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第224話 心当たりがあり過ぎる

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「当時、うちの会社はもう古山建設とはシュレッダー事件が原因で早々に縁を切っていた。とはいえ、ケイだけがまだ俺の現場で契約を続行していた。で、盗難に関しては、どの現場事務所も犯人に関する物的証拠がつかめなくて、警察に通報できなくてな。だからこの件についてはケイには黙っていたんだ。絶対に気にしてしまうと思ってさ」
 表情を曇らせながらユキが言う。
「そうだったんですか。それで、この事務所では何を盗まれたんですか」
 少しばかり落ち着きを取り戻した佐野が聞く。
「小型の精密機器やパソコンの周辺機器だ。どれも作業服のポケットに入るサイズだ」
「証拠がつかめないってことは、夜間に盗られたのですか」
「いいや。昼間だ。しかも――被害は星崎が挨拶や契約金額のつり上げで来た日に限定されている。ほかの現場も同じだ。必ず星崎が来た日に盗難が起きているんだ。でも、決定的な証拠がなくてな」
 ユキが眉根を寄せて答える。
「……」
 佐野は黙り込む。心当たりがあり過ぎるからだ。
「その様子だと、どうやら思い当たるふしがありそうだな」
 ユキが佐野の目を探るように見る。
「……はい」
 佐野は苦々しげに首を縦に振る。
「星崎はいつも工事部員の机の上とか、引き出しやロッカーを勝手に開けては、めぼしいものを盗むんです。だから僕、星崎と大喧嘩して会社を辞めた時、ここぞとばかりにそれについて文句を言いました」
「そうか。あいつ、自分の会社でもやってたか。ひでえな」
 ユキはあきれた顔をして、肩をすくめた。
 

  
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