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26章 建国祭

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「失礼ですね。ニールさん。私は何もしていませんよ。私は・・

 シェリーは念を押すように言った。その言葉にニールは紫煙を吐き出しながら、ため息をつく。このパターンはシェリーとしては口を割らないだろうと諦めたニールは次の話に移った。

「二つ目はダンジョンのスタンピードを疑っていた異常の件だ。シェリーが直接国に挙げてくれたお陰で、事はスムーズに運び、異常が見られたダンジョンの調査は終わった」

 これはシェリーが直接イーリスクロムに面会して頼んだことだ。悪魔に勝てる人物として統括師団長閣下を動かせと。

「一つはそこの二人の依頼に混ぜておいて、解決はした。残り四箇所の内、一箇所はトーセイ支部のギルドマスターが中身を確認せずに、シェリーの言う黒い球体を壊したため、真偽は確認されていないが、恐らくそうであっただろうと、結論づけた」

 やはりトーセイにほど近いダンジョンの異常は赤猿フラゴルに依頼されたが、目標を発見次第破壊されるという結果に終わったようだ。

「残りの三箇所はリベラ大佐と統括師団長閣下自ら動いて解決した。国は今回のことを重く捉えてくれたようだ」

 シェリーはどこか聞いたようで聞き慣れない名前に首を傾げる。リベラ大佐とは誰のことだろうかと。しかし、シェリー自身には関係のないことなので、追求はしない。この国の脅威が少しでも減ればそれでいいのだ。

「これが、一連の結果報告だな。知りたかったのだろう?」

 そう言ってニールは片側の口元を歪め笑った。確かに確認しておきたいことだったのでシェリーは素直に感謝の言葉を述べる。

「ありがとうございます。それで、用件はそれだけですか?」

 それだけなら、一々シェリーを呼び立てることはしなくて良かったはずだ。

「いや、後は……」

 ニールはそう言いながら、積み重なった紙の束から、数枚の紙を抜いていく。

「一つは武闘大会の警備の依頼だ」
「嫌です」

 速攻にシェリーは断る。ニールの依頼の“い”を言った時点で断りの言葉を言っていた。

「軍部がすればいいではないですか」

 毎年、第6師団が警備にあたっていたのだ。それを何故今年は冒険者ギルドに委託したのか。

「シェリー。また、いらないことを言ったのだろう?お陰で軍内部が手が回らなくなっているらしい」

 シェリーが言ったこと、それはマルス帝国の者たちの排除のことだろう。しかし、それは第5師団長自ら率先して動いていたので、警邏を担う第6師団は関係が無いはずだ。

 ニールは人差し指を立てて言う。

「帝国の者たちの排除。これにより、第5師団と第6師団の手が取られている」

 そして、ニールは中指を立てて更に言葉を続ける。

「第3師団の半分の引き抜きだ。それにより、軍内部はかなり混乱しているらしい。今までどれだけ、力がない人族だと馬鹿にしていても、補助的役割の魔術師が減ることに危機感を言う者たちがいるそうだ。ふん!本当に今更だ」

 何やらニールの私怨が混じっていそうな言葉を言っているが、剣で実力比べをすると、どうしても力が劣ってしまうのは人族としては仕方がないことだ。獣人の魔力が少ないように、種族という壁は高いものだ。

「あとイスラ・ヴィエント閣下が動いたことで、騎士団と軍内部が大慌てだ。よくあのイスラ・ヴィエント閣下を動かせたな」

 ニールはとんでもない大物を動かしてくれたものだと、呆れ気味にシェリーに言ったが、イスラ・ヴィエントという人物はシェリーの知り合いではなく、黒狼クロードの知り合いだ。別にシェリーが声を掛けたわけではない。

「私はその人物を知りません。恐らくイーリスクロム陛下が直接声をかけたのでしょう」

「ふん。色々逸話をもっている御仁が若輩の王の為に動くか?あの討伐戦でさえ静観していた御仁だ。フォルスミス・フラゴル辺りが頭を下げるのであれば、動くかもしれないが、あのフラゴルギルドマスターが頭を下げるのは絶対にないだろう?」

 ニールから見た赤猿フラゴルがどのように写っているかは理解できないが、頭を下げるぐらいなら、強引に引っ張り出して来て、その席につけようとする傲慢さはあるだろう。だが、それは相手の機嫌を逆なでし、イスラ・ヴィエントという御仁が快く受け入れることはないと。

「と、言うことで、祭りの騒ぎに乗じたい者たちと、他のことに手を取られている第5師団と第6師団との協議の結果。こちらに警備依頼が回って来たというわけだ」

 どう聞いても、真面目に仕事をしているのは、第5と第6師団だけであって、他は祭りを楽しむ気が満々だということが伺える。

「しかし、この時期となると冒険者の者たちも依頼を受けてくれなくてな、困っていたところにシェリーが来てくれたというわけだ」
「お断りします。私はルーちゃんの応援に全力を注ぎますので、そんな警備をする余裕はありません」

 シェリーも私利私欲で依頼を断るのだった。
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