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25章-4 冬期休暇-悪魔という存在

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「軽口?シェリーを守りたいと口にしただけだろう?確かに取り敢えず突っ込んでいくオルクスから神の加護を得たいと言葉が出てきたことには驚いたが」

 リオンもスーウェンと同じ印象をオルクスに抱いていたようだ。そして、番であるシェリーを守りたと言ったことに対して何をそこまで怒ることがあるのだろうと、首を傾げている。

 ただ、二人はその前の過程を知らないから、カイルの態度に首を傾げているのだ。ただ一人グレイはカイルの言っていることに理解を示しているのか、先程から何も話してはいない。いや、話すと己の恥ずかしい姿の話をしなければならいので、口を閉じているだけだ。

「グレイはどうなんだ?グレイもカイルと同じ様に思うか?」

 この話を始めから知っているもう一人の人物にリオンは声を掛けた。リオン的にはカイルの行動に理解ができないという感じなのだろう。だから、グレイの意見を聞こうと声を掛けてみたのだが、リオンの言葉に隣に座っているグレイの肩が大きく揺れた。そして、食事をしていた手を止めて視線をオロオロさせている。

 その様子に何も知らないスーウェンとリオンが首を傾げてグレイに視線を向けた。何をそんなに戸惑うことがあるのだろうと。

「今回はグレイさんが一番の被害者なので、そっとしておいてあげてください」

 シェリーはグレイを被害者と表現した。そう、女神ナディアに振り回されたと言っていいだろう。獣化というにはお粗末な姿を番であるシェリーの前でさらされ、その姿を可愛いと女神ナディアに言われたのだ。女神ナディア自身に悪意がなくても、グレイの心には何かと突き刺さるものがあったことに変わりはない。
 しかし、一番ぐさりときたのが今のシェリーの言葉だ。『一番の被害者』シェリーの目からみても今回の事はグレイを哀れに思ったということだ。
 シェリーに被害者と言われたグレイはルークが座っていた椅子の方に倒れていき、そのまま姿を消した。

「え?」

 リオンが驚いたように声を上げた。そして、逃げる何かを捕まえるように素早く捕獲する。

「原因はコレか?」

 リオンは赤い毛並みの大型犬の首根っこを捕まえて、引き起こした。

「思っていたより小さいですね」

 スーウェンの本音が更にグレイに追い打ちをかける。

 そう、確かに獣王神フォルテの加護を貰って獣化を自由にできるようになったと言っても、実力不足とフォルテがナディアに屈して与えた加護のため、中途半端なものとなっていた。
 大きさは女神ナディアが可愛いと言っていた大きさから変わらず、自由に獣化できると言っても、気を抜けば姿が変わってしまうという実体だった。

「コレを見てどうして加護が欲しいと思うのか理解できないな」

「わかりませんね」

 黒狼クロードのような力が溢れる様を見せつけられたというなれば、何がなんでも加護が欲しいと駄々をこねるのもわからなくもない。しかし、このグレイの姿は、大きめの飼い犬と言っていい姿だ。

 リオンもスーウェンも増々首を傾げている。

 その二人の姿を見てカイルはため息を吐きながらシェリーに頼み事をする。

「はぁ。シェリー。悪いのだけど、オルクスを隣の部屋から引きずりだしてくれないかな?」

 カイルは確信を持ってオルクスは隣の部屋で生き絶え絶えになっていると予想をつけて、シェリーに頼み事をする。神がいる部屋には普通では入ることができないので、シェリーに頼むしかない。
 しかし、シェリーは何故そのようなことを、しなければならないのかという視線をカイルに向けている。

「オルクスが何故獣化を望むかという理由をわかりやすく説明するためだよ」

 そう言われてしまえば、渋々重い腰を上げてシェリーは立ち上がった。
 だが、獣化を望むのは獣人としての新たな力を得たために決まっているだろうという疑問を持ちながらも、シェリーはリビングに続く扉を開けて、そこからオルクスをスキルを使って引きずり出した。気を失った成人男性は普通であれば、簡単には移動させられない。

 そして、シェリーはそのままキッチンの方に姿を消そうとしたが、カイルに掴まってしまい、カイルが座っていた席に座らされてしまった。正確にはカイルの膝の上にシェリーは座っている。

「グレイ。オルクスを起こしてからこっちに来てくれ」

 リオンに捕まえられたグレイはカイルが何をしたいのが意味がわからず、ただ言われたことを実行するために、身を捩ってリオンの手から逃れ、オルクスのところまで四足の赤い毛並みの獣が歩いて行き、前足で揺り動かす。

「うっ。吐きそう」

 強烈な神気は脳を揺さぶるほどの力があるのか、悪酔いをしているように顔色を青くしたオルクスが身を起こした。
 その姿を確認したグレイは言われたとおりカイルの側に寄っていく。いったいこれがなんの意味があるのだろうか。シェリーも含めカイル以外の者たちが頭の上に疑問符が飛んでいたのだった。

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