嫌われ者の僕

みるきぃ

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俺様会長

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【あおいside】


「花園くん、僕ちょっと図書館に行ってくるね」


さっき、僕たちZクラスの担任である西条先生に図書館の奧の資料室の掃除をやるようにと頼まれた。



「ホスト…違った透のやつ、またあおいに雑用押し付けやがって!!あおいもそんなの真に受けるなよ!雑用頼まれてるだけだって!行くな!!」



「ぼ…僕は別に平気だよ…?」


掃除は好きだし、頼りない僕だけど唯一掃除は頼まれることが多い。



「もうーー!!あおいは一生俺の隣にいればいいの!どこにも行くなって!!」



「そ、そう言われても…」



どうしよう。花園くんに掃除を手伝ってもらうそんな大それたことさせるわけにはいかないし…。頼まれたのにそのまま掃除をしないで無視することは僕にはできない。

ど、どうしよう…。そう僕が一人戸惑っている時だった。



「やっほ~。瑞希」


「瑞希、探しましたよ」


「会いた、かった」


花園くんの後ろから生徒会の皆が現れた。そこに会長の姿はなかった。




「おう!お前らか!!」



「今から生徒会室に行きませんか?瑞希がこの前やりたいと言っていたゲームが届きました」



「それまじか!?」



「そうそう~。早く、遊びに行こ~」



「いいぜ!!!あ、でも…」




「で、も、?」


花園くんが僕のことを見る。



「は、花園くん…僕のことは気にしないで大丈夫だよ!」



花園くんは、少し眉を曲げたあとすぐに笑顔になった。



「じゃあ、わかった!!俺はこいつらと遊んでくるけどあおいは掃除頑張れよ!」



「う、うん!ありがとう」



「変なやつに絡まれたら俺にすぐ言うんだぞ!何だって俺は…その、あおいの将来の旦那…ってこんな恥ずかしいこと言わせんな!!」


花園くんは顔を真っ赤にして生徒会の皆と行ってしまった。最後、花園くんが何て言っているのかよくわからなかった。



…よ、よし、掃除頑張ろっ。

僕はそのまま図書館の奧の資料室へと向かい、数分歩いたら目的のところまで着いた。


 
「し、失礼します…」

恐る恐る資料室のドアを開ける。


すると、そこに広がっていた光景は綺麗で清潔な図書館とは違って物とかは地面に放り出されてはグチャグチャだった。それと、少し埃っぽい。でも、ここを綺麗に掃除して頑張らないと!


よし、と拳に力を入れて掃除道具がいくつか置かれているロッカーを開けた。


まずは、埃を落としていこうかな…。そうと決めれば、埃をはたくやつを手に持った。資料室にはたくさん棚がある。まずは、そこの埃を落とそう。

僕はパタパタと埃を落としていった。



「よし」


30分くらいで埃は大分落とせたと思う。次は床に転がっている荷物や本とか資料とかを整理して棚に並べようかな。

 
そう思って手に持っていた埃はたきを置き、床のものを拾い上げた。


ガラッー

すると、僕しかいないはずの資料室のドアが開いた。

僕は少し驚き、ドアの方に目線を移す。




「…入る」


そこにいたのは、マスクをつけた男の人でそうひとこと言って入ってきた。


び、びっくりした…。何か資料とか取りにきたのかな…。僕は、小さく礼をしてゆっくりとまた手を動かした。



「おい」


ビクッ

「……?」


すると、肩を掴まれ声をかけられた。いつもの癖で声をかけられるだけでビクビクしてしまう。


「ほうきはどこにある?」



「え…?」


何か文句を言われるのではないかと思っていたけど、予想外の言葉に僕は少しびっくりした。



「あ、ほ、ほうきはそのロッカーにあります…」


「あぁ、あれか」



僕はすぐにロッカーのところを指差し教えた。ちゃんと会話になっているよね…?少し心配になってきた。

男の人は、僕が教えたロッカーを開けてほうきを取り出した。



「俺様…じゃない、俺も手伝う」


そのまま、ほうきを持って出ていくのかと思いきや床の埃やゴミとかを掃き出した。


え?一体、何がどうなってるの?勇気を出して声をかけてみる。



「あ、あの」


「なに」



「そ、その…掃除は僕一人でも…」


手伝ってもらうは、嬉しいけどきっとここを片付けるのは大変だと思うし申し訳がない。





「あ?別に俺も頼まれただけだから」


男の人はそう言って、また手を動かしほうきで掃く。この人も…頼まれたんだ。ぼ、僕がどうこう言う資格はないよね。



「すみません…あ、ありがとうございます」


僕はお礼を言って床に転がっているものを拾い上げていった。へ、変な感じだ…。誰かと掃除するなんて初めてかもしれない…。



それから、1時間ちょっとぐらい掃除したところでマスクの男の人の動きが止まった。




「おい、お前」



「は、はい…!」



また、変に驚いてしまった…。自然に返事ができないって  本当僕って情けない。



「もう掃除は終わりだ」



「え、…?で、でもまだ半分も片付いて…」


…ない。いくら時間をかけて掃除してもまだ全然終わる気配はしないのだ。資料室が広いというか、物がグチャグチャというかでまだまだ掃除は続くと思う。



「今日はここまでだ」



「じゃ、じゃあ…あとは僕に任せてください」




「だめだ」



「え?」



「明日、またここで一緒に掃除してやる」



「明日…一緒に?」



僕は本当驚かされてばかりだ。




「あぁ、だから今日はここまで。いいな?」



「は、はい!あ、ありがとうございます」



僕は深々と頭を下げた。この人…初対面なのに親切な人だなぁ。で、でも僕が皆から嫌われているの知ってるかな?一緒に掃除しているのが他の生徒にバレたらきっと迷惑をかけるかもしれない。

ど、どうしよう…。あ、でも資料室は、全く人が来ないって聞くから誰かに見られる可能性は低い。




「あ、今日あったことは誰にも言うな、絶対。俺の名前は…えーっと、鈴木だ。明日もよろしく」



「えっあ、…は、はい!す、鈴木さん…よろしくお願いします。ぼ、僕は佐藤です…」



あ、と思って口元を押さえる。…つい、名乗ってしまったけど大丈夫かな…。こういうこと、なれてないからわからない。


それに誰にも言うなってことは今日のことは秘密という意味だよね…?うん、約束はちゃんと守る。誰にも言わない。



「じゃあ、また明日な佐藤」



鈴木さんはそう言い、ロッカーにほうきを戻して資料室から出ていった。


『また明日』か…。そう言われてると必要とされてるみたいで嬉しいな。一人でやるより、二人でやる方がこんなに楽しく思えるんだと感じた。

 
どんな方かわからないけど、鈴木さんありがとう…。そして、僕も資料室をあとにした。






「た、だいま~…」


今日もまた遅く帰ってきちゃった。すると、浴室の扉が開いた。



「あおい、お帰り。今日、何かあったの?」


髪が濡れていてお風呂上がりであろうゆうが肩にタオルを回して出てきた。



「今日は掃除してたんだ」



「掃除?」



「うん。ちょっと先生に頼まれちゃって」


 
「一人で?」


「う、うん」



鈴木さんのことは秘密だからゆうにも言えない。なんか、ゆうに嘘ついてるみたいで嫌だけど約束だから仕方ないよね…。少し胸が痛くなった。



「そっか…。あおい、あまり無理しちゃだめだよ?」



「う、うん。ありがとう…」


ゆうは、本当優しくて些細なことでも僕なんかのことを心配してくれる。




「あ、そうだ。今温かいからあおいもお風呂入ってきていいよ」


「うん!そうする」


僕はニコリ笑ってそのまま浴室に入った。










「――そろそろ実行した方がよさそうだな」


ゆうが一人、そうポツリと呟いたことに僕は何も知らなかった。




―――――
―――――――
―――――――――

……。





次の日。日付はかわり、すでに放課後になっていた。


「あおいー!また掃除がんばれよー!!俺はゲームを早くクリアさせなきゃいけねぇんだ!!」



「…ありがとう。花園くんも頑張ってね」




「おう!あおいに言われるとなんかパワーが湧いてきた!!」




そして花園くんは元気よくじゃあなと言って僕の頭を撫でて走っていった。やっぱり、足はやいな…。それに花園くんは、明るくて元気で羨ましい。それに比べて僕は花園くんとどうみても対照的…。自分を少しずつでもいいからこの暗い性格をなおしていきたい。

そう、心の中では何度でも言える。だけど、実際は変わらないまま…。あ、いけない。それより早く資料室に行かなきゃ!

まだまだ掃除は山ほどある。


僕は、小走りで昨日の資料室へと向かった。




―――――――
……。


ガラッー


「遅い」


「う、うわ!」



資料室のドアを開けた瞬間、腕を組んで立っている鈴木さんがいた。驚いてしまった。




「す、すみません…」

僕は冷静さを取り戻して急いで、床に転がっているものを拾った。…今日も来てくれている。鈴木さんって優しい人なんだなぁ。今まで一緒に掃除をしてくれる人なんていなかったから正直とても嬉しい…。



「そういや、お前最近転校生といるらしいな」


「え?あ、花園くんのことですか?」



「あぁ」



「ぼ、僕なんかが言ってもいいかわからないですけど…花園くんは元気で明るくてそれに優しくてこんな僕なんかとでも一緒にいてくれます…」


仲良くやってるって言いたいけど僕だけがそう思ってるかもしれないし…。本当に花園くんはいい人だ。


「ふーん」


鈴木さんは別に興味なさげだった。や、やっぱり僕なんかが花園くんといるのって変だよね。どうみても不自然だと思う。もしかして鈴木さん、僕と花園くんが一緒にいるところでも見たのかな?



花園くんは、誰からも人気があって今じゃもう有名人。僕なんかが本当に隣にいていいのかなって思ってしまうけど花園くんはそれでもいいと言ってくれた。


あっ、考えるよりも手を動かさなきゃ。今は片付けるのが先だ。昨日も片付けたけど、まだまだ終わらない。床に落ちている本などをいくら拾い上げてもまだ半分は片付けられていないのだ。


少しスペースをあげようかな…。そう決めて、手に何冊か拾い上げて机に置いた。そのあと、ゆっくり本棚に整理していく予定。



「なぁ」

作業中、鈴木さんがまた声をかけてくれた。




「は、はい?」


僕は手を止めて、鈴木さんの方に視線を移す。



「正直言って、あの転校生うぜぇとか思ってたりするだろ?」


え?ぼ、僕が花園くんを…?



「そ、そんなこと絶対ないです!ありえません!!」


僕は花園くんをそのように思ったことは一度もない。何で急にそんなこと言うんだろう。



「どうだかな」


「ほ、本当です!」


どうしよう…信じてもらえない。どうすれば信じてもらえるのかわからない。



「じゃ、俺今日は帰るわ」



「え、あ、あの!」



バタンー

鈴木さんはそうひとことだけ言って資料室から出ていってしまった。ど、どうしよう…。怒らせちゃったのかな…。でも本当に僕は花園くんをそう思ったことはない。どうして僕は何も伝えることができないんだろう…。


人にそう思われてたなんて思うと胸が痛くなった。悲しくて苦しくてたまらない…。僕はまた何も言えなかった。誤解をとくこともできないなんて…。


「僕って…本当情けないな…」

ポツリと、呟く。やっぱり、僕は一人ぼっちでいるが合っているのかも…。



…っ。

泣いちゃだめだ。


それから、ゆっくりまた作業を進めた。






鈴木さんは掃除を一緒にしてくれていい人だ。だけど、僕なんかがどうこういう資格なんて本当にないし…ちょっとあんなこと言われて悲しかった。



―――――
―――――――


その次の日。やっぱり、資料室に鈴木さんは来なかった。わかっていたことだけどもしかしたらという期待もあった。


僕は気を取り直して、一人もくもくと掃除を頑張った。


そして、それから2日経って鈴木さんのことを忘れかけていたある日。





よし!今日で何とか掃除が終われそうだ。あとは本を本棚に納めるだけ。ラストパート頑張ろう!僕は、気合いを入れて本を手に取った。まずは、本棚の下の部分から並べていく。そして徐々に上へとって感じに本を納めていくつもりだ。数分かけてやっと綺麗に下から順に中間まで終わったところ。




「よし、次はこの本を…」


僕が次の本を手に取った時、ガチャとドアを開ける音がした。



「……え?」


ドアの方に視線を向けるとそこには意外な人が立っていた。



「まだ終わってなかったのかよ」



「す、鈴木さん…」



そこにいたのは、マスクをかけた鈴木さんだった。僕がまだ掃除を終わらせていないことに呆れた様子を見せた。



「ぼ、僕その…何をするにも時間がかかちゃって…で、でも今日で多分終わります」


びっくりした。まさか鈴木さんがまた来てくれるなんて…思わなかった。



「しょうがない。俺も手伝う」


鈴木さんはそう言って僕の隣にきた。



「あ、ありがとうございます…そ、それと…あの!こ、この前はごめんなさい…」


ちゃんと、伝えられなかった自分のせいだから…。



「この前?ああ、別に。俺も少し言いすぎた。すまん」



「い、いえ!」




まさか、逆に謝られるなんてそう言った経験はあまりなかったので驚いて少し反応してしまった。


「これを並べればいいんだろ?」


「は、はい!そうです」


鈴木さんは、手に本を持ち本棚の一番上の方に並べた。僕も手に持っていた本を上の方へと頑張って背伸びをして手を伸ばした。

…が。


バタバター



「ぅ…わっ」


体勢が崩れ、本を落としてしまった。すぐさま拾ってまた背伸びをしようとしたが鈴木さんに手首を掴まれた。




「ったく。上は俺がやるからそれを貸せ」



「あ、ありがとうございます…すみません」



申し訳なく思いながらも、僕は本を鈴木さんに渡した。こういうとき身長が低いって不利だ。シュンと、なった。毎日、牛乳飲んでるのにな…。


それに鈴木さんに迷惑をかけてしまった。申し訳ない気持ちでいっぱいだったが本棚の上の方は鈴木さんに任せ下の方は頑張って並べた。



――――
――――――


………。



「ふぅ…。お、終わった…」


やっと長い間の掃除が終わった。資料室は最初来たときとは違って、床もちゃんと見えるしピカピカで綺麗になっている。

達成感もあって、少し嬉しくなった。




「やっと終わったか」



「あ、鈴木さん。…そ、掃除手伝ってくれてありがとうございました」

僕一人じゃここまで絶対早く終わらなかったかも。



「お、おう…。、いてッ!」


鈴木さんは急に悲痛な声を出した。



「だ、大丈夫ですか…!?」



鈴木さんは本をペラペラと捲っていて閉じる際に紙で指を切ったみたいだった。



「あ、あの!これ使ってください…」



僕はポケットからハンカチと絆創膏を取り出す。


「何でそんなもん」


「ぼ、僕…よくケガしちゃうんで…いつも持ってるんです」


「…そうか。でもいらん。これぐらい大丈夫だ」


「だ、だめです…!え、えっとハンカチは毎日洗って汚くないです…だから使ってください。それに血が…」


「舐めときゃ治るだろ」


「で、でも…っ」


しつこいと思われるかもしれないけど血が出ていて多分深く切ったと思う。



「はぁ…わかった。貸してくれ」


鈴木さんは深いため息を吐き、手を出した。


「あ、は、はい!」


どうぞと言ってハンカチと絆創膏を渡した。




良かった…。受け取ってくれたけど、しつこく押し付けちゃったから気分悪くなってないかな…。

今さらながら後悔しつつ、もう少し慎めばよかったと思った。




「ハンカチは借りとく。絆創膏さんきゅ」



「い、いえ!」


大したことはしていない。

どうしよう…。こんな僕でも感謝された。少しは役に立てたのかな…?鈴木さんは絆創膏を指に貼り、ハンカチは濡らして冷やすために使うみたいだ。


「え、えっと、掃除を一緒に手伝ってくれて本当に助かりました!ありがとうございます」


最後に感謝の気持ちを込めてお礼した。



「あぁ…。そうだこのハンカチ」



「あ!大丈夫です!返さなくてもいいです。いらなかったら捨てても構いませんので」



「…わかった」




「じゃ、じゃあ…ぼ、僕はこれで失礼しますね」



小さくお辞儀をして資料室をあとにした。もうこれで鈴木さんと話せなくなると思うと少し寂しいけど僕なんかが隣にいたら迷惑をかけてしまう。

いつか、また話せる時が来たらいいな…。そんなことを思いながら静かな廊下を歩いていった。


 
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