
「だからキスだよ!キス!ちゅーに決まってるだろ」
何回もしたのに忘れたのか!と少し照れながら花園くんは言った。
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