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第139話 執着の具現化
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二人は雪をすくい上げるプラスチックの部分ではなく、柄の部分を使う。布やベルトが思いのほかきつく絡みあっているからだ。
「まるで自分の執着が具現化しているみたいだ」 ユキが背広の右腕に蛇のごとく巻き付いているネクタイをほどきながら言う。
「失礼ですが、その通りかと」
ズボンへすがるようにまといつくベルトを相手に苦戦中の佐野が返す。
「あーあ、みっともねえなあ」
当時の心境と状況が生々しく再現された「福袋」を前に、ユキは小さく舌打ちする。
「ひっぱたいてやりたいよ。あの頃の自分を」
ユキが忌々しげに呟く。
「僕は逆に、よくがんばったなって、褒めてあげたいです」
口先だけの世辞ではない。本心だ。
「当時の田上課長は精一杯の努力をしたんです。それをさも当たり前のことだと評価もせずに、ハードルを上げ続けたあの方を……僕はひっぱたいてやりたいです。いえ、それどころか、ぶん殴ってやりたいです」
「まるで自分の執着が具現化しているみたいだ」 ユキが背広の右腕に蛇のごとく巻き付いているネクタイをほどきながら言う。
「失礼ですが、その通りかと」
ズボンへすがるようにまといつくベルトを相手に苦戦中の佐野が返す。
「あーあ、みっともねえなあ」
当時の心境と状況が生々しく再現された「福袋」を前に、ユキは小さく舌打ちする。
「ひっぱたいてやりたいよ。あの頃の自分を」
ユキが忌々しげに呟く。
「僕は逆に、よくがんばったなって、褒めてあげたいです」
口先だけの世辞ではない。本心だ。
「当時の田上課長は精一杯の努力をしたんです。それをさも当たり前のことだと評価もせずに、ハードルを上げ続けたあの方を……僕はひっぱたいてやりたいです。いえ、それどころか、ぶん殴ってやりたいです」
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