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第十章 クリスフォード・ラックスファル侯爵領
魔力回路
しおりを挟む…‥このやろう。魔力の癖に生意気じゃね?
流石、躾されていないだけあって中々の無礼者である。人様の体内でデデンと居座る狼藉者を、忌々しい奴めと脳内でねめつける。そいつは存在を隠すことなく籠城をかます。何という厚かましさか。反抗的で生意気なコレに俺の闘志が漲って来た。
ふっふっふ、そうかそうか、俺様にそんな生意気な態度をとって許されると? 随分と舐められたなぁ、こりゃ身の程わからせにゃ…‥容赦は要らねぇ。ふふ、甘く見るなよ。こっちは人体実験の了承を得てんだ‥‥アホな考えを頭を振って霧消させる。
‥‥はぁ、逃避しちゃったよ。
触れた先で感じる不快さ。目視できればと、もどかしさが募る。医学的に疎くても、こんなものが体内に巣食っていれば病を招くか不調を齎すぐらいはわかる。
術の根源に俺の魔力を添わせると『心臓の表面に悪性物質がコーティング』そんなイメージが脳裏に浮かぶ。無色のはずが黒々と禍々しいイメージも自然と湧くのは術の非道さ故か。比喩ではなく物理で心臓を掴んでいるのだ質が悪すぎ。
‥‥まぁ、あくまでも想像の域だけどね。
こんな芸当ができるのかと術の不可解さを目の当たりにし逆に興味が湧いた。
『術は禁術』と且つてジェフリーに窘められた。確かに違法魔術を興味本位で知るのは愚行だろう。だがしかし。人命救助の大義名分があるじゃないか。ちょっとぐらいと好奇心が囁く。
「お義兄様はこの術をご存じで?」
「‥‥名称と奴隷紋を胸に刻まれ命を握られることぐらいかな。それでレティは何が聞きたいの。この術は禁術だからね。知らないに越したことは無いよ」
おおぅさり気なく釘を刺された。やっぱダメか。
でも解術の手立てになるかもと乞えば、義兄も思うことがあったのか、推察の範囲と断りを入れ助言をくれた。
命を握る目的と魔力の補填的な意味合いで心の臓に纏わす、二重の目的があるのではと。
‥‥は? 何て?
「お義兄様…魔力‥‥補填?」
魔力の補填に何故、心臓を? 新たな疑問に首を傾げる。
この場の誰もが俺の発言に耳を疑ったのか、皆の視線を一身に受けた。ガザに至っては二度見したよ。よっぽどか!
「レティ…‥まさか知らない‥‥? ああ、そうだったね。我が家の方針か」
困り顔でそう言った義兄の眼差しに憂いが見えた。きっとレティエルの身を案じてだろう。断じて不出来な子を見る眼差しじゃない。
またもや俺の知識不足が露呈した。正直またかと思ったのは仕方ない。魔法関連は帝国でってのがお家の教育方針だったんだから。俺の所為ではない。
聞いてビックリ。
生命の神秘…‥いや俺の場合、魔力自体が神秘だけど。心臓部に魔力供給源である魔力回路と呼ばれる器官があるだなんて誰が思う?
でも、思い直せば魔力が血中にあるのだ。‥‥血が赤色だったから同じ造りかと思ってたよ。まさかの異世界仕様。こんな所に差異があるとは。
魔力回路器官が魔力を作るとされているのか。
ふうん、それって俺の持つ前世の知識で言えば造血がイメージ的に近いかな?
それが心臓部に? 血液循環だけでなく魔力循環もか。
これは実質、命を人質に取られたと同じだわ‥‥
合理的な術に嫌気が差した。
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