転生勇者が死ぬまで10000日

慶名 安

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第2章 脱出編

第2章ー㉔

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 「はあ…はあ…」

 気が付いたら私を囲んでいる竜巻が倉庫の瓦礫や魔造種を粉砕していき、ゆっくりと消えて私の近くには何一つ残らなかった。

 「…はっ! そうだ、結界は?!」

 自分自身の魔法に驚く暇もあまりなく、慌てて結界の方を確認する。これで結界が解除されれば成功なんだけれども。

 「っ!?」

 そう思っていると、空の様子が徐々に変化していく。光をあまり通さなかった結界が消えていき、星の明かりが村に差し込んできた。

 「…久しぶりの星だぁ」

 久しぶりの星空に感極まって思わず涙が出て来た。やった。結界の解除はちゃんと成功したんだ。

 「一体何事だこれは?!」

 「ッ?!」

 感極まるのも束の間、だれかの声で我に返る。しまった。まだ作戦は終わってなかった。久しぶりの星空に感動している場合じゃなかった。

 「おい小娘! これはテメーがやったのか?!」

 「ひいっ!?」

 我に返るも時すでに遅く、すでに魔物の一人が私の姿を捕らえ、私に向かって問い詰めて来ていた。油断したあまり、途端に恐怖心が襲って身動きが取れなくなった。ダメ、あともう少しなのに。

 「よくも大事な儀式をぶち壊してくれたなー!? てめーのせいで結界が解けちまったじゃねーか! あ゛あ゛ん゛?! こんなことしてただじゃすまねーぞクソガキ!!」

 「い、いや!? だれか助けて!?」

 「うるせー! だれも助けになんて来るわきゃねー…」

 魔物の人が私を殺しに来てる。だけど、怖くて身体が動けない。そのまま逃げ切れず、魔物の人が私の目の前で棍棒を大きく振りかぶりだした。

 ここまで来て死にたくない。けど、怖くてなにも抵抗できない。イヤだ。だれか助け…

 「はああっ!!」

 「ぐうっ?!」

 てと目を瞑りながら願うと、もう一人別のだれかの声がした気がする。

 「ミオ!」

 「ッ?!」

 いや、気のせいじゃなかった。私の名前を呼ぶ声がする。この声は間違いない。彼の声がする。

 「サダメ!?」

 「大丈夫かミオ?」

 恐る恐る目を開けると、魔物の人は倒れていて、私の目の前にはサダメが居た。彼の心配する声が恐怖心を一掃してくれる。そのせいもあってか、また涙が出そうになる。

 「…うん!」

 でも、今は泣いてる場合じゃない。そう思った私は、なんとか涙を押し留めて首を縦に振った。

 「ミオのおかげで結界も解けた。あとは皆でここから逃げるだけだ。行こう!」

 「うん!!」

 そして私はサダメに手を引かれて皆の所へ向かって行った。もう少し。あともう少しで皆助かるんだ。星空と共に希望の光が見えてきた。
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