前世悪役令息だった平凡な俺はまた前世に戻り今度は恋せず生き残りたい。

第一章

1.俺まさか転生したんか？

急な話だが、俺には多分前世の記憶がある。

小さい頃からよく見る夢で見る度に悲しい感情や痛みで訳も分からず泣いていた。
高校生になってもその夢の内容は忘れず今でも鮮明に覚えている。
多分前世の記憶だろうが本当に前世の俺はろくでもない上に傲慢な奴だったがそれ故の理由もあった。

俺の前世の名前はアベル・ダニエリック。
公爵家の令息で小さい頃から何不自由なく育ったが一つだけその両親からは死ぬまで言われ続けた事がある。

『貴方は誰にも弱みを見せず傲慢で邪魔物がいたら排除して常に孤高の存在でいなさい』と。

そんな言葉をずっと信じきったせいで最終的には愛していた男を他の奴に奪われ処刑された。

今世の俺、小高隼人(こだか はやと)だったら絶対にそんなヘマはしねぇなと思った。
最近やっとこの夢の話も終わり無事に泣き叫びながらギロチンでぽっくり逝った。
改めてこの前世はまるで腐女子が好きそうなライトBL小説みたいだなと思った。
まぁ今の俺はそんな傲慢にならねぇし至って平凡な家庭で普通に暮らしていた。 

そう、事故に会うまでは……だ。


今日もいつも通り友人達と遊んで久しぶりに夜遅くに解散し、スマホを眺めながら横断歩道の信号を待っていた時だった。
いきなりトラックが暴走して横断歩道に突っ込んできて俺は突然の事で体が動かず訳も分からないままぶつかった。

そして次に目を覚ますと夢で見た見覚えのある天井にふかふかのベットと広い部屋。
まさかなとドッと冷や汗をかき、震えながらベットに降り姿を確認すると。

俺は前世のアベル・ダニエリックになっていて、腰が抜け崩れ落ちて乾いた笑いが響く。

「ハハッ、まじかよ…」

俺、小高隼人は最悪な前世に転生しました。