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第2章 脱出編
第2章ーおまけ
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これは自分がまだ4歳ぐらいの頃の話である。
「チヤドールさんこんにちはー!」
「イノスさん、いらっしゃい!」
自分は父と共にチヤドール家が経営している薬屋に足を運んでいた。村にある薬屋はここだけなので、病気とかになると大抵ここを利用する客が多い。無論自分達もその客のうちの一人である。
「あのー、湿布と軟膏をいただきたいんですけどー…」
「えー?! またかい?!」
今日は、というかここ最近、湿布と軟膏の減り方が異常になってきていた。理由は明白ではあるのだが。
「一昨日ぐらいに上げたばっかりなのに。なんでそんなに無くなるのか不思議で仕方ないのだけれども」
「いやー、最近サダメの修行を本格的に始めましてー…」
「それでサダメ君の怪我が増えたと?」
「ま、まあ、そんなところですかね」
「…」
最近、魔法の練習だけではなく、剣の稽古も始めた。最初は素振りだけだったが、打ち込み稽古なんかもやり出し、その分怪我をする頻度もかなり増えてきた。というかほぼ毎日怪我している気がする。その話を聞いてチヤドールさんからため息が出た。
「たしか奥さん治療魔法使えなかった?」
「はい。最初は使ってくれてたんですけど、怪我が増えてから使ってくれなくなっちゃって…」
「でしょうね」
最初の頃は母も協力的で、母の魔法で軽い怪我なんかは治してくれていたのだが、毎日怪我して帰って来る自分を見て母は呆れてしまい、『怪我は自分達でなんとかしなさい! 私はもう知りませんから!』と一喝されて以降は父も頼みづらくなってしまった。そして今、チヤドールさんにも半ば呆れられていた。
「イノスさん、子供の怪我を軽んじちゃ駄目だよ! 子供のうちにいっぱい怪我させる事を誇る親も居るけど、それにも限度っていうものがあるんだよ!? 下手をすれば傷跡が一生残る場合だってあるんだ。大体、4歳児なんてまだまだ身体が未熟なんだからもう少し加減を…」
「…」
いや、呆れを通り越して父に説教までし始める始末。当然父は反論出来ず、肩身が狭そうに見える。母に説教された時もこんな感じだったな。
「ふぅ。いいかいイノスさん。これ以上子供に無茶はしちゃイケないよ」
「…チヤドールさんの仰る事は分かっているのですが、この子にはとてつもない魔法の才能を感じるです。しかし、その才能を活かすには正しく扱う為の精神力と耐えうるだけの肉体はどうしても必要なんです」
「…」
と思っていたが、珍しく父が反論し始めた。いちおう父にも父なりの考えがあったらしい。まあ、元々自分から申し出た事なので、自分的には別に父のやっている事に反論するつもりはない。けど、傍から見れば子供が可哀そうだと思ってしまうのだろう。その気持ちもなんとなくわかる。
「…たしかに、あの一件でこの子に才能があるのは周知の事実だ。親の貴方がそれに期待するのも無理はない。けど、何事もやりすぎは良くない」
「はい。それは分かってます。だけど、この子の才能は危ういものでもある。あの時みたいに間違って魔法を使ってしまったら人を殺しかねない。最悪この子自身の命にも関わって来る。未熟だからこそ今のうちに鍛えておかないといけないんです」
あの時、初めて火球を撃った時の事だ。あれは一歩間違えば村を滅ぼしかねなかった。肉体面も手を火傷しただけで済んだけど、あの時父の言う通りに出来なければ暴発で死んでいたかもしれない。自分が未熟だったからこそ起こった事故である。父はあの時のような事態にならないように鍛えてくれてるんだと今ここで知らされた。普段おちょくってくるような人だから、そういうことあんまり言わない人だからな。
「…言いたいことはよくわかった。湿布と軟膏、多めに渡しておくよ」
「…ありがとうございます」
「けど、無理は程々に」
「はい!」
父の言い分を聞いたからか、チヤドールさんは渋々納得しながら、近くにある商品棚を漁り始めた。なんだかんだこの人は理解力がある人だ。まあ、同じ子を持つ親としては複雑な気持ちなのかもしれないが。
「おーい! ミオー!? ちょっと来てくれー!!」
「はーい!」
棚を漁りながらチヤドールさんは自分の娘であるミオを呼び出した。
「お父さんどうした、あっ、こんにちは!」
「こんにちは、ミオちゃん!」
呼ばれて少ししてミオが裏から現れた。ミオは出てくるなりすぐに自分達に気づいて挨拶すると、先程まで真剣な面持ちだった父は笑顔で挨拶を返した。自分は軽く頭だけ下げる。
「ミオ、サダメ君の身体をちょっと診てくれないか?」
「えっ?! 私が?!」
ミオはチヤドールさんに自分を診て貰うよう頼むと、少し恥ずかしがるような表情で声を上げた。まあ、いきなりそんなこと言われたら困るよな。
「軽く傷跡が残ってないか見るだけだ。お前も今のうちに少しは勉強しとかないと」
「えー、いきなりそんなこと言われても…心の準備が…」
「身体診るだけだろ? ほら、お父さんと練習した時みたいに…」
「それとこれとはちがう!!」
「ぐへっ!?」
「…ははっ。ミオちゃんは容赦ないな」
困った表情を浮かべるミオにチヤドールさんがなんとか説得を試みるが、逆にミオの怒りを買ってしまい腹に風魔法をぶち当てられるチヤドールさんは軽く吹き飛ばされてしまった。それを見た父と自分は苦笑いするしかなかった。たしかにこんな使い方を自分がやったら父が死にかねないな。良い教訓を得た。
そんなこんなありながらも、なんとかミオに診て貰った自分は父と共に薬屋を後にするのだった。
「チヤドールさんこんにちはー!」
「イノスさん、いらっしゃい!」
自分は父と共にチヤドール家が経営している薬屋に足を運んでいた。村にある薬屋はここだけなので、病気とかになると大抵ここを利用する客が多い。無論自分達もその客のうちの一人である。
「あのー、湿布と軟膏をいただきたいんですけどー…」
「えー?! またかい?!」
今日は、というかここ最近、湿布と軟膏の減り方が異常になってきていた。理由は明白ではあるのだが。
「一昨日ぐらいに上げたばっかりなのに。なんでそんなに無くなるのか不思議で仕方ないのだけれども」
「いやー、最近サダメの修行を本格的に始めましてー…」
「それでサダメ君の怪我が増えたと?」
「ま、まあ、そんなところですかね」
「…」
最近、魔法の練習だけではなく、剣の稽古も始めた。最初は素振りだけだったが、打ち込み稽古なんかもやり出し、その分怪我をする頻度もかなり増えてきた。というかほぼ毎日怪我している気がする。その話を聞いてチヤドールさんからため息が出た。
「たしか奥さん治療魔法使えなかった?」
「はい。最初は使ってくれてたんですけど、怪我が増えてから使ってくれなくなっちゃって…」
「でしょうね」
最初の頃は母も協力的で、母の魔法で軽い怪我なんかは治してくれていたのだが、毎日怪我して帰って来る自分を見て母は呆れてしまい、『怪我は自分達でなんとかしなさい! 私はもう知りませんから!』と一喝されて以降は父も頼みづらくなってしまった。そして今、チヤドールさんにも半ば呆れられていた。
「イノスさん、子供の怪我を軽んじちゃ駄目だよ! 子供のうちにいっぱい怪我させる事を誇る親も居るけど、それにも限度っていうものがあるんだよ!? 下手をすれば傷跡が一生残る場合だってあるんだ。大体、4歳児なんてまだまだ身体が未熟なんだからもう少し加減を…」
「…」
いや、呆れを通り越して父に説教までし始める始末。当然父は反論出来ず、肩身が狭そうに見える。母に説教された時もこんな感じだったな。
「ふぅ。いいかいイノスさん。これ以上子供に無茶はしちゃイケないよ」
「…チヤドールさんの仰る事は分かっているのですが、この子にはとてつもない魔法の才能を感じるです。しかし、その才能を活かすには正しく扱う為の精神力と耐えうるだけの肉体はどうしても必要なんです」
「…」
と思っていたが、珍しく父が反論し始めた。いちおう父にも父なりの考えがあったらしい。まあ、元々自分から申し出た事なので、自分的には別に父のやっている事に反論するつもりはない。けど、傍から見れば子供が可哀そうだと思ってしまうのだろう。その気持ちもなんとなくわかる。
「…たしかに、あの一件でこの子に才能があるのは周知の事実だ。親の貴方がそれに期待するのも無理はない。けど、何事もやりすぎは良くない」
「はい。それは分かってます。だけど、この子の才能は危ういものでもある。あの時みたいに間違って魔法を使ってしまったら人を殺しかねない。最悪この子自身の命にも関わって来る。未熟だからこそ今のうちに鍛えておかないといけないんです」
あの時、初めて火球を撃った時の事だ。あれは一歩間違えば村を滅ぼしかねなかった。肉体面も手を火傷しただけで済んだけど、あの時父の言う通りに出来なければ暴発で死んでいたかもしれない。自分が未熟だったからこそ起こった事故である。父はあの時のような事態にならないように鍛えてくれてるんだと今ここで知らされた。普段おちょくってくるような人だから、そういうことあんまり言わない人だからな。
「…言いたいことはよくわかった。湿布と軟膏、多めに渡しておくよ」
「…ありがとうございます」
「けど、無理は程々に」
「はい!」
父の言い分を聞いたからか、チヤドールさんは渋々納得しながら、近くにある商品棚を漁り始めた。なんだかんだこの人は理解力がある人だ。まあ、同じ子を持つ親としては複雑な気持ちなのかもしれないが。
「おーい! ミオー!? ちょっと来てくれー!!」
「はーい!」
棚を漁りながらチヤドールさんは自分の娘であるミオを呼び出した。
「お父さんどうした、あっ、こんにちは!」
「こんにちは、ミオちゃん!」
呼ばれて少ししてミオが裏から現れた。ミオは出てくるなりすぐに自分達に気づいて挨拶すると、先程まで真剣な面持ちだった父は笑顔で挨拶を返した。自分は軽く頭だけ下げる。
「ミオ、サダメ君の身体をちょっと診てくれないか?」
「えっ?! 私が?!」
ミオはチヤドールさんに自分を診て貰うよう頼むと、少し恥ずかしがるような表情で声を上げた。まあ、いきなりそんなこと言われたら困るよな。
「軽く傷跡が残ってないか見るだけだ。お前も今のうちに少しは勉強しとかないと」
「えー、いきなりそんなこと言われても…心の準備が…」
「身体診るだけだろ? ほら、お父さんと練習した時みたいに…」
「それとこれとはちがう!!」
「ぐへっ!?」
「…ははっ。ミオちゃんは容赦ないな」
困った表情を浮かべるミオにチヤドールさんがなんとか説得を試みるが、逆にミオの怒りを買ってしまい腹に風魔法をぶち当てられるチヤドールさんは軽く吹き飛ばされてしまった。それを見た父と自分は苦笑いするしかなかった。たしかにこんな使い方を自分がやったら父が死にかねないな。良い教訓を得た。
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