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スリル

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「ごめんなさいセピユロス。私にはあなたの気持ちが分からない。
ねえこれからどうするつもり? 」
具体的な話に持って行く。
これで少しは彼の考えが分かると言うもの。
「ディーテ。あなたを愛してます。この気持ちは変わらない」
「ありがとう。でもヴィーナはどうするつもり? 」
ヴィーナの婚約者としてやって来た。
私に求婚しようがどうしようがヴィーナから逃れる術はない。
そこら辺のところは具体的にどう考えているのだろう。

「ヴィーナはヴィーナ。出来れば二人とも愛したい」
かなり変わったお方だと言うのが分かる。
悩むこと自体無いのだろう。そんなこと出来るはずないのに。
仮に私が許しても…… もちろん許しませんけどね。
ヴィーナが許してくれるはずもありません。
知れば怒り狂うでしょう。
そして縁を切ると言い出しかねない。
不潔だと罵り続ける。
ある程度の覚悟をしてるつもりですがヴィーナに言われて耐えられる自信はない。
ボノだってネチネチとしつこく言ってきそうだし。

「ディーテ! 」
「待って! しっかり答えて。これは物凄く重要なこと。遊びじゃない! 」
どうしてもセピユロスとこれ以上……
ヴィーナが頭から離れない。
当然ヴィーナは私たちの関係を知らない。
疑いもしない。それは当然のこと。
隣の部屋でぐっすり。今日は寝たでしょうね。
一昨日までセピユロスを心配して寝られなかったヴィーナ。
でも今夜は違う。安心して寝ているはずだ。
その寝顔を横目に出て行き密会。
大した方。度胸があると言うか無謀と言うか。
ううん考えてはダメ。私が選んだ道。

「心配しなくていい。もちろんヴィーナとはなかったことにするさ」
非情なセピユロス。でもそれしかない。
「あなた自分が何を言ってるか分かってるの? 」
なかったことにすると言うのは即ち私ともなかったことになる。
結局なかったことにはどう足掻いても無理。
ボノだって黙っていない。
「ははは…… 大丈夫だって」
「駆け落ちするつもりはあるの? 」
「ディーテとかい? それはもちろん」
もちろん私だって同じ。
問題はいつ切り出すか。
「ごめんなさいセピユロス。まだあなたを信じられないみたい」
信じてる気でいたがどうしても男の人が信じられなくなってる。
ボノ然り。セピユロス然り。

セピユロス? どこ?
ヴィーナの声が聞こえる。
異変に気付いたかたまたま偶然?
どちらにしろ部屋に入られてはお終い。
二人が密会してるところに鉢合わせ。
言い訳など通用しない。嫉妬深いヴィーナはごまかせない。
「どうしよう? 」
「私が隠れるしかない」
丁度展示物の影に隠れることが出来た。
近づきさえしなければ気付かれない。
もう外に逃げる手はないのだからここは集中するしかない。

ドンドン
ドンドン
セピユロスの名を呼ぶヴィーナ。
根負けした彼がドアを開けてしまう。
絶体絶命のピンチ。
「どうしたのこんなところで? 」
ヴィーナは疑うと言うよりは心配してるよう。
だが気を緩めては最後。気付かれる。それは破滅を意味する。
「ああ。ちょっとね」
セピユロスは言い訳を考えてないらしい。
これでは盗みに入ってると思われるじゃない。
何でもいいから言い訳をすべき。

「セピユロス? 」
問い詰めるヴィーナ。
「いやその…… 寝ぼけてさ」
どうにか捻りだした答えがこれでは先が思いやられる。
「お願い。正直に答えて! 」
うまい迫り方。男の人はこれでは手も足も出ない。
さすがはヴィーナと関心してる場合じゃない。
頑張ってセピユロス。お願いどうにか切り抜けて。
セピユロス陥落の危機。絶体絶命の二人。

「ごめん実は興味があったんだ。コレクションが見たくて。あれ…… 」
部屋を間違えたと頭を掻く。
「そうなの? 」
まだ疑ってるらしい。困った…… 出るに出れなくなってしまった。
「もう寝よう。コレクションは明日ゆっくり見るといいわ」
「そうだな。さあ戻ろうか」
一緒に部屋を出て行く。

ふう…… どうにか切り抜けた。
ただ疑惑は残ったでしょうね。
本当は何をしていたのか?
出来たら夢だったことにしておいてくれたらいいのだけど。
ドアを開け誰もいないことを確認してから部屋に戻る。
どうにか安全圏に戻ってこれた。
危機一髪。
明日以降はもう少し慎重にならなくてはいけない。
いやもう出向いての密会は止めた方がいい。危険過ぎる。

セピユロス。私はどうしたらいいの?
セピユロス。ああセピユロス。
こうしてセピユロスとの一時が過ぎて行く。

                続く
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