嫌われ者の僕

みるきぃ

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男前風紀委員長

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「…あおい」


「え?なに?」


「あおい」


「?」



「俺の欲しいものはその、………あおい。あーー!じゃなくて、、あ、あれだ!あおいがくれるものなら何でもいいぞ」



それだけで嬉しいからと、花園くんはそう言ってくれた。

ほ、本当に何でもいいのかな?




「な、何でもいいの…?」


「もちろんだぞっ!あおいが俺のために悩んでくれるものなら何でも嬉しいぞ!」



「…ありがとう」


そんなこと言われるなんて嬉しいな…。友達とプレゼント交換って何だか照れる。






「あーーーー!!!」



突然、花園くんが大声を出す。



「は、花園くん?」



「あおい!今何時だ?」


「え…?」


急に時間を聞かれ、周りをキョロキョロ見渡し時計を探した。





「え、えっと…6時15分かな?」


上に飾ってある時計を見て伝えたら花園くんはしまったと言うような顔をした。




「俺、5時半に理事長のやつに呼び出されてるんだった!本当は行きたくないけど重要なことだってうるさくて!」



「そ、そうなの?も、もしかして僕を運んだから…っ」



もう30分以上経ってる。僕のせいが気を失ったせいで花園くんが理事長に怒られてしまったらどうしよう。






「そんなことないぞ!あおいは気にするな!あー、もう少しあおいといたいけど後でしつこく言われそうだから行ってくる!」



「う、うん!ご、ごめんね…」



「おう!じゃあ俺行ってくるな!」



「う、うん!」


本当に申し訳ない…。花園くんは飛び起きて走って行き、バタンと閉まるドアの音が聞こえた。じゃ、じゃあ僕もそろそろ…自分の部屋に戻ろうかな。花園くんには、悪いことしたな…と思いながら帰った。






───
──────

…。




部屋に帰ったあと、少しお腹が空いてきたので自分で作った残念な料理を食べた。うん…もっと料理の特訓、頑張ろう…。食べるたびにそう思った。そして、花園くんからもらった首輪を外し、お風呂に入ってベッドに潜り込んだ。夜はまたあのことを思い出す。やっぱり、いくら普段意識していなくても、夜になって寝るときは毎度のようにあの時のことを思い出してしまう。



「…ゆう」


自然と口からこぼれた。いつも隣にいてくれた。それが当たり前だと心のどこかでは思っていたかもしれない。いつも朝起きるとゆうの姿。寝るときももちろん。ゆうが学園から離れてから数日だけなのに僕にとってはもうかなりの長い時間離れているような気がする。早く、会いたいな…。そんな欲張りなことを考える。ゆうは今、学園から離れて忙しいのに僕は自分のことばかりでだめだめだ。もっとしっかりした自分をゆうに見せたい。わがままで頼りすぎってわかってるけど…寂しいよ。ぎゅっと布団を抱き締めて目を閉じた。





──────
───────




朝。学校に行く準備を済ませた。笹山くん、昨日は大丈夫だったかな…。心配だ。それに花園くん…理事長に怒られなかったかな…。容量の少ない頭の中でいろいろ考え、不安でしょうがなかった。そんな不安を感じながらも鞄を持って、玄関で靴を履いた。すると、その途端、ドンドンとドアを叩く音が鳴った。少し驚き、僕は取っ手に手をかけ、ドアを開けた。





「─あおいっ!」


「っ、」


開けた瞬間に、ぎゅっと抱きつかれ僕は後ろに倒れる形になり、手が地面についた。



「お、おはよう。花園くん…?」


花園くんのこと考えてたら本当に本人が来て驚いた。朝からどうしたんだろ…?それに花園くんは、制服じゃなくて私服だった。




「あおい!昨日なんでいなくなったんだよ!」



「え?」



「俺が帰ってくるまでいとけよな!!!」


花園くんは抱き締める力を強くした。突然帰ってしまったから心配したのかな…。そうだったら申し訳ない。



「ご、ごめんね…。あっ、花園くん。り、理事長に怒られなかった?」



「謝ったから許してやるけど…理事長…?別に怒られなかったぞ」




「そっかぁ…良かった」



それなら安心だ。理事長に怒られてたらどうしようかと思った。



「あっ、そういえばなんで私服なの?せ、制服は…?」




「制服…あぁ、それが聞いてくれよ!昨日理事長に呼びされた理由が超頭にきたんだよ!!」



「そ、そうなの?」


何か言われたのかな…?花園くんは少し不満気な表情を浮かべ、怒っているようにも見えた。





「一週間自分の寮室から出るの禁止。だから学校に行けないんだ!でも買い物の時とかは部屋から出ても大丈夫だけどな」



「な、何でそんなことになってるの…?」




「暴力行為と教室のドアを壊したから器物破損、そして無断で学校休みすぎとか訳わからんこと言われて反省しろって。むかつく!!」

 


「は、花園くん今外に…大丈夫なの?」



「買い物って言えば大丈夫だ。ったく、あの野郎!こんなこと言いやがって!あおいとの時間が減る」





「い、一週間って案外長いよね…」




「でも退学になった方があおいと一緒にいる時間減るし嫌だから我慢してんだ!なぁ、あおいお前も学校休めよ!俺と一緒にいようぜ!!」



「で、でも僕…」


「なぁ、いいじゃん!!」



「ぼ、僕…頭悪いし成績も多分最悪で…出席しないと進級できないかもしれないから…ごめんね…」



「あおいが進級できないと俺が困る!あーくそ!!早く1週間経たないかなー」



学園に戻ってきた途端にそんなこと言われたら気持ちの整理がつかないよね…。すると、花園くんが何かに気づいた様子になって大声を出した。


「あーーーー!!!俺があげた首輪してない!!!!」



「え?」



「なんでしてないんだよ!!!!俺がせっかくあおいのためにプレゼントしたのに!!!!!」



何で何でと取り乱す花園くんは僕の肩を前後に揺らして訴える。




「ご、ごめんね…気づいてなくて…き、昨日お風呂に入る時に濡らすのはまずいと思って…」



それから付けるのは忘れていた。せっかく花園くんが僕にプレゼントしてくれたのに…。傷つけた。





「なーんだ!大切にしてくれてたのか!じゃあ、早くつけろよな!」


「う、うん!ちょ、ちょっと待ってね」



僕は靴を脱いで花園くんからもらった首輪を取りに行った。そして、つけて戻った。





「ご、ごめんね…」


「おう!つければいいんだ!」




花園くんは笑顔になる。これからは忘れないようにしようと心に決めた。






「じゃあ、僕そろそろ…行くね。は、花園くんがいないのは…寂しいけど…」



「あーもう可愛いこと言うな~」




花園くんは、またも抱き締めて僕の額に軽くキスを落とした。







「えー、もう行くのか?」



「う、うん」




「まだ離れたくないけど仕方ないか。じゃあ、帰りは俺の寮室に来いよ!」



「え?」



「俺だって寂しいんだ!!」

 


「じゃ、じゃあ、また帰りに行くね」
 


「約束な!」




それから僕は花園くんと途中まで一緒に歩いて、わかれた。









それからZクラスに行き、不良さん達の視線は痛かったけど僕に話しかけてくる者は誰もいなかった。…笹山くんはやっぱり来ていないみたいだった。不良さんたちに笹山くんの状態を聞きたいけど僕なんかが聞けるはずもなく一日を過ごした。お昼は一人で食べた。いつもは、ゆうと一緒だった。たまに花園くんも。ゆうと花園くんがいない間は、笹山くんと食べていた。正直、少し怖かったけど、こんな僕と一緒にいてくれた。…笹山くん大丈夫だといいけど。そう思いながら、もう放課後になっていた。


あ、そうだ。花園くんのとこ行かないといけないんだった。帰り道、朝花園くんとした約束を思い出した。僕は、花園くんがいる寮室へと歩く方向をかえた。



「佐藤あおい」


花園くんの寮室へ向かって歩いてる途中、ふと後ろからフルネームで名前を呼ばれた。




「は、はい…?」



恐る恐る後ろを振り向くと




「久しぶりだな」



「あ…」



も、もしかして風紀委員長さん…?声は凛々しかったのが印象的で見るのは久しぶりだった。前に会ったとき、水に濡れた僕にジャージを貸してくれた優しい人だ。び、びっくりした。


「ひ、久しぶりです…。せ、先日はお世話になりました」




僕は慌てて頭を下げる。ちゃんとお礼を言うのを忘れていた。




「ご丁寧にどうも。顔上げて?」


委員長さんは優しくそう言ってくれた。




「は、はい…。あ、あの!あの時は本当に助かりました」



それにまたこうやって話しかけてくれて嬉しかった。




「別にどうってことない。最近、風紀委員の仕事が多くてなかなか会えなかったが、お前がどうしてるか気になっていた」



「そ、そうなんですか?」



「あれから風邪は引かなかったか?」



「も、もちろんです。おかげさまで」



僕が前に水で濡れたから、こんな一生徒に心配してくれるなんて本当に風紀委員長ってかっこいい。







「それは良かった。………が、これは何だ?」



委員長さんは眉間にしわ寄せ僕の首を指差す。も、もしかしなくても花園くんからもらったこれのことだよね?





「え、えっと…これは首輪です」



「そんなの知ってる」




…え。

委員長さんの眉間のしわが更に深くなる。これは何だと聞かれたから首輪って答えたけど日本語は当たってるよね…?不安になる。

も、も…もしかしてこれはどこで売っているのか知りたいのかな…?




ぼ、僕最近の流行はわからないから、どうしよう…。






「俺が言いたいのは何でこれを付けているのかって聞きたい」



「え、あ、そうだったんですね…すみません」



危うく、どこで売っているかわかりませんと答えそうだった。





「まあ、俺の言い方も悪かった。だけどそれは風紀員として見逃せない」



「え、えっと…そのこれは…プレゼントでもらいました」



は、恥ずかしい。プレゼントなんて誰かに言うのは少し照れてしまう。





「趣味わりぃな。誰だよあげたやつ」



「そ、それは…」


委員長さんは真っ直ぐな人だなぁ…。しゅ、趣味悪いなんてまあだけど人それぞれ好きなものは違うよね…。





「ちなみに、これ取り上げな」



「えっ、」


委員長さんの手が僕の首に伸びて首輪に手をかけた。




「あげたやつに伝えておけ。首輪は校則違反ってな」



するりと、あっさりと意図も簡単に取り上げられた。





「で、でも…」


せっかくもらったのに…どうしよう。校則違反になるなんて思わなかった。は、花園くん…怒らないかな…。




「しばらくの間俺が預かっておく」



「は、はい…」


しばらく経ったら返してもらえるよね…?委員長さんだって好きで取り上げてる訳じゃない。規則のこと僕がわかっていなかったから悪い。あとで花園くんには、ちゃんと理由を言わなきゃ。…本当に申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

 

「あ、そうだ。お前今大丈夫なのか?」



「?」


 
「転校生が帰ってきて、しかも問題起こしてるみたいだけど」




さすが風紀委員長だけあって、情報が早かった。




「ぼ、僕は…その大丈夫です。…だけど笹山くんは」



僕は全然何ともないけど笹山くんの方が大丈夫かどうか気になる。




「笹山…?あの不良か。一応、手当してもらって大丈夫そうだ」




「ほ、本当ですか!?」


その言葉を聞いて少し安心した。良かった…。




「だけど、かなり酷かったらしい。今は休みをとって安静が第一みたいだ」




「そ、そうですか…」


かなり酷かったって簡単には治るのが難しいのかな…。




「今回のことといいあの転校生にはくれぐれも注意しろよ」


「え、?」



注意…?もしかして喧嘩はしないようにってことかな?花園くんは強い上に優しい。そんな彼と喧嘩はしたくない。





「もし何かあったら、すぐ言え。…俺がいる」





「委員長さん、あ、ありがとうございます…!」




とても頼りになる人だ。



「冬馬」



「?」



「前に委員長さんじゃなくて冬馬でいいって言った」



「あ、」




確かに前に言われたのを思い出す。だけど、そんな僕なんかが気安く呼べない。




「別に困らせるつもりはないがお前に名前で呼ばれるのは嬉しい」



「ぼ、僕に…?」


不思議でたまらず、首を傾ける。





「だけど、俺も少し早すぎたってところもある。お前のペースで呼んでくれて構わない」



委員長さんは優しく僕の頭を撫でながら言った。





「じゃあ、俺は行くな。呼び止めてすまない」




「そんなことないです!ありがとうございました」




僕の周りには良い人ばかりだ。そして僕は、花園くんの寮室に向かった。





「遅いぞ!!!もう!」



花園くんの寮室に着いてドアをノックした途端に、手を引き寄せられた。出てきた花園くんはこれでもかというくらい不機嫌な様子だった。





「ご、ごめんね…待たせちゃって 」



そう謝ると別に気にしなくてもいいぞと優しく言ってくれた。





「あ、そういえば聞いたぞ!あおい今部屋一人だってな!」



「えっと、うん!い、今、ゆうは事情があって少しの間休むことになってて、僕が一人で部屋を使わせてもらってるんだ」



本当にありがたい。ゆうの部屋を借りてるあげくに一人部屋状態。贅沢ものだ。




「そ、そうか!…じゃ、じゃあ、えっと…お、俺のところに    泊まれよ!」



「え?」


「だから!俺の部屋に泊まれよ!前に約束しただろ!!!」



約束…あ、そういえばお泊まりの約束を前にしたことがあった。


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