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三時間目
意外な印象
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昇降口で時計を見るとまだ七時二十分。あと一時間以上、他の人を待たなくてはいけないのかと思うと、気がひける。
『トン、トン』
学校が正式にはじまるまで、残り一時間以上あるはず。他の人が来ているとすると、何が目的なのか気になった。二階から三階に向かうと、足音が小さくなった。二階は二年生が使う教室だらけ。その足音の主は先輩と予想がつくけど、朝の課外も月曜日は全学年ないはず。だから今学校に来ている理由が気になった。
「あれ?君は、確か・・・蒼午の・・・?」
「どうも、おはようございます」
そこにいたのは、以前蒼午に告白して振られた『木下 華巳』先輩だった。
「朝課外もないのに早いね」
挨拶して上に登ろうとするところを話しかけられて、俺は動けなくなった。先輩に知られているのが意外で俺の表情はなんとも言えなくなってそうだ。
「僕は友だちに連れられてですよ。朝練に行っちゃいましたけど」
「そっか、なら時間ある?一人でいるのはあまり好きじゃないから」
一人が嫌ならどうして早く来たのだろう。
「あっ、今来たばっかりだよね。荷物置きに行こう」
先輩は蒼午に似ている気がした。目立つ人はみんな他の人の行動に入りたがる。
「あ、そういえば君、名前は?」
「『稲垣 辰矢』です」
「『稲垣』くんね、にしても珍しい名前だね」
「『タツヤ』でいいですよ。苗字で呼ばれるのはあまり好きじゃないので」
階段を登りながら自己紹介をすると先輩は、不思議そうに笑った。
「君ってとことん珍しいね」
「何がですか?」
「いや、普通初めて話す人に名前で呼べなんて言わないよ」
何か馬鹿にされた気がした。それにそこまで強要した覚えもない。
「私は『木下 華巳』。辰矢くんって呼んでって言うなら私のことは『華巳先輩』って呼んでよ」
陽気な先輩を自分の教室に案内して、荷物を置くと扉付近にいたはずの先輩の姿がない。
「ここね・・・」
先輩は一番前の席に座っていた。
「去年は私の席だったんだ」
急に語り出そうとする先輩は、こちらを向いた。
「実は去年さ・・・」
俺の質問を無視して、先輩は話を続ける。
「その話、長くなりますか?」
「どうだろ。話してみないと分からないかな」
「だったら、どこか別のところで話しませんか?他の人に見られて変な噂でも言われたら大変ですので」
学校内で人気の先輩と二人きりでなんて、誰かに見られたら変に思われる。俺も、きっとこの人も願わない。
「何か言われたら嫌なの?」
首を傾げる先輩の手を取り、とりあえず立たせる。
「先輩は嫌じゃないんですか?あまりよく知らない後輩と変な噂されて」
自分の教室から先輩の手を取って、人があまり来ない屋上への扉の前に向かう。
「彼氏がいるのなら嫌がるとは思うけど、いないからねぇ。何言われても気にしないかなぁ」
先輩の言葉は何もない空っぽな箱のように感じた。
「それでも俺は嫌ですかね。先輩とは変な噂立たせたくないです。あんまり目立ちたくはないので」
そう言って目的の場所につたら、階段に座り、先輩の隣で教室での続きを聞く。
「それで、あの教室で何かあったんですか?」
先輩はもう一度語り出した。次は俺の隣に座って。
「私ね、こう見えて今までで一回しか彼氏できたことないんだよね」
彼女の出来たことのない俺からすれば、十分な気がした。それに、先週蒼午に告白していたし。まぁ、そのことは取り敢えず黙って話を聞いてみる。
「高一の頃、それこそあの席の頃に告白されたの。二つ上の先輩で、あの場所で告白されたの。それもみんなの前で」
学校で他の人がいる中、告白するなんて、さすがに現実ではないと思ってた。だからその人の凄さを感じる。
「いい人と付き合えてたんですね」
「そうだね。イケメンなのに優しくて、運動もできて成績も良い、最高の人だと思ったの」
そんな人が現実にいるなんて、思えない。
「付き合って間もない頃は、本当に楽しかったよ。でもね、三ヶ月以上経ってから少しずつ変わってきたの」
何んだか小説とか漫画でありそうな話に変わってきた。
「暴力は振るうわ、無理やりやろうとしたり」
言葉のトーンから何をされたのか予想が出来た。そして、彼女の話す物語に俺はひかれて行った。
「そんなことされたら別れるじゃん?普通。・・・そしたら学校ではさ、私が満足出来なくて別れたみたいになってたの。それからよく『高嶺の花』とか『あの人は俺じゃ無理』とかを男子に言われて、女子からも、すごく頼られるようになっていって、私的には八方塞がりに感じたの」
立派な先輩でも、何かダメな所もあるんだと少し安堵した。
「それじゃあ、とうして誰かといたいんですか?
誰かと一緒にいて頼られるのが嫌なら、一人でゆっくりする時を作ったら良いじゃないですか?」
「一人でいる方がいいなって思った時もあったよ?でもね、常に頼られ、見上げられてるとね。誰かに頼って甘えたくもなるよ」
俺は頷いて、一つ別の問題が思いついた。
「どうしてそこまで俺に話すんですか?」
初対面の人にそこまで話す義理なんて、先輩にはないはずだ。ワボで俺のことをよく知ってくれているなら分からなくもないが、そんな記憶も、記録もない。
「初めてだったから・・・?」
先輩が首を傾げた、が俺もよく分からない。
「何がです?」
「心配されたのと、優しく手を引かれたの」
先輩は何か勘違いをしている。俺が心配したのはあくまでも、自分のことだけだ。手を引いたのは申し訳ないと思う。それでも心を許す理由が分からない。
「だったら教室で本当に話そうとしたのはなんだったんですか?」
「あれも同じ内容だよ。反応とか、対応でどこまで話すかは決め兼ねてたけど」
先輩は急に立ち上がり、俺の正面に座り、上目使いの姿勢になる。
「辰矢くんは、彼女とかいるの?」
「そう見えますか?」
先輩は頷き、俺の顔を覗き見る。
「どうしてです?」
「そりゃあ、こんな所で二人きりで話してて、彼女さんに悪いなぁって思ってね」
どこかニヤリと悪く笑う先輩が怖く見えた。
「いないですよ。いたこともないですし」
少し嫌味の脳に話すと彼女は笑い、謝り出した。
「いやぁ、顔もなかなか出来上がってるからモテてたんだと思ってたから意外で」
笑う先輩の失礼さに、俺は階段を降りようとする。
「待った待った」
ここに来るときとは逆で、先輩の手が俺の行き先を阻む。その行動に呆れながら振り替えると、俺の唇に生暖かい感覚が走る。そして、二秒後俺は身を引いた。
「初めてのキスどうだった?」
「・・・っは?いや、先輩って誰とでもそういったことするんですか?」
一瞬戸惑った。先輩の軽はずみな行動に警戒心を出した後、少し先輩を軽蔑する。
「ううん。好きだなって思った人か、彼氏にしかしないよ」
「じゃあ、今のは何ですか?」
「私ね。辰矢くん。君と付き合ってみたいと思ったの。心の底から」
先輩の言葉に嘘を感じた。先日俺たちを呼び止めた時に聞いていた。蒼午は告白されている。どちらにも本心だとすれば、軽率な人だし、どちらかが嘘だとすれば、人を騙すことが好きだと思われる。
「一応知ってるんですよ?蒼午にも告白したんですよね?」
先輩はそれかぁ、って顔でニヤける。
「告白はしたけど。それは私じゃないよ?」
「は?」
「私は蒼午を呼び出しただけ。告白したのは私と仲がいい友だちだよ」
「嘘ですよね?」
「本当だよ」
「じゃあ、何であの時緊張していたんですか?」
初対面でも分かる緊張の仕草をしていたから分かる。確かにあの時、先輩は緊張していた。
「よく分かったね。確かに緊張してたけど、それはあの後先生に呼び出されてたからね」
自分が思うよりも世界は広い事がこの時分かった。
「なら、どうして俺と付き合いたいなんて思ったんですか?会って一時間も話してないですよね?」
「私ね、基本的に今日みたいな話は誰にもしたくないの。でも君には話しちゃった」
そんなの先輩の加減次第じゃないかと思う。
「君といると何となく落ち着くんだよ。カッコいいし、優しいし、一緒にいたいって思うし、他の人より特別な存在になりたいの。だから付き合いたい」
え?好きだから付き合いたいって感情じゃダメなの?と疑問に思う。その間先輩の口が動き続ける。
「まぁ、いきなりだし、何とも言えないよね。辰矢くんって部活とか入ってるの?」
「・・・いえ、入ってないです」
質問されてようやく意識が戻った。
「なら、放課後課外の後、どこか行かない?」
これは、デートになるのか?ってか、マドンナに誘われた?
「・・・・・・」
「用事とかあった?」
いつの間にか、俺の後ろに立って俺を見上げていた。
「いや、ないですけど」
「じゃあ、課外が終わったら教室で待ってて。迎えに行くから」
「・・・え?!」
しばしの沈黙の後、俺は先輩の考えを否定する。
「いや、先輩が来たら今の状況を説明しなくちゃいけなくなるじゃないですか」
「いい経験じゃない。美人だの可愛いだの言われる先輩に、迎えに来て貰えるなんてなかなかないでしょ」
自画自賛する先輩は俺に言い返す間も無く、決着をつけさせた。
「それじゃあ、そろそろ他の人も来ただろうし戻ろっか」
先輩は俺の声を聞くつもりもないように歩く。俺が話しかけても、流して二階に向かう。
「先輩の教室、聞いときゃ良かった」
「おはよう辰矢」
後ろから響空の声がした。振り向いても昨日と同じ響空はいないから、内心驚いた。
「なんかあったと?」
響空に聞かれても、目立ちたくない俺は先輩との話をすることは望まない。
「何もないよ」
『トン、トン』
学校が正式にはじまるまで、残り一時間以上あるはず。他の人が来ているとすると、何が目的なのか気になった。二階から三階に向かうと、足音が小さくなった。二階は二年生が使う教室だらけ。その足音の主は先輩と予想がつくけど、朝の課外も月曜日は全学年ないはず。だから今学校に来ている理由が気になった。
「あれ?君は、確か・・・蒼午の・・・?」
「どうも、おはようございます」
そこにいたのは、以前蒼午に告白して振られた『木下 華巳』先輩だった。
「朝課外もないのに早いね」
挨拶して上に登ろうとするところを話しかけられて、俺は動けなくなった。先輩に知られているのが意外で俺の表情はなんとも言えなくなってそうだ。
「僕は友だちに連れられてですよ。朝練に行っちゃいましたけど」
「そっか、なら時間ある?一人でいるのはあまり好きじゃないから」
一人が嫌ならどうして早く来たのだろう。
「あっ、今来たばっかりだよね。荷物置きに行こう」
先輩は蒼午に似ている気がした。目立つ人はみんな他の人の行動に入りたがる。
「あ、そういえば君、名前は?」
「『稲垣 辰矢』です」
「『稲垣』くんね、にしても珍しい名前だね」
「『タツヤ』でいいですよ。苗字で呼ばれるのはあまり好きじゃないので」
階段を登りながら自己紹介をすると先輩は、不思議そうに笑った。
「君ってとことん珍しいね」
「何がですか?」
「いや、普通初めて話す人に名前で呼べなんて言わないよ」
何か馬鹿にされた気がした。それにそこまで強要した覚えもない。
「私は『木下 華巳』。辰矢くんって呼んでって言うなら私のことは『華巳先輩』って呼んでよ」
陽気な先輩を自分の教室に案内して、荷物を置くと扉付近にいたはずの先輩の姿がない。
「ここね・・・」
先輩は一番前の席に座っていた。
「去年は私の席だったんだ」
急に語り出そうとする先輩は、こちらを向いた。
「実は去年さ・・・」
俺の質問を無視して、先輩は話を続ける。
「その話、長くなりますか?」
「どうだろ。話してみないと分からないかな」
「だったら、どこか別のところで話しませんか?他の人に見られて変な噂でも言われたら大変ですので」
学校内で人気の先輩と二人きりでなんて、誰かに見られたら変に思われる。俺も、きっとこの人も願わない。
「何か言われたら嫌なの?」
首を傾げる先輩の手を取り、とりあえず立たせる。
「先輩は嫌じゃないんですか?あまりよく知らない後輩と変な噂されて」
自分の教室から先輩の手を取って、人があまり来ない屋上への扉の前に向かう。
「彼氏がいるのなら嫌がるとは思うけど、いないからねぇ。何言われても気にしないかなぁ」
先輩の言葉は何もない空っぽな箱のように感じた。
「それでも俺は嫌ですかね。先輩とは変な噂立たせたくないです。あんまり目立ちたくはないので」
そう言って目的の場所につたら、階段に座り、先輩の隣で教室での続きを聞く。
「それで、あの教室で何かあったんですか?」
先輩はもう一度語り出した。次は俺の隣に座って。
「私ね、こう見えて今までで一回しか彼氏できたことないんだよね」
彼女の出来たことのない俺からすれば、十分な気がした。それに、先週蒼午に告白していたし。まぁ、そのことは取り敢えず黙って話を聞いてみる。
「高一の頃、それこそあの席の頃に告白されたの。二つ上の先輩で、あの場所で告白されたの。それもみんなの前で」
学校で他の人がいる中、告白するなんて、さすがに現実ではないと思ってた。だからその人の凄さを感じる。
「いい人と付き合えてたんですね」
「そうだね。イケメンなのに優しくて、運動もできて成績も良い、最高の人だと思ったの」
そんな人が現実にいるなんて、思えない。
「付き合って間もない頃は、本当に楽しかったよ。でもね、三ヶ月以上経ってから少しずつ変わってきたの」
何んだか小説とか漫画でありそうな話に変わってきた。
「暴力は振るうわ、無理やりやろうとしたり」
言葉のトーンから何をされたのか予想が出来た。そして、彼女の話す物語に俺はひかれて行った。
「そんなことされたら別れるじゃん?普通。・・・そしたら学校ではさ、私が満足出来なくて別れたみたいになってたの。それからよく『高嶺の花』とか『あの人は俺じゃ無理』とかを男子に言われて、女子からも、すごく頼られるようになっていって、私的には八方塞がりに感じたの」
立派な先輩でも、何かダメな所もあるんだと少し安堵した。
「それじゃあ、とうして誰かといたいんですか?
誰かと一緒にいて頼られるのが嫌なら、一人でゆっくりする時を作ったら良いじゃないですか?」
「一人でいる方がいいなって思った時もあったよ?でもね、常に頼られ、見上げられてるとね。誰かに頼って甘えたくもなるよ」
俺は頷いて、一つ別の問題が思いついた。
「どうしてそこまで俺に話すんですか?」
初対面の人にそこまで話す義理なんて、先輩にはないはずだ。ワボで俺のことをよく知ってくれているなら分からなくもないが、そんな記憶も、記録もない。
「初めてだったから・・・?」
先輩が首を傾げた、が俺もよく分からない。
「何がです?」
「心配されたのと、優しく手を引かれたの」
先輩は何か勘違いをしている。俺が心配したのはあくまでも、自分のことだけだ。手を引いたのは申し訳ないと思う。それでも心を許す理由が分からない。
「だったら教室で本当に話そうとしたのはなんだったんですか?」
「あれも同じ内容だよ。反応とか、対応でどこまで話すかは決め兼ねてたけど」
先輩は急に立ち上がり、俺の正面に座り、上目使いの姿勢になる。
「辰矢くんは、彼女とかいるの?」
「そう見えますか?」
先輩は頷き、俺の顔を覗き見る。
「どうしてです?」
「そりゃあ、こんな所で二人きりで話してて、彼女さんに悪いなぁって思ってね」
どこかニヤリと悪く笑う先輩が怖く見えた。
「いないですよ。いたこともないですし」
少し嫌味の脳に話すと彼女は笑い、謝り出した。
「いやぁ、顔もなかなか出来上がってるからモテてたんだと思ってたから意外で」
笑う先輩の失礼さに、俺は階段を降りようとする。
「待った待った」
ここに来るときとは逆で、先輩の手が俺の行き先を阻む。その行動に呆れながら振り替えると、俺の唇に生暖かい感覚が走る。そして、二秒後俺は身を引いた。
「初めてのキスどうだった?」
「・・・っは?いや、先輩って誰とでもそういったことするんですか?」
一瞬戸惑った。先輩の軽はずみな行動に警戒心を出した後、少し先輩を軽蔑する。
「ううん。好きだなって思った人か、彼氏にしかしないよ」
「じゃあ、今のは何ですか?」
「私ね。辰矢くん。君と付き合ってみたいと思ったの。心の底から」
先輩の言葉に嘘を感じた。先日俺たちを呼び止めた時に聞いていた。蒼午は告白されている。どちらにも本心だとすれば、軽率な人だし、どちらかが嘘だとすれば、人を騙すことが好きだと思われる。
「一応知ってるんですよ?蒼午にも告白したんですよね?」
先輩はそれかぁ、って顔でニヤける。
「告白はしたけど。それは私じゃないよ?」
「は?」
「私は蒼午を呼び出しただけ。告白したのは私と仲がいい友だちだよ」
「嘘ですよね?」
「本当だよ」
「じゃあ、何であの時緊張していたんですか?」
初対面でも分かる緊張の仕草をしていたから分かる。確かにあの時、先輩は緊張していた。
「よく分かったね。確かに緊張してたけど、それはあの後先生に呼び出されてたからね」
自分が思うよりも世界は広い事がこの時分かった。
「なら、どうして俺と付き合いたいなんて思ったんですか?会って一時間も話してないですよね?」
「私ね、基本的に今日みたいな話は誰にもしたくないの。でも君には話しちゃった」
そんなの先輩の加減次第じゃないかと思う。
「君といると何となく落ち着くんだよ。カッコいいし、優しいし、一緒にいたいって思うし、他の人より特別な存在になりたいの。だから付き合いたい」
え?好きだから付き合いたいって感情じゃダメなの?と疑問に思う。その間先輩の口が動き続ける。
「まぁ、いきなりだし、何とも言えないよね。辰矢くんって部活とか入ってるの?」
「・・・いえ、入ってないです」
質問されてようやく意識が戻った。
「なら、放課後課外の後、どこか行かない?」
これは、デートになるのか?ってか、マドンナに誘われた?
「・・・・・・」
「用事とかあった?」
いつの間にか、俺の後ろに立って俺を見上げていた。
「いや、ないですけど」
「じゃあ、課外が終わったら教室で待ってて。迎えに行くから」
「・・・え?!」
しばしの沈黙の後、俺は先輩の考えを否定する。
「いや、先輩が来たら今の状況を説明しなくちゃいけなくなるじゃないですか」
「いい経験じゃない。美人だの可愛いだの言われる先輩に、迎えに来て貰えるなんてなかなかないでしょ」
自画自賛する先輩は俺に言い返す間も無く、決着をつけさせた。
「それじゃあ、そろそろ他の人も来ただろうし戻ろっか」
先輩は俺の声を聞くつもりもないように歩く。俺が話しかけても、流して二階に向かう。
「先輩の教室、聞いときゃ良かった」
「おはよう辰矢」
後ろから響空の声がした。振り向いても昨日と同じ響空はいないから、内心驚いた。
「なんかあったと?」
響空に聞かれても、目立ちたくない俺は先輩との話をすることは望まない。
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