転生先は小説の‥…。

kei

文字の大きさ
上 下
100 / 345
第四章 新たな攻略対象者 隠れたままでいて欲しかった。

エリックー②

しおりを挟む




「身代わりの者はどうしましたか? 無事に届きましたか‥‥」



予想外の出来事で結果を見届けられなかった。事の顛末をこの男に尋ねなければならないのは忌々しいが仕方ない。

レティエルの身代わりを仕立てた以上、上手く活用したい。

気掛かりであったもう一組の行方を尋ねた。





「ああ、あの女は生かしてある。あれ程似ているのだ活用しない手はないわ。欲しがっていた閣下に差し出したお陰で、我らに惜しみない協力をして下さるそうだ。ははは。糸も簡単に受け入れられたわ。しかし、本当にそっくりだったぞ。儂も本物かと思ったわ。まさか閣下も偽物を差し出されるとは思わんだろう」





‥‥どういうことだ。 

あの女はレティエルの身代わりで国境を越えた後で殺す計画ではなかったのか?

折角、帝国の身分証明書を持たせていたのに。

これではレティエルは生存したままの帝国貴族ではないか。



ライムフォードとの交渉の切り札にと考えていたが‥‥。



俺は表情を取り繕うことが出来ず訝し気に男を見てしまった。





「ただ殺してしまっては勿体ないではないか。まだ利用価値があったのだ。アレは閣下との取引に使えたからな。有効活用をしたまでだ。どうせザックバイヤーグラヤス家はお終いだ。罪人となる家の娘の行方など幾らでも誤魔化せるであろう」





ジオルド閣下か。

今迄差し出した女では満足しなかったのか‥‥。







「そういえば、彼女は擬態が得意な特殊魔力保持者でした。ですが元々どこか似ていたのでしょうね。ところで侍女の方も一緒でしたか?」



「いや、若い方だけだ」



‥‥どうやらグレインは処分されたようだ。バカな女だ。公爵を裏切らなければ長く生きれただろうに。





エリックは、男の様子を窺いながら紡ぎ出される言葉を待った。





「今回で閣下もエリック殿をお認めになられた。後押しをして下さるぞ。これで他の貴族も賛同するであろうな。あとは‥…」



偉く機嫌がいいな。余程ジオルド閣下との密約が上手く行ったのだろう。
しおりを挟む

処理中です...