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第212話 根性曲がりの気配りは、逆に全く配慮がない
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「では、なぜ僕は打ち切られなかったんですか。それに当時、契約打ち切りの話は古山建設内では全く出ていませんでしたが」
佐野が身を乗り出して聞く。
「それはだな――まず、契約打ち切りについてだが、うちの会社が不自然ではない形で契約期間を短縮したんだ。なのでシュレッダー事件後は、俺の現場以外は古山建設の社員は早々に契約終了させたんだ。もちろん怪しまれないように、『御社のお陰で作業が予定より早く終わりました、ありがとうございました』って、思いっきり持ち上げてな。そのうえ手切れ金がわりに当初の契約金額を値引きなしで一括で支払ったんだ」
「では、かなり金額的に損をしたのでは」
「ふん。そんな出費、後々に施工ミスや労働災害を起こされたり、レイナ経由で迷惑をかけられたりするのに比べたら安いもんさ」
「ああー……」
さすが大手ゼネコン。太っ腹というか、実に鮮やかな縁切りである。
「そうしたら古山の社長と星崎は、うちの会社の言葉を鵜呑みにして鼻高々。だから後日、大いばりで俺の所へケイの契約金額の値上げに来たってわけさ」
「じゃあ、田上課長は全部それを知った上で――」
「そうだ。つまり古山の社長や星崎とのやり取りや喧嘩は芝居だ。で、下請リストから外すと脅したのは俺なりの気配りだ。いきなり仕事を干されたら心臓に悪いだろ? なので心の準備をさせたんだ」
「……はあ」
それ、全く心の準備になっていない。逆にじわじわと恐怖を感じさせ、限界まで弱り切ったところで最後にズバッと息の根を止めるという一番恐ろしいやり方だ。
さすが根性曲がりのユキ。佐野の背筋は寒くなる。
佐野が身を乗り出して聞く。
「それはだな――まず、契約打ち切りについてだが、うちの会社が不自然ではない形で契約期間を短縮したんだ。なのでシュレッダー事件後は、俺の現場以外は古山建設の社員は早々に契約終了させたんだ。もちろん怪しまれないように、『御社のお陰で作業が予定より早く終わりました、ありがとうございました』って、思いっきり持ち上げてな。そのうえ手切れ金がわりに当初の契約金額を値引きなしで一括で支払ったんだ」
「では、かなり金額的に損をしたのでは」
「ふん。そんな出費、後々に施工ミスや労働災害を起こされたり、レイナ経由で迷惑をかけられたりするのに比べたら安いもんさ」
「ああー……」
さすが大手ゼネコン。太っ腹というか、実に鮮やかな縁切りである。
「そうしたら古山の社長と星崎は、うちの会社の言葉を鵜呑みにして鼻高々。だから後日、大いばりで俺の所へケイの契約金額の値上げに来たってわけさ」
「じゃあ、田上課長は全部それを知った上で――」
「そうだ。つまり古山の社長や星崎とのやり取りや喧嘩は芝居だ。で、下請リストから外すと脅したのは俺なりの気配りだ。いきなり仕事を干されたら心臓に悪いだろ? なので心の準備をさせたんだ」
「……はあ」
それ、全く心の準備になっていない。逆にじわじわと恐怖を感じさせ、限界まで弱り切ったところで最後にズバッと息の根を止めるという一番恐ろしいやり方だ。
さすが根性曲がりのユキ。佐野の背筋は寒くなる。
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