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第2章 脱出編
第2章ー㉕
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「はあ…はあ…」
「はあ…っ…はあ…」
「大丈夫かミオ?」
「う、うん! 私は大丈夫だよ」
作戦は少々想定外ではあるが、なんとか成功し、魔障結界を解除することが出来た。まさかミオがあれだけ凄い魔法を扱えたとは。
よく考えてみればミオは風魔法と治癒魔法の両方使える特異体質《イディオーション》の持ち主だ。魔力量は人並程度だが、魔法の素質は人並以上にあっても不思議じゃないか。
「? どうかしたの?」
「ん? ううん、なんでもない」
そんなことより、早くラエル達と合流しなければならないのだが、ラエル達の方は上手くいってるのだろうかと今になって不安になってきた。自分やミオとは違って向こうは集団行動だ。その分見つかるリスクは高いし、この騒動で魔道馬《ソーサ・ホース》達がビビって暴れ出してたら逃げるどころじゃなくなってしまう。馬が使い物にならなくなったら、最悪自分達の足で逃げなければならない。正直、それで逃げ切れる自信はないのだが。
「おーい! こっちだ!!」
「っ!?」
脳内に不安が過っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。声の方に視線を移すと、そこにはラエルの姿があった。
「馬の方は確保した。皆はもう荷車に乗ってるから、後はお前らだけだ」
「マジか?!」
「ああ。だから急げ!」
「わかった!」
どうやらラエル達も自分達の役割をしっかり果たしていたようだ。ラエルは状況を簡潔に伝えると、自分達を馬小屋の方に向かって走りだした。自分とミオも後を追うように馬小屋に向かって行った。
「お、おー」
馬小屋に辿り着くと、そこには二頭の魔道馬が居た。そのうちの一頭は荷台を引かせていて、中には他の子供達がざわざわしながら待機していた。
にしても、近くで見ると立派な馬である。体は自分の一回りも二回りも大きい。毛は黒く、目も赤黒くてちょっと厳つくて怖い風貌ではあるが、この状況でも動じていない姿にカッコよさも感じる。
「おい、なにボーっとしてんだ! 俺は荷車の方引くから二人はそっちに乗れ!」
「あ、ああ、うん」
暫し魔道馬に見惚れていると、ラエルから注意されてしまった。うっかりしてた。
「んしょっと!」
ラエルに注意されつつ、自分から先に魔道馬に跨った。一応馬の乗り方は父に教えて貰った事がある。魔道馬も似たようなもんだから難なく乗る事が出来た。
「よし! ミオ!」
「う、うん!!」
魔道馬に乗った後、ミオが乗れるように手を差し伸べ、ミオは力強く自分の手を握った。
「二人とも乗れたな?」
「ああ。ミオ、しっかり俺に捕まっとけよ!」
「わ、わかった!」
ミオが乗り、しっかり自分の身体にしがみつかせた。これで準備は万端だ。
「よし! 行こう!!」
準備が整った自分はラエルの顔を見合わせ、出発の合図を出すと同時に魔道馬を走らせた。
「おい、あいつら魔道馬で逃げようとしてるぞ!?」
「逃がすなー! ガキどもをなにがなんでも殺せー!!」
馬小屋を出たタイミングで、魔物の連中が馬小屋の方にまで迫って来ていた。この状況、奴等は躍起になって馬から引きずり落とそうとするだろう。そんなことさせられてたまるか。だから最後に一仕事しておこう。
「ミオ。悪いけど少しだけ手綱持っててくれるか?」
「えっ? うん。それはいいけど…」
「大丈夫。すぐに終わらす」
ミオに少しの間手綱を持たせた自分は後ろを振り返る。魔物達は今にでも石や棍棒を投げつけてきそうな様子だ。そうはさせねーぞ。
「爆ぜる焔よ、火《か》の球《きゅう》として聚合《しゅうごう》し、眼前に移りし標的に猛る一投を撃ちかけん」
魔物の方に向かって手を突き出し、詠唱を唱える。全力で吹き飛ばしたい所だが、ミオが近くに居るからなるべく抑えて6割強で。
「死ねやー!!」
予想通り魔物が石や棍棒を投げつけてきた。だが、もう遅い。
「【火球《フレール》】!」
詠唱を終えた自分の手のひらからバスケットボール並の火の塊が現れ、魔物達の方向に飛んでいく。飛んでいくと、バスケットボールぐらいの火球は徐々に大きくなっていき、魔物達が投げて来た石や棍棒を飲みこんでいった。
「う、うわああああああああああ!!!!!」
石や棍棒を飲みこんだ火球はそのまま魔物達の方へ跳んでいき、最後には大爆発を起こした。これで魔物達もかなりの大ダメージを負っただろう。まさかあそこまで大きくなるとは思わなかったけど。
「よし!」
「…」
爆発の際に生じた火煙のせいで魔物の姿ははっきりと見えなかったが、奴等に大ダメージを負わせた事は間違いないだろう。自分が小さくガッツポーズを決める一方、気になって一度後ろを確認したミオは唖然としていた。そりゃああんな地獄絵図みたいな光景みたら…
「…さようなら」
「っ!?」
と思っていたが、違っていた。そうだ。もうこの村とはおさらばなんだ。つい最近まで辛く苦しい思い出しかなかったけど、楽しかった思い出もあそこに詰まっている。自分達にとってドレーカ村は大事な居場所だったんだ。まさかこんな形で村を出る事になるとはな。
「…」
この村にはもう戻れない。そう思うと、なんだか寂しく感じてくる。もしも戻れる日が来たら、皆の墓を作ってあげたいな。
「…いや、必ず戻って来るよ」
「サダメ…」
墓を作りたいという願望が芽生えた自分は、この村にいずれ戻ると決意した。なにも出来なかった自分への償いなどではなく、死んでいった皆が安らかに眠れる場所を作ってあげたくなった。前世で祖母がお墓は魂が安らかに眠れる場所だと言ってた気がするのをふと思い出した。もうだいぶ前の記憶だからニュアンス的にそういうふうな解釈をしてたのかもしれないが。
「わりぃミオ。もう大丈夫だ」
「あっ、うん」
暫く村の方を見つめていた自分は、前方に振り返って手綱を握っていたミオから手綱を受け取り魔道馬を走らせる。あてもない道のりをただひたすらに。
―転生勇者が死ぬまで、残り7802日
「はあ…っ…はあ…」
「大丈夫かミオ?」
「う、うん! 私は大丈夫だよ」
作戦は少々想定外ではあるが、なんとか成功し、魔障結界を解除することが出来た。まさかミオがあれだけ凄い魔法を扱えたとは。
よく考えてみればミオは風魔法と治癒魔法の両方使える特異体質《イディオーション》の持ち主だ。魔力量は人並程度だが、魔法の素質は人並以上にあっても不思議じゃないか。
「? どうかしたの?」
「ん? ううん、なんでもない」
そんなことより、早くラエル達と合流しなければならないのだが、ラエル達の方は上手くいってるのだろうかと今になって不安になってきた。自分やミオとは違って向こうは集団行動だ。その分見つかるリスクは高いし、この騒動で魔道馬《ソーサ・ホース》達がビビって暴れ出してたら逃げるどころじゃなくなってしまう。馬が使い物にならなくなったら、最悪自分達の足で逃げなければならない。正直、それで逃げ切れる自信はないのだが。
「おーい! こっちだ!!」
「っ!?」
脳内に不安が過っていると、聞き覚えのある声が聞こえてきた。声の方に視線を移すと、そこにはラエルの姿があった。
「馬の方は確保した。皆はもう荷車に乗ってるから、後はお前らだけだ」
「マジか?!」
「ああ。だから急げ!」
「わかった!」
どうやらラエル達も自分達の役割をしっかり果たしていたようだ。ラエルは状況を簡潔に伝えると、自分達を馬小屋の方に向かって走りだした。自分とミオも後を追うように馬小屋に向かって行った。
「お、おー」
馬小屋に辿り着くと、そこには二頭の魔道馬が居た。そのうちの一頭は荷台を引かせていて、中には他の子供達がざわざわしながら待機していた。
にしても、近くで見ると立派な馬である。体は自分の一回りも二回りも大きい。毛は黒く、目も赤黒くてちょっと厳つくて怖い風貌ではあるが、この状況でも動じていない姿にカッコよさも感じる。
「おい、なにボーっとしてんだ! 俺は荷車の方引くから二人はそっちに乗れ!」
「あ、ああ、うん」
暫し魔道馬に見惚れていると、ラエルから注意されてしまった。うっかりしてた。
「んしょっと!」
ラエルに注意されつつ、自分から先に魔道馬に跨った。一応馬の乗り方は父に教えて貰った事がある。魔道馬も似たようなもんだから難なく乗る事が出来た。
「よし! ミオ!」
「う、うん!!」
魔道馬に乗った後、ミオが乗れるように手を差し伸べ、ミオは力強く自分の手を握った。
「二人とも乗れたな?」
「ああ。ミオ、しっかり俺に捕まっとけよ!」
「わ、わかった!」
ミオが乗り、しっかり自分の身体にしがみつかせた。これで準備は万端だ。
「よし! 行こう!!」
準備が整った自分はラエルの顔を見合わせ、出発の合図を出すと同時に魔道馬を走らせた。
「おい、あいつら魔道馬で逃げようとしてるぞ!?」
「逃がすなー! ガキどもをなにがなんでも殺せー!!」
馬小屋を出たタイミングで、魔物の連中が馬小屋の方にまで迫って来ていた。この状況、奴等は躍起になって馬から引きずり落とそうとするだろう。そんなことさせられてたまるか。だから最後に一仕事しておこう。
「ミオ。悪いけど少しだけ手綱持っててくれるか?」
「えっ? うん。それはいいけど…」
「大丈夫。すぐに終わらす」
ミオに少しの間手綱を持たせた自分は後ろを振り返る。魔物達は今にでも石や棍棒を投げつけてきそうな様子だ。そうはさせねーぞ。
「爆ぜる焔よ、火《か》の球《きゅう》として聚合《しゅうごう》し、眼前に移りし標的に猛る一投を撃ちかけん」
魔物の方に向かって手を突き出し、詠唱を唱える。全力で吹き飛ばしたい所だが、ミオが近くに居るからなるべく抑えて6割強で。
「死ねやー!!」
予想通り魔物が石や棍棒を投げつけてきた。だが、もう遅い。
「【火球《フレール》】!」
詠唱を終えた自分の手のひらからバスケットボール並の火の塊が現れ、魔物達の方向に飛んでいく。飛んでいくと、バスケットボールぐらいの火球は徐々に大きくなっていき、魔物達が投げて来た石や棍棒を飲みこんでいった。
「う、うわああああああああああ!!!!!」
石や棍棒を飲みこんだ火球はそのまま魔物達の方へ跳んでいき、最後には大爆発を起こした。これで魔物達もかなりの大ダメージを負っただろう。まさかあそこまで大きくなるとは思わなかったけど。
「よし!」
「…」
爆発の際に生じた火煙のせいで魔物の姿ははっきりと見えなかったが、奴等に大ダメージを負わせた事は間違いないだろう。自分が小さくガッツポーズを決める一方、気になって一度後ろを確認したミオは唖然としていた。そりゃああんな地獄絵図みたいな光景みたら…
「…さようなら」
「っ!?」
と思っていたが、違っていた。そうだ。もうこの村とはおさらばなんだ。つい最近まで辛く苦しい思い出しかなかったけど、楽しかった思い出もあそこに詰まっている。自分達にとってドレーカ村は大事な居場所だったんだ。まさかこんな形で村を出る事になるとはな。
「…」
この村にはもう戻れない。そう思うと、なんだか寂しく感じてくる。もしも戻れる日が来たら、皆の墓を作ってあげたいな。
「…いや、必ず戻って来るよ」
「サダメ…」
墓を作りたいという願望が芽生えた自分は、この村にいずれ戻ると決意した。なにも出来なかった自分への償いなどではなく、死んでいった皆が安らかに眠れる場所を作ってあげたくなった。前世で祖母がお墓は魂が安らかに眠れる場所だと言ってた気がするのをふと思い出した。もうだいぶ前の記憶だからニュアンス的にそういうふうな解釈をしてたのかもしれないが。
「わりぃミオ。もう大丈夫だ」
「あっ、うん」
暫く村の方を見つめていた自分は、前方に振り返って手綱を握っていたミオから手綱を受け取り魔道馬を走らせる。あてもない道のりをただひたすらに。
―転生勇者が死ぬまで、残り7802日
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