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第四章 新たな攻略対象者 隠れたままでいて欲しかった。
エリックー➀
しおりを挟む「気が付きましたか」
目を覚ますと見知らぬ女がこちらを窺うように見ていた。
(…誰だ、この女。それに、ここはどこだ?)
「お身体は、如何ですか?」
「こ、こは‥‥」
「声を出すのはお辛いですか? 水分をお取り下さい」
そう言って女が水を飲ませてくれた。女からは不穏な雰囲気も怪しい素振りもない。言葉に気遣いが感じられる。
(この女は治療院の者ではないのか?)
寝かされているベッドや部屋の広さ、部屋の装飾をざっと見ても金が掛かっているのが見て取れる。
どこかの貴族の屋敷のようだ。
何故こんな所で寝かされているのか?
目覚める前は、確かに治療院で公爵の犬の監視下にあったはずだ。
(何があった?)
鈍い頭で思い出そうと記憶を探るが、ぼやける頭では考えられない。
「今、旦那様にお知らせして参ります」
女は言葉少なめに部屋から出て行った。
酷く頭が痛みだしたから、これ以上考えるのをやめた。
どうせ旦那様と言う奴が現れればわかるだろう。
部屋に入って来た男の顔を見て、俺は救出されたのだと理解した。
「気が付いたか。エリック殿。災難だったな。身体は医者に診せた。暫く安静にしておれば良いと言っていたが、一体何があったのだ、そんな身体になるとは」
「あ、あ‥油断しました」
失態を晒したのは悔しいが、そのお陰で判明したレティエルの特殊魔力のことを男に伝えた。
これであの女の価値が一層上がったな。今以上に狙われるだろうが俺の知ったこっちゃない。
それよりも‥‥。
「身代わりの者はどうしましたか? 無事に届きましたか‥‥」
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