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Chapter.16
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窓をノックして、助手席に座る。
「お待たせしました」
「いーえー」
迎えた堀河は心なしかニヨニヨしている。
「ずいぶん強硬手段に出たわねぇ」
「チャンスは掴まないと」
助手席からカーナビを操作して、履歴から自宅の住所を選択しつつ攷斗が言う。
「いいと思うわよー」
「でもなんか……」シートベルトを締めながら攷斗が続ける。「ちょっと強引すぎたかなーって」
「いいんじゃない? そのくらいのほうが。ひぃなからのアクション待ってたらまた十年経っちゃうし、ひぃなだって本気で嫌な相手とは結婚したりしないわよ」
ナビの案内を確認して、堀河がエンジンをかける。
「そうだといいんですけど」
頭では“そうだろう”と思っていても、どこかで“そうだといいな”という期待にすり替わってしまう。やはり、攷斗も攷斗なりに不安なのだ。
「それにしても急展開よね。どうやって持ち込んだの?」
「えー? ひなが、家借りるときの保証人になりえる人がいなくなったら困るし、この先パートナーがいたほうが安心、みたいなこと言ったんで、じゃあ俺なんてどう? みたいな」
「わー、あんたっぽーい」
「いいじゃないですか、俺なんですから」
「で? なんて告白したの?」
発車させながら言う堀河の質問に、攷斗は答えられない。
「……えっ? 伝えたのよね? ひぃなのことがずっと好きだったって」
「……たぶんあっちは、利害が一致しただけの、偽装結婚のつもりでいる…と思います……」
「えー! ちょっとぉ。私のかわいい親友を犯罪者にしないでよー?!」
「しないしない! 俺は偽装だなんて思ってないですし!」
「だったらそう言ったら良かったじゃない。気持ちは言葉で伝えなきゃ相手にはわからないのよ?」
「そんなの急に言ったら、ひなビックリして心のシャッター閉めちゃいますよ」
「そーだけどー」
「いいんです。年単位でじっくり行くつもりなんで」
「片思い期間長いだけあるわねー」
「いやもう、やっと前進したんで」
「中間工程いくつもすっ飛ばしてるけどねぇ」
「それはこれから埋めていきますよ」
「ひぃなは手強いわよー」
「充分知ってますよ。十年間、ずっとちょっとずつアレコレしてきたんですから」
「ちょっとの嘘が未来に亀裂入れていくからね。良きタイミングで少しずつ種明かししていってあげてね」
「さすが経験者。含蓄のあるお言葉ありがとうございます」
攷斗が堀河にうやうやしく礼をする。
「伊達に二回もしてないわよー」そして、目下三回目を検討中だ。「ひぃなにはもうしんどい思いしてほしくないからさ」幼馴染の堀河はひぃなの家庭事情を常に心配している。「ご両親のこととか、ホント色々あったから……あなたにはいずれ話すと思うけど、それまでは聞かないであげてね」
「はい。まぁ、割と聞いてて、多分そこそこ知ってるんですけどね……」
「そうなのね、それは良かった」
「コツコツ信頼と実績積み重ねてきたんで。まぁ、全部の話のうち、どこまでなのかはわからないですけど」
攷斗の言葉にハハッと堀河が笑い、
「努力が報われることを祈ってるわー」おっと左折か、とハンドルを緩やかに切った。「棚井が粘り強く頑張ってくれて良かった」
「そう思ってもらえたんならいいですけど……親みたいですね」
「そうねぇ…。親ほどのことはできてないけど、姉みたいな感じかしらねぇ。家族同然であることは間違いないわ」
「高校出てからしばらく一緒に住んでたようなこと聞きましたけど」
「うちの親が見かねてね……」堀河家は両親ともにデザイン関係の仕事をしており、裕福な部類の家庭だ。年頃の娘の一人や二人、増えても心配はいらない。「私もそうしてほしかったから、ご家族を説得して、無理矢理呼んだんだけど」
懐かしそうに目を細める。
「お待たせしました」
「いーえー」
迎えた堀河は心なしかニヨニヨしている。
「ずいぶん強硬手段に出たわねぇ」
「チャンスは掴まないと」
助手席からカーナビを操作して、履歴から自宅の住所を選択しつつ攷斗が言う。
「いいと思うわよー」
「でもなんか……」シートベルトを締めながら攷斗が続ける。「ちょっと強引すぎたかなーって」
「いいんじゃない? そのくらいのほうが。ひぃなからのアクション待ってたらまた十年経っちゃうし、ひぃなだって本気で嫌な相手とは結婚したりしないわよ」
ナビの案内を確認して、堀河がエンジンをかける。
「そうだといいんですけど」
頭では“そうだろう”と思っていても、どこかで“そうだといいな”という期待にすり替わってしまう。やはり、攷斗も攷斗なりに不安なのだ。
「それにしても急展開よね。どうやって持ち込んだの?」
「えー? ひなが、家借りるときの保証人になりえる人がいなくなったら困るし、この先パートナーがいたほうが安心、みたいなこと言ったんで、じゃあ俺なんてどう? みたいな」
「わー、あんたっぽーい」
「いいじゃないですか、俺なんですから」
「で? なんて告白したの?」
発車させながら言う堀河の質問に、攷斗は答えられない。
「……えっ? 伝えたのよね? ひぃなのことがずっと好きだったって」
「……たぶんあっちは、利害が一致しただけの、偽装結婚のつもりでいる…と思います……」
「えー! ちょっとぉ。私のかわいい親友を犯罪者にしないでよー?!」
「しないしない! 俺は偽装だなんて思ってないですし!」
「だったらそう言ったら良かったじゃない。気持ちは言葉で伝えなきゃ相手にはわからないのよ?」
「そんなの急に言ったら、ひなビックリして心のシャッター閉めちゃいますよ」
「そーだけどー」
「いいんです。年単位でじっくり行くつもりなんで」
「片思い期間長いだけあるわねー」
「いやもう、やっと前進したんで」
「中間工程いくつもすっ飛ばしてるけどねぇ」
「それはこれから埋めていきますよ」
「ひぃなは手強いわよー」
「充分知ってますよ。十年間、ずっとちょっとずつアレコレしてきたんですから」
「ちょっとの嘘が未来に亀裂入れていくからね。良きタイミングで少しずつ種明かししていってあげてね」
「さすが経験者。含蓄のあるお言葉ありがとうございます」
攷斗が堀河にうやうやしく礼をする。
「伊達に二回もしてないわよー」そして、目下三回目を検討中だ。「ひぃなにはもうしんどい思いしてほしくないからさ」幼馴染の堀河はひぃなの家庭事情を常に心配している。「ご両親のこととか、ホント色々あったから……あなたにはいずれ話すと思うけど、それまでは聞かないであげてね」
「はい。まぁ、割と聞いてて、多分そこそこ知ってるんですけどね……」
「そうなのね、それは良かった」
「コツコツ信頼と実績積み重ねてきたんで。まぁ、全部の話のうち、どこまでなのかはわからないですけど」
攷斗の言葉にハハッと堀河が笑い、
「努力が報われることを祈ってるわー」おっと左折か、とハンドルを緩やかに切った。「棚井が粘り強く頑張ってくれて良かった」
「そう思ってもらえたんならいいですけど……親みたいですね」
「そうねぇ…。親ほどのことはできてないけど、姉みたいな感じかしらねぇ。家族同然であることは間違いないわ」
「高校出てからしばらく一緒に住んでたようなこと聞きましたけど」
「うちの親が見かねてね……」堀河家は両親ともにデザイン関係の仕事をしており、裕福な部類の家庭だ。年頃の娘の一人や二人、増えても心配はいらない。「私もそうしてほしかったから、ご家族を説得して、無理矢理呼んだんだけど」
懐かしそうに目を細める。
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