14 / 62
三時間目
女子思考は男子じゃわからない
しおりを挟む
「この桜色モンブランとブラックコーヒーください」
「申し訳ありません。モンブランですが、ただ今切らしておりますので、三十分ほどお時間をいただきますが、よろしいですか?」
なんですと!と思うが二時間も時間があるから、そう言われても安心できる。でもまあ、モンブランと一緒にコーヒーをお願いして、俺は窓際の二人用の席に着く。
『映画のチケットって買ってあると?』
モンブランを渡される時とは別で、もう一杯頼んだコーヒーを片手に響空にワボで連絡する。この時にようやく、彼女がメールせずに電話をかける子なんだと理解した。
「もしもし?」
『もしもし!もしかしてもう着いてるの?』
電話の向こうで驚いて大声を出す響空に、俺はニヤけてしまう。
「いや、まぁ着いてるけど。別に用事があって来ただけだからゆっくり来てよ。俺の用事が終わる前に来られたら俺が申し訳なく感じちゃうから」
『あ、そう?分かった。あっ、チケットやったよね?』
彼女は本題を自ら話し出した。
『まだ買ってないんだよね。あんまりよく決めきれてないから』
まだ観たいのが決まってないなら、映画に誘うのかと呆れてしまう。電話が終わって一時間経つと響空がかなりのお洒落で気合を入れている私服で現れた。
「おはよう辰矢」
「おはよう響空」
「何食べたの?」
彼女は俺の手にある本には見向きもせずに、テーブルの上にあるお皿に目を向けた。
「モンブランだよ。ここのカフェのモンブランは美味しいって聞いたから、食べてみたくて」
俺の言葉に目を点にして、響空に俺は首を傾げる。
「女子みたいなところもあるんだね」
「悪かったね。女子っぽくて」
拗ねた俺を無視して、響空は自分の携帯であるサイトのトップページを開く。
「ごめん、そんなつもりはなかったんだよ。・・・映画さ、これ見ない?」
見たいと言い出した映画は、最近よくCMで見る少女漫画の実写化されたもの。男子が見るのは困難だと思う。よくそれを一緒に見ようだなんて思えたな、この女子は。女子ともと行けよ、俺じゃなくて。
「いいけど、もしかして、元々これ見る予定だった?」
彼女の言い方は、俺の耳には見たいものがあったのに、少女マンガを見たいなんて言えないから考えてるなんて言っていたようにきこえた。
「え?いや、そんな事ないよ?」
「嘘、下手すぎ。来る途中に決めたにしても、内容が自由すぎでしょ」
彼女の顔色が明かに変化した。その変化を楽しみに、適当な言葉で軽く問い詰める。
「いやぁ、知らないなぁ」
嘘や冗談をさすがにこの子は知らなさすぎる。知っているとしたら、慣れてなさすぎる。
「ほら。それ見るんでしょ?行こ。人気な映画なら早めにチケット取らないと席がなくなるかもしれないよ」
彼女の顔の変化を楽しむことをやめ、本を閉じて彼女を立たせる。
「もし、今日がダメだったら来週だね!」
俺がお皿とコーヒーカップを返しに行く時に響空が言い出したことに、驚いた。
「お前、それ以外を見る気ないじゃん」
二人の会話は他人からすればカップルのように見えるだろう。俺自身、彼女を他の女子とは別の見方をしている。それが彼女も同じだと嬉しいと思い、願う俺が心のどこかに必ずいる。
「辰矢って少女漫画とか見ないの?」
「見ないよ。少年漫画すらあんまり見ないから」
漫画自体を俺はあまり読まない。別にそこにプライドがあるわけではない。現にアニメ化されている漫画のうち、いくつかは本を持っている。
「じゃあ、いつも見てる本は全部小説なと?」
「そうだね。学校だと小説かな?漫画は読み切るのが、早いからあんまり持っていかないかな」
一日に小説を一二冊読む速さは我ながらとてつもない。漫画だと何も考えなかったら、十冊は軽くいくから学校に持っていくとすると、量が多すぎる。
「この前も思ったんだけどさ」
突然言い出した響空に俺は首を傾げる。
「辰矢って意外と頭いい感じ?」
正直、自分でも頭が良いと言うのは抵抗があるが、かなり良い。大学の内容も大半は理解できるし、センター試験の過去問もほぼほぼ満点を取れる。病院で暇を弄ぼうとしてたら、こうなってしまった。だからこの前の定期テストも正直、全問余裕で分かった。目立つのを避けるために無難に間違いはしたけど。
「いや、普通くらいだと思うよ?本をよく読むからって頭が良いって思うのは、偏見にも程があるよ」
口と現実が違いぎる嘘。それを貫き通す俺の将来に不安になる。
「そっかぁ。まぁ、そうだよね!」
単純だと思った途端に、馬鹿にして来た彼女になんとなく対抗心が湧く。
「何その言い方。それでも響空よりは上の自信があるんだけど」
胸を張って言った言葉に響空は大笑いをしだす。
「なんだよ」
「いやぁ、流石にそれはないなって思ったから。勉強も運動もできる男子は流石にいないから」
体育の時間も、体に多少の無理をして普通かそれ以上であるように見せている。その行動がちゃんと周りにも評価されていることに喜びを持つ。
「さぁ、どうだろうね」
明日からのテスト返却が楽しみだ。
「あ、ギリ大丈夫そうじゃない?」
映画館の座席は残り数席で、二人の席もわずかに残っていた。
「ここにしよ!」
「うん、任せるよ」
タッチパネルを支持して席を決めるように響空に俺は全てを一任する。すると響空はつまらなささそうな顔をして、操作を続ける。俺は何か悪いことを言ったのか?
映画を見て、体幹よりも長い時間が流れた場所に戻る。
「いやぁ、面白かったね」
少女漫画のターゲット層にあたる響空は、製作側の狙い通りの評価をしている。俺からすれば日現実的なことしか起きなかったから、なんとも言えない。
「初めて見たけど、あんなことが起きるのを女子って願ってるんだね」
「いや、それは違うから!」
俺は頭の中でエラーが起きる。
「あれは美男美女で、私たちが見てるだけだから良いんだよ。私たち一般人はあんなこと起きちゃダメなの。そもそも起きないし、起きても相手によっては吐き気がするよ」
そこまで言うかと思いつつ、少女漫画の存在意義を知る。女子の考え方がよくわからない。だから俺は苦笑する。
「辰矢もああいう事はしないほうがいいよ。辰矢並の顔でもナルシスト系って人は基本的に好まれないから」
言われた言葉を胸に刻む。彼女にいつかできることを願っていた自分を押しつぶす。
翌朝、優真と駅に向かう。時間は午前七時前。朝から課外がない日に行くには、一時間以上早い時間帯。
「なぁ、俺も一緒に行く必要ある?」
優真は、野球部に入部した。そもそも野球部に入るために高校を選んでいた。この時間は朝練に参加する時間だった。
「だって一人より二人の方が時間が短く感じるだろう?」
「だったら俺じゃなくて別の人を呼べよ。俺あと一時間はゆっくり出来たのに」
悪かったと言い続ける優真に仕方ないなと思う。
「辰矢は昨日何してたん?」
優真は反省の言葉から別の話題に変える。
「映画見てた」
「何見たと?」
「名前は忘れけど、最近話題の・・・恋愛ものかな」
一瞬どう言おうか考えた。最近話題の何というかで何を見たのかわかるから、迷ったが変に詮索されたら面倒だから正直に言うことにした。
「お前が恋愛モノに興味を持つって、なんかあったんか?」
残された時間がそれほど長くない人にそういうことを言うのは、常識的にどうなのだとうかと思う。まぁ、そう言うところも踏まえて、俺と話す内容も他と同じでいてくれるのがこいつの良いところでもある。
「まぁ、話題性すごいからね」
「誰と行ったと?」
誤魔化したはずが、聞かされたはずが聞かれたくないところを突かれた。
「まさか、もう彼女出来たん?」
二人の会話が急に他の人にも聞こえて来る声量に変わり、周りの視線が刺さる。
「うるさいなぁ、そんなんじゃないよ。一緒に行ったのはただの友達。そいつには一応彼氏いるし」
自分で言ってうんざりする。俺の中で一番気になってる子には彼氏がいる。理解していても、他の人よりも彼女を大切にしたいと願う自分がいる。これがきっと恋、いや、その前兆だろう。
「奪えばいいやん」
突然優真が言った言葉に怒りを感じた。病院の外で何も問題なく過ごすとこうなってしまうのか・・・。
「そんなことしねぇ、出来ねえから」
俺の弱気な言葉に呆れて、ため息を吐く優真。その直後電車が到着するアナウンスが流れた。そこからは、優真の勉強についてや、今週末の合宿のはんし、普通の高校生らしい会話を続けた。
「おはよう優真」
流石の野球部と言える。全員が元気に優真の元に来る。俺は彼らから無意識的に発されている圧力に負けて、そこから距離を取る。
「俺じゃあ、優真。朝練頑張ってな」
そう言って野球部と完全に行動をして、教室に向かう。
「申し訳ありません。モンブランですが、ただ今切らしておりますので、三十分ほどお時間をいただきますが、よろしいですか?」
なんですと!と思うが二時間も時間があるから、そう言われても安心できる。でもまあ、モンブランと一緒にコーヒーをお願いして、俺は窓際の二人用の席に着く。
『映画のチケットって買ってあると?』
モンブランを渡される時とは別で、もう一杯頼んだコーヒーを片手に響空にワボで連絡する。この時にようやく、彼女がメールせずに電話をかける子なんだと理解した。
「もしもし?」
『もしもし!もしかしてもう着いてるの?』
電話の向こうで驚いて大声を出す響空に、俺はニヤけてしまう。
「いや、まぁ着いてるけど。別に用事があって来ただけだからゆっくり来てよ。俺の用事が終わる前に来られたら俺が申し訳なく感じちゃうから」
『あ、そう?分かった。あっ、チケットやったよね?』
彼女は本題を自ら話し出した。
『まだ買ってないんだよね。あんまりよく決めきれてないから』
まだ観たいのが決まってないなら、映画に誘うのかと呆れてしまう。電話が終わって一時間経つと響空がかなりのお洒落で気合を入れている私服で現れた。
「おはよう辰矢」
「おはよう響空」
「何食べたの?」
彼女は俺の手にある本には見向きもせずに、テーブルの上にあるお皿に目を向けた。
「モンブランだよ。ここのカフェのモンブランは美味しいって聞いたから、食べてみたくて」
俺の言葉に目を点にして、響空に俺は首を傾げる。
「女子みたいなところもあるんだね」
「悪かったね。女子っぽくて」
拗ねた俺を無視して、響空は自分の携帯であるサイトのトップページを開く。
「ごめん、そんなつもりはなかったんだよ。・・・映画さ、これ見ない?」
見たいと言い出した映画は、最近よくCMで見る少女漫画の実写化されたもの。男子が見るのは困難だと思う。よくそれを一緒に見ようだなんて思えたな、この女子は。女子ともと行けよ、俺じゃなくて。
「いいけど、もしかして、元々これ見る予定だった?」
彼女の言い方は、俺の耳には見たいものがあったのに、少女マンガを見たいなんて言えないから考えてるなんて言っていたようにきこえた。
「え?いや、そんな事ないよ?」
「嘘、下手すぎ。来る途中に決めたにしても、内容が自由すぎでしょ」
彼女の顔色が明かに変化した。その変化を楽しみに、適当な言葉で軽く問い詰める。
「いやぁ、知らないなぁ」
嘘や冗談をさすがにこの子は知らなさすぎる。知っているとしたら、慣れてなさすぎる。
「ほら。それ見るんでしょ?行こ。人気な映画なら早めにチケット取らないと席がなくなるかもしれないよ」
彼女の顔の変化を楽しむことをやめ、本を閉じて彼女を立たせる。
「もし、今日がダメだったら来週だね!」
俺がお皿とコーヒーカップを返しに行く時に響空が言い出したことに、驚いた。
「お前、それ以外を見る気ないじゃん」
二人の会話は他人からすればカップルのように見えるだろう。俺自身、彼女を他の女子とは別の見方をしている。それが彼女も同じだと嬉しいと思い、願う俺が心のどこかに必ずいる。
「辰矢って少女漫画とか見ないの?」
「見ないよ。少年漫画すらあんまり見ないから」
漫画自体を俺はあまり読まない。別にそこにプライドがあるわけではない。現にアニメ化されている漫画のうち、いくつかは本を持っている。
「じゃあ、いつも見てる本は全部小説なと?」
「そうだね。学校だと小説かな?漫画は読み切るのが、早いからあんまり持っていかないかな」
一日に小説を一二冊読む速さは我ながらとてつもない。漫画だと何も考えなかったら、十冊は軽くいくから学校に持っていくとすると、量が多すぎる。
「この前も思ったんだけどさ」
突然言い出した響空に俺は首を傾げる。
「辰矢って意外と頭いい感じ?」
正直、自分でも頭が良いと言うのは抵抗があるが、かなり良い。大学の内容も大半は理解できるし、センター試験の過去問もほぼほぼ満点を取れる。病院で暇を弄ぼうとしてたら、こうなってしまった。だからこの前の定期テストも正直、全問余裕で分かった。目立つのを避けるために無難に間違いはしたけど。
「いや、普通くらいだと思うよ?本をよく読むからって頭が良いって思うのは、偏見にも程があるよ」
口と現実が違いぎる嘘。それを貫き通す俺の将来に不安になる。
「そっかぁ。まぁ、そうだよね!」
単純だと思った途端に、馬鹿にして来た彼女になんとなく対抗心が湧く。
「何その言い方。それでも響空よりは上の自信があるんだけど」
胸を張って言った言葉に響空は大笑いをしだす。
「なんだよ」
「いやぁ、流石にそれはないなって思ったから。勉強も運動もできる男子は流石にいないから」
体育の時間も、体に多少の無理をして普通かそれ以上であるように見せている。その行動がちゃんと周りにも評価されていることに喜びを持つ。
「さぁ、どうだろうね」
明日からのテスト返却が楽しみだ。
「あ、ギリ大丈夫そうじゃない?」
映画館の座席は残り数席で、二人の席もわずかに残っていた。
「ここにしよ!」
「うん、任せるよ」
タッチパネルを支持して席を決めるように響空に俺は全てを一任する。すると響空はつまらなささそうな顔をして、操作を続ける。俺は何か悪いことを言ったのか?
映画を見て、体幹よりも長い時間が流れた場所に戻る。
「いやぁ、面白かったね」
少女漫画のターゲット層にあたる響空は、製作側の狙い通りの評価をしている。俺からすれば日現実的なことしか起きなかったから、なんとも言えない。
「初めて見たけど、あんなことが起きるのを女子って願ってるんだね」
「いや、それは違うから!」
俺は頭の中でエラーが起きる。
「あれは美男美女で、私たちが見てるだけだから良いんだよ。私たち一般人はあんなこと起きちゃダメなの。そもそも起きないし、起きても相手によっては吐き気がするよ」
そこまで言うかと思いつつ、少女漫画の存在意義を知る。女子の考え方がよくわからない。だから俺は苦笑する。
「辰矢もああいう事はしないほうがいいよ。辰矢並の顔でもナルシスト系って人は基本的に好まれないから」
言われた言葉を胸に刻む。彼女にいつかできることを願っていた自分を押しつぶす。
翌朝、優真と駅に向かう。時間は午前七時前。朝から課外がない日に行くには、一時間以上早い時間帯。
「なぁ、俺も一緒に行く必要ある?」
優真は、野球部に入部した。そもそも野球部に入るために高校を選んでいた。この時間は朝練に参加する時間だった。
「だって一人より二人の方が時間が短く感じるだろう?」
「だったら俺じゃなくて別の人を呼べよ。俺あと一時間はゆっくり出来たのに」
悪かったと言い続ける優真に仕方ないなと思う。
「辰矢は昨日何してたん?」
優真は反省の言葉から別の話題に変える。
「映画見てた」
「何見たと?」
「名前は忘れけど、最近話題の・・・恋愛ものかな」
一瞬どう言おうか考えた。最近話題の何というかで何を見たのかわかるから、迷ったが変に詮索されたら面倒だから正直に言うことにした。
「お前が恋愛モノに興味を持つって、なんかあったんか?」
残された時間がそれほど長くない人にそういうことを言うのは、常識的にどうなのだとうかと思う。まぁ、そう言うところも踏まえて、俺と話す内容も他と同じでいてくれるのがこいつの良いところでもある。
「まぁ、話題性すごいからね」
「誰と行ったと?」
誤魔化したはずが、聞かされたはずが聞かれたくないところを突かれた。
「まさか、もう彼女出来たん?」
二人の会話が急に他の人にも聞こえて来る声量に変わり、周りの視線が刺さる。
「うるさいなぁ、そんなんじゃないよ。一緒に行ったのはただの友達。そいつには一応彼氏いるし」
自分で言ってうんざりする。俺の中で一番気になってる子には彼氏がいる。理解していても、他の人よりも彼女を大切にしたいと願う自分がいる。これがきっと恋、いや、その前兆だろう。
「奪えばいいやん」
突然優真が言った言葉に怒りを感じた。病院の外で何も問題なく過ごすとこうなってしまうのか・・・。
「そんなことしねぇ、出来ねえから」
俺の弱気な言葉に呆れて、ため息を吐く優真。その直後電車が到着するアナウンスが流れた。そこからは、優真の勉強についてや、今週末の合宿のはんし、普通の高校生らしい会話を続けた。
「おはよう優真」
流石の野球部と言える。全員が元気に優真の元に来る。俺は彼らから無意識的に発されている圧力に負けて、そこから距離を取る。
「俺じゃあ、優真。朝練頑張ってな」
そう言って野球部と完全に行動をして、教室に向かう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
2
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる