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第287話 小心者、力強いアドバイスに感銘を受ける
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「なにせこっちは大切な図面は粉砕されるわ、下請金額の値上げに応じなかった腹いせにチンピラを使って現場事務所の倉庫へスプレーでいたずら書きされるわで、未だ腹の虫がおさまらん」
ユキが苛立たしげに言う。鈴木と同様、結局は泣き寝入りであるからだ。
「倉庫に? それ、いつですか」
鈴木が両眉を上げる。
「正月。俺と佐野君は年末年始の休暇を返上して仕事をしてたんだよ。やられたのは夜中だ。俺達が帰ったあとだ。で、その翌日に星崎とレイナが佐野君の業務態度をチェックする名目で現場事務所に来て、わざとらしく驚きやがった。けど、本人達はしらばっくれてるつもりらしいが、自分達が首謀者ですといわんばかりの態度なもんだからバレバレだ」
「二人とも、絶望的にバカですね」
鈴木が鼻で笑う。
「ああ。そんなことも重なって、ついに佐野君もブチ切れて古山建設を辞めた。そして紆余曲折の末に今ここにいるという訳さ」
「鈴木。もう一度言うけど、転職したことを黙ってて、本当にごめん」
佐野が言う。
「その理由は電話で話した通りだ。自分の小心者っぷりが情けないよ」
心底恥ずかしそうに首の後ろをこする。
「いいんだ。気にするな。誰だって星崎の手にかかったら自信もプライドも粉々にされる。だから試用期間内にクビになるんじゃないかって不安になるのは当然だ。実はオレも、今の会社に転職してしばらくの間はそうだったよ。あんなかたちで退職したから、弱気になっちゃってさ」
「そうか……」
「けど、ここは古山建設ではない。別の会社なのだと、不安になるたび自分へ何度も言い聞かせてやり過ごしたんだ。なのでお前もそうやって乗り越えろ」
「うん。そうする」
佐野は鈴木の力強いアドバイスに感銘を受け、素直にうなずくのであった。
ユキが苛立たしげに言う。鈴木と同様、結局は泣き寝入りであるからだ。
「倉庫に? それ、いつですか」
鈴木が両眉を上げる。
「正月。俺と佐野君は年末年始の休暇を返上して仕事をしてたんだよ。やられたのは夜中だ。俺達が帰ったあとだ。で、その翌日に星崎とレイナが佐野君の業務態度をチェックする名目で現場事務所に来て、わざとらしく驚きやがった。けど、本人達はしらばっくれてるつもりらしいが、自分達が首謀者ですといわんばかりの態度なもんだからバレバレだ」
「二人とも、絶望的にバカですね」
鈴木が鼻で笑う。
「ああ。そんなことも重なって、ついに佐野君もブチ切れて古山建設を辞めた。そして紆余曲折の末に今ここにいるという訳さ」
「鈴木。もう一度言うけど、転職したことを黙ってて、本当にごめん」
佐野が言う。
「その理由は電話で話した通りだ。自分の小心者っぷりが情けないよ」
心底恥ずかしそうに首の後ろをこする。
「いいんだ。気にするな。誰だって星崎の手にかかったら自信もプライドも粉々にされる。だから試用期間内にクビになるんじゃないかって不安になるのは当然だ。実はオレも、今の会社に転職してしばらくの間はそうだったよ。あんなかたちで退職したから、弱気になっちゃってさ」
「そうか……」
「けど、ここは古山建設ではない。別の会社なのだと、不安になるたび自分へ何度も言い聞かせてやり過ごしたんだ。なのでお前もそうやって乗り越えろ」
「うん。そうする」
佐野は鈴木の力強いアドバイスに感銘を受け、素直にうなずくのであった。
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