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第250話 ロマンのかけらもない返礼品
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「そうだったんですか……ありがとうございます」
佐野はユキへ深く頭を下げる。
あの度肝を抜いたクッキーと包装紙の真意を知った今、ユキへは感謝の念しかない。
「では僕も、田上課長へ何かクリスマスプレゼントを」
もらってばかりでは申し訳ない。
「いや、いい。もうすでにもらっている」
「え?」
渡した記憶は全くない。
「僕は、何も」
ユキはそんな佐野のいぶかる表情を見て、ニヤリと笑う。
「労働力をもらっている――カビとホコリと怨念にまみれた、実に不潔で危険な廃棄物処理のな」
「カビとホコリと怨念……?」
はて。どういう意味だ。佐野は首をかしげる。だが、すぐに気づく。
「もしかして、アレですか!」
ユキの元彼、つまりAからの贈り物だ。
今から十年以上も昔、Aに手ひどくふられた当時のユキはショックのあまり逆ギレし、Aからもらった物を全てゴミ袋へ突っ込んだ。そして腹立ち紛れに部屋のどこかへ押し込んだまま放置する。
こうして月日は流れ、今年の正月、床にこぼしたピーナツを拾っていると、偶然にもベッドの下からそれが発見された。
ユキはこれを現場事務所へ持ち込み、二人して開封、分別の末に捨てたのであった――
「そうだ。あの時の『福袋』さ」
「福袋……。でも、その作業がクリスマスプレゼントだなんて」
カビとホコリで大騒ぎした記憶しかなく、ロマンのひとかけらもない。
「俺にとっては最高のプレゼントだ。あれを自分一人で始末するにはあまりにもキツい。肉体的にも精神的にもな」
佐野はユキへ深く頭を下げる。
あの度肝を抜いたクッキーと包装紙の真意を知った今、ユキへは感謝の念しかない。
「では僕も、田上課長へ何かクリスマスプレゼントを」
もらってばかりでは申し訳ない。
「いや、いい。もうすでにもらっている」
「え?」
渡した記憶は全くない。
「僕は、何も」
ユキはそんな佐野のいぶかる表情を見て、ニヤリと笑う。
「労働力をもらっている――カビとホコリと怨念にまみれた、実に不潔で危険な廃棄物処理のな」
「カビとホコリと怨念……?」
はて。どういう意味だ。佐野は首をかしげる。だが、すぐに気づく。
「もしかして、アレですか!」
ユキの元彼、つまりAからの贈り物だ。
今から十年以上も昔、Aに手ひどくふられた当時のユキはショックのあまり逆ギレし、Aからもらった物を全てゴミ袋へ突っ込んだ。そして腹立ち紛れに部屋のどこかへ押し込んだまま放置する。
こうして月日は流れ、今年の正月、床にこぼしたピーナツを拾っていると、偶然にもベッドの下からそれが発見された。
ユキはこれを現場事務所へ持ち込み、二人して開封、分別の末に捨てたのであった――
「そうだ。あの時の『福袋』さ」
「福袋……。でも、その作業がクリスマスプレゼントだなんて」
カビとホコリで大騒ぎした記憶しかなく、ロマンのひとかけらもない。
「俺にとっては最高のプレゼントだ。あれを自分一人で始末するにはあまりにもキツい。肉体的にも精神的にもな」
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