136 / 201
第4章 入学試験編
第4章ーおまけ
しおりを挟む
これは、ソワレル学園の試験当日の話である。
「いよいよ試験の日ですね、神父様」
「うむ。そうだな」
私、エリカ・ヘンリエッタはクルーシア王国のリーヴ村のフレッド・ローリエンス神父の教会の元でシスターを務めさせてもらっています。教会の人間は私と神父の二人だけですが、孤児の子が二人おり、四人で生活を送っています。
孤児の二人は十年程前、生まれの村を魔物に襲われ、勇者様が保護してくれました。その後、隣村である私達の教会で預かることとなりました。
あれから早十年。昔は身も心もボロボロだった子供達ですが、今は心身共に立派に成長し、大人顔負けの頼もしい子達に育ちました。
そんな子供達ですが、現在名門ソワレル学園の試験を受けに行っており、私達は朝食を取りながら二人の合格祈願と無事を願っていました。
「…はあ」
「こらこら。シスター、教会内でため息を吐くなど、神の罰が当たってしまいますよ」
「あっ?! も、申し訳ございません」
朝食の最中、心配しすぎてついため息を零してしまい、神父様に注意されてしまいました。うっかりしていました。神を信仰する聖域内で、その上一端の修道女が負の念を吐露するなんて。これでもしあの子達に何かあったら、それは私のせいかもしれない。そう考えてしまうと余計ため息が零れそうになり、必死に口を抑えてため息が出ないようにしました。
「…」
あっ、でも、このままだと一生口を塞がないといけなくなってしまいます。けど、口を開けたらまたため息が出てしまうかもしれませんし、どうしましょう。
「シスター」
「ッ!? ふぁ、ふぁいっ?!」
頭の中でそのことを葛藤していると、神父様が声を掛けてきました。どことなく呆れられているような顔を浮かべているように見えるのですが、もしかして今の私、とんでもなくアホに見えているのでしょうか。途端に思考が冷静になり、自分の間抜けな行為で恥をかいてしまいました。恥ずかしい。神父様一人だけにしか見られていないのが不幸中の幸いです。
「もうあの子達もやがて十六を迎えるいい年頃の子だ。私達からすればまだまだ幼い子に見えるかもしれないが、傍から見れば大人の一歩手前。あの子達自身でものを考えて動かなければならない。それと同時にその行動には責任が伴う。つまり、試験に受かろうが受かるまいが、それはあの子達の責任だ。私達が気負う必要はないんだよ」
「神父様…」
そんな私に、神父様は言葉を授けてくださいました。きっと私がため息をしたことであの子達が不合格になってしまうと思い、変に気負ったのを察してくれたのでしょう。流石神父様。私の浅い考えなんてお見通しなだけでなく、フォローまでしてくださるとは。
「私達の出来る事は帰りを待つだけ。帰ったらご馳走を用意しておこう」
「…はい、そうですね」
「さて、朝食を食べ終わったら礼拝しに行きますよ」
「はい!」
私と神父は首にさげた十字架のネックレスに二人が帰って来てくれることを願い、朝食を済ませて礼拝堂へと向かうことにしました。
「いよいよ試験の日ですね、神父様」
「うむ。そうだな」
私、エリカ・ヘンリエッタはクルーシア王国のリーヴ村のフレッド・ローリエンス神父の教会の元でシスターを務めさせてもらっています。教会の人間は私と神父の二人だけですが、孤児の子が二人おり、四人で生活を送っています。
孤児の二人は十年程前、生まれの村を魔物に襲われ、勇者様が保護してくれました。その後、隣村である私達の教会で預かることとなりました。
あれから早十年。昔は身も心もボロボロだった子供達ですが、今は心身共に立派に成長し、大人顔負けの頼もしい子達に育ちました。
そんな子供達ですが、現在名門ソワレル学園の試験を受けに行っており、私達は朝食を取りながら二人の合格祈願と無事を願っていました。
「…はあ」
「こらこら。シスター、教会内でため息を吐くなど、神の罰が当たってしまいますよ」
「あっ?! も、申し訳ございません」
朝食の最中、心配しすぎてついため息を零してしまい、神父様に注意されてしまいました。うっかりしていました。神を信仰する聖域内で、その上一端の修道女が負の念を吐露するなんて。これでもしあの子達に何かあったら、それは私のせいかもしれない。そう考えてしまうと余計ため息が零れそうになり、必死に口を抑えてため息が出ないようにしました。
「…」
あっ、でも、このままだと一生口を塞がないといけなくなってしまいます。けど、口を開けたらまたため息が出てしまうかもしれませんし、どうしましょう。
「シスター」
「ッ!? ふぁ、ふぁいっ?!」
頭の中でそのことを葛藤していると、神父様が声を掛けてきました。どことなく呆れられているような顔を浮かべているように見えるのですが、もしかして今の私、とんでもなくアホに見えているのでしょうか。途端に思考が冷静になり、自分の間抜けな行為で恥をかいてしまいました。恥ずかしい。神父様一人だけにしか見られていないのが不幸中の幸いです。
「もうあの子達もやがて十六を迎えるいい年頃の子だ。私達からすればまだまだ幼い子に見えるかもしれないが、傍から見れば大人の一歩手前。あの子達自身でものを考えて動かなければならない。それと同時にその行動には責任が伴う。つまり、試験に受かろうが受かるまいが、それはあの子達の責任だ。私達が気負う必要はないんだよ」
「神父様…」
そんな私に、神父様は言葉を授けてくださいました。きっと私がため息をしたことであの子達が不合格になってしまうと思い、変に気負ったのを察してくれたのでしょう。流石神父様。私の浅い考えなんてお見通しなだけでなく、フォローまでしてくださるとは。
「私達の出来る事は帰りを待つだけ。帰ったらご馳走を用意しておこう」
「…はい、そうですね」
「さて、朝食を食べ終わったら礼拝しに行きますよ」
「はい!」
私と神父は首にさげた十字架のネックレスに二人が帰って来てくれることを願い、朝食を済ませて礼拝堂へと向かうことにしました。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

記憶喪失の異世界転生者を拾いました
町島航太
ファンタジー
深淵から漏れる生物にとって猛毒である瘴気によって草木は枯れ果て、生物は病に侵され、魔物が這い出る災厄の時代。
浄化の神の神殿に仕える瘴気の影響を受けない浄化の騎士のガルは女神に誘われて瘴気を止める旅へと出る。
近くにあるエルフの里を目指して森を歩いていると、土に埋もれた記憶喪失の転生者トキと出会う。
彼女は瘴気を吸収する特異体質の持ち主だった。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~
宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。
転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。
良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。
例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。
けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。
同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。
彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!?
※小説家になろう様にも掲載しています。

猛焔滅斬の碧刃龍
ガスト
ファンタジー
ある日、背後から何者かに突然刺され死亡した主人公。
目覚めると神様的な存在に『転生』を迫られ 気付けば異世界に!
火を吐くドラゴン、動く大木、ダンジョンに魔王!!
有り触れた世界に転生したけど、身体は竜の姿で⋯!?
仲間と出会い、絆を深め、強敵を倒す⋯単なるファンタジーライフじゃない!
進むに連れて、どんどんおかしな方向に行く主人公の運命!
グルグルと回る世界で、一体どんな事が待ち受けているのか!
読んで観なきゃあ分からない!
異世界転生バトルファンタジー!ここに降臨す!
※「小説家になろう」でも投稿しております。
https://ncode.syosetu.com/n5903ga/

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。
ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。
剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。
しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。
休憩を使う事でスキルを強化、更に新スキルを獲得できてしまう…
そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。
ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。
その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった…
それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…
※小説家になろう、カクヨムでも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる