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第191話 いともあっさりと去られる
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「弟まで登場か。最悪だな。では、タイムリミットは一週間後ってわけか」
ユキが鼻を鳴らして言う。
「はい。個人的にはそんなの待たないで、さっさと相談に行きたいんです。総務部と経理部の社員も心配ですし。でも、総務部長――元ですけど――がそう言うものですから」
今更ユキにグチってもしょうがないのだが、それでも奇跡的に再会できて、そのうえ現在の状況を説明できたことは大いにありがたい。
もちろんそれで何かが進展するとか、ユキとの親交が復活するとか、そんな期待は一切していない。
なぜなら退職後もずっとユキから連絡がなかったのだし、今だって偶然コンビニで出くわしたからこそ、こうして話せているだけなのだ。
まあ、この再会で仮に何かが動くのなら、せいぜい橋本建設の下請リストから古川建設の社名が永久除名されて、これに派生して他のゼネコンもそうする程度であろう。 「うーん……そうか」
ユキは残りのコーヒーを飲み干すと、しょうがねえ会社だなと言わんばかりに首をぐるぐると回した。
「じゃあ、俺はそろそろ事務所に戻る。ケイ、風邪ひくなよ」
ユキはドライにそう言うと、あっさりと背を向け、足早に歩き去る。
「はい……田上課長も、お元気で」
佐野は頭を下げて見送り、それからユキの車が見えなくなるまで、冷えたカフェラテを手に持ったまま、ぼんやりとそこに立っていた。
ユキが鼻を鳴らして言う。
「はい。個人的にはそんなの待たないで、さっさと相談に行きたいんです。総務部と経理部の社員も心配ですし。でも、総務部長――元ですけど――がそう言うものですから」
今更ユキにグチってもしょうがないのだが、それでも奇跡的に再会できて、そのうえ現在の状況を説明できたことは大いにありがたい。
もちろんそれで何かが進展するとか、ユキとの親交が復活するとか、そんな期待は一切していない。
なぜなら退職後もずっとユキから連絡がなかったのだし、今だって偶然コンビニで出くわしたからこそ、こうして話せているだけなのだ。
まあ、この再会で仮に何かが動くのなら、せいぜい橋本建設の下請リストから古川建設の社名が永久除名されて、これに派生して他のゼネコンもそうする程度であろう。 「うーん……そうか」
ユキは残りのコーヒーを飲み干すと、しょうがねえ会社だなと言わんばかりに首をぐるぐると回した。
「じゃあ、俺はそろそろ事務所に戻る。ケイ、風邪ひくなよ」
ユキはドライにそう言うと、あっさりと背を向け、足早に歩き去る。
「はい……田上課長も、お元気で」
佐野は頭を下げて見送り、それからユキの車が見えなくなるまで、冷えたカフェラテを手に持ったまま、ぼんやりとそこに立っていた。
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