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15章 コルバートの魔女

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 翌朝、シェリーが朝食の準備をしていると玄関が叩かれる音が聞こえた。しかし、今手が放せる状況ではなかったので、グレイが対応すると言って、ダイニングを出ていった。しかし、対応しているグレイと訪ねてきた人物と玄関先で何か揉めているらしい。グレイの声と女性の声が聞こえるが二人が何か言い合っているようだ。

 シェリーは仕方がなく手を止め玄関に向った。

「だから、なぜ貴方がここにいるのかをきちんと説明をしなさいと言っているのです。」

「だから、伯母上には関係がないと言っているのです。」

 あのグレイが丁寧な言葉遣いになっていることに驚きつつ、グレイが伯母上と呼んだ人物の顔を確認すると

「マリアさん、どうかされましたか?ナヴァル公爵家からの御使いですか?」

 その女性は金髪の頭に三角の耳が付いており、後ろからは金色の尻尾が見え隠れしている。そして声を掛けられたことでシェリーに気が付き金の目で睨めつけつ様な鋭い視線をシェリーに向けた。

「シェリーさん!なぜグレイシャルがシーランにいるのです。ラースに居るべきグレイシャルが!」

「なぜ、と言われましても付いて来られましたから。」

「大公閣下はご存知なのですか!父も知っていることなのですか!グレイシャルが勝手にラースから出たとなると問題です。」

「と言われていますよ。グレイさん。」

「う。」

 ラース公国から出るとき、シェリーはグレイを置いてこようとしていたが、強引にグレイがスーウェンと共に付いてきた。
 大公であったミゲルロディアは魔人となってしまい正式な許可は出されていない。
 今、代行をしているオーウィルディアは『番だから仕方がないわ。』と言っており、正式な許可が出ているかは微妙なところだ。

「叔父上には言ってある。・・ります。」

 シェリーがマリアと呼んだ女性がグレイを睨んだことで、語尾を訂正したことから、以前から言葉遣いで注意を受けていたようだ。

「大公閣下の許可です。」

 グレイはシェリーに視線を送る。父親であるミゲルロディアのことは未だに各国に正式な通達はされていない。それをここで言うわけにもいかないが、どうすればいいのかと言う視線だ。

「マリアさんその前にここに来た用件を伺いましょう。それから、グレイさんのことはラースは認識していますとだけ言っておきます。金狼族のことはそちらで話し合ってください。」

 そう、マリアはグレイと同じく金狼獣人だ。マリアはグレイに鋭い視線を浴びせながらシェリーに用件を話し始めた。

「グレイシャル、そこに待っていなさい。先日国王陛下より手紙を受け取った件ですが、奥様がお会いになりたいとおっしゃっております。いつが良いでしょうかということで伺いましたが、本日の4刻8時でいいすよね。」

 シェリーは顔をしかめながら、魔時計を見る。

「後、8半刻15分4刻8時ですよね?朝食もまだなのですが?急過ぎますよね。」

 昨日は遅くまで新しい刀の調整と言う名の憂さ晴らしをしていたので、今日は遅めの朝食になってしまったのだ。そこに朝から訪問客が来ると言っている。

「公爵様も付いて来るとおっしゃっていますので、この時間になっております。」

 その言葉にシェリーは舌打ちをする。

「ちっ。師団長さんが付いて来るのですか?それじゃ、まともに話ができないじゃありませんか。別の日にお願いします。」

「あ?俺がいちゃ何か不都合があるのか?」

 マリアの後ろには青黒い髪に三角の耳が生えた男性が立っていた。

「第6師団長さん。予定の時間より早いですし、さっき訪問の事をお聞きしましたので、いきなり来られてもこちらとしては対応に困ります。お帰りください。」

 そう、訪問者であるナヴァル公爵というのは、第6師団長クスト・ナヴァルのことであった。そして、奥様と言うのが以前シェリーが国王であるイーリスクロムをパシリにして手紙を持って行かせた。クストの番である奥方である。

「ごめんなさい。シェリーさん。クストがどうしても行くと言って付いてきてしまったの。」

 その奥方である金髪青目の人族の女性がクストの横に立っていた。

「ユーフィアさん。師団長さんは師団の詰め所に返して来てください。あと、時間が早すぎます。せめて前日に連絡をください。」

「でも、こういうのは早いほうがいいと思ったの。昨日出来上がったばかりなのよ。クストのことはごめんなさい。ここに来ることがバレてしまったの。」

「では、1日ずらしてください。」

「このクソ餓鬼!毎回毎回、奥様に対する態度がなっていません!」

 マリアはユーフィアに対するシェリーの態度が許せないようだ。

「嬢ちゃん。ユーフィアが今だと言えば今だ。」

 クストは番であるユーフィアの言葉が最優先であるようだ。

「ちっ。主がいる狼獣人は面倒くさい。食事を取る時間はもらいますよ。」

 そう言ってシェリーは屋敷の中に入っていった。

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